人狼議事


28 僕等(ぼくら)の

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視点:


メモを貼った。


メモを貼った。


─七尾ちゃんとその後!─

「えっ? ….わー!?」


しまった油断しすぎたー!
咄嗟に隠したけど、待受は見られてしまったかな。いや見られたからこその反応かな。
ううう、不覚。だけど、ここはもう認めてしまおうかな。


「…これ、内緒ね?」


好きな人、と口にしなくったってわかると思う。
待ち受けをチラリと見せて、また隠した。


「ほら、だから、合宿の時
 大和くんにカップケーキ持ってって貰ったでしょ?
 お弁当食べてほしくって、ついでにって…。」


その後黒猫ヘルメット七尾ちゃんとのツーショット撮ったりとか、ヘルメットに貼るシールだとかを見て回ったりとかしたけど。
ヘルメットが早速役に立つ状況は嫌だったなあ。
病院も忙しすぎて仕方ないしね。
みんな大丈夫だったかな。
私はまた、みんなに個別に大丈夫かメッセージやショートメッセージを送ってみたけど。
返事は、あまり期待できそうに無い。
あまり期待できそうに無いけど。


ニュースを見て、見覚えのある星座図にパチリと目を瞬かせたのだった。






               「…獅子座と、蟹座?」**


――こちらの世界線の僕――

こちらの世界線の大和は大体同じだ。
親は賭博中毒で借金を残して消えるし百均の傍や百円の食パンともやしで生活しているし毎日新聞配達をして生きていた。

 生活が変わり始めた切欠も同じ流れだった。
毎週お菓子を貰い始めてから部室に顔を出し始めて誕生日には人生で始めての誕生日会をしてもらって、お返しにフェイジョアという花の栞を贈った。
毎日お弁当を作ってきてくれる瑠璃川のことにずっと惹かれ続けていたけれど、大和は自分が幸せにできるビジョンが見えなくてまごまごとしていた。
ただ、合宿が楽しかった話をして来年は一緒に行こうと話をした日からまた距離が近づいた気がする。

 夏休みの残りの期間も大体一緒に過ごしていた。
宿題を教えながら解いていったりしてやっぱり新聞配達で忙しかったけど会える時間はずっと一緒にいて、あれは二人で花火を見に行った帰りに――付き合うことになった]


[ロボットが暴れたから辺りから日常は非日常になっていった。
避難指示が出ていたがその頃大和は配達する新聞がなくなったので復興の方に手伝いに出ていた。
これがボランティアではなかったのは危険だからで通信制限もあって余計に珊瑚に連絡ができずにいた。

 時間ができたときに一度だけ電話ができた。

 『元気だから安心して。復興の手伝いが結構忙しいからあんまり連絡できないけど……好きだよ、珊瑚さん』

 って連絡した後日、再び襲来したロボの激しい戦闘に巻き込まれて少しの間意識を喪っていたんだ]


  んぁ……って、嘘お……。


[大和は疲れ切ってその日は自宅で寝ていた。
夏の酷暑が残る中では日中の作業は好ましくなく早朝から昼前までと夕方から夜間にかけての仕事が多かったので日中は寝ていた。
時折珊瑚に『今日も元気』って送ってたけど、今日は目覚めたら天地がひっくり返っていた。

 ロボットの攻撃が築60年以上木造二階建てアパートに命中して吹き飛んでいた。
弾いた弾?が跳んできたらしい。
何が憎くてこんなボロアパートを破壊してしまったのか。
破壊された瓦礫の中で綺麗に布団に包まって逆さまで寝ていた大和は激しい戦闘があったようだが意識がなかったようだ。
余程に疲れていたのだろう。

 大和は起き上がると落ちてる辛うじて着れる服を纏って瓦礫の山から抜け出した。
声をかけたが返答はなくどうやら周辺の住人は避難を終えているようだ。
避難の声もかけられなかったことに、知ってた、と肩を落としながら道路に出てガラケーを開くが電波が立っていなかった]


  珊瑚さんは、無事なのかな。


[廃墟と化した中を大和は歩いていく。
不整地を歩くには安いシューズは不適当だが仕方ない。
時折ガラケーの電波を確認しながら崩落都市を抜けていき、途中の断層みたいな亀裂や穴を迂回しながらえっちらおっちら時間をかけて進むとようやく無事な家屋が増えてきた。

 そこから更に進むとようやく電波が立ったので珊瑚に電話をかけたんだ。
一声目は何と声をかけようかなんて考えてはいなかった]


  『珊瑚さん、無事かな』


[自分の無事よりも珊瑚の無事を願う大和がいる*]


メモを貼った。


─命くん─

大和くん──命くんとは、できる限りの時間一緒にいた。
だからこそ会えない時間は寂しかったし、より長い時間会えてない気がしてしまう。
花火を見に行った帰り…、繋いだ手が嬉しくて、もっとずっと一緒にいたくて、告白したのはやっぱり私からだったかな。
それとももし命くんからだったなら私は物凄く照れたと思うけど。

そうして私たちはお付き合いを始めていた。

でもロボットが暴れ始めてからまたなかなか会えなくなった。
復興支援なんて危険すぎるしやめてほしいけど、みんなが出来ることをしなくちゃならない期間なのかもしれないと…無理しないでね、と伝えるしか無かった。
『私も好き。だから無理しないで、ちゃんとご飯食べて水分とってよく寝てね。』
会いたい。今すぐ会いたい。でも、とワガママ言えない私がいた。


でもね。
星座図だ…、なんてぼんやりニュースを眺めていたけど。
血の気が引くとはまさにこのことだ。
あの辺り、大和くんの家のある方じゃ無い!?
ど、ど、どどどうしよう!?
え、生きてるよね、ちゃんと生きてる?
ガクガク震えながらスマホを握りしめる。なんとかキッチンに向かってコップにお水を入れるけど震えて上手くできない。でも、無理矢理水を一杯飲んで気持ちを落ち着かせた。深呼吸を繰り返してから…七尾ちゃんと買ったヘルメットを被り、リュックを背負って外に出た。
私の家からは学校に向かう感じ。
そちらに近づいていけば行くほど、危ない箇所が増えていく。


自分の家の方は無事だったから、こちらの方に向かえば向かうほど心臓が苦しくなってくる。
どうしよう。
早くうちに避難してきてって言えばよかった。
復興支援も大人に任せて危ないことしないでって。
大丈夫?生きてる?怪我してない?
いろんな不安がごちゃ混ぜになってくる。
今にも泣きそうな顔で進んでいると…スマホが震えた。
素早く画面を見ると、それは──。


「命くん!!!無事?大丈夫!?
 よかった今どこ?
 うちは大丈夫だよ、家もなんともないもん!

 う、ううっ、良かった…!」


まだ姿も見えてないのに、声が聞けた安心感で涙が止まらなくなってしまう。
暫く鳴き声を聴かせてしまった後、今の自分の場所を知らせて、相手の場所を聞いて。
良いあたりで落ち合おうと約束して、そのまま向かいたいところ。**


――珊瑚さん――

[珊瑚と一緒に居るとすごく温かくなれる。
心も身体も幸せに包まれているような、そんな感覚。
出来る限りの時間を一緒にいて、それでも足りなくてもっとって願える人。

 花火の日の帰り道。
初めて見る空に昇る火の花に驚いて興奮していた大和は楽しそうに珊瑚と語りながら歩いていた。
隣を歩く珊瑚を見つめているとこの先もずっとこうしていたいと願っていて、少し前から気づいていたのはこれが恋とか愛だと言う感情だと言うことだった。
相手の幸せを想うことが愛ならば、それは確実に愛と言えた。

 告白は大和からした。
立ち止まって、手を引いて。
驚いた珊瑚に『ずっと一緒に居て欲しい』って『どうしようもなく好きだ』って伝えたらすごく真っ赤になって照れてくれていた]


[お付き合いはそこから始まったけれど、大和 命は貧乏だった。
貧乏に暇はなくて危険なことをしてもお金を貯めていきたかったのは珊瑚と一緒に専門か大学に進学して同棲するためだった。

 労わってくれる珊瑚には感謝しかなかったけれど、寂しい想いをさせていたと思うと胸が苦しくなる。
本当はもっと傍に居たいのに現実が許してくれなかった。

 そんな日々は絶対その場所だけは残さないという強い意志を感じる――実際はなんでか寝ていて気づかなかったのだけれど、ロボットの攻撃で負の拠点だったアパートが吹き飛んだことで解放された。
手に持てるものだけ持っているけれどそれだけで、一体どれくらい呑気に寝ていてそれで如何ほどに珊瑚に心配をかけたことか。

 復興支援どころかロボットたちのあまりの広範囲の戦闘に巻き込まれて自分自身が被災者になってしまったのは笑えない]


[早く会いたい、早く声を聞きたい。
ご飯をまた食べたいしお菓子も食べたい。
『ずっと一緒に居る』って約束したんだって想いだけで歩きにくい不整地となった瓦礫の上を歩き通してフラフラになっていたけれど強い意志を宿す瞳は変わらなかった。

 電話で珊瑚が泣いていた。
死ぬわけにはいかないじゃないかって珊瑚の家までいくつもりだったのに、どうしてかこちらに向かってきているらしい。
復興支援をしていく中で地図を頭に叩き込んでいたので珊瑚に近いほうの災害時の集合地点に使われるポイントを教えて大和は歩き続けた。

 集合地点は耐震性や災害に強い場所とされている場所が設定される。
珊瑚に伝えたのは公園で倒木はあっても倒壊はないから安全と言えた。
その場所に近づいていくと遠目にも珊瑚が立っているのが分かって、大和は手を振って走って近づいていった]


  おーい! 珊瑚さーん!
  大丈夫ー? 僕は無事だよー!


[大きく手を振って近づく程にどうしてか目元が熱くなっていった。
生きている、動いている珊瑚を見て胸も熱くなっていて、目の前に到着する頃にはぼろぼろと涙を零して身体を抱きしめてしまった。
汗をすごいかいていて、服も汚れていたのにそのままだったから嫌がられたりしなかっただろうか]


  珊瑚さんが、ひっ、ぐう……いきてて、よかった。
  僕の住んでたとこ、潰れたし。


[一しきり抱きしめて温もりを感じてからそう切り出した。
珊瑚の家が無事で良かったと思う。
大和はこれから被災者登録をして避難所に行かないといけないから――また離れないといけないのかと思うと悲しそうに苦笑いするしかなかった**]


メモを貼った。


─命くん─

命くんと一緒にいるととても楽しい。
ドキドキしたり、焦ったり、切なかったり、──何でもしてあげたくなっちゃうんだ。
もっと頼ってほしいし、でも私も甘えたくなっちゃう。
でも、美味しいって私の作ったものを食べて浮かべる笑顔が可愛くて。もっと見たいなんて思ったのが始まりだったと思う。
花火を見上げた日も、はしゃぐ横顔が可愛いな、なんて。
でもとても綺麗だったよね!
私も一緒に夜空を見上げて空に咲く華を見つめてた。
そんな時に手を引かれて。
「私も…大和くんのことが、好き。」「私も、ずっと一緒にいたい…です。」
真っ赤になりながらそう答えて、そっと大和くんに身体を寄せた。
私はそれだけでも幸せだった。私から告白するつもりだったのに、大和くんも同じように思っていて告白してくれたんだもの。
まるで夢のようだと思って、その日は気持ちがふわふわしてなかなか眠ることが出来なかった。


でも、現実はなかなか上手くいかない。
元々大和くん──お付き合いを始めてからは命くんって呼ぶようにしてる──が忙しい人だって言うのは知っていた。
それが親のせいだって知ったら憤慨するしか無かったけど、私は法律に詳しく無い。どうにかならないか、と思うけど…落ち着いたらお父さんに頼ろうと思う。あの人なら、弁護士の知り合いとか居るだろうし、財務整理とか?して、命くんに責任が行かないようにしてもらうんだ。
復興支援だって危ないけど、お父さんのことがあるから誰かがやらなくちゃいけないと言うのも理解はしてる。
だから私も病院にお弁当を届けたりはしていたし、お父さんに言われたら荷物を運んだりもしてた。この数日で台車の使い方は随分慣れたんだ!
でもまさかこんなに街が破壊されてしまうなんて。
命くんの安否すらわからなくなるなんて!
こんな事なら…と、後悔しても始まらない。
不安でたまらなくて、そんなところに命くんが生きてる、無事なんて電話が来たら…涙腺崩壊待った無しだよ?


「命くん!私も無事、良かったああああ!」


走ってくる命くんを見て私も大きく手を振った。
両手を広げて私からも命くんに抱きついて、わんわん泣いてしまったからお互い泣いてしまってたんだね。


「ううっ、みこ、命くん…!
 生きてて、よっ、よかっ、た…!」


私だってその時汗かいてたし、命くんが汗をかいて汚れてるなんて気にもしなかった。できなかった。
命くんが生きて無事でいてくれる奇跡に感謝するしか出来なかった。
でも、暫しそうして抱き合って、涙も落ち着いてきた頃。


「家潰れちゃったの!?
 えっ、待って、じゃあこれから…。」


どうするの、と問いかけようとして言葉を止める。
手で涙をごしごし拭いてから、キリッと気合いのこもる顔になった。有無を言わせない、言わせたく無いそんな顔。


「命くん、うちに来て?
 うちの方は全然被害なかったから大丈夫!」


その説得の中で、お父さんは医者で忙しいし彼女さんのこともあって今は家に一人暮らし状態な事や、そのお父さんの部屋が災害時の荷物部屋状態になってる事も話して。
こんな事態だからこそ、お父さんも許可してくれると思うし、許可させる。


「また、離れ離れでいて。
 生きてるかどうか不安になるの、嫌だよ…。
 だから、…一緒に、いて?」


またこんな風に不安になって飛び出すのは嫌。
感動の再会も要らない。それよりは、二人揃って状態がわかる方が良い。
またこんな事があると思うと想像しただけで視界が滲む。
そんな潤んだ瞳で命くんを見つめて、でも絶対譲らないと言う強い意志もそこにあった。**


――珊瑚さん――

被災してからようやく再会したら珊瑚を泣かせてしまっていて大和は自身も泣きながらおろおろと困惑していた。
生きて手良かったって喜んでくれるだけで嬉しいけど泣いてるとこも可愛いけどやっぱり笑ったり喜んでくれているほうが嬉しい。

 抱きしめると珊瑚の匂いがして落ち着ける。
ここが自分の居場所だと再認識できた。

 家が潰れたことは驚かれたし多分起きたら逆さま向いてたとか寝てたとか言ったら呆れられそうだけど、避難所に行くと言おうとしたら涙を拭ったばかりの目元が腫れぼったい強い視線を向けられた]


  うっ、でも、その……。


[高校を卒業したら同棲しようと思っていたのに唐突に言われると男女が一つ屋根の下はとか考えてしまうけれど大和は珊瑚にそうやって見つめられるのに弱かった。
うん、って肯定しないと泣いてしまう気がするし珊瑚の涙に大和は絶対勝てないようになっているんだろう。

 大和は首を縦に振る]


  うん……一緒にいる。
  僕も珊瑚さんが生きてるって感じられるほうがいい。

  でも……、寝るのは廊下でいいから。


[衣服の持ち合わせもないし珊瑚の父親の部屋が荷物部屋状態なら寝泊まりできるのは廊下くらいではと提案する。
ソファを勧められるかもしれないけれど――うん。

 珊瑚の家にいくことだけは決定して手を繋いで帰路につく。
ところで被っているヘルメットの上で揺れてる白猫の耳があるわけで――]


  珊瑚さんは猫耳が生えてると、
  いつもよりもっと可愛いね。


[ってまさかヘルメットデコが流行ってるなんて知らないから物珍し気に見てしまうけれど、手の温もりを感じながらそんな風にお話できることを幸せに感じている**]


メモを貼った。


─命くん─

「お父さんの部屋も、段ボール沢山だけど
 寝られなくはないよ?
 それかソファ。廊下はあんまりだよ!」


マットレスを運んで廊下に並べようかとも思ったけど、それをするにはお父さんの部屋のクローゼットをどうにかしなくちゃいけない。
それをするには大量の段ボール箱をどうにかしないといけないから、一先ずソファをお勧めする。
さっ、流石に私の部屋のベッドはね、お付き合いしてるけどお付き合いしたてだからマズイかなくらいの理性はあるよ!
着替えはクローゼットじゃなくて、普段使いのカラーボックスに入ってたからお父さんのを借りれば何とかなると思う。
足りないのは買い足そう。
そんな計画を頭に思い浮かべながら手を繋いで歩き始めたんだけど…。


「えっ!? あっ、ありがとう…。
 七尾ちゃんとお揃いなの。
 七尾ちゃん黒猫で、私が白猫。
 えへへ、本郷さんと連絡取れたら
 本郷さんにはピンクのつけよって話してるんだ。」


猫耳ヘルメットを褒められて頬が熱くなる。
ふにゃっと目元が緩んで嬉しくて笑っちゃった。
バタバタしててメロメロとかとは別だけど、可愛い頂きましたよ七尾ちゃん!
そのまま帰宅したら先ずはお風呂を沸かして先に入ってもらって、その間にご飯の準備。
甘い卵焼きとお豆腐のお味噌汁、ほうれん草の胡麻和えにウィンナーを焼いたのと簡単なのだったけど、一先ずお腹を満たして欲しかったんだ。
お父さんにも連絡入れておく。


『彼氏の家が潰れたけど彼氏は無事でした。
 大和命(やまとみこと)くんです。
 お父さんのいろいろ借りるけどこんな時だから良いよね。
 家が無いからうちに泊まってもらいます。』
相談じゃなくて決定事項として。

その後、ちょっと情緒不安定だった瑠璃川先生(お父さんね?)なんて、私は知りません。**


メモを貼った。


――珊瑚さん――


  珊瑚さんの家の廊下ってさ潰れた家の寝床より、
  実はあったかくて寝心地がいいんだよ?


