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[そんな矢先に、そんなこと、いうから
なんッでだよ
どこがだよ!!
[褒められるのには慣れてないんだよ(n回目)
シンよりすごいところがどこかにあるだろうか。
もしかしたらあるのかも?あるんじゃねえか?って
一瞬頭の中を探したけれど、思いつかねえ。
だから俺は、挙動不審だ。]
んなことねーよ
シンのほうがすげーし、
多分、すごく、頑張ってるよ。
[シンの歩調に合わせて、ゆっくりとなりを歩く
静かに笑ってるシンを見て、俺は言う。
やっぱりきっと、ちょっとだけ笑って。
自虐的だとか卑屈だとかそういう顔じゃねえよ?
だって、本当に、そう思ってる。 ]
………苦しかった?
今も、苦しい?
[何が、とは聞かなかった。
どう捉えてくれても構わなかった。
何が?って聞き返されるのならばそれでもよかった
服の下、首がどうなってるのかは知らない。
だけど苦しそうだったシンの人形は見たしさ。
メイに聞いた話だって、あるし。
でも、本当のシンが、
俺にどう話してくれるのかを
ちょっとだけさ、知りたかったんだ。
どんな答えでも、俺はシンの言葉をまっすぐ聞くよ。 ]*
メモを貼った。
[ じっと、その深い色の目を見てた。
── 少し前・病院内 ──
[ ……なんか楽しそう。って、
うっかり言ったりはしなかった。
ただ、短く返された言葉を拾って、
「そう見えた」……そっかあ。
「人のことよく見てるんだね」とは、
そのとき、綿見には言わなかった。
同族嫌悪という言葉が浮かぶことは、
慎一の中ではついぞなかったが、
それでも、慎一も考えたわけだ。]
[ たとえば。腹の奥底に飼うむなしさの話。
慎一に深く根付いて吐き出せないそれを、
あるいは似たものを内側に抱えてるなら、
やっぱり、慎一は「よかったね」と思う。]
……あはは、
じゃあ、似たようなもんだなあ。
少しだけでも、綿見が、
身軽になれたんならよかった。
[ それともたまには、あのときみたく、
「むなしいね」って言い合ってみる?
……そんな日が来ないのが一番だけどさ。]
破裂する前によろしく。
……やさしく、な?
[ そんなこと言われたって怖いものは怖い。
いくら似たものを抱えていたって、
きっと慎一と君じゃあ怖いものは違う。
結局のところ互いに何を飼っていたのか、
その形そのものは知らないまんま、
慎一は綿見と番代に手を振って立ち去った。
お礼≠ニついで≠買うために。*]
メモを貼った。
[ それで今、缶飲料を抱えて、
12月の冷えた空気の中にいる。]
── 現在・病院外 ──
……うれしいんだ、へえー。
[ わいわいと騒がしく言うやつがあったから、
慎一はわざとらしくよろめいて笑った。
いつものおふざけみたいなノリに、
慎一も同じように笑っていたけれど、
半信半疑であったなら仕方がない。
世界と同化する説なんてちっとも知らず、
悪い気分じゃないから慎一は笑ってる。]
……男前だよ、
その傷がなけりゃな。
[ すっかりあいた片手で、
デコピンのひとつでもしてやろうか。
もちろん、傷のとこは避けるからさ。
別にあながち冗談ってわけでもないから、
鳩羽憐に春が訪れない理由を論ずる会なら、
後日別途開催してもいい。喜んで参加する。
返ってきたどっちつかずの返答に、
慎一はへらりと笑って言っただろう。]
おまえがどうしたいか、
聞いてみたいと思ったのに。
[ やっと思ったんだけどな。
冗談みたいに軽い口調でね。
去ったあとでの校舎の出来事。
当たり前なんだけど、慎一は知らない。
なんかうれしそうだなあって、
不思議にさえ思いながら、また一歩歩いて。
コーラを右手に左手に持ち替えたりして。
だから、いつものどおりならさ、
適当にじゃれあうような話、
このままずうっとしててもよかった。
それでも慎一はきっと楽しい。]
[ でも、ほら。せっかくの機会だ。
勢いがいいなあって思ったし、
慎一は一瞬驚いたけど、聞くなら答えるよ。]
いっつも笑ってるとこ。
こっちがつられて笑っちゃうくらいに。
人前で機嫌よく振舞えるとこ。
ヤな顔もせず人に手ぇ貸せるとこ。
相手の「してほしいこと」ばっかり、
うんうん考えて、しまいに叫びだすとこ。
