10 冷たい校舎村9
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どうだ、似合うか?
[ ヘアピンをつけ終えたなら、 検討した結果を見せつけるよう>>42 暮石にファッションチェックも依頼していた。* ]
(69) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ そして、思い出を教室に残して向かった先。 三階に辿り着くと、寒さが増す。 暮石の視線の先を追えば、 ひとつだけ窓が空いているのが見えた。>>4:520
俺の腕も二本しかないし、身体も一つしかない。 暮石と同じで、手近な教室に足を伸ばす。>>61 ]
(70) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 後ろから、中に倒れている鳩羽を見た。>>4:496 顔をコートに埋める暮石の隣にしゃがみ込み、 背中を擦るように手のひらを添えた。
そして、もう一本の手はカッターナイフを拾う。 ]
まだ俺たちに明日≠ヘ来てない この校舎の中は、 永遠に同じ日付を繰り返してる 俺は鳩羽と約束したんだよ、
俺たちが目指すべき明日は、もう少し先にある
[ そう、俺も約束したんだ。 この校舎が動き出す明日へ。>>4:366 ]
(71) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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だから、鳩羽はきっと、 一足先に明日≠ナ待ってるだろ こんな作り物の笑顔じゃない、 本当の笑顔を浮かべてな
[ 話しながら、 暮石が途中で顔を上げないことを願っていた。 だって、俺も泣きそうになってたから。 もし見てしまったのなら? ……他のみんなには内緒にしてくれ。
特に、綿見には言わないように。 ]
(72) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 衣装部屋の中にあるもので、 可能な限り文化祭の日に近くなるよう ごちゃごちゃとした装飾をつけてやろう。 どうだ、満足のいく出来栄えになっただろうか?
それから、暮石が落ち着いた頃に、 開けっ放しの窓の方へと向かうだろう。* ]
(73) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 近づけば、窓の外ではなく、 窓のすぐ近くに、 降り積もる雪に覆われたマネキンがひとつ。
吹き込む風が、雪が、冷たくて。 窓枠に、手をかける。
なあ、暮石覚えているか? はじまりのあの日、一緒になって覗いたこと。 あまりにも深い闇が広がっていて、 言葉を失っていたっけ?>>1:297 その気持ちを覚えているから、 下を見ないようにそっと窓を閉めた。 ]
(74) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ そうして、マネキンの傍にしゃがみ込み 上に積もる雪を、素手で払い除けていた。
顔があるべき場所になくったって、 これは柊だと分かっていた。 ]
こんなところに一人で、寒かっただろうな ……暮石、鳩羽の傍に運んでやらないか?
[ そういえば、柊の下の名前はユキだったか。 誰かを下の名前で呼んだことはない俺は、 ふと頭の中で、連想ゲームをしていた。
それと、寂しがりな柊のことだ、 ひとりで廊下に残されるより良いだろ? *]
(75) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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— 教室まで —
[死んだらそこで終わり>>1:527。 わたしは一昨日、炭蔵くんとそんな話をした。
どんなに思い出を大切にしたって、 そこに新しい何かは二度と生まれない。 声も、顔も、温度も、過ごした時間も、人の気持ちも、 全部、掠れていくばかりだ。
それは、嫌だった。怖かった。 帰ったって信じようとしても、 終わった姿を見るのはお母さんを思い出すから。]
……だいじょーぶ。
[頭を叩かれる感覚がして、 炭蔵くん>>66がわたしより先に教室へ入っていく。 その腕にはまだ絆創膏>>2:364があったかな。 向井くんが悪いと主張する炭蔵くん>>65だったけど、]
(76) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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あって五分。
[と、わたしはその意見を却下した。 向井くんがこんなびっくりすること望む訳ないでしょ。 わたしの中の向井くんはそういう人だ。 でも炭蔵くんの前では違うのかなって思うから、五分。
本人>>0:707は仲の良さは否定してたけど、 長い付き合いであることは言葉の端々に見えてたから。]
向井くんはつねったらびっくりしちゃうよねぇ。
[そんな話も少し前のこと。 わたしたちが目にするのは卒業アルバムみたいな教室。 そこでわたしは文字を書く。
わたしが書いている間に炭蔵くん>>67も身支度を 整えたみたいで、ファッションチェックを仰せつかる。]
(77) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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なんか、ちょっと幼く見えるね。
[留め方の問題かな。それとも眸がよく見えるから? 頭のてっぺんで固定された前髪は量が多くて、 ヘアピンだとちょっと力不足だったかなって思う。 わたしは表情を和らげながら、ヘアピンから逃れた 端の前髪に手を伸ばして、横へ流そうとした。]
