10 冷たい校舎村9
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[ 時計を見上げていた。 秒針が刻々と時を刻むのを逃さないように、 待ち受けるようにじっと見つめていた。
そうして、3、2、1、…… スピーカーへと顔を上げれば、 最後のチャイムが鳴った。 ]
(22) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 炭蔵はまだ、この世界に居た。 その事実を受け止めれば、少しだけ笑って 律儀にゆっくりと食器を片付け始める。
そうしていたら、その扉が勢いよく開いて、 あっという間に詰められる距離感に、>>14 思わず後ずさってしまったが。
暮石の姿を見て、 大凡のことを理解していただろう。 ]
(23) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 鳩羽と柊は帰った≠アと。>>16 この世界の主は、黒沢だってこと。>>15
カッターナイフを見た時から、 ずっと炭蔵は薄々勘付いていた。 連想ゲームをするなら、思い浮かべるのはただ一人。 ただ、炭蔵の知らないところで、 カッターとの関連のある人物も居るかもしれないと 確信が持てなかったのもあったが。 ]
(24) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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暮石、落ち着け ……まだ、12時間近くある いや、もう12時間しかないとも言うが
俺に出来ることは限られているが、 最善を尽くそう
[ 呼吸も荒く、必死な様子の暮石に いつものように落ち着いて返事をする。 ──……した、筈だった。
彼女の手が伸びてきて、>>16 炭蔵の前髪を掻き上げれば、 其処には隠しきれない表情が浮かんでいる。 ]
(25) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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揺れる眸は、不安の色、 そして激しい焦燥を映す
(26) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 俺の決意は最初からずっと変わらなくて、 約束だって有効期限は無期限だった。 それに、頼まれなくたって、 黒沢のことを連れ戻したいと思っている。
けれど、暮石は知らないと思うが、 俺は無意識のうちに、この校舎に来てから 黒沢と言葉を交わすことを避けていた。 理由は、そうだな── 自信がなかったから。 俺の考えが本当に正しいのか、 どんな言葉を選べばいいのか、 足元が地面から浮いているように落ち着かなくて。
俺の力では、黒沢のことを 取り戻せないんじゃないかって 思ってしまって自信がなかったんだ。 ]
(27) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 昨日の夜には鳩羽に責任を押し付けようとしてた。 情けないよな、本当に。
そんな複雑な感情を乗せた眸を、 暮石に暴かれてしまったことも情けない。
あんなみんなを助けたいだとか、 偉そうに言っておきながら勇気も出ないとか、 本当に情けなくて嫌になる。 ]
(28) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ でも、 ]
……足りないことはないだろ、 少なくとも俺は、今暮石に勇気は貰えたし
[ 眸を見られて数秒、 ワンテンポ遅れて視線を逸らし、 前髪を指で弄びながらにそう答えた。
真っ直ぐに俺を見上げる眸の中に浮かぶ色、>>20 諦念など一切浮かばない、暮石が居る。 ]
(29) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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まずは、柊と鳩羽を見つけ出そう ……その間に作戦会議でもしようか 黒沢をどうやって連れ戻すかについて
[ 真っ直ぐ黒沢の元に向かいたい気持ちもあるが、 今朝消えたであろう二人の姿も確認したい。 その気持ちは暮石と同じだった。 ]
(30) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 不安も焦燥も消えないけれど、 炭蔵祐駕はどこまでも炭蔵祐駕で、 今はもう前だけを見つめていた。 ]
(31) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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……そうだ、暮石。 なんかこう、前髪を留めるもの持ってないか?
