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─命くん─
「うん…私も、今まで生きてきた中で
今が一番嬉しいよ、命くん。
ずっと、ずっと大好き…。」
ずっと一緒に。ずっと、いつまでも。
今まで生きてきた中で今日が一番嬉しい日だけど、一緒に過ごしていく中で一番嬉しい日がもっともっと増えていけばいい。
大好き。その言葉が胸に沁みて言葉が詰まってしまいそうになるけど、それでも同じかそれ以上の気持ちを伝えたくて言葉を重ねていく。
浮かべた微笑みは可愛らしいけどほんの少しぎこちなくて、いつかもっと微笑む日が増えてくれたらと願う。
そして、微笑みを増やすのが私であればと願いは更に増えていってしまうけれど、それだけ彼と一緒に生きていきたいと願ったから。
「ん、ふぁ…っ?」
両手を繋ぎ合わせながら、言葉以上に唇を重ね合わせていく。
唇が塞がれてない分、擽ったさから変に高い声が漏れる。
首筋にも口付けられて、いい香りなんて言われるとなんだか妙に恥ずかしくて首元まで赤くなってしまったけど、キスが優しくて振り払う事はない。
「ぁ… 命くん…?」
手のつながりが解けて抱きしめられると、ほんの少し身じろぎした。
背筋を撫でられ、肩に触れられて。私の形を確かめるような手つきと自分とは違うその手の硬さにまた緊張してしまう。
正直、家に来てって言った時にはここまで考えていなかった。
無事を喜んで、一緒にいたいと願って、これからも一緒だねって。
何よりも命くんが無事である事に感謝していた。
でも、じゃあ何も期待してなかったかと言えば嘘になる。
まさかファーストキスに止まらず、プロポーズに至るとは思ってなかったけれどそれだっていつかはと夢見た事。
じっと命くんを見上げる。
ほんの少し眉を下げた、困ったような顔で。
けれど期待に満ちた潤む瞳で。
「…あの。 電気…消さない?」
だから、緊張にかすれる小さな声でそんな事を言うことになった。
この続きを、想像してしまえたから。
そして望んでもいたから。*
【見】 公安部 カガ
(@9) 2023/08/19(Sat) 21時頃 |
【見】 公安部 カガ
(@10) 2023/08/19(Sat) 21時頃 |
─七尾ちゃん─
まあ、学校は今となってはバッキバキやで!状態らしいので、授業とか講義とかどうなるんだろうねえ…な私なんだけど。
登校日とかあるって事は、もしかしたら無事な箇所があったのかそれとも青空教室とか別の施設を借りてやってるのかも。
やっぱり情報網が大混乱だよね。そういう情報はこちらには回ってきてなかったみたいだし。
その中で命くんの安否が書いてあったから、返事をしようとしてちょっと首を捻って悩む。
もう今となっては隠すようなことではないし。
『大和くんとは今、一緒に住んでるよ。
とにかく七尾ちゃんが無事でよかった。』
『(嬉しい、とニコニコするケサランパサラン)』
『窓ガラス大変だったね。今はもう塞いでる?
段ボールとかで一時凌ぎできるって聞いたけど
虫除けにはミントが良いって聞くよ!』
『(大丈夫?と心配するケサランパサラン)』
どうしてもこの季節、蚊をはじめとした虫の被害が気になるところ。
虫除けとか蚊取り線香とか、そもそも早く窓が塞がると良いなと願ってはいる。
けど流石にそれはなんとも…!
『何かあったら遠慮なく相談してね』
とは伝えておこう!*
─支援活動とか─
辺りに「んまぁああっ!」とか「きゃっ♡」とか「あらあら!」なんて声が飛び交う中、された私は真っ赤になって機能停止。
両手で顔を覆って恥ずかしがってたりしたけど命くんはその後大丈夫だったかな?
なお私はおばさまがたの良いおもちゃ…ううん、「若い人は良いわね〜!!!」を全身に浴びることになりました。
まあ、恋人いたのね!とか、お父様はご存知かしら!からの、うちの嫁に〜が無くなったのは良かったんだけどね!