[築60年以上木造二階建てアパートよりも鉄筋コンクリート造マンションの廊下の方が寝やすい悲しい事実がある。
廊下にマットレスを敷いただけで今まで以上の十分な寝床になる。
ソファはリビングにあるし、リビングは珊瑚さんのお部屋と扉一枚でしか隔たれていないから緊張してしまうのだ。
それに大量のダンボールを移動させる先がないから父親の部屋に放り込んであるのだろうし――と考えてはいるけれど珊瑚に言われると、うん、としか答えるつもりがないのでソファに寝泊まりすることになった。

 お金は持って出れたが問題はお店が開いてるかどうかであるが珊瑚の家の周辺は図ったかのように被害がなくてちゃんと街として機能しているようだった]


  七尾は黒猫なんだ。
  すると珊瑚さんに白猫を推したのは七尾?


[そうだとするなら七尾はいい仕事をしたと心の中で誉めておく。
今度出会えたら直接誉めたい。
合宿まで月一でしか会ったか会ってなかったかで合宿で少し距離感を確かめあった間柄だが今後はもう少し話せる機会が増えるといいとは思う]


  ……本郷さんはピンク色なんだ。
  てっきり七色に光るやつかと……いや、なんとなくだけど。


[ピンク色の猫耳ヘルメットを被った本郷とゲーミング猫耳ヘルメットを被った本郷。
どちらが似合いそうかはちょっとどちらも見てみたい。

 それにしても頬を赤くしてすごく嬉しがってくれている珊瑚はとても可愛いかった。
大和の反応で嬉しがってくれて喜んでくれてとしてくれる、温かい存在で――]


  珊瑚さんを好きすぎて、
  可愛いとこ見るとすごく胸が苦しい。
  嬉しすぎて頬が、やばい。


[う゛っ、てなる。これが尊いというやつなのだろうか。

 珊瑚の家に到着したらお風呂に放り込まれた。
家にはそれぞれの匂いがあって、お風呂に入ると珊瑚と一緒のシャンプーとボディソープを使うから同じ匂いになっていく。
その匂いに身悶えてしまうのだからお風呂上りの際は温まった以上に頬が赤くなっていて、珊瑚を直視できなくて口元を抑えながら視線が彷徨ってしまっていた。

 服は珊瑚の父親のものを借りることができたのでそれを着て、用意されていたご飯を見たけれど先に珊瑚にお風呂に入ってもらうことにした。
少し冷めてしまうかもしれないけれど珊瑚も汗をかいていただろうしとお願いした。
二人してさっぱりしてからご飯を頂こう]


[珊瑚の料理は家庭的だと思っている。
何せ大和の食生活は聞いていると寒くなれるものだ。
復興支援にいくようになって賄いでもらう弁当も基本的に冷たいものだった、何せ電気が使えない。

 甘い卵焼きはお弁当でいつも作ってもらっているもので卵焼きといえばすっかりこの味だと覚えてしまった。
ほうれん草の胡麻和えも美味しいしウィンナーもぱりっとして美味だ。
お味噌汁もこれが珊瑚の味なのだと舌が覚えているもので食べていると涙が出てきそうになる。

 すっかり食べ終えると御馳走様と手を合わせて、食器を洗ったりしまったりと一緒にしてから二人でソファで寛ぐことにした。
珊瑚は父親に連絡を取っていたようで、そちらも無事で良かったと思う。

 テレビをつければ街が壊滅状態になっているとかそんな番組しかないだろうから星座の話が出た辺りで消して、静かになった空間で肩を並べて座る珊瑚の手を、指を絡めて握っていた]


  こうしていられるだけで僕は幸せだな。


[今後の復興のことはどうなるかはわからない。
被害が大きすぎて手がつけられないことは確かだろうけれど、大和は珊瑚の手伝いをして二人で過ごしていくと決めていた。

 けれど、今はこうしていられる幸せを噛みしめながら目蓋を閉じて珊瑚の存在をしかと確かめている**]


メモを貼った。


―― 瑠璃川先輩とヒミツの話 ――

[大和くん、と言われて浮かんだのは
 部室で極々まれに遭遇しておやつを食べていた、
 合宿の日にも列の最後尾に鎮座していた
 あの大和先輩の事だった。]


  ―― 大和先輩ですか?!
     わあ、気付かなかった…!


[ショッピングモールの大通り、思わず大声を出す。
 で、でも周りの人は皆他人だから大丈夫…かと!
 カップケーキと言われて思い出したのは
 合宿でのお弁当タイム。
 
 そういえば瑠璃川先輩からって言っていたし、
 そこで勘づくべきだったんだと
 自分の直観力のなさを嘆い(?)た。]




  大和先輩、あんまりお話した事無くって
  どんな人かそんなに印象ついてないんですよね…

  先輩、大和先輩ってどんな人ですか?


[これは純粋な疑問です。
 決して根ほり葉ほり聞こうとしてるんじゃなくって…。
 ともあれそんな感じに瑠璃川先輩から
 大和先輩の事を聞き出しながら、
 雑貨屋の次に本屋さんにも寄ってもらって
 あたしは簡単な星座の本を購入した。
 
 合宿を通して、あたしは以前より
 ほんのり星に興味を持っていたから。
 



[そうして他にも沢山お店によったりして、
 カフェでスイーツなんかも食べたりして。
 二人で沢山荷物を抱えながら、
 それぞれ別方向へと帰路に着きました。

 その数日後かすぐ後にか、
 瑠璃川先輩と大和先輩が
 お付き合いを始めたらしくって。


 あたしにバラしちゃったくらいですから、
 きっと瑠璃川先輩から報告をもらったりして?
 そうしたらあたしは心の底から感激して、
 一日中ニコニコしちゃってた事でしょう。]
 



[そんな中で、
 三度目の襲撃が……やってきてしまったのだった]
                   

                      **
 


メモを貼った。


―― 三度目の襲来から六日後 ――

[あたしは自分の部屋にいた。
 …あたしの家、マンションも無事じゃなくって。
 窓ガラスは全部割れてしまったし、建物にも
 ヒビが入ってるって管理人さんも言ってた。

 それでもあたしはこの家にいた。
 ……お父さんも、お母さんも、心配だったから。


 お母さんからは実家の秋田に行けって
 言われたけど、家と病院とを往復する
 お母さんを一人にしておける訳無いし。
 家の片付けだって全然残ってたから。]
 



[家では一人の時間が多くなった。

 ……と、思ったら、
 なんでかお兄ちゃんが帰ってきてた。
 こういう時こそ安全な場所に居た方が良いのに、
 何も言わないで家の片付けを手伝ったり。
 いつの間にか車の免許を取ってて、
 レンタカーを借りてお母さんの送り迎えを
 するようになってた。


 何も言わないの、お父さんと同じだね。

 なんて、一人心の中で呟いて。
 それでもあたしよりは遥かに両親の役に立って
 くれてるお兄ちゃんに、そっと感謝もしてた。]
 



[学校は被害の大きさから休校を繰り返してた。
 その間、あたしは街に出て、街の片付けの
 手伝いなんかをしてた。

 水道が止まっちゃったのもあって、
 お母さんとお兄ちゃんがいない間に
 水汲みもしてたし、ごはんもあたしが作った。
 ガスも襲来直後は止まってたんだけど、
 お兄ちゃんが携帯コンロを持って来てくれてた
 おかげでなんとかなっていた。

 お風呂も、お兄ちゃんの車頼りで。
 ……正直に、本当に、存在がありがたかった。]
 



[ある程度家の片付けも終わって、いよいよ
 お前だけでもって秋田に送られそうになった。

 あたしは拒んだ。
 離れたくなかった。
 ただのワガママだ。でも、


   あたしだけがいなくなるならいいけど、
   家族の方がいなくなってしまうのが
   たまらなく嫌だった。

   そうして今のあたしは、家族の不在時に
   必要な事を全部やる係に就任した。
   ここを離れるとしたら、
   家族四人で揃ってる時だけだよ。**]
 


─命くん─

私は古い木造の家で暮らした事がないからピンとこなくてきょとんとしちゃうけどね。
命くんの家に入った事はないはずだし。
それに私は命くんがそばにいてくれた方が安心する。
一応部屋は別だけど、扉一枚あるだけでお隣の方が安心するもの。
これまで離れていたんだから当然。ね?
それに考えたくはないけど、私の家に被害が及んだ場合は…とかさ。
一緒にいられて、一緒に…の方が良いなんて後ろ向きかな?
でも離れ離れよりずっと良い。
あれなら一緒に寝たって構わないんだけど、そうなると流石に…ね?二人ともお年頃だしお付き合いしてるんだしそう言うのだって不自然じゃないんだろうけど、それはそのう色々落ち着いた後でも良い気もするしこんな時だからこそと言う気もするしでもまだその命くんがそうしたいならって私何言ってるんだろうね!?


「うん、ほら私目が青いでしょ?
 それが白猫のイメージだったんだって。
 って、七色に光る本郷さんは面白すぎるよ〜!」


白猫は確かに七尾ちゃんがおすすめしてくれたけど。
本郷さんにゲームのイメージもなく真面目な優等生イメージのままの私は、なんでそれ!?とコロコロ笑ってしまった。
もしかして本郷さんそう言うグッズ好きなのかな?とか思っちゃう。ほら、合宿でお土産を選ぶ時とかにそう言うのを凝視してる場面を見た!とかさ?
でも、続く命くんの反応にまたカアッと頬が熱くなる。
それは、その、…私だって。


「私だって、命くんが好きすぎて、大事すぎて。
 …はしゃぎすぎてる自覚はあるよ?」


だって無事だった。怪我もなく生きててくれた。
そのことで胸がいっぱいで、いつも以上にテンションが高い自覚がある。
だからぷいとちょっと横を向きながら、照れ隠しにそんなことを言って頬を掻いた。
嬉しいの。命くんがいてくれる事が。
それだけでこの世界に感謝したくなるくらいに。


そうして一度私の家に帰ってきたのだけど、やっぱり疲れてるのかな?
お風呂でのぼせたのか顔が真っ赤になってた命くんに、冷たい麦茶を差し出して。
先に食べてて良いよ?と言ったけど、ちゃんと待っててくれたんだよね。
ちなみに命くんにはお父さんのTシャツとハーフパンツを貸し出した。今日は部屋にいるだろうし、パジャマにするには早すぎるかなって。
お風呂上がりの私もラフな格好。半袖シャツとショートパンツの部屋着になって、それから二人でちょっと冷めちゃったけどご飯を食べた。
こう、命くんと合流するならもう少しいろいろ用意してたんだけど、やっぱりタイミングって難しい。
でもいつも通り美味しいって食べてくれるから、良かった、って笑顔でホッと出来たんだ。


「うん。私も、こうしていられるだけで幸せ…。」


片付けも済ませてから二人でソファに座って、テレビを消した後に呟いた。
絡め合わせた指先に少しだけ力を込める。
瞼を閉じてしまった命君を見て、私も目蓋を閉じて頭をそっと命くんの肩に預けた。
隣にいる。大好きな人が隣にいてくれる幸せ。
こんな時だからいつも以上に幸せなのかもしれない。
これを味わえるのが普通じゃないって分かったから。
こう出来ている事が平和なんだって知ったから。


「今はいろいろと大変だけど…。
 もうロボットが現れなくなっても
 こうして一緒にいられたら良いなあ…。」


学校はどうなるんだろう。
進学は?卒業は?就職とかも、これからどうなっていくのか今はわからない。
私の家の近辺は恵まれてる方で、学校近くや命くんの家なんて潰されて崩されて、命を失った人だっているんだろう。
そう思うと本当に命くんが無事だったのは奇跡でしかない。その奇跡に感謝してしまう。
今後の将来のことを考えたくても、今はそこに視線が向いてしまうんだ。

いつだって命くんの隣が良い。


「…落ち着いたら、病院の方、手伝いに行く予定なの。
 命くんも一緒に来てくれる?
 お父さんの勤務してるとこ、忙しいんだって。
 私たちに何ができるって言うより
 小児病棟の子どもたちの遊び相手…とか。」


だから、今は今できることに目を向けよう。
遠い未来より、今は確実に今を生きなくちゃ。
復興支援なんてもう危なっかしくて送り出せない。
だから父さんの勤める病院──この辺りでは大きな病院の一つを口にした。**


─三回目襲撃前─

「やっ、大和くんは…。
 最初はほんと忙しい人なんだなあって…。
 正直、餌付けに近い感覚で
 せっかく同期だし、おやつ目当てにでも
 部活来てくれたらな、なんて思ってて…。

 でも、いつも美味しいって食べてくれるし
 お話ししてみたらその、楽しいし、
 嬉しそうにご飯食べてるとこ見てたら、その、
 …きゅんっと…わあああこれ恥ずかしい今の無し!」


改めて好きなところを語ろうとするとすごく恥ずかしいんだなって最後もうダメでした!
真っ赤になって両手で顔を覆う。もうやだ恥ずかしい!
そりゃ他の子だって美味しいって食べてくれるしリクエストだってしてくれるけど、こう、嬉しさが違ったの。なんて言ったら良いんだろうね!?
七尾ちゃんが星座の本を買ったなら、私はこれもオススメだよって星に関する物語の本を教えたりした。
カフェのスイーツは紅茶と一緒に。
散々迷った末に決めたのはオレンジムース。爽やかな酸味と優しい甘さが夏の熱った体にちょうど良い。


そして今日のお礼にってクッキーを包んだのを渡してお別れしたんだけど。
その後日。


『七尾ちゃんは知ってるからご報告ね。
 大和くんとお付き合いすることになりました。
 こんな時に良いのかなって思うけど
 こんな時でも好きを諦めないでよかった。』


