31 私を■したあなたたちへ
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[初めての観覧車。 足はゴンドラの床に付いているのに、 ゆらゆらと覚束ない浮遊感があるのは この島への船や遊覧船とも似ていた。]
え…っ……あれを…? ええ、生徒のリクエスト通り撮りましたけれど。
[彼の要望に瞬いた。 生徒に見せるものなのだから、彼相手に 躊躇するのはおかしいとは思いながらも、 データを保存した私用端末を取り出す。]
(357) azure_blue 2023/11/27(Mon) 16時半頃
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…。 データ送信ならまだしも、こんな風に 直接ひとに見せるのって、恥ずかしい…… …はい、これです。 ……ちらっと見たら返してくださいね…?
[写真を表示して、彼に向けて手渡した。 もぞ、と足を揃え直して、視線を逸らす。 間近で見える反応は、羞恥しか生まない。]
謎だったあの紐、衣装のコードだったみたいです。 なにか大がかりな宇宙艦隊モノの 女スパイのような役どころの衣装なのですって。
[一応、の説明を付け足しつつ。 端末が返ってくるのを落ち着かなげに待った。*]
(358) azure_blue 2023/11/27(Mon) 16時半頃
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―― 観覧車 ――
[携帯端末が使えなくなっていることを忘れていた。 元々、無くても困らない程度の使用頻度だから 数日電波が入らなくてもさして問題はなくて。 ただ、無断欠勤ともなれば学校からの連絡が 入っているだろうからそこだけは少々心配か。]
ふふ。大変でした。 着方の見本があるわけでもないので、もう、 コードも飾りもそれらしく付けるだけにしてしまって。
[似合っていると言われても 喜んで良いもの……?と悩んでしまう。 まぁ、生徒に請われたとはいえコスプレをすることも 人にそれを見せることも最初で最後だと思うので。 有難く受け止めつつ――続いた言葉には はた、と首を傾げた。]
(367) azure_blue 2023/11/27(Mon) 20時半頃
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[もう少し着飾ったら、と言われて む、という顔になる。]
……暗に、地味って言ってます? これがスタンダードですの。
テーマパークといったって、 いい大人がひとりで来るのに 浮かれた格好、できないわ。
[失敗があったとしたらロングスカートで来たことだ。 遊園地にはもう少し動きやすいほうが良かった。 ぷくぷくしていたが、礼と共に端末を返されて、 それを受け取りながら、視線を彼へと戻した。]
(368) azure_blue 2023/11/27(Mon) 20時半頃
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………いいえ。 ……何、でしょうね。 こう言ったら失礼かもしれないですけど。 灰羅さん、…最初から、ずっと、 なんだか危なっかしかったですし。
[貸衣装屋での短いやり取り。 互いに初対面にも関わらず、あの応酬だけで 「もしや」と直感的に感じるくらいには。]
あなたの抱いていたそれと同じではないけれど、 私は、昔、似た性質の情念に 長く触れていたことがあって。 だから、……放っておきたくなかったんです。
(369) azure_blue 2023/11/27(Mon) 20時半頃
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[続いた問いは>>366 直ぐには意図が伝わらず、数度瞬く。 昨日のやり取りを辿ってみて、漸く得心した。]
……もしかして。昨日の銀の館で、 私が口を滑らせたこと……?