……そいつの顔もわかんねえのに。
[ 「まだいる?」って慎一は笑った。まだあるよ。
いっこも嘘じゃない。こっちもそんな顔してる。]
……どっちがすごいとか、
どっちのががんばってるとか、
言い合ったって、不毛だって。
素直に褒められとけって。
[ 本心だったのかもしれない。
あるいは励ましだったのかも。
だけど今だけは、
その屈託のない笑顔が刺さるなあ。
「すごく頑張ってる」って、
何を指して言ってるんだろう。]
……がんばってるよ、俺も。
みんな何かしらがんばってんだろ。
[ ぶりかえしたように、喉元が痛痒くて、
あいているほうの手でセーターの襟元、
なんとなくいじってみたりもするけれど。
「苦しい?」投げかけられた問いに、
慎一は一瞬たじろいで──、人形かな。それとも?
なんでそれを聞かれたか、考えたりもする。
おもしろがるんでもない、
ただまっすぐな目が、こっちを見てる。
……苦しかったよ。
今は──、少しマシ。
今は夜で、ここは静かで、
目の前におまえしかいないから。
なあ、それ。俺の人形見たから聞いてる?
[ 「俺、そんなにひどかった?」って、
慎一は苦笑してもうひとつ質問を挟んだ。
嫌とか怒ってるとか、そうじゃなくて、
ただ、これでも慎一は隠してたつもりだったから。
ことごとくバレてるなあって自分に呆れただけ。]
[ だからちょっと諦めたみたいに、
慎一は笑いながらその話をしている。
自分の話。うまく説明もできないから、
他人にする気のなかった話の断片。]
……心配してくれてんなら、
マジで、あんまり気にしないで。
なんていうか──、そういうもんだから。
たぶん、ちょっと脆いんだよね。俺って。
別に、悪者がいるような話でもないし。
どっちかっていうと、そんな傷作ってくる、
おまえがどうしたんだって聞きたいくらい。
[ 後半部分は大まじめにね。前半もまじめだけど。
笑みを引っ込めて心配そうな目を向けていた。**]
メモを貼った。
── 現在・病院外 ──
う、嬉しかったらダメかよ!
[なんてさ。
巫山戯るのなんて永遠にできるんだ
鳩羽憐に春が訪れない理由を論ずる会は
ぜひ開催して欲しい。ついでに春持ってきて。
ああほんとうにさ。
永遠にやってたいけど、
今は、本当に嬉しがるときじゃないから
まだ帰ってこない仲間が帰ってくるまで
とりあえず続きはさ、お預け。 ]
[本心と称賛以外のナニモノでもなかった
だから「がんばらないと生きていけない」とかさ
「そんな世界を苦しく思う気持ち」とかさ。
……それでも、がんばりたい気持ち、とか。
………ほら、やっぱり判ってないんだよ。俺。
知ったとて「頑張ってるからえらいよ」って。
「でも無理に頑張らなくてもいいよ」って。
そんな言葉が口から出かねない俺は、
喉元に掛かる手、大きな意味に気づけない。
たぶんさ、そうじゃないだろ。 ]
……そっか。
[苦しかった。って。
けど、「今は」少しマシだって。
シンの答えは、シンプルだった
それから苦笑とともに質問をひとつ、ふたつ。]
うん、人形、見たよ
苦しそうだった。
俺、シンがあんなになるまで
シンのことさあ、ちゃんと知らなかったなって
…………………うん。
それでもさ、教室、来てくれようとしてたろ
知ってるよ。嬉しかったよ。
[やりきれない想いとか、
まとまらない感情は沈黙に乗せた。
メイからちょっと聞いたシンの断片については
今は、伏せておくことにする。]
[そういうもんだから…っていう
シンの話も聞いてさ
えらい、とか頑張ってる、とか、すごいとか、
そういう客観的に誰かを測る言葉じゃなくて
大丈夫か、とか無理すんなとか、
そういう心に負担を掛けちゃう言葉でもなくて
俺の「うれしい」っていう気持ちを送るよ。
ああ、でもさ、 ]
心配は、させてよ。
心配は、したいの、俺が。
………なんっつーかなー
別に馬鹿な話、してるだけでも
日常はさ、すげー楽しいけど
でもさー シンのこと全部知れてねーみたいで
それはなんかめっちゃ悔しい
[悔しいって言いながら
それなのに顔は笑ってるから、
俺の感情はやっぱどっか忙しい。
っつうかなんだろうな、言葉だけ切り取ると
彼女みたいじゃん????って思うから
あっそういう事?俺に春が来ない理由。]
俺の傷?