そんなメッセージを送ることになる。
その日の私はかなりかなり浮かれてたと思います!**


メモを貼った。


─七尾ちゃん─

そういえば三回目の襲撃の後。
大丈夫かなってメッセージ送ってみたんだけど、やっぱり混線してるのかな?
それとも忙しすぎて大変なのかも。
ちょっと気になって、襲撃から数日後に七尾ちゃんにまたメッセージを送っておいた。


『大丈夫かな。こちらは大丈夫です。
 こっち方面は比較的無事だったみたい。
 大和くんとも合流できました。大和くんも無事!
 だけど家は潰れちゃったみたい。
 七尾ちゃんちは大丈夫?
 何かいるものとかあったら
 こっちのライフラインは生きてるので教えてね。』**


――珊瑚さん――

大和は珊瑚さんに家を紹介したことはなかった。
あそこは大和の負の遺産の全てだから関わらせることで影響を与えたくはなかった。
怪獣かロボットかはわからないけれど潰れてくれたことで決別できたことは不幸中の幸いだった。

 ところでお付き合いしているとは言え男女が一つ屋根の下で共にいるというのは世間体的に難があるというよりは、大和の心の準備的に難があった。
隣に居てくれて手を繋げるだけで幸せなのにこれ以上は未だ慣れてからというか、合宿の日にお弁当を受け取った時に着ていたノースリーブとかだと心臓が持たない気がしていた。

 青い目で白猫は確かに似合うし本郷さんが七色に光るのも笑ってくれていて、本郷さんは言葉の端々に何か猛者の雰囲気があるって言ったりしていた。
やっぱり笑ってくれていると嬉しいし、それに顔が赤くなるのは可愛い。
好きすぎてって多分大和の方がとか言い出すとキリがないから言わないけれどはしゃぎすぎはお互い様なのだろう。
横顔も鼻筋が通っていて可愛いなあとほっこり眺めていられた]


[ところでお風呂上りの大和はTシャツとハーフパンツ姿でラフな格好だったのだけれど、珊瑚は半袖シャツとショートパンツ姿でノースリーブではないけれどやっぱり目のやりどころに困ってしまう。
ぐう、生足が艶めかしいです。なんて言えないから目元を覆っても指の隙間から見てしまいそうだしなるべく視線を向けないように珊瑚の瞳を見つめることにした。
ほら、女の子は視線の向きにすぐ気づくらしいし。

 幸せな時間はいつまで続くだろう。
いつまでも続いて欲しいと思う穏やかな時間だけれど今度はいつ破壊の足音が近づいてくるのかわからない。
繋ぐ手に力がこもるのがわかる。
離れていて不安に思わせてしまっていたことを感じる]


  僕もそうだよ。
  珊瑚さんと一緒に居たい……からさ。
  一緒に暮らしてくれたら嬉しいな。


[学校はあのままでは再開できないだろうし仮説の施設が立ったりするだろうけれど、それも次が無ければの話だ。
二回連続で出現したあの辺りは特別警戒区域になるだろうし先の見通しは不明だった。
だから離れたくないよってちゃんと伝えておきたい。
いつだって珊瑚の隣に居たいしして欲しいし――]


  珊瑚さんの寝顔も見たいし――。


[と、うっかりと心の声が漏れたところでハッとしてしまう]


  ああ、いや、その、うん。
  それは本心なんだけどさ、うん。

  病院のお手伝いも一緒にいくし。
  こう見えて重たいものを運んだりとか得意だし。
  子どもの相手はわからないけど頑張るよ!

  みんなのことも気になるし。


[口早にお手伝いの申し出をして、その間視線を逸らしてしまっていたけれど結局最後は珊瑚の瞳を見つめていて――。

 ああ、もう、もっと浪漫あるタイミングの方が良かったのかもしれないけれど――]


  ……キス、していい?


[出来ることに目を向けることは大切で、今を生き延びることも大切なのだけれど。
今、ここにある温もりと幸せを感じたくて――理性さんが擦り切れた大和は顔を真っ赤にしてそう口走っていた*]


ーーみんなへの連絡ーー

[大和は相変わらずスマホを持ってないのでショートメッセージしか送れないため、lineで繋がっている珊瑚に任せっきりなところが出てしまうのだけれどそれではいけないと自分でも一応みんなにメッセージ入れておいた]


  『僕は無事で瑠璃川さんと一緒にいます。
   近くの避難所はーーで給水や配給はーー
で配られてるはずです』


[復興支援の手伝いをしていたから災害時にどこで支援が受けられるのかも覚えていたので一応伝えておくことにした。
何かしらの役にに立っていればいいのだけれど**]


─命くん─

願いや気持ちが重なるのはとても嬉しい。同じ事を思ってくれてるんだなって心が温かくなる。
だからお互いに一緒に暮らしたいと言い合った時、私は頬を染めながら微笑んでいた。
そうなったら良いな。そうしたいね。
成人年齢が20歳から引き下げられた昨今、女性としては年齢が引き上げられる形にはなったけど男女共に18で結婚ができる。
それも、親の同意無しに。
漫画を読んでいたりすると女子は16から…なんて記述がたまにあるけど、今はそうなんだって。
今は18で成人だから、その歳になれば結婚だって出来ちゃう。
まあ、薄ぼんやりそんな未来だって考えちゃう時もあるけど、おとなしく?同棲からかな、なんてね。


今回みたいに否応無くじゃなくて、自然と思い合って一緒に暮らしたいな。
でも、そんな贅沢なこと言わなくても、こうして一緒に暮らせるのは勿論嬉しいし、安心できる。
でも、寝顔発言には驚いちゃった。じわじわ頬が熱くなるけど…まさか寝顔写真が送られてきたのがバレてたりしないよね?
でもそれにしたって寝顔見たいって…えっと、一緒に寝るのだって…いやでも、まだ早いような、私も見たいな、は変かな?
ちょっと混乱してたけど、お手伝いの話に気を取りなおす。


「うん、力仕事は歓迎されると思うよ。
 今はいくら人手があっても足りないって。
 私は、流石にご飯作ったりも出来ないから
 読み聞かせとか、英語の対応を少しかな?
 母国語が日本語じゃない人のケアとか。
 英語だけは得意だし日常会話なら出来るしね。

 みんなもきっと、大丈夫だよ。」


それしか出来ないけど、それなら出来る。
こう言う時だからこそお父さんがすごい仕事をしてるんだなあって尊敬する。
だから忙しくしてても我慢できたし、我慢してきた。
──お父さんがお母さんを助けられなかったのを責めたのは私だったし、その罪滅ぼしみたいに働いてるのも知ってたから。


でも、そんな風にふっと自責の念を感じる直前。
命くんと視線が絡んだ。
強い意志を感じる大きめの目。キリリとした眉毛、全体的にハッキリとした目鼻立ち。
彼のその顔が真っ赤になっている。
そんな彼に見つめられてどきりと心臓が強く跳ねて。


「…。」


問いかけに答える代わりに、私の頬がますます赤くなった。
視線が一度迷うように落ちて、でもまた彼の目をまっすぐに見つめる。
きゅ、と緊張するように唇を引き結んだ後──そっと瞳を閉じて顔を上げた。
ほんの少し傾けながら、私の方からも命くんの唇の方に顔を寄せていく。
ぎこちなく、限りなくゆっくりと。


だって、"キスして良いよ"も"勿論大丈夫"も変だと思ったんだもん。
"私もしたい"も、なんだか変な気がして。
だから今は言葉を止めた。
命くんとキスしたいのをそのまま行動で示す。

繋いだ手が強張って、心臓が煩いくらいに早く高鳴っていた。**


――珊瑚さん――

大和が結婚の話まで切り出せなかったのは結婚するなら結婚式を挙げたかったからだって後で話しをしたらどんな反応をされるだろうか。
18歳になったら大人の仲間入りで結婚も自由なことは知っている。
だけど大和には先立つものがないから満足に式をあげてあげることもできない。
結婚式は幸せの舞台なのだし、ウェディングドレスを着た珊瑚を見たい思いも強かった。
あとは式をしたら婚姻できると思ってたところもあって、式をあげなくても婚姻できると教えられたらその時はまた顔を真っ赤にしてプロポーズするのだけれどそれはまた後の話になる。

 大和なりに意を決して申し出た同棲の話だから受け入れてくれると嬉しくて仕方がなかった。
その先の婚姻に向けて頑張ろうと決意を新たにできる]


  それなら僕も力になれそうでよかった。
  僕は得意教科ってないからさ。
  英語が話せる珊瑚さんすごいよ。


尊敬してしまうなと眼差しを送ってしまう。

 でも無理はしないで欲しい。
きっと大和の安否が不明なことで心配をかけたし独りで過ごすのはいろいろと我慢をしてきたろうから、めいいっぱい自分には頼って欲しいと願う。

 それと同じくらい大和も珊瑚に依存、というか胃袋も何もかも掴まれているので離れるつもりがないのだけれど]


  ん……ありがとう、好きだよ――。


珊瑚は真っ赤になってしまったけれど否定はしなかったからと先に感謝と好意を伝える。
見つめなおしてくれた視線が重なりその距離が近づくと目蓋が閉じて、大和は珊瑚の表情の動きを見つめながらゆっくりと寄せられた唇に自分の唇をこれもまたゆっくりと重ね合わせた。

 初めて味わう唇は柔らかくて、同じ匂いを纏うからこそ感じる珊瑚の香りがよくわかる。
拙く技術もない交わりだけれど性急よりも緩慢に、じっくりと重ね合わせた唇が離れた時には熱い吐息を零していた]


  ……どうしよう、キスしたらさ。
  もっと好きになってきた。


[心臓の音がどんどんと五月蠅くなっていくのがわかる。
緊張ではなく興奮で――もっとしたいとまた唇を重ねていき、少しずつ前のめりになると珊瑚の背に腕を回して抱きしめながらソファの上に二人で倒れ込む]


  その……えっと……。


[あれやこれやと頭の中で言葉が浮かんでは消えていく。
背に回していた腕を引いて、繋いでいた手を一度解いて今度は両手ともに指を絡めて握りあい珊瑚を見下ろしながら顔を真っ赤にした大和は目を閉じたり開いたりしていたが、最終的には目蓋は開いて視線を向けたままに――]


  いろいろ不安要素が多いけれど、
  僕はずっと毎日珊瑚さんと一緒にいたい、です。
  だから、結婚までも、考えてくれると嬉しい。

  やっぱり僕にとってのヘラは珊瑚さんだから。
  ずっと好きだと想っていたいんだ。


[本当は嫉妬深かったとしても危険な避難区域まで探しに来てくれたのは嬉しかったし、今もこうして支えてくれている。
大和を救ってくれたのは誰でもない珊瑚で――。
どうかなって、浪漫も何もないけれど想いはもう止まらなくて先走った言葉の返答を待つばかり**]


メモを貼った。


ーー支援活動ーー

[大和は珊瑚と一緒に病院でお手伝いをするようになった。
とは言え専門的なことはできないので荷物運びや子どもたちの相手がメインだが頼まれた仕事は精力的にこなしていった。

 一番の問題は珊瑚の父親だった。
どうしてか大和を目の敵のように見てくるのだがこれが噂の娘は嫁にやらんというやつなのだろうか。
一応大和からも正式に挨拶をして付き合っていることと将来的に結婚する旨は伝えたのだがやはりお金がないのがいけないのだろうか。

 公共交通機関の乱れも大変だ。
信号すら止まっている場所もあり道の状態の問題もあり、ガソリンの問題もって問題しかないのが災害時の道路である。
線路は広範囲で断線しているだろうし、大和が手軽に使える中ではーーそうママチャリが最速だね!
残念ながら長年愛用していた自転車は壊れてたし脱出の際に置いていくしかなかったので新しく調達することになった。
と言っても新品ではないのだが何と電動アシスト付きだった。
珊瑚を後ろに乗せて移動できるので重宝するようになった。
でもやっぱり運転できたほうがいいのかもしれないから珊瑚と相談しようと思う**]


─命くん─

「それはお母さんがね、教えてくれたから。
 それに満遍なく出来るのもすごいんだよ?
 病棟には勉強したくて我慢してる子もいるらしいから
 命くんならそう言う子達に教えてあげられるもの。
 でも、ありがとうね?」


無理してるつもりは無いし、我慢しすぎてるつもりは無いけど。
でも我慢はしてきたし無理も少し。それでも命くんがそばにいてくれるならもっと頑張れる──なんて言ったら、心配かけてしまいそうだけど。
でも隣にいてくれるから十二分に安心できて、いつもより伸び伸びと過ごせる気がしてるんだ。
私も命くんに無理はしてほしく無いからきっとお互い様なんだろうね。


でも、言葉を途切らせた私の代わりに命くんがお礼を言ってくれた。
それにも私は言葉を返さない。私も。そう返したいけど、今は目を閉じてキスを待つのに精一杯になってたから。
目蓋を下ろしたその先。
吐息が混じり合って間近に命くんの存在を感じる。やがて唇に柔らかなものが触れて、ゆっくりと触れ合わせるだけの距離からより近くを求めるように重ね合わされた。


「ん…っ。」


小さく声が漏れる。初めてのキス。
キスがこんなに幸せな気持ちになるものだって知らなかった。唇を触れ合わせているだけなのに心臓がこれでもかと高鳴って、命くんに聞こえてしまいそう。
頭の芯がジンと熱く痺れて蕩けそうになってくる。
どれくらいそうしていたんだろう。
唇が離れた時は少し名残惜しい気がしたけれど、唇にそっと指を添わせて俯いた。
本当に、キスしちゃった。大好きな人と。
その感覚の余韻につい浸ってしまう。
きっと私は耳の先まで真っ赤になっていた。
キスは甘いと言うけれど、味じゃなくて感覚で甘いと思ってしまうのがよくわかる。
大好きな人とのキスはものすごく甘いものなのだ。


「え、あっ…、ん…。」


"もっと好きに"の声に驚いて顔を上げる。
でも重ねられた唇を拒むなんてするはずが無い。
甘く受け入れて、私からも唇を押し付ける。
離れてはまたどちらからとも無く唇を寄せて、繰り返されるキスに甘く吐息をこぼしながら──とさ、と気付くと背がソファに付いていた。
唇が離れてそのまま命くんを見上げる私の眼差しは甘く蕩けて、潤んで。恥ずかしいけれど、私だって今のキスで昂ってしまった事がわかってしまうかもしれなかった。
でも背に回された手が抜けて、繋いでいた手が両手に繋ぎ直される。
もう決して離さないんだと言うような、互い違いに指先を絡めた繋ぎ方で。
そうして真っ赤な顔で目を閉じたり開いてりしている命くんを、呼吸を整えながらまっすぐに見上げていたけど。


それを言うなら、私だって救われていた。
たくさん食べてくれるのは嬉しかったし、あの寂しい誕生日を塗り替えてくれたのは命くんだ。
私の心をすくいあげて助けてくれたんだ。
でもきっともうその前から好きだった。
好きだから会う機会を増やしていって、命くんの傍にいたかったんだと思う。
私にヘラの名前は勿体無い。
だけど命くんがそう言ってくれるなら──。


「私も──ずっと、命くんと一緒にいたい、です。
 結婚も、嬉しい。
 ずっと…大好き、命くん、大好き。」


来年になったら。
せめて先に籍だけ入れるのも良いかもしれない。二人が18になったら、誰の許可も必要なくできるんだもの。
でも今はそんな法律の話だとか制度の話なんて出したりしない。
ただ、それが嬉しいと素直な気持ちを伝えて微笑んだ。
じわっと涙が滲んでくるのは嬉しいから。
繋いだ手に力を込めて命くんを見つめ続ける。


