10 冷たい校舎村9
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[ぐるぐるとどこからか響く声に、足が竦むのが分かった。 上手く息が出来なくて、はくはくと浅い呼吸を繰り返す。
何だろう、これは。 何を見ているんだろう、俺は。
今すぐ踵を返して逃げ出してしまいそうになるのを 必死に堪えて顔を上げた。口を開いた。
ちっとも笑ってない顔で あやふやな誰かに向けて、震える声を絞り出す。
――――嗚呼、そうだったね。 これが俺の痛くて苦しい、ままならない『現実』。]
(511) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[ごめんね。傷付けてごめんね。 上手く出来なくてごめんね。 自分のことで精いっぱいで、 他の人のことまで上手く 考えられなくてごめんね。
愛するのも愛を受け取るのも へたくそな俺でごめんね。]
(512) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[………でも。]
(513) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[世界の人間には二種類いて、 俺のことを好きな人とそうじゃない人。 雑にラベリングして、怖がって何もかも見ない振り。 でも、そんなに世界は単純じゃなくて。
居場所を作りたいと言ってくれた奴がいた。 俺で良かったと言ってくれた人がいた。 一緒に泣いて笑いたいと言ってくれる奴がいた。 嫌ったりしないと約束してくれた人がいた。
たくさん、たくさん、上に挙げた以外の人たちだって 自分だって悩み事だって辛いことだってあるはずなのに、 もっと前から今まで、色んな気持ちをくれていて、 俺はそれに気づかなかったね。ずっと。]
(514) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[人影を見る。 ちっとも笑ってない顔で あやふやな誰かに向けて、震える声を絞り出した。]
(515) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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………でも、 でも。
俺は好き、だった。好きだったよ。ごめんね。 好かれたかった。
……………ごめんね。
(516) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[馬鹿で怖がりで身勝手な俺だけど、 たったそれだけのこと、 言うくらいは許して貰えないかな。
こんな俺でもいいよって、 力になりたいって、話を聞きたいって、 言ってくれた奴らがいたんだ。
……だから、俺。ちゃんとやるよ。 今すぐには無理かもしれないけどさ。 ちゃんと誰かの痛みにも、向き合えるようになるよ。]
(517) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[自分でも気づかないうちに いつの間にか泣いているみたいだった。 しゃくりあげながら人影に向けて、 手を伸ばせばがくんと上体が揺れた。
気付けば窓から身を乗り出すようにして立っている。 なるべく下を見ないようにして、そのまま。 一思いに地を蹴った。]
(518) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[朝の8時50分。 チャイムが鳴り響いた直ぐ後に。
――――――どしゃ。
どこからか鈍く、 大きな塊が落ちたような音がする。]
(519) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[きっと窓から外を覗きこんでも 何かを見つけることは出来ないけれど。
けれど、3Fの廊下のどこか、 何故か開け放たれた窓のすぐ近くに 手足の折れ曲がったマネキンが 雪を僅かに積もらせて倒れている。
顔の部分だけがまるで溶けたように ごっそりと抜け落ちていた。]
(520) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[世界の主さん。 きみの正体を、俺は少しだけ勘付いてもいるけど。 感謝も心配も何もかも、もう少し後にとっておく。
バイバイは言わない。 楽しかったよ、また後で**]
(521) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ そう。図太いひと。
これだけ大掛かりに死ぬよーって宣言して、
あんなメールまで残しておくような。
ともかく、そんな話をしていたらしい。
もうあそこから醒めてしまったから
そんな話は出来ないかとも思ってたけど、
ばっちり全部覚えているものだから。
よかった、とも、どうとも取れる。]
炭蔵くんの泣き顔?
それはレアだね、是非写真に残さないと。
……まだあそこに居るんだろうけどさ。
まあ、それはそうだと思う。
ゆっくりゆっくり、形を変えていたし。
世界にも受け入れられる上限があったりする、
そういうことなのかもね。
[ さて。死んだけれど、殺した、とも言った。
驚かれるのも無理は無いだろう
けれどたしかに私は殺したのだから、
くすくす笑って、お茶を濁しておくだけ。]
ただの夢では無いだろうし。
やっぱ、苦しい目にあってこっちにきたんだ。
それでも死んだけど死んで無いって、
変な感じするよね、……。
[ ちゃんと答えてくれてよくできました。
なんて、じっと向井くんの指の先を
なんとなく見ながら、
いつか話した言葉について言われれば、顔を上げ]
ああ、そんなことも言ったね。
なんだかもうそれすら懐かしいけど。
そっか。やっぱり虚しかったよね。
[ 淡々と。泣きそうにもなくそう言う姿に
吹っ切れちゃってまぁ、なんて思いつつ。
泣いてくれてもよかったんだけどなあ。
彼もまた、死ぬことで何か変わったのだろうか。]
…… 私?
私はずっと諦めて虚しくてだったからね。
似たようなものだよ。
頑張りたかった。でも無理だった。諦めた。
向井くん、認めないで堪えて頑張ってたから。
まあ、……ちょっと意地悪したくて?
頑張るのやめちゃいなよー……ってさ。
頑張り続けるの辛いじゃん。 それだけ。
[ 我慢の皮が剥がれてぐちゃぐちゃになった
素直なその下を見て見たかったから、なんて。
そう、言うなれば引きずり下ろしたかっただけ。
ただの意地悪だよ。ごめーんね、と。
そこまで反省してない様子で言って。]
[ いきなり話題が変わっても、
まあこれ以上は泥沼かもしれないからね。
深入りしすぎない方がいいこともある。]
ああ、食べてくれたんだ。
それは良かった。……ありがとう。
[ この礼だけは、少しだけ黒い視線は
和らいだものになって。
やっぱり、ね。自分の作ったものだ。嬉しいから。
飲み物を買ってくれると言うならば
それに甘えさせてもらおう。]
じゃ、カフェオレお願いしまーす。
[ 多分あった気がするから、と。
雑な注文をひとつ投げかけて]*
[向井くんと茉奈ちゃんの会話を聞いている。
盗み聞きするような意図は無いから、耳を澄ましているわけじゃない。
聞こえた内容をただただ、聞き流している。
楽しいことだけを享受しようと振る舞ってきた私。
クラスの誰と誰がどんな秘密を共有しようと、介入できないものもある。
……女子グループって噂が早いし、聞き流し慣れてるってのもあるけどね。
だけど、あの世界で食べたもののことを聞けば、
釣られてしまう魚のようにそちらを向いてしまう。]
パン……ケーキ……?
[何それ。食べてない。
いいなーと羨みの視線を隠さずに2人に向ける。]
あ、クレープ美味しかったよ茉奈ちゃん。
ありがと!
[こちらに帰る前日の夜にいただいたクレープのお礼を、
ちゃんとしていたか、し忘れていたか、
覚えていなかったので、改めて伝えよっか。]
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