[彼の確認は、そういうことだろうか。 大丈夫かと問われたら答えは『大丈夫』になるが 詳しい話を自ら口にするのは躊躇われた。 今ならば虐待として議論を呼ぶ話になってしまいかねず あまり気持ちの良い話ではないと思われたからだ。]
(370) azure_blue 2023/11/27(Mon) 20時半頃
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―――…、 私は、大丈夫。 もう、終わったことだから。 全部、昔に置いて来たことです。
……自我を持つことが赦されない、 自由のきかない環境に、18まで居たの。 長く、そうやって雁字搦めだったものから 突然突き放されて、私がわたしではなくなって。 世界のすべてがなくなったように思えて――…
[悩んだ末に、抽象的な表現にとどめた。 詳しく、と言われれば別だが、今は このくらいの表現が適当だろうと。 何となく、彼の表情を伺うことが出来ず、 視線は随分と高くなった外に向いた。]
……
(371) azure_blue 2023/11/27(Mon) 20時半頃
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灰羅さんの傷とは、決して、“同じ” ではないんです。 状況も、きっと全く違います。
でも、あのとき、あなたの心が どういう場所に居るのかだけは なんとなく、分かる気がしてしまって。 それで、色々言ってしまったのね。
[見誤れば見当違いもいいところのそれに、 感謝している、と言われてしまって。 改まってのその言葉に、何と言っていいか 言葉を探し、探し、ぽつぽつと。]
(372) azure_blue 2023/11/27(Mon) 20時半頃
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……灰羅さん、昨日よりもずっと 落ち着いているように見えるから。
それだけでも、 よかった、と、思って――…
[昨日の今日なのだ。 傷はまだ真新しいまま其処にあるのだとしても。**]
(373) azure_blue 2023/11/27(Mon) 20時半頃
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―― 観覧車 ――
……… うん。
[無理に引き留めたようなものに、 私の出来たことに対して見合わないほど、 十分すぎる礼の言葉をいただいてしまっている。
だから、大丈夫だと告げる彼へは、 視線を合わせての微笑みに留めた。]
(385) azure_blue 2023/11/27(Mon) 22時半頃
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空が近い ――… 生きてきた中で、今が一番高い場所に居るのね。
[視線のほとんどを前方に据えていたし 時折逃れるように窓の外に向けた視線も形だけ。 いつの間にかゴンドラを囲むのが 空の蒼と海の碧になっているのに、息を呑む。 いつか焦がれた空だ。 高い高い所に行けば 手が届くと思ったこともあったのに。]
(388) azure_blue 2023/11/27(Mon) 22時半頃
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あ……。 あの船がそう? 思ったより随分早く、 …。
[島に閉じ込められたことに 特に不都合も不便もない。 どことなく、夢の終わりが近づいているような 残念そうな声になってしまう。]
灰羅さんは、 この後、どうしますの?
[遥か向こうの点から、すぐ目の前のひとへ。 先延ばしにしていた問いを向けた。*]
(389) azure_blue 2023/11/27(Mon) 22時半頃
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―― 観覧車 ――
後始末……
[大々的に救援を呼んだことが 外部にどう受け止められるかという危惧はあった。 孤島での数日間が彼等――彼に、不利益を齎すのではと。 説明を付けられる用意があるのなら 全て任せるしかないのだけれど。]
…… 口裏は合わせるつもりです。 灰羅さんにも、キラ様にも。
私に出来ること、なにか他にあったら 遠慮なく言ってください。
[危ない事はしないと約束してくれているから。 彼の返答には、ゆっくりと頷きを返す。>>392]
(440) azure_blue 2023/11/28(Tue) 07時頃
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[遠く眼下に見えるキラキラとした夢世界。 救援が来て、遊園地を後にして島を出たなら ゆるやかに現実に戻ってゆくのだろう。
一歩踏み出せば夢は終わる。 きっともう、会うこともないのだろうなと。 そう、どこかで思っていた。]
……… え