この、今の不安な情勢がいつまで続くかわからない。
だけどこの言葉があればなんだって頑張っていける。
そう、思えた。**


─お父さんの態度─

瑠璃川先生は瑠璃川先生で結婚予定の彼女がいて娘と別居予定だったんだからその態度本当やめてほしい。
そんな事を笑顔で瑠璃川先生に言ったらオロオロ後にガックリだった。
不思議ですね先生?
命くんは正式に時間を取って結婚の挨拶をしてくれたんですよ。
勿論、このお忙しい中で瑠璃川先生もお時間を取っていただいたのは…、何よ、他人行儀嫌だって?知らないよ!
まあ忙しい中だったしこんなご時世だから正式な場で、と言うのは難しかったけどね。
お父さんの仕事の合間に時間を取ってもらってのことだった。
それは感謝してる。
だけど、支援活動もしてくれてる、正式に娘と付き合ってると表明してくれてる相手に失礼じゃ無いかと。
それは分かってるそうだけど、娘の親というのは複雑らしい。
ただ、私と命くんが同い年という説明をしたからかお父さんは勘違いしている。
もう二人とも18だと。
だから結婚しようと思ったらできちゃう──のが問題なのかもしれない。
でも、二人で暮らしてるのは(この情勢が落ち着くまでと言いながらも)許可してくれてるのでそこはありがたい。
その点は命くんの家が今はもう潰れてるせいもあるんだけどね。


一応前向きに受け止めてくれてるらしい。
私たちが学生のうちは支援もしてくれるらしいけど、情勢が落ち着いたら住む場所は変える方向で説得された。
一緒に暮らして良いの?は黙殺されたから良いと言うことにしておこう。沈黙は罪です。
ただ一つ。
気持ちが真剣なのなら、いつか式を挙げて見せてほしいとお願いされた。
お母さんの式の時のヴェールが残っていて、それを譲りたいからと。
それは勿論、否定するつもりは無かったからその後に命くんにも伝えたよ。
一緒に住むことも否定はされてない、とも伝えたけど。


何はともあれ、早く平和な世界に戻ってほしいよね。
それ以降お父さんの態度は多分軟化した…はず。**


─支援活動─

病院での支援活動。私は子供たちの相手、ご老人を始めとした患者の話し相手、日本語より英語のコミュニケーションを求める人の対応が主になった。
子供達の相手は楽しいんだけどね。
ずーっとおしゃべりしてる(と言うより聞いてる)のは、地味にしんどい事なんだと実感した。
傾聴ボランティアって聞いたことあったけど、やってる事はそれに近いかな。そして、それがそもそも存在する意味もよーくよーく分かった。
だって、こんな情勢なんだもん。みんなが不安で、誰かに話を聞いてもらいたがってる。
ただ、病院に来た人みんながそれを医者相手にやっちゃうと本当に医療が必要な人に医療の手が届かなくなるから、こう言う支援も必要なのだ。
その中で私の弱点は、瑠璃川っていう珍しい苗字。
『んま〜瑠璃川先生の娘サン!』程度で終われば良いけど、息子の嫁に〜とかは本当に断り方が難しいし、人によっては何度も同じ話をループさせてくる。
そういう意味では英語対応の方が気楽。どの支援を求めれば良いのか、どの科に行けば良いのか、そんな母国語ならスムーズに手に入れられる情報を説明することが殆どだからね。


公共機関の乱れは大変だけど、私は命くんの自転車の後ろに乗せてもらってる。
『重くない?』とは思ったけど電動だから大丈夫らしい。確かにこんな時には自転車重宝するよね。
免許の話が出たら「原付…くらいだよね、まだ。」と現実的な話。
免許取っても良いけど…筆記は…なあ…と試験勉強から目を背けようとする私もセット。
原付の免許取得に筆記が必要かどうか知らないけど、どうなんだろう?
二人乗りのことも合わせて調べてみても良いかもね。**


――珊瑚さん――

[珊瑚さんは愛情深い人だ。
救ってくれたのもそうしさらっと褒め返してくれる辺り本当に好きになっていくばかりだった。
きっとお母さんのことも、忙しいっていうお父さんのことも好きなのだろうから家族愛にも深いのだろう。

 好きで、好きで、堪らないほどに好きという感情が溢れてくるばかりで珊瑚と結婚できたらきっと幸せな家庭が築けると確信を抱いてしまう程なのだ。
そうして内面から好きになっていって、同時に青い瞳や鼻筋がいいところとかも顔も好きだったのに今はキスをするのも好きになってしまった。

 キスした後、唇に指で触れる仕草にぐっときてしまう。
可愛くて仕方がない、もっとしたくなると続けた口づけも受け入れてくれて気づいたら押し倒してしまっていて、交わした視線の先にある青い瞳が潤んで蕩けているのを見るとどうにもおさまりがつかなくなっていた]


[離さないという気持ちは伝わっていただろう。
見上げてくる眼がまた好きで――]


  嬉しいな。
  今まで生きてきた中で一番うれしい。
  珊瑚さん、大好きだよ。
  一緒に幸せになろうね。


[目を細めて受け入れてくれた珊瑚に、見つめる瞳に見えるように柔らかく微笑んだ。
いつも硬い表情ばかりだったから笑うとすぐに頬が痛くなるけれどその痛みがまた心地が良かった]


[また口づけを交わしては熱い吐息を零しながら見つめ合い、大和は次第に唇以外の場所にも口づけをしていく。
耳元では『好きだよ』と囁いてから耳朶へと口づけて、
首筋では『珊瑚さんのいい香りがする』と囁いてから口づけていく。

 昂りは激しさを増していく。
手の繋がりは強く結んでいて離すことはなくて、今しばらくは口づけばかりで愛情を伝えていく。
そうしていく中でしばらくすれば手の繋がりが解けていき、もっと触れ合うことを望むように身体を抱きしめては背筋や肩に触れていくようになっていく*]


―― 先輩達からの連絡 ――

[授業が無い日も多いのに、
 あたしは忙しくしてしまっていた。
 けど、お兄ちゃんが帰ってきてくれたから
 幾らか楽になった所もあって。]


  んあっ!?
  …先輩からのLINE?
  あっ……あわ…


[数日前に貰っていたメッセージに
 そう言えば反応出来てなかった事を忘れていた。
 まだ登校日もあるからって後回しにしてたのもあった
 けど、意外とあたし達が学内で会える機会は
 訪れてくれなかった。もっとも、]
 



[先輩の方もお父さんのお手伝いをしてたりと
 学業より専念する事があったから、
 学校内で会える機会が無かったのかもしれない。

 ともあれ、数日振りの先輩だった。
 部員にまとめてじゃなく、個別にメッセージを
 送ってくれる先輩はやっぱり優しいな…なんて
 感動しながら、文面に混ざる『大和くん』という
 名前に頬が綻んでしまった。
 
 同じく数日前に貰えた報告。
 二人がちゃんと無事を確認し合えてたのが
 他人事ながらも嬉しく思えてしまった。]
 




 『先輩〜!連絡遅れてすみません!!』
 『(アヒルが慌ててるスタンプ)』
 『大和先輩の無事が確認できたの良かったです!』
 『あ』
 『あたしの方も無事でした
  窓ガラスとか割れたりして大変でしたけど、
  穴が開いたりとか倒壊とかは無かったので
  家で過ごせてます。』
 『大和先輩の家潰れちゃったんですか!?
  ええ、た、大変…避難所に行ってるんでしょうか』


[大和先輩の家が倒壊した、という内容の
 衝撃があまりにも強過ぎて
 支援の件については飛んでしまった。]
 



[大和先輩大丈夫なんだろうか…。
 と、返事が来るまでうんうん悩んで。
 けれど、もし先輩から「一緒に住んでる」なんて
 報告が来てしまったなら。
 
 あたしは肩を跳ねさせ、近状の苦しさなんて
 忘れて食い付いてしまっていたかもしれません。
 
 
 まあもしはぐらかされても、
 前後して送られてきた大和先輩のメッセージから
 『一緒にいる』なんて送られてくるので、
 二人が同棲している事はつつ抜けて
 しまうんですが。**]

 


――珊瑚のお父さんと――

[復興支援をしていく中で顔合わせをして挨拶をした後少しの間ギスギスした感じだった珊瑚のお父さんの態度が軟化していった。
話を聞くと珊瑚が説得してくれたらしい。
もしも大和がその説得を聞いていたならばそれが自分に向けられたらと想像すると涙が出てきそうになることは間違いない。

 そう言えば年齢を問われた時に17歳と答えたが年下かと間違えられたが珊瑚の年齢を間違えて覚えていることは気づけなかった。
確かに一か月年下の期間があってお姉さんっぽく振るまってくれる珊瑚はきっと可愛いのでそれはそれでとても良いと話はそれた。

 二人暮らしも認めてくれているようで結婚式はするのかと問われたのでお金ができたら勿論と答えたら、よろしい、と次の日から仕事が増えた。
でも帰る時間は一緒なので気にすることはない。
努力と根性で時間内に仕事を終わらせて一緒に夕ご飯を食べるのだから。

 珊瑚からもヴェールの話は聞いていたし、ウェディングドレスが楽しみだねと話をしていた。
ソファの前には賃貸情報誌や結婚情報誌が並ぶことになっていって、平和な世界に戻ったらやりたいことを二人で話していこう*]


――支援活動――

[大和の支援活動は肉体労働が中心なのであまり喋る機会はない。
小学校中学校くらいまでの勉強なら教えられるので勉強を見る時間もあるけれど基本的に講義をするよりは解法を教えてわからないところをわかっていくようにする。
覚えるには繰り返しやることが大切だから期間を見て反復的に教えていく以外は基本的に自習なのでやっぱりあんまり喋ることはなかった。

 何もしてないのは苦手なので待ってる間は本を読んでいるが病院なので医療系の本しかないのが難点だったが、荷物運びも勉強も子どもの相手もなんとかやっていけていた。

 時々珊瑚が困っているところを見かけると近づいていって、
『珊瑚さん、今夜も手料理を楽しみにしてます』と伝えて軽くハグしてから去っていくのだけれど顔が真っ赤なので相当恥ずかしがっていることは気づかれているだろう。
それで珊瑚の負担が減るなら大和は頑張れるのだ]


[自転車の後ろに珊瑚を乗せているけれど大和は重さを気にしたことがなかった]


  『ううん、むしろ珊瑚さんが居る幸せを感じる』


[って答えているくらいだ。
電動アシストはとても楽で便利なものだった。
原付はそれ以上に便利だろうけれど問題は免許交付所に行くタイミングだった。
場所が限られているし結構遠い気がする。
学科試験と講習を受けないといけないので一日仕事になるからすぐには難しそうで落ち着いたら車の免許の方が早いかもしれないくらいだった。
それも教習所に行かないといけないのだけれどとソファの前に並ぶ情報誌が増えていくわけである。

 ところでソファに座る際も段々と距離が近づいていて、最初は肩を並べて座っていたけれど今は脚の間に珊瑚に座ってもらっていたり、膝の上だったり、横になっているときはそれこそくっ付いていたりする距離感だったりする。
まだまだ暑いけれど珊瑚の温もりは別だから大和は積極的に触れ合っていっている**]


─命くん─

「うん…私も、今まで生きてきた中で
 今が一番嬉しいよ、命くん。
 ずっと、ずっと大好き…。」


気持ちを重ね合わせながら、一緒にという言葉に頷く。
ずっと一緒に。ずっと、いつまでも。
今まで生きてきた中で今日が一番嬉しい日だけど、一緒に過ごしていく中で一番嬉しい日がもっともっと増えていけばいい。
大好き。その言葉が胸に沁みて言葉が詰まってしまいそうになるけど、それでも同じかそれ以上の気持ちを伝えたくて言葉を重ねていく。
浮かべた微笑みは可愛らしいけどほんの少しぎこちなくて、いつかもっと微笑む日が増えてくれたらと願う。
そして、微笑みを増やすのが私であればと願いは更に増えていってしまうけれど、それだけ彼と一緒に生きていきたいと願ったから。


「ん、ふぁ…っ?」


両手を繋ぎ合わせながら、言葉以上に唇を重ね合わせていく。
その中で耳たぶに甘い囁きと共にキスされるとひくんと肩が跳ねた。
唇が塞がれてない分、擽ったさから変に高い声が漏れる。
首筋にも口付けられて、いい香りなんて言われるとなんだか妙に恥ずかしくて首元まで赤くなってしまったけど、キスが優しくて振り払う事はない。


「ぁ… 命くん…?」


手のつながりが解けて抱きしめられると、ほんの少し身じろぎした。
背筋を撫でられ、肩に触れられて。私の形を確かめるような手つきと自分とは違うその手の硬さにまた緊張してしまう。
正直、家に来てって言った時にはここまで考えていなかった。
無事を喜んで、一緒にいたいと願って、これからも一緒だねって。
何よりも命くんが無事である事に感謝していた。
でも、じゃあ何も期待してなかったかと言えば嘘になる。
まさかファーストキスに止まらず、プロポーズに至るとは思ってなかったけれどそれだっていつかはと夢見た事。

じっと命くんを見上げる。
ほんの少し眉を下げた、困ったような顔で。
けれど期待に満ちた潤む瞳で。


「…あの。 電気…消さない?」


だから、緊張にかすれる小さな声でそんな事を言うことになった。
この続きを、想像してしまえたから。
そして望んでもいたから。*


─七尾ちゃん─

まあ、学校は今となってはバッキバキやで!状態らしいので、授業とか講義とかどうなるんだろうねえ…な私なんだけど。
登校日とかあるって事は、もしかしたら無事な箇所があったのかそれとも青空教室とか別の施設を借りてやってるのかも。
やっぱり情報網が大混乱だよね。そういう情報はこちらには回ってきてなかったみたいだし。

ともあれ七尾ちゃんからの連絡にホッとした。
その中で命くんの安否が書いてあったから、返事をしようとしてちょっと首を捻って悩む。
もう今となっては隠すようなことではないし。


『大和くんとは今、一緒に住んでるよ。
 とにかく七尾ちゃんが無事でよかった。』
『(嬉しい、とニコニコするケサランパサラン)』
『窓ガラス大変だったね。今はもう塞いでる?
 段ボールとかで一時凌ぎできるって聞いたけど
 虫除けにはミントが良いって聞くよ!』
『(大丈夫?と心配するケサランパサラン)』


どうしてもこの季節、蚊をはじめとした虫の被害が気になるところ。
虫除けとか蚊取り線香とか、そもそも早く窓が塞がると良いなと願ってはいる。
けど流石にそれはなんとも…!
『何かあったら遠慮なく相談してね』
とは伝えておこう!*


─支援活動とか─

その効果は絶大でした(棒読み)。

辺りに「んまぁああっ!」とか「きゃっ♡」とか「あらあら!」なんて声が飛び交う中、された私は真っ赤になって機能停止。
両手で顔を覆って恥ずかしがってたりしたけど命くんはその後大丈夫だったかな?
なお私はおばさまがたの良いおもちゃ…ううん、「若い人は良いわね〜!!!」を全身に浴びることになりました。
まあ、恋人いたのね!とか、お父様はご存知かしら!からの、うちの嫁に〜が無くなったのは良かったんだけどね!
そっちはそっちで揶揄われてないか心配です。
命くんも相当恥ずかしがってたみたいだし…。
後にちびっ子たちが同じセリフを言いながらぎゅーしてたのでさらに心配です。
う、嬉しかったけどぉ…!
あとちょっとお父さんにも飛び火したみたいだった。まあ仕方ないよね!