[ 暮石は提案に乗ってくれたかどうか。 別行動をするのであれば、 別れる前に手でヘアピンの形を真似どって 持っていないか確認をするだろう。
ないなら、そうだなー… 足元にはもうカッターナイフも落ちていないし、 どこかの教室でハサミでも借りようか。 **]
(32) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 眸を、見られた。>>35 ]
(43) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ 反発するような言葉、焦ったような様子が、 次第に落ち着いて行くのがわかる。>>38 ]
……そうだな、同じ人間だよ
[ 少しだけ不貞腐れたような声音になってしまう。 平坦だった声にも次第に隠せない感情が乗り始める。
けれど、告げられる言葉に、笑い声。 俺はそれを不快に思うことはなく、 逆に気恥ずかしい思いが優ってしまったから 視線をつい逸らしてしまっていた。 ]
(44) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ そうして、同じように深呼吸をする。 二度、そうすればこの気恥ずかしさも落ち着いた。
よもや、互いが互いを落ち着かせたなんて 気付けもしていなかったから、 助けた≠ネんて言われても心当たりがない。
ただ、感謝の言葉を述べられれば、 悪い気はしないものだった。 ]
いや、俺の方こそありがとう
[ 今はもう逸らしていた視線を戻して、 暮石のものと繋げていた。>>39* ]
(45) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ それから、暮石の疑問に小さく笑う。>>40 ]
あまり主張をしてこなかった暮石が言うんだ まさか狼少女だと思うことがあるか?
……それに、心当たりがない訳じゃない
[ まだ拾ったカッターナイフはあっただろうか? もし消えていないのならば、 ポケットから取り出して見せようとするだろう。
ないのなら? 自分で傷つけた左手首を暮石に見せる。 暮石のひっかかっていたことはわからないが、 黒沢の癖ぐらい気づいていただろう? ── と、言わんばかりに。 ]
(46) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ そして髪留めの件については、 教室にあるらしい。>>42
そうだな、やっぱり辞めると言い出す前にと、 俺たちは自分たちの城である教室へと向かった。* ]
(47) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ 教室にたどり着いた頃、 カッターナイフの無くなった綺麗な廊下に、 扉の外に靴跡が残されているのが見えた。>>4:496 ]
なあ、暮石 ……これは、多分そうだよな
[ そう≠ニいうのは、マネキンを示唆する。 暮石はそれを見た時、どんな顔をしていただろうか。 俺はちらりと表情を盗み見ようと視線を向けていた。
本当は、今すぐにでも辿りたかったが、 当初の目的の髪留めを先に回収しよう。 そう提案をして、教室の中へ踏み込んだ。 ]
(48) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ きっと、暮石が髪留めを探している間、 俺は黒板に並ぶ寄せ書きを眺めていた。 廊下に貼り出されている写真のように まるで卒業アルバムの裏表紙のように 思い出の一部に、感じていた。 ただ、文字の内容は物騒なものが多いけど。
辿るように文字を読んでいれば、 ふと、増えているものに気づいた。 ]
───…… 鳩羽の字だ
[ やたらと目立つ文字。>>4:497 教室にマネキンはない。 と、言うことは。外にあった靴跡は──…… ]
(49) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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行こう、暮石 多分あの足跡の先に、鳩羽がいる気がする
[ 髪留めは見つかっただろうか? 足跡を辿るように3階へと向かおう。* ]
(50) 2021/06/14(Mon) 12時半頃
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[ 同じ人間で良かった。>>52 一緒に頑張りたい。>>53 暮石のくれる言葉は、心の中に滲むように広がる。
今この瞬間に至るまでこの世界で誰かと過ごしてきて 沢山の言葉を交わして、何人もの姿を見送ってきた。 もうこの世界に残されたのは俺たちだけだとしても、 ココにあるのは、俺たちの気持ちだけじゃない。
真っ直ぐに同じ方向を向いている。 これも多分、俺たちだけじゃないと良いな。 ]
(64) 2021/06/14(Mon) 16時半頃
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[ 心当たりの件については、>>54>>55 詳細は語られなくとも時折聴こえていた ため息≠フ理由に繋がりそうだった。