よく見えるよ。わたしはこっちの方がすき。 だから……似合うんじゃない。
[わたしの返答はやっぱり自分基準で、 少し考えてから依頼主>>69に沿う回答も付け加える。
わたしたちは足跡を追った。 炭蔵くん>>68の伝えようって言葉が胸に残っている。]*
(78) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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— 3F階段前の部屋 —
[さっきは頭、今度は背中。 炭蔵くん>>71の温度が冷えたわたしの身体に広がる。 カッターを拾う姿は見えなかったけれど、 続く言葉にわたしは息を吐くのをやめた。]
ここに、明日≠ヘない……。
[何度朝を迎えてもスマホの日付は変わらなかった。 わたしたちは、同じ一日を繰り返している。 止まった校舎に明日はないんだ。 黒板に書かれた文字>>4:497を思い出していた。 わたしは顔を上げて炭蔵くん>>72を見る。]
(79) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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……うん。
[やっぱり、よく見えるよ。泣きそうな顔。 わたしは指摘することなく頷いた。 だって、きっとわたしも同じような顔をしている。
だからこのことは二人だけの秘密にしよう。 わたしは人差し指を自分の口元に押し当てて笑った。]
(80) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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[それから炭蔵くん>>73は部屋を豪華に飾りつけている。 文化祭の時、鳩羽くん情報量過多だったよね。 ごちゃごちゃとした装飾にそんなことを思い出していた。
……うん、もう大丈夫。 わたしは自分の足で、もう一人の下へ向かう。]
(81) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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[開いた窓の下を覗く勇気はわたしにもなくて、 炭蔵くんが窓枠に手をかけるのを見ていた。
そういえば、2階の窓を閉め忘れてた気がするけど、 廊下には雪が積もってなかった。 誰か>>1:649が気づいて閉めてくれたのかも。 わたしはそんなことを思う。
それから、柊くん>>4:520へ視線を落とした。 炭蔵くん>>75と一緒に雪を払い除けていく。]
うん、そうしよう。 一人は、寒いもんね。
[わたしは炭蔵くんの提案に賛成して、 二人で協力して柊くんを階段前の部屋まで運ぶ。 雪みたいな冷たさに、わたしの指先がじんと痛んだ。
なんとか運び切ると、 赤く彫られた笑顔とぽっかり抜け落ちた顔が並ぶ。]
(82) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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……待っててね。
[ここに明日≠ェ来ないなら、 待ち合わせをした月曜の放課後だって二度と来ない。
わたしは柊くんの輪郭に手を伸ばした。 指先で触れるとひんやり冷たい。]
それじゃ、いってきます。
[わたし、柊くんの名前の由来なんて知らないから、 わたしの中の柊くんは今でも春色をしてる>>0:572。
春って、あたたかくてほっとするでしょ。
鳩羽くんの隣、 手足が折れ曲がってしまった柊くんの身体には、 丁度いいサイズのダッフルコートがかけられていた。]*
(83) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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— 3階の果て —
[鳩羽くんの足跡に導かれて3階へ来たわたしたちは、 最初に二人を見つけた。
これでもう、迷いはない。 鳩羽くんと柊くんが先に明日へ進んで、 炭蔵くんとわたしは同じ道を歩いている。
わたしたちの心当たりは確信になった。]
……できることを、しよう。
[結局まともな作戦会議はできなかったけれど、 わたしの心はもう揺らがなかった。 隣には炭蔵くんがいて、未来にはみんながいる。 わたしたちは同じ方向>>64へ進んだ。]
(84) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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[音楽室は校舎の端>>0:678にある。 夜にピアノを弾いた後、わたしは鍵をかけなかった。 わたし以外、誰かが来るって思わなかったから。
ひとつひとつ部屋を確かめた最後、その果てに。 わたしたちが探し求めた人>>9はいたかな。]*
(85) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/14(Mon) 18時頃
[黒沢から聞いた、優しくない人の話。
自分勝手で、他罰的で、思い通りにならないと気がすまない人。
それが誰を指しているのか、
具体的には聞かなかったけれど、]
……俺もはっきりとは聞いてないけど、
たぶん親とか、家族……… じゃないかな。
[見放されたら生きていけない
俺はそれを聞いて、咄嗟に親だと思った。
ってのは今まで俺がそう生きて来たからなんだけど
直感はそんなに間違ってないと思う。]
[俺達未成年の行動範囲なんてたかが知れてる。
あんな空間を作り上げる黒沢が、
