31 私を■したあなたたちへ
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「 恋もしましたし。 同じ数だけ失恋もしましたよ。 俺は神様ではないので。
届かないと知りつつ、手を伸ばす側です。 」
それなりの辛酸も苦渋も舐めたつもり。 こちらは、凡庸でつまらない人間なのだから。
「 でも、あなたは逆なんでしょうね。 」
笑みを深める瞳がゆらりと揺れて、 探るような色になる。
(350) 2023/11/20(Mon) 19時半頃
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「 届かないのをいいことに。 綺麗な幻想を積み重ねられる側。 」
ゆっくりと唇が動く。 それは、あまりにも知ったような口だったかもしれない。
(351) 2023/11/20(Mon) 19時半頃
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煙崎るくあを殺した犯人。
一瞬、得たかに見えた答えは、 すぐに冗談めかして返される。
別にブラフが得意なわけではない。 並んだ二つのどちらが真実かなんて。 当然、わかるわけがなかった。
なので確かな事にだけ。 自身の話題だけを摘んで、首を横に振る。
(352) 2023/11/20(Mon) 19時半頃
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「 残念ながら、俺は犯人じゃないですよ。
言ったでしょう。俺みたいな凡人では、 そんな役割は役者不足だ。
せいぜい舞台の下で、 皆さんを応援しているのがお似合いです。 」
心からそう言って。 苦く苦く、笑ってから。
(353) 2023/11/20(Mon) 19時半頃
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「 でも一人。 舞台に上がっている人なら知っていますよ。 」
(354) 2023/11/20(Mon) 19時半頃
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「 煙崎灰羅さん。 」
(355) 2023/11/20(Mon) 19時半頃
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煙崎るくあの兄。 この島への招待主の名。
口止めされていないのだ。 告げたところで咎められまい。
むしろ俺に話したくらいだから。 周知して欲しいと考える方が納得できる。
いっそアポロで全体公開した方が、 なんて気が利く青年だと、 彼には喜んでもらえるかもしれない。
(356) 2023/11/20(Mon) 19時半頃
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「 誰が煙崎さんを殺したのか。 俺は知らないです。
ただもし心当たりがあるのなら。 よければ、舞台に上がって下さい。 煙崎るくあを殺した犯人に対して。 それは、愛ではないかもしれませんが。 きっと。 煙崎灰羅は、──── 焦がれている。 」
(357) 2023/11/20(Mon) 19時半頃
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いつの間にか演奏は終わっていた。 一際伸びやかな音の後に訪れる静寂は、 本来なら余韻を楽しむ時間だけど。
「 中村さん。好きな曲はありますか。 」
話の終りを示すように、 ぱっとベンチから腰を上げると。
まだ幾分か高い日を見上げながら、 どこか楽しそうな笑みを向けて。
(358) 2023/11/20(Mon) 19時半頃
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「 よければ、リクエストどうぞ。
今日の閉園時間に流れるように モナリザ達に設定しておきますから。 」**
(359) 2023/11/20(Mon) 19時半頃
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── 現在:ホテルラウンジ ──
[ 『好きな人が、 ボク以外の誰かの手で殺されたらしい』>>322
話の流れからすると、おそらく失恋相手も 煙崎るくあなのだろうと思いつつ、 ]
なるほど。中学の頃のお知り合い。 黒須ワさん、ですね。
[ ゆっくりと復唱し、卯木は頷いた。 オムライスの『SUSUMU』の文字を見たときは、 頭にはてなマークを浮かべていたが、 なるほど本名だったのか、と合点がいって、 ]
(360) 2023/11/20(Mon) 20時頃
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[ 注文した抹茶ラテが来たタイミングだろうか。 黒須の口から零れた言葉に、>>327 卯木は神妙な顔つきになる。
状況からいって、煙崎るくあが殺されたのは ほぼ間違いないように思われる。 ただ、卯木自身も彼女の遺体を見ていないため、 確信できるかといえば話は別で、 ]
そうですね。 私もニュースや他人からの話で、 煙崎さんの死を知っただけで、 お葬式にも出ておりませんので、 遺体も直接は見ていないのですよ。