ああ、うん、……………うん。
あっちの世界で、傷つけた名残だと思う。
俺もさ。
シンとは別かもしんないけど
やっぱり息苦しいなって思うことあんだよ
………いや、あった、んだよ。
自分と向き合ったら空っぽで、
いつだって取り繕ってて、さぁ
イヤだって思っていきてきたわけじゃねーけど
それじゃだめだなって思ったのは確か。
ああ、でも
シンと居た時は、
深呼吸なんてしなくても、息、吸えてたから
だから、うーんそうだな、
……ありがと。
[息苦しい自分はさ、
「昨日」までの世界に、置いてきた。
だから今は、「ありがとう」それだけ。
それでもいつか寄り添ってくれるっていうなら
ちゃんとイチから全部、話すから。
だからシンのことも、教えてよ。 ]**
── 現在・病院外 ──
ダメとは言ってねーだろ。
俺もうれしかったよ。……うん。
ただ、ちょっと驚いた。うん。
[ 自分で言いながら納得するように、
慎一はうんうんうなずいていた。
たぶん、慎一もわかりやすい方だろうけど、
鳩羽の背後にはたまにしっぽが見える。
びゅんびゅん振れてるそれを見て、
驚いたとしても、ヤなはずがなかった。]
[ だから本当に、女子ってわからない。
本当にみんな残らず帰ってきて、
気兼ねなくうれしがれる時がきたら、
男子みんなで顔を寄せ合って話し合おうか。
女の子は秘密のお菓子パーティーをしたという。
男の子にもなにかがあってもいいだろう。
……それで対抗できるのか? わからないけど。
しかし困った。
あいにく当方、春は在庫切れだなあ……。]
[ こんな話はまた今度でもいいね。
「知らなかった」と鳩羽は言う。
知らせようとしなかったのは慎一だ。]
……知ってもらう気なかったからね。
だってさ、変に気遣われると、
俺、変な奴みたいじゃん……そうなんだけど。
[ ちょっと言いづらそうな何かとか、
間のあいた相槌とか、そういうの全部、
なんだか少しもどかしかった。
モヤモヤさせたいんじゃないんだけど。
人との向き合い方がへたくそでごめんね。]
[ 教室に辿り着けなかった慎一は、
そのことを指摘されて笑う。
ああ、遠かったなあ……、
集まろうって言うくせにさ、
時間の決め方、すんげー雑で、
なんなんだよって思ってたの。
うれしいって、おまえ、
マジで人がいいというか……、
[ おかしなことを言うなあって思ってた。
なんていうか、再会の「うれしい」も、
今の「うれしい」もピンとこなくて、
慎一はただ、いいやつだなあって思って。]
[ ……思ってた。
「心配したい」と言われて、
人が良すぎるって思い始めるくらいには。]
そーいうとこだよ。
すごいなっつってんの。
あれもこれも人のこと心配して、
全部知っても、疲れるじゃんか。
[ 少なくとも慎一にはできないソレ。
確かに、そういうことかもしれない。
みんなに優しい男はモテないって聞いた。]
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