そっちはそっちで揶揄われてないか心配です。
命くんも相当恥ずかしがってたみたいだし…。
後にちびっ子たちが同じセリフを言いながらぎゅーしてたのでさらに心配です。
う、嬉しかったけどぉ…!
あとちょっとお父さんにも飛び火したみたいだった。まあ仕方ないよね!
家ではソファの前に情報誌が増えている。
更に専門学校の本とか資格の本がひっそりと増えてたりする。
こんな日々だからこそ、未来のことを考えるのは楽しいし生きる糧になるよね。
私も前向きに専門学校の事は考えるようになった。
でも、調理系じゃない。そしていま二択でちょっと迷ってるところだったりする。
理容師と美容師。気持ちは、理容師に若干傾いてるけど。
ただどちらも突発的に思った事だから、まだ自分の気持ちは固まってない。
そんな事は、多分話してなくても命くんには伝わってると思う。
聞かれたら答えるし、そうでなくてもくっついてる。
私のお気に入りは膝の間に座ること。
そんな姿勢で本や新聞を読んでるから、色々伝わることもあると思う。テレビを見てる時もそうだなあ。
ただこの姿勢の困る事は、直ぐにキスしたくなる事だよね。
真面目に勉強する時は(限りなく少ない時間なんだけど)ちゃんと対面か距離を置いて座って机に向かうのが一番見たい。*
――珊瑚さん――
[
既に目元から頬に流れる熱いものがあったがきっと雨漏りだろう。
恋も愛も知らなかった大和にそれを教えてくれる珊瑚は本当に掛け替えのない存在で、決して喪ってはならない存在だと思い知る。
言葉を重ねるほどに言葉の甘みが増していく。
口づけも香りも甘く感じるのは頭がそう感じているだろう]
珊瑚さんの声、好きだよ。
甘くて切ない響きがする。
[
高くなる声にもっととキスを強請ってしまう。
最初は元気な姿が見れてそれで良かったのに一緒にいればいるだけどんどん幸せになっていって、欲が段々と深まっていってしまう。
本当はもっとロマンチックな舞台の方が良かったはずなのに、生命の危機に触れたということもあって歯止めが利きにくく――]
……うん。僕は見ていたいけど。
消そうか――珊瑚さんが可愛すぎて困る。
[
リモンコンで電灯を消灯すると部屋は一気に暗くなったけれど窓から差し込む月の灯りが淡く珊瑚を照らしてくれている。
掠れる声が消えるようにまた唇を重ねて求めていく。
『大丈夫?』と問いかけながら少しずつ肌に触れ、身を包む衣を乱していく。
暗がりの中での営みはゆるやかに熱を昂らせながら続いていった*]
―― 三度目の襲来から六日目の夜 ――
[あの怪物があたし達の街近辺に現れる間隔は
比較的短くて。平均して一週間前後で
起きてたように思う。
だから、もしまた来るのなら。
…昨日から、おとといから、
ざわざわと胸の内に不安を飼っていた。
今度もしまたこの街に現れたのなら。
…………考えたくないのに、
考えてしまって夜に何度も目を覚ました。]
[ようやく電力が復旧してきたけど、
安定供給まで行くにはもう少しかかるらしくて。
部屋の電気は夜の早いうちから消すようにしていた。
だから、外からの光が窓から良く入ってきて。
いつの間にか夏休みは終わって、
残暑すらこの街から逃げ出してしまった様に
夜は涼しく過ごしやすくなっていた。
遠くで鳴く虫の声は災害後と変わりなく思う。
…虫は、変わらないんだな。なんて
ぼんやりと考えながら、ふと
窓の方へと身を寄せる。]
[教室からクラスメートの半分くらいがいなくなった。
街から避難したり転校したり
被災したり、…しんでしまったり。
精神的に参ってしまって、だったり
その理由は色々だったけど。
残ってる人も皆、表情は一様に暗かった。
あたしと同じように、
これからどうなるんだろうって
不安が何処かしら顔に浮かんでいて。
本当に…教室は様変わりしてしまって見えた。
せめてもう、こんな事は起こらないで欲しい。
心の中で何度も祈っているけれど、
……きっとまた何か、起こってしまうんだろうって