[だから、灰羅さんの言葉の意味が 私にはすぐには飲み込みきれなくて。 彼が捉えた私の瞳は、どこか呆けたような 色をしていたかもしれない]
(441) azure_blue 2023/11/28(Tue) 07時半頃
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……っ、
[私の反応を待たず連ねられる言葉に 明確な彼の意志を見取り、瞳が揺らいだ。 彼の声は、穏やかな海に白波を立てる強風の如く 無意識に遠い世界に境界を引くことで 一時の凪を得ていたこの心にまで小波を立てる。]
私、 は ……
[腕を取る彼の手が、大きくて、熱くて。 何か口にしなければと思うのに、 声がまともに出てこない。 泣き出しそうな心地ですらあった。
心彷徨わぬように繋ぎ止めるこの手に 重ねても良いのだろうか。僅か先の未来を。]
(442) azure_blue 2023/11/28(Tue) 07時半頃
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………あと数時間で、 忘れる準備を していたの。 たぶん、無意識に。 ………でも、
[一歩でも近づこうと、シートに浅く腰掛け直す。 我彼の距離はそれでも意外と遠く感じられて 意を決したように腰を浮かせると、彼の隣へ。
ゴンドラは僅かに傾いてしまうだろうか、 この数日間で、揺れて傾き続けた私の天秤のように。
そうして、そっと肩に額を預けた。]
(443) azure_blue 2023/11/28(Tue) 07時半頃
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私も、また、あなたに会いたい。
のぞみは出来る限りで叶えてあげたいし ……応急手当が必要な時は、できたら頼ってほしい。
………ふしぎね。
[たった数日で、こんな気持ちを抱くことが あるなんて思ってもいなかった。ぽつりと呟く]
もっと深くまで、あなたを知りたい。
[空に二人きり。 誰に聞こえているはずもないのに 囁くほどにまで声を落とし伝えるのは――『是』。]
(444) azure_blue 2023/11/28(Tue) 08時頃
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教えてくれる?
[私の腕を取るその手に、 もう片方の掌を重ね置いた その意図が伝わるだろうか。
寄り添う身体を少し離して僅かに目を上げれば きっと、視線は再び交わって。小さく微笑む。*]
(445) azure_blue 2023/11/28(Tue) 08時頃
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[キラ様のことも、元より口外する心算はない。 彼等を取り巻く事情についても、 私は良くは知らないために、静かに首肯した。
私に課されるものがあるとすれば、 無断欠勤への学校への説明義務だけ。 救援要請が発されていたことを加味すれば 必要以上に責を負うこともないだろうから。 大丈夫ですと首を振ってみせただろう。]
(474) azure_blue 2023/11/28(Tue) 14時半頃
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………そうなの? あんなに 余裕そうに見えていたのに。
[顰めた声で、くすくすと。 内緒話でもするかのように、笑う。 昨夜。空っぽだと切実な響きを以てして 彼が口にしたその箇所にも、 叶うならそっと指先を添えて、するりと撫でた。]
(475) azure_blue 2023/11/28(Tue) 15時頃
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[いつの間にか天辺を越えたのだろう。 彼の腕に引き寄せられた瞬間、その肩越しに 陽を受けた水面が白く輝くのを見る。]
―――…
[近づく顔が重なる前に、そっと瞳を閉じた。 高度を下げるゴンドラ、身も心も 空に居られる時間はあとわずか。 短い間に、繋がった箇所から どれほどのものが伝えられたことか。]
(476) azure_blue 2023/11/28(Tue) 15時頃
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――――― ―――――
……涼しい。
[ゴンドラを降り、風に身を浸す。 夏の終わりの日差しは今日も変わらず、 けれど空の高さや雲の形は間違いなく 季節の移り変わりを示している。
彼は先に降りただろうか、後に続いたか、 ふと思い出したように、その顔を見上げて]
(477) azure_blue 2023/11/28(Tue) 15時頃
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……そうそう。 わたし、『密星 偲風』と申しますの。
以後お見知りおきを?