家ではソファの前に情報誌が増えている。
更に専門学校の本とか資格の本がひっそりと増えてたりする。
こんな日々だからこそ、未来のことを考えるのは楽しいし生きる糧になるよね。
私も前向きに専門学校の事は考えるようになった。
でも、調理系じゃない。そしていま二択でちょっと迷ってるところだったりする。
理容師と美容師。気持ちは、理容師に若干傾いてるけど。
ただどちらも突発的に思った事だから、まだ自分の気持ちは固まってない。
そんな事は、多分話してなくても命くんには伝わってると思う。
なぜなら触れ合いながら座ってることが多いから。
聞かれたら答えるし、そうでなくてもくっついてる。
私のお気に入りは膝の間に座ること。
そんな姿勢で本や新聞を読んでるから、色々伝わることもあると思う。テレビを見てる時もそうだなあ。
ただこの姿勢の困る事は、直ぐにキスしたくなる事だよね。
真面目に勉強する時は(限りなく少ない時間なんだけど)ちゃんと対面か距離を置いて座って机に向かうのが一番見たい。*


――珊瑚さん――

珊瑚の言葉が嬉しすぎて涙が出そうだ。
既に目元から頬に流れる熱いものがあったがきっと雨漏りだろう。
恋も愛も知らなかった大和にそれを教えてくれる珊瑚は本当に掛け替えのない存在で、決して喪ってはならない存在だと思い知る。

 言葉を重ねるほどに言葉の甘みが増していく。
口づけも香りも甘く感じるのは頭がそう感じているだろう]


  珊瑚さんの声、好きだよ。
  甘くて切ない響きがする。


肩を跳ねさせるのもとても可愛い。
高くなる声にもっととキスを強請ってしまう。
最初は元気な姿が見れてそれで良かったのに一緒にいればいるだけどんどん幸せになっていって、欲が段々と深まっていってしまう。
本当はもっとロマンチックな舞台の方が良かったはずなのに、生命の危機に触れたということもあって歯止めが利きにくく――]


  ……うん。僕は見ていたいけど。
  消そうか――珊瑚さんが可愛すぎて困る。


嫌だったら言ってほしいけれどそんな表情を見ると、余計に誘われているようで――。

 リモンコンで電灯を消灯すると部屋は一気に暗くなったけれど窓から差し込む月の灯りが淡く珊瑚を照らしてくれている。
掠れる声が消えるようにまた唇を重ねて求めていく。
『大丈夫?』と問いかけながら少しずつ肌に触れ、身を包む衣を乱していく。

 暗がりの中での営みはゆるやかに熱を昂らせながら続いていった*]


―― 三度目の襲来から六日目の夜 ――

[あの怪物があたし達の街近辺に現れる間隔は
 比較的短くて。平均して一週間前後で
 起きてたように思う。
 
 だから、もしまた来るのなら。
 …昨日から、おとといから、
 ざわざわと胸の内に不安を飼っていた。


   今度もしまたこの街に現れたのなら。
   …………考えたくないのに、
   考えてしまって夜に何度も目を覚ました。]
 



[ようやく電力が復旧してきたけど、
 安定供給まで行くにはもう少しかかるらしくて。
 部屋の電気は夜の早いうちから消すようにしていた。
 だから、外からの光が窓から良く入ってきて。

 いつの間にか夏休みは終わって、
 残暑すらこの街から逃げ出してしまった様に
 夜は涼しく過ごしやすくなっていた。

 遠くで鳴く虫の声は災害後と変わりなく思う。
 …虫は、変わらないんだな。なんて
 ぼんやりと考えながら、ふと
 窓の方へと身を寄せる。]
 



[教室からクラスメートの半分くらいがいなくなった。

 街から避難したり転校したり
 被災したり、…しんでしまったり。
 精神的に参ってしまって、だったり
 その理由は色々だったけど。
 残ってる人も皆、表情は一様に暗かった。

 あたしと同じように、
 これからどうなるんだろうって
 不安が何処かしら顔に浮かんでいて。
 本当に…教室は様変わりしてしまって見えた。


 せめてもう、こんな事は起こらないで欲しい。
 心の中で何度も祈っているけれど、
 ……きっとまた何か、起こってしまうんだろうって
 そんな予感めいたものも感じてしまっていた。]
 




[窓の外を見つめる。
 四階からの景色でも、街の様子は変わって見えた。
 一週間も経ったから大通りだとかは舗装されてきた
 けど、民家や住宅にはまだ爪痕が残っていて。

 窓のへりに頬杖を付きながら
 ただただぼんやり眺めてしまった。
 もし、今度はうちがああなってしまったら… ――― ]

 



[ぶんぶんと頭を振って嫌な想像を追い払う。
 溜息を吐きながら今度は目線を上げた。
 そこに広がるのは秋の夜空。

 きらきらと輝く星は、
 前に部屋から見上げた時よりも
 うんと数を増やしている様に見えた。

 …多分、街の明かりが減った?から?かな。


 それとも]
 




   ………空に昇っちゃったから、かな。

 



[暫く眺めてから窓を離れて。
 ベッドに倒れ込めば、頭から布団を被った。
 
 そのうち暑くなって手足とか出しちゃうけど、
 観念したように眠りに落ちていって。
 
 ……やっぱり何度か目を覚ましちゃうのだけど、
 それでも。その日の夜は静かに
 更けていった。**]


 


――支援活動は続く――

おばさまたちへの効果は絶大?

 それを言った大和もおばさまたちの反応でこうかはばつぐんなダメージを受けていた。
珊瑚が真っ赤になって両手で顔を覆ってしまったりしてたけれどそこで大和がそんな行動をしていたら怪しまれるだろうと頑張って耐えていたが顔は耳まで真っ赤だった。
でもそれで他の男の気配が珊瑚に近づかなくなったならそれで良かった。
珊瑚は自分の嫁だとほぼ公言した形ではあるが――ごめん、独占欲が強かったんだ。

 その後、お義父さん絞られたけど、しかもまだお義父さんじゃないって言われたが何れはそうなるので心の準備だけしていってほしい。
過労と心労で倒れないかだけが心配だった。
あと仕事量がまた少し増えたのもあったが大した問題ではなかった]


情報誌が増えていく中で専門学校の本が増えているのは珊瑚が志望を本格的に考えているからだろう。
最初は調理系かと思ったけれど見ている情報誌と話を聞いていると理容師と美容師のどちらか迷っているようだった。
どちらも出来る範囲は定まっているが理容師のほうが若干難しいらしい。
ある時情報誌にダブルライセンスなるコースがあって通常二年かかるところを三年で両方の受験資格を得られるようになるらしいけれど、最終的には珊瑚がどうしてその道に行きたいのかとか将来何をやりたいのとかで変わると想うので適時話を聞いたりしていくつもりだった。

 珊瑚のそうした情報誌と共に大和のは建築系の仕事についての本が多かった。
将来平和になったら街の復興が始まるしその時に珊瑚と一緒に住む街を作ったり住む家を設計したりしたいのだけど結構難関なので悩んでいる]


[膝の間に座る珊瑚を後ろから抱きしめて肩から覗き込んで一緒の本を読むのだけれど読む速度は珊瑚に委ねている。
新聞もそうだしテレビの時は反対に大和が背もたれ代わりになっている。
引っ付いていると幸せだった。
珊瑚はわりと頻繁にキスを求めてくれるし大和もしたいから、珊瑚が振り向いたらそれは珊瑚がキスしたいという合図だと思っていて、大和は耳朶や首筋にキスをして強請るのだけれどまたすぐに身体を重ねたくなってしまうのは難点と言えば難点だろう。

 真面目に勉強する時もあるし対面に座る時も距離を置くときもあるけれど気づいたら手を伸ばして手を繋いでいるし最初からくっついている方がまだ効率的かもしれない。
やるときに集中していればいいんだよ、多分。

 ところでくっついている関係でこれも自然にだけれど一緒に寝るようになった。
毎日じゃないけれど腕の中に珊瑚を抱いてソファの上で寝るのは気持ちがいい*]


メモを貼った。


メモを貼った。


─命くん─

目元に光るものがあったから、その溢れる先に唇を寄せた。
ほんのり海の味がして、ああ、生きてるんだなってなんだか嬉しくなる。
でもそう。最初は無事を喜び合うだけで十分だと思っていた。
でも、好きな人とこうして隣り合って、触れ合って、想いを伝えるだけじゃ飽き足らない。
そんな私の欲深さを思い知る事になる。
それに──。


「…そ、ゆ、こと、言われると…恥ずかしい…。」


ゆるく拳を握って口元を隠してしまう。
そんな甘い声、出してた?
だけどいま、もっと命くんに触れてもらいたい。
お互い生きてる事を確認し合いたいし、もっと甘えたい。甘えて欲しい。もっと沢山キスがしたくて──命くんのしたい事全部受け止めたい。
ロマンチックさとはかけ離れてるかもしれないけど、思えばあの危機から逃れた事自体がロマンなのだと思う。
危機から脱した果てに再会した二人なのだから、もうそれ自体がロマンの果て…なのかも。


此方のことを気にしてくれる優しさに小さく頷きながら、甘い囀りを溢していく。
恥ずかしいけれど嬉しくて、自分の体が全く知らない反応をする事に、自分の口から聞いたこともないような甘えた声が漏れる事にも驚いて。
とても甘くて、幸せな痛みがある事も知った。
──医者の娘として一つだけ懺悔するとするなら、流石にこの事態を想定してなかったから、命くんが持ってなかったらそのまま…したかもしれない事だけど。

翌朝、再び顔を見合わせた時。
色々思い出して真っ赤になってしまう私は、きっとこの災難の中でいちばんの幸せ者なのだと思えた。*


─支援活動とか─

お父さんはほっとけば良いと思うよ!
命くんに仕事任せすぎ!…とは思うけど、それだけ認めてくれてるって事なら…でもねえ?
ちなみにお父さんの彼女さんは看護師の方だった。成り行きで知る事になったけど、だいぶ若い人だったからまあ17の娘がいたら嫌だよねえ…と何だか納得しちゃった。
もちろん、それでも良い!って燃え上がる人もいるだろうけどさ。
今となってはそれで良いかもって思ちゃう不思議。
自分が幸せで満たされてると他のことを考える余裕も出てくるんだなって思てしまった。

でも不安な日々は続いてもいる。
いつになったら、ロボットの襲来は終わりを迎えるのだろう。
若しかしたらまた街が潰されるかも。
今度は自分たちの家が。病院が。ううん、もっと被害は拡大して世界滅亡…?
そんなことを考えちゃう時は、命くんにぴったりくっついてる。
特にそんな事を考えちゃうのは夜が多いよね。
暗い時間帯、いつ何かが消えてもおかしくない。
そんな不安に駆られて命くんの寝ているところに潜り込んでは安心してる。逆のことがあってももちろんおいでってするけど、命くんは大丈夫なのかな?

…命くん依存症かも。なーんてね?


「災害支援で活動してる理容師さんたち見たの。
 髪の毛整えたり、髭を剃ってあげたりして
 身だしなみを整えてあげてたんだ。」


ある日、私はそんなふうにどうしてそれを目指そうと思ったのか告白し始めた。


「確かに利用者さん、さっぱり気持ちよさそうでね。
 災害時だけじゃなくて要介護の人に
 訪問理容室したりもしてるらしくて。
 こういう仕事カッコいいな〜と思ったけど
 圧倒的に男性の利用者が多い分野だし
 普段の仕事なら美容師さんの方が良いけど
 そうなると、剃刀を扱えないから…。」


髭を整えてもらってさっぱりした利用者さんの姿は印象的だった。
でも、小さい子の髪の毛を器用に編み込んであげてる美容師さんも素敵だった。
ダブルライセンスコースもあるとは聞いたけど私の頭の方が心配になる。


むーん…と、襲撃の起きてない平和な日に悩むけど。


「…理容師さんなら、命くんの髭だって
 整えてあげられるんだよなー、なんて。
 頑張ってダブルライセンスコース狙おうかなあ…?」


どちらもできるならそれも良いと思うし、あとは私の頑張り次第だろう。
本来なら災害時のことを念頭に仕事を考えたりしないから、普段の仕事も考えないといけないよね。
でもそういえば、命くんは建築系の進路に進むのかな?
もし難しいから悩んでると聞いたなら、頭とか勉強とかじゃ私は役立たずだけど。


「資格合格したら、私がなんでも
 いうこと聞いてあげるとか? なーんて!」


なんて、そんなことを言って笑ったりもした。
割と本気だけどね!


それにしても、離れていれば触れたくなるし、触れたらより触れたくなって繋がりたくなる時もしばしば。
ちょっと私は七夕物語を思い出していたりする。
…一年引き剥がされたくないけど、それだけくっついていたい恋人同士の気持ちもわかる。
だからこそ、ちゃんとやるべき事をやってからを心掛けよう。*


メモを貼った。


メモを貼った。


――珊瑚さん――

目元に珊瑚さんの唇が触れると一瞬何があったのかと止まってしまう。
目を見開いて唇を見つめていると透明な雫が浮かんでいてするりと唇の狭間に消えていくと一息に顔の赤さが増してしまう。
そういうことされると恥ずかしいと感じてしまったが今度は逆に大和が恥ずかしいことをした時の仕草が可愛すぎて自分がされてもいいかなと受け入れることにした。
ほら、恥ずかしいって言ったらお互い止めないといけなくなるのは嫌だったし]


  本当に、もっと聞きたくなるくらい、可愛い。
  可愛いすぎて、愛おしくて堪らなくない。


[もっと触れたい、触れ合いたい。
生きていることを確かめ合うように触れ合って、鼓動の音を確かめあい、吐息の音を重ねて甘え合う]


[電灯を消したことでそれがより感じられるのだから消してよかったと想う。
それに月灯りが少し強くなってこれまで陰になっていたところが次第に見えていくのも昂る要因の一つだったからもう最後まで止まることもなかった。

 まだ未成年だから、だからこそ必要だったはずのものは持っていなかったけれどそのままして――抑えが効かないものだから疲れて二人して寝てしまうまで身体を重ねていたので次からは用意しようとソファの近くには配備するようになった。

 翌朝に目があった瞬間は珊瑚が真っ赤になって可愛かったけれど大和もまた顔を真っ赤にして、あ、とか、う、とか言いながら頬を掻いていたのは最初だけで――結局少ししてから珊瑚を抱きしめて『おはよう、好きだよ』って囁いて朝のキスをしていたのだから相当に幸せ者と言えただろう*]


――支援活動とか――

[珊瑚のお父さんは再婚するらしいと知ったのは少ししてからだったか。
看護師の人らしいけれど同棲拒否とか女の人の心はよくわからないのであまり深くかかわらないことにした。
珊瑚は納得しているようだったし大和が何かをいうところではないだろう。
それに珊瑚は自分が幸せにするんだし大丈夫とか思っている。

 珊瑚は不安になるとぴったりくっついてくる。
夜におやすみなさいってキスをしてからソファに潜り込んだ後、気づいたら珊瑚がやってくることがあった。
その時はソファの背もたれ側に珊瑚をよいしょと運んで落ちないようにして身体を抱きしめて、眠りにつけるまで一緒に起きていることにしていた。
逆に大和が不安なときはソファで寛いだ状態から離さないのでお邪魔することはしなかっただろう。
日中動き回っている大和は元より夜は恐ろしく寝付きがいいので横になったらすぐ寝てしまうから不安になるのはまだ二人でいる間なのだ]


  そっか、それなら理容師さんの方だね。
  剃刀とかって使いまわしたりしないんだよ。
  失敗して肌を切ったら血が出るからね。


男性は髭を剃るけれどあれも使いまわししないしきっと取り扱いは大変なのだろう。
身体が不自由していると剃るのも大変だしそもそも道具がないと剃れないし、水場とかの問題もある。
水は貴重だから伸ばしっぱなしの人も多い。

 話を聞くに珊瑚はやっぱり優しい人だと感じる。
愛情深く、そんな珊瑚と恋をして、愛を育んでいけていることの幸せを噛みしめれれる。

 小さい子の髪の毛を編む方は美容師の役目らしく、確かネイルとかもそっちだった気がする。
どちらが偉いとかはないけど業務が別れているってイメージになっていた]


  それは……剃ってもらいたい、かな。
  でも僕は髭はそんなに濃くないけど……眉かな。


[ほら、キリリってしすぎてて怖くないかな。
もう少し優し気なほうがいいのかなとかは思ってしまう]


  んー……夢があるなら欲張っていいと思う。
  その分勉強は大変だけどさ。
  僕も手伝うし応援するよ。


[それに卒業はまだ先だし襲撃がなくなれば落ち着いてきて進学を考えることもできるようになるのも夢ではなくなるのだし]


  えっ、なんでも?
  それじゃあ僕も……珊瑚さんが一つ資格を取るごとに、
  一つずつお願いを聞いてあげることにする。

  約束しようね。


[そこは『なんでも』の魔力で嬉々として小指を結んで指切りしてしまう速さがあった。
難しいけれど向かってしまおうと思う。
単純だがすごく頑張れる気がしてやる気に満ち溢れていた。

 支援活動も、勉強も、しっかりとやっていこう。
同時に珊瑚との蜜月も――うっかりデキてしまわないように気を付けないといけない*]


――二度あることは三度あり、三度あることは四度ある――

[そんな幸せな日々を過ごしていたのだが襲撃は再び訪れた。
ここまで襲撃が重なるとこの街は忌避される街になってしまうかもしれない。

 出現したロボットはやっぱり二体いて――]
あれから三日しか経過していないのに再び訪れる厄災に人々は狼狽え逃げ惑い始めていく。
避難開始の合図も早く誘導も確実に早くなっているが、出現した位置が前回安全だった場所に食い込んでいることが懸念事項だった。

 せめて前回崩壊した位置ならまだ良かったのに――]


  はい、みんな!