そんな予感めいたものも感じてしまっていた。]
[窓の外を見つめる。
四階からの景色でも、街の様子は変わって見えた。
一週間も経ったから大通りだとかは舗装されてきた
けど、民家や住宅にはまだ爪痕が残っていて。
窓のへりに頬杖を付きながら
ただただぼんやり眺めてしまった。
もし、今度はうちがああなってしまったら… ――― ]
[ぶんぶんと頭を振って嫌な想像を追い払う。
溜息を吐きながら今度は目線を上げた。
そこに広がるのは秋の夜空。
きらきらと輝く星は、
前に部屋から見上げた時よりも
うんと数を増やしている様に見えた。
…多分、街の明かりが減った?から?かな。
それとも]
………空に昇っちゃったから、かな。
[暫く眺めてから窓を離れて。
ベッドに倒れ込めば、頭から布団を被った。
そのうち暑くなって手足とか出しちゃうけど、
観念したように眠りに落ちていって。
……やっぱり何度か目を覚ましちゃうのだけど、
それでも。その日の夜は静かに
更けていった。**]
――支援活動は続く――
[
それを言った大和もおばさまたちの反応でこうかはばつぐんなダメージを受けていた。
珊瑚が真っ赤になって両手で顔を覆ってしまったりしてたけれどそこで大和がそんな行動をしていたら怪しまれるだろうと頑張って耐えていたが顔は耳まで真っ赤だった。
でもそれで他の男の気配が珊瑚に近づかなくなったならそれで良かった。
珊瑚は自分の嫁だとほぼ公言した形ではあるが――ごめん、独占欲が強かったんだ。
その後、お義父さん絞られたけど、しかもまだお義父さんじゃないって言われたが何れはそうなるので心の準備だけしていってほしい。
過労と心労で倒れないかだけが心配だった。
あと仕事量がまた少し増えたのもあったが大した問題ではなかった]
[
最初は調理系かと思ったけれど見ている情報誌と話を聞いていると理容師と美容師のどちらか迷っているようだった。
どちらも出来る範囲は定まっているが理容師のほうが若干難しいらしい。
ある時情報誌にダブルライセンスなるコースがあって通常二年かかるところを三年で両方の受験資格を得られるようになるらしいけれど、最終的には珊瑚がどうしてその道に行きたいのかとか将来何をやりたいのとかで変わると想うので適時話を聞いたりしていくつもりだった。
珊瑚のそうした情報誌と共に大和のは建築系の仕事についての本が多かった。
将来平和になったら街の復興が始まるしその時に珊瑚と一緒に住む街を作ったり住む家を設計したりしたいのだけど結構難関なので悩んでいる]
[膝の間に座る珊瑚を後ろから抱きしめて肩から覗き込んで一緒の本を読むのだけれど読む速度は珊瑚に委ねている。
新聞もそうだしテレビの時は反対に大和が背もたれ代わりになっている。
引っ付いていると幸せだった。
珊瑚はわりと頻繁にキスを求めてくれるし大和もしたいから、珊瑚が振り向いたらそれは珊瑚がキスしたいという合図だと思っていて、大和は耳朶や首筋にキスをして強請るのだけれどまたすぐに身体を重ねたくなってしまうのは難点と言えば難点だろう。
真面目に勉強する時もあるし対面に座る時も距離を置くときもあるけれど気づいたら手を伸ばして手を繋いでいるし最初からくっついている方がまだ効率的かもしれない。
やるときに集中していればいいんだよ、多分。
ところでくっついている関係でこれも自然にだけれど一緒に寝るようになった。
毎日じゃないけれど腕の中に珊瑚を抱いてソファの上で寝るのは気持ちがいい*]
メモを貼った。
メモを貼った。
─命くん─
ほんのり海の味がして、ああ、生きてるんだなってなんだか嬉しくなる。
でもそう。最初は無事を喜び合うだけで十分だと思っていた。
でも、好きな人とこうして隣り合って、触れ合って、想いを伝えるだけじゃ飽き足らない。
そんな私の欲深さを思い知る事になる。
それに──。
「…そ、ゆ、こと、言われると…恥ずかしい…。」
ゆるく拳を握って口元を隠してしまう。
そんな甘い声、出してた?