(361) 2023/11/20(Mon) 20時頃
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るくあさんの死の確証、ですか。
[ 抹茶ラテを一口口に含みながら、 黒須の話にふむりと頷いて、>>328 ]
お兄さんの灰羅さんと話した限りでは、 彼は少なくとも煙崎さんの死については 確証しているように見えました。
さすがに身内が、 遺体もなく死を確証することはないと思いますし、 おそらく灰羅さんは 煙崎さんの遺体を見たのではないかと思います。
(362) 2023/11/20(Mon) 20時頃
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それで、遺体のその後が どのようになったのかは不明ですが、 仮に火葬されていたとしても、 遺骨からはDNA鑑定ができるはずです。
だから、煙崎さんの血液や唾液、毛髪など 本人と特定できるものがあれば、 最悪火葬されていても、 物理的には彼女が死んだと特定することは 可能なのではないでしょうか。
ただ、手続きの煩雑さや灰羅さんの心情的に その方法を取るのは難しいかもしれませんが。
あと、遺体がまだ残っている可能性も一応あります。 大学などの研究のために、本人の同意のもとで 遺体を献体する制度もありますから。
(363) 2023/11/20(Mon) 20時頃
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だから、煙崎さんの死をはっきりと確信したいなら、 まずは灰羅さんに詳しく聞くことから、 ということになるのでしょうが……
[ ここで一旦言葉を切った後、 目の前の黒須を見つめながら、 ]
差し支えなければ、躊躇ってしまう理由など 詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか。
私には煙崎さんの死を あなたに納得させることはできませんが、 もし、他のことであなたの苦しみを解放できるのなら、 私にもお手伝いできるかもしれませんし。
[ などと提案してみたが、 答えてもらえただろうか。 ]*
(364) 2023/11/20(Mon) 20時頃
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密星さんの言葉がしばし止まる>>269のを、黙って見ていた。 混乱しているのだろうか。 やはり、という気持ちもある。
「はい、確かに「血縁は」「いない」。 そう言ったような気がします。 お兄さんはいる、私もそう聞いたように思っていたから、 ほとんどいない、という事だと思っていたのですけれど。」
さっきと同じ話になってしまった。 けれど、繰り返す方が今は間違いない。 何を言えばいいのか、という重苦しい沈黙の中、船は風の凪いだ中、水路を進んでいく。
(365) 2023/11/20(Mon) 20時頃
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「ごめんなさい、どういう事なのか私も はっきりとは言えないの。 単なる私の勘違いという可能性もあるし… むしろそうであってほしいという気持ちもある。
ただ…」
考え込むうちに、船はいつの間にか一周りしそうだ。
「うん、私の聞きたかった話はそれだけです。 ごめんなさいね、変な話をしてしまって。」
彼女にはそう告げた。一廻りしたら、その後どうするか、彼女に任せよう*
(366) 2023/11/20(Mon) 20時半頃
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白菊会 ミサは、メモを貼った。
2023/11/20(Mon) 20時半頃
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― 回想 ―
[けんさも、ちゅーしゃも、おくすりも、きらい。>>286]
いたい……。
[るくあちゃんも、痛いのかな。 だから私は、痛む腕を押さえながら、研究所の敷地内、るくあちゃんの姿を探して。]
るくあちゃん! ひなね、しょくいんのひとに、クッキーもらったの。 いっしょにたべよ?
[えへへって、笑って。 そうしてよく、るくあちゃんと並んで座って、一緒におやつを分け合って食べたっけ。]
[――……るくあちゃんと出会って、一緒に過ごした日々は、楽しくて。]
(367) 2023/11/20(Mon) 20時半頃
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これ、ひなのいし。 るくあちゃんにあげるね。
[落ちていた、ひよこの形にも見える歪な形の石を拾って、マジックで目を描くと、るくあちゃんに差し出す。
るくあちゃんも、沢山痛くて、悲しいのかもしれない。 だから、雛が、傍に居られる様にって。
そうしたら、るくあちゃんも、 星型にも見える石に目を描いて、雛にくれたんだ。]
[――……私はその石を、今も、お守りみたいに大事に持っている。]
(368) 2023/11/20(Mon) 20時半頃
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あ゛ あ゛。いだい!いだい!!