[出現したのは前回と同じくらいの時間帯なら支援活動で病院に居る時間帯だった。

 大和は手を叩いて勉強を教えていた子の注意を引く]


  避難誘導に従って逃げるよ。
  教えたことは覚えてるね?
  お、は、し、だよ。

  押さない、走らない、喋らない――。

  よしっ、ヘルメットを被って。
  逃げるよ!


前回みたいにすぐに動き出すことはないようでそこは助かる。
丁度珊瑚も一緒に子どもたちの相手をしている時間だったし、今度は離れ離れにならなくて済みそうだった。

 子どもたちがヘルメットを被っている間に大和は珊瑚に近づいて身体を抱きしめた]


  大丈夫、僕がきっと守るから。
  珊瑚さんもヘルメット被って逃げよう。
  皆も逃げているさ。
  七尾のところがちょっと心配だけどね……。


[そう伝えて、かぽって白猫耳なヘルメットを被せてあげた。
やっぱり可愛いかった。

 珊瑚が動けるなら二人で子どもたちを避難させていこう。
勉強を教えている子は移動させても大丈夫な子で、重篤な子はもう既に他の街に転院したりしているのでここには残ってはいない。
三日しかないが三日あれば移送も進んでいるものだ。
何せ被害があるのはこの街一帯だけで周辺の街は無事なのだから医療連携は取れている。はず。
そこはお義父さんが頑張ってくれているだろう。

 ちなみに子どもたちのヘルメットもデコレ仕様なので小さな動物たちがカルガモの親子のように移動している感じだが先頭の大和はクマの耳がついていたりする。
珊瑚と一緒に子どもたちを一時的な避難場所まで誘導し終わってから見上げる二体の怪獣は――片方はハートマークでどこかファンシーな玩具みたいなように感じられた**]


メモを貼った。


―― 四度目の襲来 ――

[その予感は奇しくも当たってしまった。
 ………今度は、どれ程の被害が
 出てしまうのだろうか。]
 

 



[七尾の自宅は学校からそう遠くない。
 徒歩で2、30分かかるくらいの近郊で、
 偏差値が丁度良く制服も可愛いから、みたいな
 特に大事でもない要素から其処を選んでいた。

   特段やりたい事もなかったし。
   強いて言うなら部活動が豊富だったから、
   というのも理由の一つだったかもしれない。
   自分の肌に合う部活があれば…って。

 そんな高校周辺に…
 ――― 七尾の自宅近くに、
           あの怪物はまた出現した。


 万一の時にと備えてあった荷物を抱え、
 兄の車に乗車し街からの脱出を試みた。]
 



[人口が減ったからか、そして避難経路は
 舗装や整備が優先的に行われていたからか
 比較的車での移動も速度を出せた。
 
 向かうのは父の病院がある街、だけど。
 ………車の中から高校の方角を見遣る。
 黒い、大きな怪物。
 在り得ない高さのそれを、七尾千映は。]


  ……………悪魔……っ


[そう憎々しげに睨み、呼称していた。]
 



[軍部に情報が隠されていたとしても
 連日テレビ番組で、SNSで、あの怪物の事は
 取り上げられ。その中には『地球を守る使者』なんて
 説も飛び出したりしている。

 だけど、七尾千映には
 とてもそうには思えなかった。

 街に住まう人間だからこそ強く、
 何も知らないからこそ慮る事由も無く、
 憎むべき対象としてしかそれを認識できない。


   …せめて、]
 



[せめて今度の被害は少なく済みますよう。

 前に向き直り、ぎゅっと目を閉じ。
 膝で拳を強く握りながら。
 ただそれだけを
 祈りはして。

 **]
 


メモを貼った。


─平和な日々─

そう言えば命くんとは沢山キスしてる。
毎日のおはようとおやすみ、その間にも何回も。
最初の頃こそ照れ臭かったけれど挨拶のキスは二人だけの時には普通になっていたし、それ以外でもしたい時にはそれとなく近付いて…ほっぺたや唇にチュッ、て。
それだけでも凄く幸せな気分になるから、こう言うのはこれからも続けていきたいなあ。
きっとお父さんと彼女さんもそうなんだろうと思う。
こういうの、年頃の娘には見せたくないだろうし私もお父さんに見られたくないもん。
そういう意味でも理解ができて寛大な心になる。
もしかしたら再婚のこと、今まで我慢させてきたのかもしれないしね。

それとは別の話で、進路のことも考え始めた。
やっぱり両方できるように頑張りたい。
美容師なら着付けとかも習うだろうから、成人式には着物…なんてね?
って、そう言えば成人式って何歳で出席なんだろう。前の成人は二十歳だったけど。十八ならまだ専門生じゃないよね、と気付いてみたり。


「顔の産毛剃りもやるみたいだから、
 その時に眉毛を整えたりするみたい。
 ふふ、確かに命くんはお髭濃くないよね。
 眉毛がキリッとしててかっこいいの。」


手を伸ばして、ぺたぺた顎周りを触ってみる。
一応生えてるんだろうけど、今はわかんないなあ。
応援するって言ってくれたから、ありがと、ってまた頬にキスして。


「うん、…えー、私は良いんだけど。
 でも、うん。約束ね?
 その時はなんでも、お互いにね!」


ちょっと勢いに驚いたけど、私のいうことも聞いてくれるっていうなら頑張っちゃおう!
えへへ、と照れ笑いしながら指切りして、苦手な勉強も頑張ろうと決意し始めていた。
本当、命くんは私が元気に鳴るやり方が上手。
多分命くんのお願いなら私なんでも聞いちゃう気がするんだけどね。
ああでも、子供は…うん。
ちゃんと結婚してからが良いと思うんだ。
だからそれは、うっかりお父さんがやってきた時にバレないようにしてソファの横と、私の枕元にあったり…する。
こ、こっちは念のため!念の為!
つい予備とか買う癖があるからだし、それにはお父さん関係の所から融通とか一切してないからちゃんと買ってるし!

──子供はいつか授かったら嬉しいけど。
ちゃんと育てられる時になってから、欲しいもんね?**


─四度目の襲来─

「Everyone has to go to the emergency shelter.
 Please follow him! It’s this way.」


四度目の襲来時、まだロボットは動き始めていないようだったけれど私たちは避難を開始していた。
命くんが子供たちを誘導してくれる。
私は日本語が母国語じゃない人たちのために英語で声をかけ始めた。
子供達の中にも日本語では分からない子たちもいるからね。
でも命くんが近くにいてくれる時でよかった。
それに重篤な子たちは移送が済んで他のも大きい。私たちの避難誘導でなんとかなるレベルの子達だからだ。
でも、それでも入院が必要な子たちでもある。
必要以上に不安にさせないよう、此方は必要以上に不安な顔を見せないようにしないと。
そんな緊張感があった中、命くんが抱きしめてくれたから私も一度ぎゅっと抱きついた。
普段なら恥ずかしくなったり周りから冷やかされたりの行動だけど、こんな時はみんなもそう冷やかすこともないし、わたしもむしろ落ち着ける。


「うん、大丈夫。一緒に避難しよう!
 七尾ちゃんもだし、他のみんなもだけど…。
 とにかく今できることしないと!」


命くんがヘルメットを被せてくれた。七尾ちゃんと選んだ白猫のヘルメット。
七尾ちゃんも活用してくれてるかな。
でもちょっと動揺を抑えられたわたしはニコッと笑って命くんと子供達を誘導し始める。
わたしの方は簡単な英語メインでね。
そのうち子供達だけじゃなくて英語を聞きたい人たちも集まってくるだろうけど、ここの集まりは子供メインで移動している。
なのでこの一角はかなりヘルメットが可愛いんだけど、それは周りにも良い効果だったみたい。
小さい子たちが避難しているのは胸を痛める現場でもあるけど、可愛いは正義。可愛いは癒しなんだから!

それにしても、無事に避難誘導を終えた後に見たロボットは──。


「ああいう土偶居た気がする…?」


いやそれとは違う気がするけど。
あれはどんな動きをしてくるんだろう。
今度は、どんな被害が出てしまうのか。**


メモを貼った。


─ロボットの呼ばれ方─

そう言えば、あのロボット。特に毎回出現するあのロボットはなんで呼ばれていただろう。
小児科界隈の子供達の中では、アレは「コーラ」と呼ばれている。
ロボットが暴れているのを直接かテレビかで見て、小さな子が「コラーッ!」とそれに向けて怒ったのが、何となくアレに向けてみんなが怒るようになり、けれどコラーだと叱る時や注意する時と被るから、コーラと形を変えたらしい。
PやCから始まる飲料関係の皆様はすいません。
でもほら、世間一般的には違うかもしれないし。

でも、わたしの中ではアレはコーラで定着しつつある。
本当にコラッ!だもの。いや、それじゃ気が済まない。

何であんなのがこの街に現れるようになったのかな?
何で、私達の街が犠牲になっているんだろう。**


――平和な日々――

[キスの回数は数えてはいないけれど、たくさんと言えるくらいはしている。
大和は今でも照れ臭そうにするときがあるけれどそれは珊瑚からしてもらうときの話。
自分からするときは積極的だった。
病院でのお仕事中も二人きりになるとキスしてるくらい、秘密の幸せの儀式みたいな感じでこっそりすることがドキドキする。

 進路のことは大学を目指すならもう勉強しないといけない時期で大和は目指す大学をある程度絞っていた。
今は珊瑚が目指す学校が決まるまで待っている。
一緒に暮らすことはもう決定事項だから焦りはなくて少しずつ勉強していくだけだ。

 両方頑張るなら一緒に頑張りたい。
専門学校に入学するのは難しくなさそうだが国家試験という字面だけで難しそうな試験があるので応援とお手伝いをしていきたい]


  うっ、うっ、にゅ。
  珊瑚さんは目が綺麗で鼻筋立ってて可愛いよ。
  僕はとても好き。


[頬周りを触られると照れてしまう。
産毛反りとか眉毛を整えるのとかいつでも練習台になるつもりであるがかっこいいとまで言われると目を瞑って赤くなって、お返しにと大和が珊瑚の好きなところを挙げていく。

 キスはもう、とても好きだからいくらでも受けたい。
約束も交わしたしなんでもの内容はゆっくり考えたい。
珊瑚のお願いもちゃんと頑張るつもりだ。
きっと喜んでくれるだろうから頑張れるって活力がわいてくる]


[ところで懸念は最初のときに使ってなかったことであれでできてたら――それはそれで嬉しいのだけれど。
とりあえずちゃんと婚姻届けを出して結婚して少し落ち着いてからがいいと思っている。
そこの想いは確かめなくてもきっと一緒だと思う。
大和は自分の親のことがあるからしっかりと子どもを育てたい。
そうやって一緒に育てたいと思える相手に出会えたことが最大の幸せなのかもしれない。

 ソファの横は知ってるけど珊瑚の部屋の枕元は実はまだ知らなかったりする。
その内珊瑚の部屋に入って珊瑚のベッドで――となった時に役立つのだろう。
今は大和が珊瑚の部屋に入ることを恥ずかしがっていたりする。
何せ珊瑚の部屋は正真正銘珊瑚の香りしかしないから落ち着かない。
すごくドキドキして仕方がないのだ。
好きな人の匂いっていうのはとても昂ってしまう*]


――四度目の襲来――

[前回の襲撃で家を撃破されてから珊瑚の家に居ついて病院でのお手伝いをしているけれど、その前までは復興支援をしていた。
二度目の襲撃後は特にというか建物をどうこうできる時間はなくて主に道路の整備は補装をしていた。
一日あれば大体土の道はできるし三日あればアスファルトで補装が終わるのだから道を作る技術はとても高い。
道が出来たらそれから瓦礫を端から少しずつ片していって整地してといくはずだったところに三度目の襲撃があったけれどやっぱり道は最優先だったから周辺からどんどんと避難してくる車がやってきていた。

 病院の駐車場では怪我の程度でトリアージが行われてほぼ何もない人はそのまま街の外へ逃げるように促されるだろう。
何せ非常事態である。
緊急性がないならばこの場に残ることの方が危ないしシェルターも人数制限がある。
逃げれる者は距離と取るのが正解というのは三度目の襲撃でわかったはずだ。
地下すらもあんまり安全ではないらしい。
それに街の外ではちゃんと受け入れ準備も整っているはずだ。]


珊瑚が英語で呼びかけてくれるから大和は先導に専念することができた。
一次避難場所からシェルターに逃げ込んでいくのを誘導していこう。
建物の中よりも外、外よりもシェルターの中が安全なはずだ。
幸いロボットは未だどちらも動いてはいない。
珊瑚のいうとおりできることをしていくしかなかった。
泣く子をあやして安全なシェルターに入っていってもらう。
入院患者さんたちも次々と運び込まれていく]


  ……土偶、たしかに土偶っぽい。
  で、なんかあのハートマークからビームが出そう。
  足元キャタピラーだし戦車だよね、あれ。


[機動性が低く撃ちあいになるなら地上はなおのこと危険そうである。
射程外まで逃げるか――どこまで射程内か知らないが。
SFではビームは大気中では減衰するし直線に飛ぶから地球の面に添って飛んだりしないのだがあのロボットたちはわからない]


  珊瑚さん、病院内の収容もうすぐ終わりそうだって!
  お義父さんたちももう来るみたい。
  あとは街から来る人たちだけだよ。


[今度はちゃんと避難が完了した。
少なくとも出来る範囲では、だ。
だから願うならば人知を超えた被害がでないことを祈っている。

 街から逃げてくる人がいたら対応しないといけないから逃げ込むのは最後の最後になるだろうか*]


――ロボットの名称――

小児科界隈の子どもたちはアレを『コーラ』と呼んでいるらしいというのは珊瑚から聞いた情報だった。
それを聞いて合点がいったのは『コーラ』1号とか2号とか量産されたロボになったやんちゃな子に敵役として戦いを挑まれたりするからだった。
なるほど、大和は敵のロボットらしいってそれを聞いた大和は笑っていた。