学校で嫌な思いしてるとは思えないし
恋愛絡みとかでもないと思う。ないよね。
黒沢を支配して根本的な価値観に影響を与えた大人。
親か、兄弟か、それに類する保護者の誰か。]
[黒沢からその話を聞いた時、
感じたのはシンパシーだった。
でも、彼女の現実を改めて理解した今、俺は憤ってる。
子どもは親に嫌われたら生きていけないんだよ。
苦しくても認められたくて必死になるものなんだ。
それをいいことに支配して、搾取して、追い詰めて
挙句の果てに死に追いやってしまうなんて、
心の底から胸糞悪いと思った。
だって俺だって多分、
もし何かが少しだけ違ってたらそうなってた。
だからこれは黒沢の為というより
自分の為の怒りなのかもしれないけど、
今はそれでもいいよね。]
[静かな呟きには即答が返って来て
俺はその反応に安堵した。
怒りを抑えた静かな声が今は心地いい。
独白めいた思いの丈に相槌を打って。]
…………うん。
でも、副会長は自分のそーゆー部分も
あんまり人に知られたくなかった気がするからさ。
変にレンが責任感じることはないと思うよ。
何も知らない奴の明るい言葉に
却って救われてたりすることもあるしね。
[鳩羽だしは、そのまんまの意味。
感情豊かで他人に寄り添って痛みを気遣える
お前がそう言う奴だから、話してもいいかなって思ったの。
きっと黒沢も許してくれるんじゃないかなって。
これを信頼って呼ぶならそうなんだろうね。
…言わせんなよ恥ずかしい。]
[そんな悪友兼類友兼戦友兼…長えよ。
いいんじゃないもう親友で。
とにかく共に盃(紅茶●伝)を交わしたマイフレンドは
あながち冗談じゃなさそうな口振りで言うものだから、
俺は呆れたように苦笑する。]
殴りこみて。
行くなら加勢するけどさあ、
俺、副会長んち知らないもん。
[まあ気持ち的には俺もそうしたいくらいだったけど
きわめて現実的な問題が阻んだ。
それにもし知ってたとしても、
ひとまずは黒沢の容体が気にかかる。
なので電話を切った後は病院に向かうつもりだ。**]
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―― 音楽室 ――
[ ここには私をとがめる人なんていない。 だから私は窓のそばで外を眺めながら、 立ったまま、お行儀悪くクレープを食べてた。 責任を持って食べなきゃいけない、自己責任クレープ。 冷蔵庫にある全部を食べ切るには まだまだ時間がかかりそうだけど、 大丈夫。ここの時間は止まってるもの。 芽衣は一蓮托生って言ってくれたけど、 責任をもって私が全部食べるから、安心してね。 だって私たち、友達でしょう? ]
(86) 2021/06/14(Mon) 19時頃
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[ 音楽室の鍵は開いてた。>>85 でも、私はこの校舎の主だから、 鍵がかかっていたとしても、きっと問題はなかった。 自覚してしまえば簡単なの。 ほら、自覚してなかった時だって、 文化祭になったり、写真が飾られたり、 屋台が3-9のばっかりになったりしたでしょ? 自覚してしまえば、ため息は聞こえなくなったし、 カッターナイフも消えた。 この校舎は私の意のままだ。 この校舎で、私の思い通りにならないものは ]
(87) 2021/06/14(Mon) 19時頃
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来てくれたんだ。
[ 扉が開く音がしたから、私は振り返って微笑む。 この校舎で、私の思い通りにならないもの。 この校舎に残った最後の2人。 でも、2人はこんな校舎の端っこまで会いに来てくれた。 だから私は嬉しくなってしまう。 炭蔵君は見たことのない髪形をしてて、>>67 最後に珍しいものが見れたなって、 私、やっぱりご機嫌になった ]
(88) 2021/06/14(Mon) 19時頃
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大丈夫、先に帰ったみんなは無事だし、 2人ともちゃんと帰れるよ。 でも、みんなをあんな目に遭わせちゃったのは、 本当に申し訳なかったと思ってる。 私、あんなことになるなんて全然知らなかったの。 だからって、許されることじゃないけど。
[ きっと、2人が一番気になってると思うことを、 私は最初に伝える。 ここに来る途中に、鳩羽君と柊君のことも きっと見つけたよね。 もう、校舎にいるのはここにいる3人だけ ]
(89) 2021/06/14(Mon) 19時頃
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2人が最後になったのは、 きっと私が2人には最後までいてほしいと思ったから。 でも、もうこれでおしまいにする。 長いこと引き留めてごめんなさい。
[ 食べかけのクレープを握りしめたまま、 私は2人に頭を下げた。 私が謝ってたって、みんなに伝えてもらえるかな。 私には、もうその機会はないから* ]
(90) 2021/06/14(Mon) 19時頃
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[責任感じるな、みたいな言葉
俺の知らないところで、言われてたこと
俺は、自分で聞いてないから知らないしさ。
それでもごめんな、って思っちまうんだよ
優等生じゃないけど
案外さ、責任感は人一倍強いのが俺だから
だからさあ。
今はユキの怒りが俺と同じ方向向いてるって
俺は信じて話してっけどさ。
実は 自分のための怒りだったとかさ
そもそもユキの境遇だとかさ
先にそーゆーこと聞いてたら
あーたぶんユキんち殴り込みにいくわ。
これは、10割本気で。 ]
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