だけどいま、もっと命くんに触れてもらいたい。
お互い生きてる事を確認し合いたいし、もっと甘えたい。甘えて欲しい。もっと沢山キスがしたくて──命くんのしたい事全部受け止めたい。
ロマンチックさとはかけ離れてるかもしれないけど、思えばあの危機から逃れた事自体がロマンなのだと思う。
危機から脱した果てに再会した二人なのだから、もうそれ自体がロマンの果て…なのかも。
恥ずかしいけれど嬉しくて、自分の体が全く知らない反応をする事に、自分の口から聞いたこともないような甘えた声が漏れる事にも驚いて。
とても甘くて、幸せな痛みがある事も知った。
──医者の娘として一つだけ懺悔するとするなら、流石にこの事態を想定してなかったから、命くんが持ってなかったらそのまま…したかもしれない事だけど。
翌朝、再び顔を見合わせた時。
色々思い出して真っ赤になってしまう私は、きっとこの災難の中でいちばんの幸せ者なのだと思えた。*
─支援活動とか─
お父さんはほっとけば良いと思うよ!
命くんに仕事任せすぎ!…とは思うけど、それだけ認めてくれてるって事なら…でもねえ?
ちなみにお父さんの彼女さんは看護師の方だった。成り行きで知る事になったけど、だいぶ若い人だったからまあ17の娘がいたら嫌だよねえ…と何だか納得しちゃった。
もちろん、それでも良い!って燃え上がる人もいるだろうけどさ。
今となってはそれで良いかもって思ちゃう不思議。
自分が幸せで満たされてると他のことを考える余裕も出てくるんだなって思てしまった。
でも不安な日々は続いてもいる。
いつになったら、ロボットの襲来は終わりを迎えるのだろう。
若しかしたらまた街が潰されるかも。
今度は自分たちの家が。病院が。ううん、もっと被害は拡大して世界滅亡…?
そんなことを考えちゃう時は、命くんにぴったりくっついてる。
特にそんな事を考えちゃうのは夜が多いよね。
暗い時間帯、いつ何かが消えてもおかしくない。
そんな不安に駆られて命くんの寝ているところに潜り込んでは安心してる。逆のことがあってももちろんおいでってするけど、命くんは大丈夫なのかな?
…命くん依存症かも。なーんてね?
「災害支援で活動してる理容師さんたち見たの。
髪の毛整えたり、髭を剃ってあげたりして
身だしなみを整えてあげてたんだ。」
ある日、私はそんなふうにどうしてそれを目指そうと思ったのか告白し始めた。
「確かに利用者さん、さっぱり気持ちよさそうでね。
災害時だけじゃなくて要介護の人に
訪問理容室したりもしてるらしくて。
こういう仕事カッコいいな〜と思ったけど
圧倒的に男性の利用者が多い分野だし
普段の仕事なら美容師さんの方が良いけど
そうなると、剃刀を扱えないから…。」
髭を整えてもらってさっぱりした利用者さんの姿は印象的だった。
でも、小さい子の髪の毛を器用に編み込んであげてる美容師さんも素敵だった。
むーん…と、襲撃の起きてない平和な日に悩むけど。
「…理容師さんなら、命くんの髭だって
整えてあげられるんだよなー、なんて。
頑張ってダブルライセンスコース狙おうかなあ…?」
どちらもできるならそれも良いと思うし、あとは私の頑張り次第だろう。
本来なら災害時のことを念頭に仕事を考えたりしないから、普段の仕事も考えないといけないよね。
でもそういえば、命くんは建築系の進路に進むのかな?
もし難しいから悩んでると聞いたなら、頭とか勉強とかじゃ私は役立たずだけど。
「資格合格したら、私がなんでも
いうこと聞いてあげるとか? なーんて!」
なんて、そんなことを言って笑ったりもした。
割と本気だけどね!
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