[敢えてなのか、口にしたくないのか。 嬢ちゃんだのアンタだの呼ばれていたこと 忘れてはいないのだ、と、ふふりと笑った。*]
(478) azure_blue 2023/11/28(Tue) 15時頃
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―― それから ――
[救援により銀島での一件は幕を下ろし、 きっと各々、ゆるやかに日常に戻って行ったのだろう。 ギャラクシーランドのカプセルトイの景品たちが コスプレ写真とともに保健室常連の女生徒達に 好評を博したくらいで、私も何も変わりはしない。
少し違うのは、携帯端末に何件か 招待客だった面々の連絡先が増えたことと。 『彼』に逢うための外出が増えたこと。 相手の多忙を縫っての予定だから、 そう頻度が高くはなかったかもしれないけれど 出来る限りで時間を作り、逢うようにはしていた。]
(505) azure_blue 2023/11/28(Tue) 21時頃
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―― 秋の銀島 ――
[クリスマスローズの種子は、 本来はポットに蒔いて植え付けを行うものらしい。 地植えをするなら、この時期までに蒔いて 二月から三月にかけて、植えたい場所に株を植えこむ。
ただ、銀島は船で渡る場所で、 居住地からの利便性も良くはない。 直接蒔いて、現地のモナリザにある程度を任せ 時折様子を見に来ることにはなりそうだった。
その頃には、土地の権利書は巡り巡って 卯木店長の手に渡っていただろうか。 彼の手にまだそれがあるなら、彼に。 手を離れていたなら、その時の権利者に。 手続きをとって行き来することにはなるのだろう。 >>463>>495]
(506) azure_blue 2023/11/28(Tue) 21時頃
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クリスマスローズを植える場所は 真夏の間に、太陽が強く当たらない 半日陰の場所が良いのですって。 ――…繊細で控えめなお花なのね。
[るくあが好んだというこの花の花言葉が 『追憶』『私を忘れないで』『慰め』 『私の不安をとりのぞいてください』など 儚げで切ないものであること、 いつかの折に彼にも話しただろうか。]
できれば、島の出入り口にも植えたいんです。 成長すると、こんもりとしてお花をたくさんつけるから 並べて植えると絵になって素敵かしら って。
それに、この島に降りてすぐに るくあちゃんに迎えて貰えている気持ちになれそうだから。
(507) azure_blue 2023/11/28(Tue) 21時半頃
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[大体の場所は、最終日に選定してあった。 そこに加えて、彼女の遺灰が多く蒔かれた場所へも。
さらには大観覧車の近くにも。 黒須くん――キャンディちゃんと名乗っていた彼が あの日助け出された場所でもある。>>500>>501
アポロで連絡をしたことがあったとはいえ、 救援直前のその時が初対面になってしまった 彼の事情は私には知り得るはずもなかった。 ただ、灰羅さんを始めとして、彼を知る人々から 黒須くんを含め、るくあを取り巻く人間事情の 一端でも聞くことが出来ていたら―――
そこにるくあの花を植えることで 失われた魂への慰めにならないかと考えて。]
(508) azure_blue 2023/11/28(Tue) 21時半頃
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[半日近くの時間は要したけれど、 スムーズに種植えを終えることができて ほっと安堵の息を吐いて胸を撫で下ろす。 一人では難しかった、と、微笑み湛えた礼とともに 傍らの人を振り仰いで。]
…… うん ……これで大体完了、ですね。 手伝ってくださって、ありがとう。
丈夫に育って、綺麗な花を見せてくれますように。 花盛りを迎えるまでにはまだ数年かかるんですって。
また定期的に、様子を見に来られたらと思うわ。
[土の上をそっと撫で、植えたばかりのこの種子たちが 純白や薄桃の花弁を花開かせる日へと思い馳せた。**]
(509) azure_blue 2023/11/28(Tue) 21時半頃
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―― 銀島への再渡航前日 ――
……灰羅さん。 今日もお疲れ様。
ええ、来週の土日を使う予定で――… そうなの?じゃあ、港で待ってます。 種はとってもいいものが手に入ったの。 土はあらかじめ島に発送しておきました。
あとは、…なにかあったかしら……?
[予定確認の何気ない通話にも ついつい表情が綻んでしまう。]
(529) azure_blue 2023/11/28(Tue) 23時頃
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…………うん。 私も、寝る前にあなたの声が聞けて良かった。
[声を聞けば幸せで。 名を呼ばれれば鼓動が早まって。 抱き締められると、私の最奥が ほわほわと温まる心地になる。
多忙な彼だ。 長話になってしまってはいけないと思うのに ついつい、通話を長引かせて。 得難いものを得ていることに、瞳を細めた。]
(530) azure_blue 2023/11/28(Tue) 23時頃
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