あのはじまりの日のカッターナイフ。 まだたった2日前のことなのに、 何故だか遠い昔のように感じるよな。 俺たちは多分、あの時から気付いてたのかもな。
それから、手首のこと。 頬を抓られても然程痛くはなかっただろう。 ]
これは向井が悪い
[ と、罪を擦り付けてもおこう。 *]
(65) 2021/06/14(Mon) 16時半頃
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[ そうして、教室に入る時、 盗み見た暮石の顔は泣きそうで、>>56 帰った≠ニ信じていても、 悲惨な状態のマネキンがあるのは確かに なるべく見たくはないものだろうと思う。 ]
無理はしなくていいからな
[ それでもきっと、暮石は見ると言うだろうが。 あやすようにぽん、と小さな頭をひとつ叩いて 教室の中へ踏み込んでいた。 ]
(66) 2021/06/14(Mon) 16時半頃
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リハーサルにしても、 まだ少し早いよなあ
[ 正しく卒業アルバムのように並ぶ、 整列された写真たちと寄せ書きの黒板。
ヘアピンを受け取り、>>58 その黒板に文字が書き足されるのを見ていた。 ]
どのくらい頭の中、って…… さあな、それは俺にも分からない
[ 量の多い前髪を上に掻き上げて、 てっぺんに集めてヘアピンで固定しながら、 暮石の不思議な質問に答えて。 ]
(67) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 刻まれた文字に、眸を薄める。>>60 ]
伝わると思う、 いや思うじゃなくて、絶対伝えよう
[ チョークの粉が少し舞う。 精神世界なんだ、問いの答えはわからない。 分からないけど、まだ気持ちは伝えられると思う。
だから、俺は黒板に新たな書き込みはしなかった。 ちゃんと一緒に帰ってから、 卒業アルバムの裏表紙にサインしよう。 それまでは、お預けだ。 ]
(68) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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どうだ、似合うか?
[ ヘアピンをつけ終えたなら、 検討した結果を見せつけるよう>>42 暮石にファッションチェックも依頼していた。* ]
(69) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ そして、思い出を教室に残して向かった先。 三階に辿り着くと、寒さが増す。 暮石の視線の先を追えば、 ひとつだけ窓が空いているのが見えた。>>4:520
俺の腕も二本しかないし、身体も一つしかない。 暮石と同じで、手近な教室に足を伸ばす。>>61 ]
(70) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 後ろから、中に倒れている鳩羽を見た。>>4:496 顔をコートに埋める暮石の隣にしゃがみ込み、 背中を擦るように手のひらを添えた。
そして、もう一本の手はカッターナイフを拾う。 ]
まだ俺たちに明日≠ヘ来てない この校舎の中は、 永遠に同じ日付を繰り返してる 俺は鳩羽と約束したんだよ、
俺たちが目指すべき明日は、もう少し先にある
[ そう、俺も約束したんだ。 この校舎が動き出す明日へ。>>4:366 ]
(71) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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だから、鳩羽はきっと、 一足先に明日≠ナ待ってるだろ こんな作り物の笑顔じゃない、 本当の笑顔を浮かべてな
[ 話しながら、 暮石が途中で顔を上げないことを願っていた。 だって、俺も泣きそうになってたから。 もし見てしまったのなら? ……他のみんなには内緒にしてくれ。
特に、綿見には言わないように。 ]
(72) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 衣装部屋の中にあるもので、 可能な限り文化祭の日に近くなるよう ごちゃごちゃとした装飾をつけてやろう。 どうだ、満足のいく出来栄えになっただろうか?
それから、暮石が落ち着いた頃に、 開けっ放しの窓の方へと向かうだろう。* ]
(73) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 近づけば、窓の外ではなく、 窓のすぐ近くに、 降り積もる雪に覆われたマネキンがひとつ。
吹き込む風が、雪が、冷たくて。 窓枠に、手をかける。
なあ、暮石覚えているか? はじまりのあの日、一緒になって覗いたこと。 あまりにも深い闇が広がっていて、 言葉を失っていたっけ?>>1:297 その気持ちを覚えているから、 下を見ないようにそっと窓を閉めた。 ]
(74) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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