 子どもの相手は大変だけれど楽しい面もある。
発想が自由なので面白いのだけれど残念ながら人間は上半身と下半身は分離できないのでそれは諦めたほうがいいと思った。

 大和は三度目の襲撃時の記憶がないのだけれど、どうも星座を生み出していたとかいう話もあるし『ステラ』か『アストロ』とかどうなんだろうって話したりもする]


  ところであれのビームがハートマークだと、
  何か好き好き大好きラブラブ号とか名前ついてそうだね。


[って土偶っぽい方を指さすが実は毎回出現するロボットの方がそんな名前の可能性だってある*]


─四度目の襲来─

「ビーム…。」


確かに、あれは今までの取っ組み合い?の格闘戦のようなものではない気がする。
確かコーラ(子供達命名)もビームは使っていたけれど…アレはより遠距離型のような気がする。
でも、遠距離?だとしたら攻撃対象はコーラじゃないの?
接近戦に向いてるようには見えないけれど…という事は、より被害が拡大するのでは?
前回の戦いを思い出す。
ここにまで被害が及ぶ可能性もあるんだろうか。
でも、できれば避難は考えたくない。
だってここにはまだ、たくさんの患者さんがいる。
お父さんが、いる。
そこから離れるのはあまりにも…。


少し暗い想像図に頭が支配されそうだったけど、命くんの呼びかけにハッと現実に引き戻された。
そう、今回は避難が間に合った。その筈。
きっと大丈夫!
命くんと手を繋いで、ちょっと元気をチャージさせてもらおう。
でも、…この街は。病院は。放棄する事になるんだろうか。
流石にこの回数同じ場所に現れたなら仕方がない事かもしれない。
それでも離れたくないなんて言ったら、もう政府が保護してくれる対象外となるんだろう。
わたしはどうした方が良いんだろう。
懸念は逃げた先で更に襲来があった場合。
この回数ここで戦闘があるなら、逃げた方が安全なような気もするけど…。


「やだ!そんな趣味の名前なの?
 やっぱりハートは心臓の形じゃない?
 でもそうなると、弱点が出てるような気もするし…?」


反射的にラブラブ号を否定しちゃったけど、そんな名前のロボットに街を破壊されたくないよ!
そうじゃなくったって嫌だけど!
でもハートと言えば心臓。弱点をあんなふうに丸出しにしてるとは考えにくい。むしろ。


「それとも本当に、あ、愛の力で、
 コアを守ってる感じだったりするのかな…。
 ハートの顔部分?は盾みたいな感じで
 キャタピラ部が動力源、みたいな。」


両者とも動かない。それが怖くて、繋ぐ手に力を込めて寄り添ってしまう。
コーラもラブラブ号もできればこのまま壊れて仕舞えば良いのに。**


─平和な日々─

お互い、キスされると照れてキスする時は積極的。
褒めるのは好きだけど褒められるのは照れくさい。
色々私たちにてるところが多い気がするけど、やっぱり褒められるのもキスされるのも好き。
顔立ちを褒められると頬が熱くなって、でもふにゃっと笑って「ありがと♡」とお礼を言うのも好きだもの。
命くんといるとたくさんの好きに溢れてて、本当に出会えてよかったって思えるんだ。

そう言えばあれの用意は一応してるけど、命くんわたしの部屋に入ってくれないんだよね。
恥ずかしいらしいんだけど、そんなに気にする事ないのに。
理由を聞いたら逆に赤面しそうだけど、確かにわたしの部屋は一番私のにおいが強い場所かも。
長年ここで暮らしてきていたし、衣服もある。昔からのぬいぐるみや本なんかも揃っていて、思い出の場所でもある。
でもそんなこと言ったら、膝の間に座ってる時の私なんて、直に命くんの香りに包まれてるんだけどね!


そんな、日常の思い出が潰された人も多いんだろう。
私の部屋は、私達の家は、今回の襲撃から逃れられるんだろうか。
それは心配だけど。
でも一番は一緒に逃げること。
そして、命くんと一緒に生きていくことなんだ。**


―四度目の襲来――

[二度目の時はコーラは糸に捕まって最後にビームを撃っていたし、三度目の時はテレビで見たのだがあらぬ方向にビームを撃っていたのでコーラは遠距離戦は苦手なのかもしれない。
そう考えると蜘蛛型も獅子アラシ型も今回のハートタンク型も遠距離戦主体のように思える。

 珊瑚と手を繋いで固唾を飲んで見守るしかなかった。
流石にすぐに動けない人もいるし保護してくれないということはないだろうが最上級で避難勧告が出ることは予想できる。
大規模土砂災害で命の危険がありますと言われるやつだ]


  珊瑚さんはお義父さんと一緒に居たいかな?
  僕はずっと一緒にいるからさ。
  珊瑚さんがどうしたいか――。
  この戦いが終わったら一緒に考えよう。


  でも――ほら、名は体を表すっていうじゃない?
  ハートの奥にあるかあれはダミーで少しズレているか。
  その辺りはわからないけど……。

  ハートマークだから何か意味があるんじゃない、かな。


[語尾に多分、とかそうだといいな、がつきそうなくらいには自身がないがラブラブ号は否定されたから仕方ない。
確かにそんな名前のロボットは嫌だろう。
愛の力で破壊されるなんて堪ったものではない]


  あとはハートのシールドを張るとか……。

  えっ?


[両者動き出すのかと思ったらコーラがいきなり転げた。
思わず唖然となってしまう。
周辺家屋からはもうさすがに人は逃げてるだろうけれど――とあまりの出来事に驚愕していると今度はハートマークタンクの敵が後退を始めた]


  ええ……、これまでと全然違う。


[どういうことなのとあらゆる意味で見守るしかないようだった*]


─四度目の襲来─

お父さんを置いていきたくない。
そんな気持ちを何処かで察してくれたのか、美琴くんのかけてくれた言葉にこくんと頷いた。
実は、前よりはお父さんを置いていけないって気持ちは薄れてる。
だって私には命くんがいるように、お父さんには彼女さんがいたから。
できれば離れたくないけれど──流石に今回のことで、私がどうしたいと言うよりも父さんに避難を強制させられる可能性はあった。
その方が安全性が高そうだと言われたら、何度も続くこの町での出現から何も言えない。
でもそれもこの戦いが終わったら。
また無事に生き延びれたら考えよう。
先ずは今回を生き延びること。
その為に、私たちはできる最善を尽くしてるんだから。


そんなことを考えてるとコーラが転んだ!?
今までそんな事はなかったからビクッと体が震えてしまう。
まさか、あのハートは見えない何かで攻撃した?
どうなんだろうかと思えば後退し始めたハートに眉が寄る。


「…遠距離型に、見えるから。
 距離を測っているか、…。」


思いついた事はある。まさかと言う思い。


「…戦いたくない、怖気付いてる?
 まさか、あれ、人が乗ってる、…とか?」


今までのが無人で戦ってるとは特に思ってなかった。
でも、もし戦いたくない人が乗っているなら、出来れば和解して欲しい。
戦ってほしくない。平和に終わらせられるはず。
だって人間には知恵があって、言葉があるんだから。

まさか、そんなものでは終わらない戦いだなんて知らないから。
わたしは勝手に、そんな希望的な推測を立てた。**


メモを貼った。


――四度目の襲撃――

頷いてくれる珊瑚に大和は目を細める。
状況に流されて得る自由よりも自分で選んだ先の不自由の方が良い。
本当は不自由ではないほうがもっと良いのだけれど自分で選んだ上でのことならば最終的に納得できると思うのだ。
愛娘を危険地帯には置いておけないのはそうだろうけれど、選択するくらいはさせて欲しいから――大和は全面的に珊瑚の後押しをする]


  もしくは同じ距離でしか中てられない……?
  でもこれまではそんなことなかったよ。
  ノーコンはいたけど。


[ずっと出てきている方と違ってもう一体は毎回姿形状が異なっている。
訪れる意図はわからないが戦いに着ている感じはするのに珊瑚は新たな可能性を提示してくれる]


  確かに……完全にロボットなら不可解だけど、
  珊瑚さんの言葉通りなら……。
  するとコーラにも人が乗ってる?


[人が争いをするのは大体利権を巡ってのことで経済的にも終末に起こるものらしい。
それ以外の手がないから戦い始めるらしいのだが、もしも話ができて擦り合わせができるのならば――]


  ……あ、ラブ&ピースか。


[ハートマークがもしその意味ならば――希望的観測も実現可能なものなのかもしれない。
珊瑚の手を握る手に力がこもる。
それを伝えにきてくれたならば――叶えてほしい*]


メモを貼った。


メモを貼った。


─四度目の襲来─

残念ながら、怖気付いたとか非好戦的だとか、わたしの希望的観測は外れてしまっていた。
それとも、コーラが活発な活動を見せ始めたからこその迎撃?
コーラがハートに迫る。
コーラがハートを捉えんとすると、ハートが割れて開いて。


「あっ。」


コーラが回避する。ハートから放たれたのは、むしろ今までのものより殺意が高く見える──砲撃?
あ、と小さく声を漏らした次の瞬間にはそれが街に着弾して、辺りは何も…そう、何も。


「命くん、閉めよう!」


今まで隙間か窓か、見えるところから覗いていたけどそれも無理かもしれない。
命くんの手を引いて、隙間を閉じて内側の防御力を高めよう。
直接着弾しなくても、衝撃で飛んできたものでこちらに被害が出るかもしれない。
だから手を引いて、私たちもより中の方へ。
時々避難所の内側も地震のような揺れが生じる。
どちらの攻撃で、どちらの動きだろう。
怖くなって目を伏せる。
だけど、わたしの手を小さな手がくい、と引いた。
見ると、不安そうな子供たちが。
ああ、そうだ。わたしがこんな不安な顔見せちゃダメ。
チラ、と命くんを見上げる。
にこ、と笑顔を向けて、命くんから元気をもらおう。
そうしてから子供達に顔を向けて、膝を折って目線を合わせた。


『大丈夫かな?』
「大丈夫だよ、ここ頑丈だから!」

『でも怖いよー!』
「そうだね、それなら歌を歌おうか?」


床に座って、小さな子を膝に乗せて。
この短い期間にもいろんな歌を覚えたんだ。手遊び歌だから、昔私たちも歌ったのかもね?
"バスに乗って"なんて、こんなにガタガタ揺れてる時にはちょうど良い歌じゃない?
"どんな色が好き"とか、みんなに聞きながら、子供達とお話しするみたいな歌を選ぶ。
そうしたらみんなにも笑顔が戻ってきて、わたしもほんの少し救われた気がしたの。**


――四度目の襲撃――


  やっぱり戦う気しかないのかな!


ハートの中身は重装備の攻撃力を誇っていた。
無数に見える砲門から無数に見えるミサイルが飛んでいき砲撃を開始したのを見て、距離を取るので正解だったようだ。
珊瑚も驚いたような声をあげていて閉めようって提案されるとシェルターの中に完全に隠れて扉を閉じた。
攻撃開始までに随分と時間がかかっていたから避難は十分に出来ていたし重質量兵器でないならば地下に影響はあんまりないはずだ。

 珊瑚が視線を伏せてしまうのは――怖いからだろう。
こんなに揺れていたら怖いに違いない。
笑顔なんて浮かべるのは本当は難しいのだけれどそれでも珊瑚は笑顔を浮かべていた。

 こちらを向いて笑みを浮かべるから膝を追って子どもたちに向き合う前にぎゅうって強く抱きしめた]


  ほら、みんなも手をつないで。
  隣の子から元気を貰って歌おうか。


歌はあんまり知らないものだから選曲は珊瑚任せになってしまう。
聞きながら少し遅れて歌っていって、懐かしい歌は次第に周囲のご老体たちも歌い始めていく。
歌はいいものらしい。歌っていると元気になっていく気がする。

 子どもの相手をする珊瑚はやっぱり女神かなって思うくらいだけれど怖がってるのは分かるから大和はずっと傍にいて歌の合間に一緒に子どもと話続けたり抱きしめてあげたりしていた。
話す内容はあまりなくて好きな食べ物は、とか聞いたりするしかないのだけれど。

 そうしていると震動が収まっていき静かになっていた。
震動が収まってもすぐに外には出られない。
外の安全が確認されたなら、だが――外に出れば三度目よりも更に広がった更地を確認できるのだろう*]


―― 四度目の襲来:遠ざかる街、敵、ソレ ――


[大きな音が車の後ろから、道の向こう…
 ――― あたし達の街の方から響いてくる。
 何度も、何度も、…なんども
 
 遠ざかる内に音は小さくなったけど、
 最後の音は前二回よりうんと大きくて。
 耳を塞いでいた手を離して、ゆっくりと
 後ろを振り向いてその光景を見た。
 
 
 二体の怪物が白い煙を上げていて、
 車が進む度、その煙が晴れていった。
 
   そこで見えたのは、白くて丸い…?]
 




  ……あれ、なんだろう…?

 



[疑問を口にした所で誰からも、
 何処からも答えが返って来ることは無くて。
 その白いのも認識できない程遠ざかった所で、
 先にハート型の方が。続く様にいつも出てくる
 人型…?の方が、上から徐々に消えていった。

 あれは『終わった』合図だと、
 テレビやクラスでの会話の中で聞いてたから
 お兄ちゃんとお母さんとに向け声を掛け
 車を道端停めてもらった。

 三人でその方角をただ茫然と眺める。
 …街は、家は、無事なんだろうか…。]

 



[しばらくそのままでいたけれど、
 現地に戻るには危ないという流れになって
 あたし達は当初の予定通りおとうさんの病院がある
 街の方へと再度車を走らせた。
 
   ――― 車内では自然、
       これからどうするかの話が出て。
       流石にもう離れるべきだろうって
       二人の間で話がまとまっていた。]
 



  [……あたしの疎開が決まった瞬間だった。]**
 


メモを貼った。


─四度目の襲来─

子供たちと向き合う前に、命くんがぎゅっと抱きしめてくれる。
わたしも一度強くぎゅっと抱きついた。周りの子供達も、大人も、少しはしゃいだ声がしたけれど気にしない。


『さんごおねえちゃんはほんとうに
 みことおにいちゃんがすきなんだね!』
『らぶらぶー!!!』
「そうだよー、命くんのこと大好きなんだ。
 準備ができたら、お嫁さんにしてもらうんだから。」


歌の合間にそんなやりとりだってあった。
揺れよりも何よりも、何も無くなった焦土のような真っさらな大地に恐怖を覚えていたけれど。
それを忘れるように笑顔を浮かべる。
実際そうして話している時が紛れるもの。
命くんの温もりを感じるとそれだけで気持ちが落ち着くの。
みんなのお話を聞いて落ち着かせているようで、わたしの方がみんなに元気をもらっていたと思う。
特に命くんからは…想像以上に元気をもらってたから。


「はい、ポケットを叩くと…
 ビスケットじゃなくてキャンディが出ました〜!」


不思議なポケットの歌を歌ってから、ビスケットだとアレルギーを持ってる子がいたら可哀想だからよりアレルギー食品の少ない飴をポケットから出して子供達に配る。
きゃっきゃっと喜ぶ子供たちの笑顔は大人たちにとっても癒しだったから。
命くんにも手伝ってもらって手持ちの分を配り終えた頃、外は静かになっていたかもしれない。
でも、まだ身体が揺れる気がして命くんに背中を預けて、そのあとすぐにぐるりと振り向いて肩口に額を預けた。
子供たちと接していると忘れられるけど。
自分たちの住んでいる街が本当に消えてしまう。
そんな恐怖に改めて襲われて、なんていうか…ちょっとわたしも、限界が近かったのかもしれない。


「…外、出たら。どっか旅行、いこ?」


お父さんに許可を取らなくちゃ。
お金の問題はまあ大丈夫だと思う。お年玉はあるし、もらってた生活費だって無駄にはしてない。
だからこれは、ある意味わたしからのヘルプサイン。

この土地から離れたくない。
だけどあんな光景を見るのは嫌。
あれに巻き込まれるのはもっと嫌。
ここから逃げ出してしまうようで心苦しいけれど。
それでもどこか、遠くに行きたい。
じわ、と滲んだものが命くんの服に染みて。
ごめんね、と小さく小さく呟いた。

彼以外に聞こえないように。*


――四度目の襲来、そして――

大和が珊瑚を抱きしめると周囲の人が囃し立てるのは凡そ日常的にあることだ。
おばさまらがいても子どもたちがいても変わらない]


  そうだよ、ラブラブだからね。
  珊瑚さんは最高のお嫁さんになるからね。


[そこは最早確信しているので大和は子どもたちに笑顔を振る舞う。
震動があっても心を震わせる原動力の一助となればいい。
甘味があれば猶更だ。
甘いものは頬が緩むし心も落ち着く。
一緒になってキャンディを配っていって子どもたちも落ち着いてくると歌も少しずつ静かになっていき外も静かになっていた。

 隣街か、そのまた隣か。
遠くの観測所からホットラインで安全を教えてもらったら外には出れる。

 珊瑚の身体を後ろから抱きしめて包み込んであげて、それでももの足りないのか反転したので背中と腰に手を回してしっかり抱きしめた]


  珊瑚さん……。


[大和は街に思い入れが少ないけれど数少ない思い出の地は珊瑚の家の周囲に多い。
あの狸は割れずに残っているだろうか。
マンションはそもそも無事なのだろうか。
これまで見えていて過ごしてきた街並みが崩れ落ち火に炙られているところを見るのは本当に辛いことなのだろう]


  僕ね、旅行は合宿しか行ったことがないんだ。
  でも夢はあって……。
  珊瑚さんと一緒に星を見に行きたいな。

  珊瑚さんはどこにいきたい?