[大人になれずに死んでいった『雛子』達の、 何番目に作られたのが私なのかは、知らない。
ベッドの上にベルトで固定されて、 麻酔の効かなくなっていた身体を『治療』されて。]
[楽しいは、悲しい事だって、知った。 生きたいって、 幸せになりたいって、願ってしまうから。]
[――……それは叶わない事で、願ってしまったら、悲しくなるだけだったから。**]
(369) 2023/11/20(Mon) 20時半頃
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[>>350 恋もしたし失恋もした。彼みたいな美形が失恋?と一般的には疑問に思うところなのかもしれないけど、人間関係はそれほどシンプルでもない。 あなたは逆なんでしょうね、という言葉には初めて眉根を寄せて苦笑を見せた。]
失恋以前の問題だよ、僕は。
手を伸ばす先すら無い、 誰も居ない孤独しか知らない……
[少し余計なことを喋り過ぎてるな、と自嘲気味になりつつ。 ”犯人じゃない”、という言葉には、ホッとしたようながっかりしたような、微妙な表情を見せた。勿論、演技だ。]
そっか。まあ、元彼氏がそんなわけ、ないよね…。
(370) 2023/11/20(Mon) 20時半頃
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[そう言いながらも、実際のところ、『元彼氏』は疑われやすい位置ではあるだろうな、と考えていた。 別に犯人を擦り付けようとしてるわけではなく。 ただこんな、まだ少年のような子を巻き込んで申し訳ないな、という気持ちで。]
舞台の上、ねぇ……。
[───”煙崎灰羅”。
その名が上がった時は、僅かながら注意深い光が眼の奥に表れたかもしれない。]
(371) 2023/11/20(Mon) 20時半頃
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成る程……、 るくあちゃんの唯一の肉親か。 僕、彼とはまだ話していないんだよね。 なかなか会うタイミングも無くって。
[話しているうちに、坂理がベンチから腰を上げた。どこかに移動するのだろう。最後にリクエスト曲は無いか、と聞かれ、細い指を唇に伸ばす女性のような仕草でしばし考える。]
じゃあ、ベートーヴェンの『月光・第3楽章』がいいな。
[失恋にまつわる曲だったかな? この園のテーマを考えると、ホルストの惑星もいいけれど。今はこっちが聴きたい気分で。]**
(372) 2023/11/20(Mon) 20時半頃
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[乗り込んだ天王星は地球より透明感のある青色で 球体の周りの環がホログラムで再現されている。
膨れると少し幼く見えたが、>>345 空気が弛んだのは一瞬、惑星が回転しだすと 密星は淡然とした様子で話しはじめた。]
違和感の、繋がり。
[彼女の言葉をなぞる。 その前に零した今朝までの疑問については 一旦スルーして、この遊園地への質疑だ。]
(373) 2023/11/20(Mon) 21時頃
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そうだな。 ここは、前は研究所だった。 以前……といってもそう昔のことじゃない。 一般じゃあまり知られていないが、 病理研究所としてはそこそこ名が知れていた筈だ。
俺は以前ここに勤めていてね。 ただ、急に閉鎖されることになったんだ。 研究所からテーマパークへ。 こんな場所に、人が集まるかは判らんがね。
[卯木と見つけた仮眠室には、 研究所に纏わる資料はなかったが、 地下の研究施設は広い。 隠し立てしたとて、遅かれ早かれ露見するだろう。]
(374) 2023/11/20(Mon) 21時頃
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[密星の想像する荒唐無稽なこととは何だろう。 探偵のように謎を解明しようとする彼女が 犯人だということもあり得るのだろうか。]
今回の件のために造られた? そうなると、るくあを殺したヤツとここへ 呼びつけたヤツが同じ……、 映画なんかだと、最近じゃ珍しくもなくなった アレだろ。 るくあを殺した時からもうゲームが始まってた っていうやつな。
…………で、第二は?
[回る景色を眺めることなく、球体の内壁に背を預けると、 問いの続きをうながす。*]
(375) 2023/11/20(Mon) 21時頃
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灰占道士 煙は、メモを貼った。
2023/11/20(Mon) 21時半頃
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「 月光の第3楽章ですか。
いいですね。 あの爆発するみたいな激情に。 身を委ねられれば思い出せるかもしれませんね。
自分の中にある、感情に。 」
最も、そんなものがあればの話だが。
第3楽章は速い上に転調が多く、 奏でるにはそれなりの技巧を必要とするが。 むしろ正確性を得意とするロボットの方が 向いているかもしれない。
(376) 2023/11/20(Mon) 21時半頃
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「 月繋がりなら、 ドビュッシーの月の光も好きですね。 それじゃあ、モナリザに設定しておきます。 」
ベンチを発つ足は、そのままモナリザの方向へ。 何か思い至ったのか一度止めて。 くるりと振り返れば、お互いの視線が宙で絡む。
短い息を吐く。 胸を刺す感情の色が、 憐れみなのか、祈りなのか。 自分でも決めかねたまま。
「 …… 中村さん。 」
(377) 2023/11/20(Mon) 21時半頃
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「 どうかあなたの孤独にも。 神の祝福があらんことを。 」
自分と似ているようで。 何もかもが違うその人へ。
言い終えれば、再び背を向ける。 たとえ続く言葉があったとしても。
突如周囲に鳴り響いた、 陽気なサンバが搔き消しただろう。**
(378) 2023/11/20(Mon) 21時半頃
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――ホテルラウンジ――
思考と言動は限りなくワに戻りつつあるのに、長い睫毛を伏し目がちに憂う表情だけは、恋する乙女のそれで。卯木の言葉に真剣に耳を傾け、何度か静かに相槌を打つ。縺れ絡まった思考の糸を解く手伝いをして貰っているような。相談事に慣れた大人との会話は、ささくれ立った心を宥めてくれた。
「確かに。お義兄さんなら、 僕を納得させるだけの証拠を持ってそうです。 というかむしろ、彼に示せないなら、 他の誰にも無理でしょうね。
ボクはまだ会ってないけど、 後でメールで呼び出してみるか……。」
顎を揉みながら呟いて。真面目な会話の途中で失礼とは知りつつも、ちらと『アポロ』に視線を落とす。着信に、うへぇと思い切り顔を顰めるのを隠しもしない。
(379) 2023/11/20(Mon) 22時頃
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