[親の許可やお金の心配ではなく楽しい旅行の内容を語る。
背中に触れていた手を頭に伸ばしてゆっくり撫でていく。
大丈夫って耳元で囁きながら涙が零れて止まらない珊瑚の表情が誰にも見えないように覆い隠してしまおう]


  南の島とか、山の上とか星が綺麗らしいね。
  僕は珊瑚さんの水着姿も見たいな?


[これ以上珊瑚が傷ついてしまわないように。
遠い地に楽しい目的をみつけて旅行に行こうねって落ち着くまでの間、いろいろと夢と案を語りながら頭をぽんぽんと優しく撫で続けた]


[後に――。

 外に出た後の被害状況は推して知るべしというものだった。
この街は呪われているんじゃないかって言われるくらいに更地が広がってまだ火が燻っている場所も沢山あったけれど消化なんてできるわけもなくて――。

 でも、それでも――。
疎開した人や一時的に離れた人が戻れるようにって、安全が確認されれば復興が始まるんだ。
人が存在しているって証を立てるかのように*]


メモを貼った。


―― 四度目の襲来:夜 ――

[お父さんの居る病院のある街に着いて、
 手頃なホテルに家族三人で部屋を取って、泊まった。
 晩御飯は適当に食べて、三人揃ってひたすら
 テレビのニュースを眺めていた。

 高校から少しだけ離れた市街地。
 焦土と化した大地と、最後に大きな音を響かせた
 白煙立ち込めるあの光景の中で起こった
 衝撃波の影響で傾いた電信柱、傾いた家。

 度重なる襲来の影響で街からは人が減ってたし、
 三度目ともなると避難も早かったからか、
 この間の襲来よりは犠牲者の数は少ない。
 ……けれど、いない訳じゃなくて。]
 



[どのチャンネルを回しても同じニュース、
 映像、現地の人へのインタビュー。
 周辺病院への取材や泣く子供達…
 
  ――― もしかしたら瑠璃川先輩達の
      病院にも行っていたのかも。

 そんな映像がひっきりなしに流れて。
 あたしは次第に見る気を失くして、
 お兄ちゃんもIフォン見る方に移って、
 お母さんだけはずっとテレビを見続けてて…

 そうして夜が更けていって、
 お風呂も済ませたあたし達は寝る事になった。
 けど、]
 



[部屋を抜け出して、あたしは
 ビジネスホテルの人のいないラウンジで
 しばらくぼんやりと過ごしていた。
 
 また途中で目を覚ましてしまって。
 …今度は寝付けなくって。

 缶ジュースに少し口を着けてからぼーっと
 今日見た光景とニュースとを思い出しては
 頭を振って追い出して、それを何度か
 繰り返して時を過ごしてしまった。


 ふ、と
 外の景色が見えそうな上から下までの窓を
 フロアの端に見付けて、そっと近付いた。]
 



[上を見上げると




      夜色が、広がってて。
           
           でも、
           星は見えなくて。
 


              あの合宿での
              星空が恋しくなった。]
 



                  …また、
               皆で見たいな。




[ひとり、呟いて。

 部屋に戻りながら
 一つ、小さな決意を固めるのだった。**]
 


─四度目の襲来─

「うん…、うん、合宿も行きたかった。
 星見るの良いよね、でも展望台…。」


展望台は一度きりだけど、初めてコーラが現れた場所だ。
それを思い出してふるっと頭を横に振る。
命くんの声は優しい。
そんな命くんの服をぎゅっと握りしめて、今はみんなから隠してもらっていた。
まだ本当は気を緩めるべきじゃないと思う。
子供達だってそばにいる。
だけど、私だってちょっときつい。
あんな光景を見たくなかったんだ。
マンションは無事かな。
こんな事なら、お母さんも連れてきてあげるんだった。
お母さんは生きてはいないけど、位牌とかお墓とか、思い出のものとかちゃんと残ってるかしら。
生きてる人が最優先とは言うし解るけど、もし消えてしまっていたらごめんなさいなんて、そんな後悔の念もある。


「あー、今年はすごく暑いから海…。」


海…に、蹴り飛ばされたコーラの敵を思い出す。
違う、違う。楽しいことを思い浮かべよ!
確かに今年は水泳の授業でしか水着になってない。スクール水着だし、回数も片手で数えられるくらいだし男女でタイミングも違ってた。
そんな日常を思い出して、なんだか懐かしくなってしまう。
学校も壊れた。街も更地になった。マンション無事かな。
せっかく命くんが色々話してくれるのに嫌なことばかり思い浮かんでしまう私はダメだ。
頭を撫でてくれる手が優しい。
手を背中に回してぎゅっと抱きついた。胸いっぱいに命くんの香りを吸い込んで、ふっと体の力を抜く。


「プールのあるホテルに泊まって…。
 のんびりプールデート、したいな?」


ちょっと涙がこぼれたから目元が少し赤い。
だけど元気が出たのは、やっぱり命くんの存在あってこそだった。
やっと気持ちが落ち着いてきた。まだまだ危ういかもしれないけど、やっと肩口から離せた顔はへにゃりとした気の抜けた笑顔。


「水着も買わなきゃね。
 もしかして…命くんが選んでくれる?」


流石にプールに行くのにスク水はダメだよね、なんて笑ってみせる。
プールのあるホテルならそこにも売ってそうだから、そこで用意しても良い。
のんびり。のーんびり。そんな日があっても良いよね?

わたしも、襲撃があったばかりのこの時は、その衝撃を忘れたくて遠くに行きたかったんだ。*


─もしかしたらのお話─

私たちは気づいていなかったけど。
いろんな人たちが行き交っていて、取材に来た人やスマホで撮影する人たちもいたんだろう。
病院やその辺にも。

もしかしたら、感動の再会シーンとか。
わたしと命くんが抱き合ってる写真とか、どこかに流れていたかもしれない。
お父さんの病院にやってきた取材の人たちが、わたしや命くんの様子も映していたかもしれない。

今のわたしは、それを見ることはなかったけど。*


――四度目の襲来後――

[今回合宿に参加して、来年は珊瑚も一緒にと思っていた。
海にも一緒にと思っていたがそのどちらもコーラが一度目に出現した場所だった。
失念していたわけではないけれど連想すればどこでだってコーラが関与してしまう。
悪い想像を断ち切るには時間が必要で、同じくらい楽しい記憶が必要だから今はどうやっても心が負に傾いてしまうのだろう。

 大和が出来るのは本当に珊瑚の傍にいて抱きしめて温めてあげるくらいだった。
位牌に関しては一緒に旅行にはいけるだろうけれどお墓はどこにあるのだろう。

 落ち着いた珊瑚が案を返してくれる。
大和は微笑みながら頷いた]


  それならアスレチックリゾートが近くにあるとこ。
  この前……夏休み前の新聞でだけど見たことがあるよ。


[大きな街から程よく離れていて、山の中でも海の中でもなく田舎の山裾辺りに展開している広く大きなアスレチックがたくさんあってプールもついてるところ。
流石にそういうところには出現はしないと思う。
あと温泉もついてるらしい]


  え……それは、いいの?
  合格したときのお願いの候補だったよ。

  えっと……じゃあ僕の水着を、珊瑚さんが選んで?


[力が抜けたような笑みを見て、やっぱりぎゅって身体を抱きしめてしまう。
周囲の人も抱きしめ合っている人がいるしきっと目立つことはないはずだけどそういうところが撮られてしまっていたとしても不思議ではない]


[プールでのスク水はダメらしいけれど大和は珊瑚のスク水姿も見たかった。
学校では授業のタイミングが違うし真夏の炎天下長距離走をしている時に女子が楽しそうにプールではしゃいでいる声はよく聞こえていたけれど姿を見たことはなかった。
水着は向こうで買えるようだし、学校は休校してるしのんびり旅行に向かおう]


[病院の被害は軽微なようだった。
ガラスに破片が飛んできたのかヒビが入っている場所があるくらいで内部の確認が終わると入院患者さんたちは次々に中に戻っていくらしい。
ただ確認作業は時間がかかるようなので今日は先に上がらせてもらうことにした。
珊瑚に無理はさせたくないから、大和は断りを入れて子どもたちと別れの挨拶をしてからマンションへの帰路についた。

 マンションも無事だったが狸はお店の方に倒れ込んでいた。
今回のメインは爆発の衝撃波がメインだったから――この時になっていれば流石にガラスはガムテームとかで目張りをしていたのでそれで被害は少なかったのだろう。
どうも攻撃の多数はコーラへの直撃弾コースのものが多かったらしく、ハートマーク土偶が後退していたことも幸いしたのだろうか。
その辺りの詳細はテレビもつけないからわからなかった]


[――何せ、マンションについて扉が閉まったらすぐに珊瑚を抱きしめて口づけを交わしていたからだ。
今日はもう離すつもりはなかった。
震動で崩れてきたら二人とも死んでしまう可能性は常に抱いていて、大和は珊瑚と生きて過ごしていたかったから――。

 その日、初めて大和は珊瑚の部屋に入った。
そして枕元のあれを見つけて、そこで漸く心底楽しそうに笑いながら珊瑚をベッドに押し倒した**]


─四回目の襲撃─

「うん。良いね。じゃあ、そこにデート行こ?
 遊園地とかもそのうち行きたいなあ。
 受験合格したら、そっちもね。
 映画とか…夜空を見に行くとか。
 たくさん、デートしたいなあ。」


まだ、今は心が辛くてなかなか立ち直れないけど。
少しずつ楽しい記憶で塗り替えていければ良いと思う。
たくさん命くんと楽しいことをして。
それでもよかったねと笑えるように。


「え?別に良いけど…えっ???
 合格した時のお祝い候補ってどれだけ…?
 そんなに水着、期待してくれるんだ。
 期待外れじゃないと良いけど…。」


まさかの合格祝いレベルだったらしいそれに驚きながらくすくす笑っちゃう。
うん。こうして笑い飛ばしてしまおう。
不安も、怖い気持ちも。あの景色もみんな全て。


──ちなみにスク水を見たいと言われたらちょっと戸惑いながらも着るのは吝かでもないので、もし機会があったらお願いしてみてほしい。
スク水はあまり遊びという感じがしないし、変な話マニアックな気もしてしまう。
いかにも学校です!という、名前がでかでか書かれた状態が特に良くない。
流石にデートではそれはないから、着るとしても家の中とかだとは思うけどね。

…それにしても裸だって見せたことあるのに、まだまだ恥ずかしさが消えないのはなんでなんだろうね?


病院の窓や壁に微細な罅が入ってる。
でもコレは、耐震構造の一つもあるらしい。いきなりボキッと折れることがないように、微細な罅が所々入って構造を保つようにしてるんだとか。
とはいえ修繕は必須だろうなあ。
今のところは普通に使えるみたいだけど。
あのたぬきも転がってしまっていて、あたりにはいろんなものが落ちていて、戦いの跡といった風情だった。
その割にはうちのマンションは比較的無事でホッとする。
やっぱり微細な罅は入ってるし、窓は目張りのおかげで割れてはいないもののここだって修繕──ううん、建て替えが必要なんだと思う。
それでも家に戻って来れたのにホッとしてた。
若しかしたら色々と物が散乱してたかも。
ライフラインは止まっていたかも。だけど。


「んむっ!? ん、…。」


玄関の扉が閉まったと同時に抱きしめられてキスされて驚いたけど、わたしはすぐにそれを受け入れる。
瞼を下ろして唇を寄せて、舌先を伸ばして覚えたばかりの大人のキスを強請る。
こうして二人きりになったなら、わたしは瑠璃川先生の娘でもなく、小児科に手伝いに来たお姉さんでもない。
ただの瑠璃川珊瑚として、命くんに甘えたい。触れ合いたい。繋がりたい。


「命くん…。怖かった、怖かったの…。」


やっとその気持ちを吐露できて、すん、すん、と啜り泣いた。


「だから、だから今日は、もう離さないで…。」


元より命くんはそうしてくれるつもりだったみたいだけど、そんなお願い事をする。
その日はもうそのまま、わたしの部屋に来てもらって。
わたしとしてはそこで着替えとか持ってきて、リビングに戻るつもりだったけど。


「…あ!」


なんて良い笑顔を見せてくれたんだろう。
枕元に置いたものを見つけられて、一瞬息を呑んで顔が真っ赤になった。
そういう意味で部屋にまできて貰ったんじゃない。そうじゃ無いんだけど。
真っ赤になったままベッドに押し倒されることに異存は無いから。
わたしは顔を真っ赤にしたまま両腕を伸ばして命くんを抱き寄せた。**


――四回目の出撃の夜――

[お泊りデートの場所も決まってやりたいこともしたいことも増えていく。
楽しい案を出していけば心は少し軽くなってくれる。
ほんの少し、あと少し、その少しを積み重ねていくのだけれど奥底に沈殿したものが濾過されるのは時間がかかる]


  僕はね、お弁当を持ってピクニックでも楽しいよ。
  お花見とかもしたいね。


[語られる夢と希望に一つずつ付け足しながら、好きな人の水着姿は全然別なんだよって笑って言える]


  だってほら、なんでもってなったらさ。
  いろいろ思い浮かばない?


[してあげたいこともしてほしいこともいっぱいある。

 スク水もその一つで高校まででしか見られないものだから来年までしか機会がない。
きっと後日着て欲しいと願うだろうし誰にも見せたくないから勿論家の中で――それはまた後日の話だ]


思い出の場所も建て替える必要はあるかもしれないがそれもすぐではないだろう。
修繕で誤魔化しつつ頃合いを見てということになると思う。
マンパワーがどれだけあても手が足りることは暫くは訪れないだろうからまだ暫くはこのままでライフラインを確認する前に抱きしめてしまったものだからその確認も明日の朝以降になる]


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