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【人】 綿津見教会 マナ
(152) 2021/11/14(Sun) 12時頃 |
メモを貼った。
[ 大丈夫って言う莉希ちゃんの表情を、
あたしは慎重に確かめた。
本当なら、いいけど。確か莉希ちゃんは演劇部。
本当の気持ちを隠すのはきっと上手だと思う。
和歌奈ちゃんは天文部だったと思ったけどなあ。
飛び降りちゃうくらいの何かを抱えてたこと、
あたし全然気づかなかった。
あの校舎でだって、
校舎の主はあたしじゃないかと思ってたくらいだもん。
まあ、あたしがそんな風に思ってたのは、
誰にも死んでほしくないっていう願望も籠ってたけどね。
でも、それくらい、
あたしは何にも気づかなかった。気づけなかった ]
多分だけど、自分があの校舎の主だってこと、
和歌奈ちゃん気づいてなかったと思う。
[ 演技だったら?和歌奈ちゃんは役者さんになれると思う ]
無意識で、他の誰でもない、あたしたちを選んで、
呼んでくれたんだもん。
意味はあったって、思いたいなあ……。
[ それもやっぱり願望込みの推測だ。
だってもう帰ってきちゃったあたしたちにできるなんて、
それくらいだもん。
願うこと。祈ること ]
うん、ありがと!
[ あたしも、自分を責めちゃ駄目。
莉希ちゃんの言葉にこっくり頷いて ]
それだー!
快気祝いと打ち上げ!
[ 莉希ちゃんナイス!
あたしはぺちぺちと莉希ちゃんの背中を叩いた
そうだよ、他にもあるじゃん。
願うことと祈ることだけじゃない。
もっとあったよ。和歌奈ちゃんのためにできること ]
今は、待ってることしかできないけどさ、
和歌奈ちゃんが帰ってきたらおかえりって出迎えて、
和歌奈ちゃんが帰ってきて良かったなって思えるように、
この世界がもうちょっと居心地よくなるように、
できたら、いいよね。
[ ちょっと様子を見てくるって体を離した莉希ちゃんは、
あたしにだって悩みがないわけないって言う。
うん、そうだねー ]
あはっ、それ、褒め言葉だよー!
だってあたし、ずっと悩みがないやつに見えるように
振舞ってきたんだもん!
あんな世界に行かなかったら、きっと言わなかったよ。
[ あの世界に呼ばれた意味、
あたしにとってもあったんだなあって思う。
あの世界に行かなかったら、
きっとあたし、本当は生きたいって思ってることにも
気づけなかったよ ]
[ 生きてる限り、ないわけない。
誰にだって悩みがある。
それはきっと、莉希ちゃんも。
だからさ ]
この世界がもうちょっと居心地よくなるように
できたらいいって言ったけどさ、
それ「和歌奈ちゃんにとって」ってだけじゃないんだ。
[ 悩みがないわけない莉希ちゃん。
あたしと同じ、あの遺書メールに共感してた荒木君。
他のみんなだって。
悩みがないわけない。だって生きてるんだもん ]
みんなにとって、もうちょっとここが
居心地いい世界になったらいいよねー。
もちろん莉希ちゃんにとっても。
だって莉希ちゃんは大事な友達だし!
だからあたしにできることがあったら呼んでくれよな!
[ みんながもうちょっとこの世界で
呼吸がしやすくなるように。
そのためになにかあたしにできることがあるなら、
夏見は全力で馳せ参じますので!
それで、あたしのことも助けてね!
だってあたしたち友達だもんね! ]*
[ 莉希ちゃんと見送って、しばらくして。
あたしもちょっと寒くなってきたし、
煙草を吸うわけでもないので場所を移そうかなって
思ってた時だった。
墨鳥君の姿を認めて、あたしは目を丸くする。
なにしろ莉希ちゃんのメッセージを最後に
グルチャは動いてなかったから、
他に帰ってきた人がいるなんて思わなかったんだ ]
墨鳥君、おかえり!
[ あたしはそう出迎えて、
待つしかできないって言葉に頷く
先に帰ってきちゃったからね。
今は待ってることしかできないね。
歯がゆいけど。
[ 戻ってくる気がないかも。
そんなこと、望んでいないのかも。
墨鳥君の言葉は後ろ向きっぽいのに、
なんだか力強い ]
どうだろねー。
そりゃ、死にたかったからあんなことしたんだろうけど。
だから、少なくとも和歌奈ちゃんは
戻りたくない、って考えてるとは思うけど、さ。
でも、無意識のどこかで、
迷ってるんじゃないかなって思うんだよねー。
心のどこかに死にたくない、
引き留めてほしいって気持ちがあるから、
あたしたちは和歌奈ちゃんの世界に
呼ばれたんじゃないかって思うんだ。
[ あたしはそう思うけど、
墨鳥君はそういうのはどうでもいいみたい。
知るかよって、ばっさり。
和歌奈ちゃんの深層心理の真相なんかどうでもよくて、
墨鳥君が帰ってきてほしいと思ってる、それだけ。
めっちゃシンプルだった。
シンプルって強いな! ]
あはっ。それもいいと思う。
死にたかったのにって恨み言言われたら、
そんなん知るか!って言う役は墨鳥君ね。
[ あたしはそう言うと、
今度こそ病院内に向かう。
お母さんの持たせてくれた夜食、食べないと。
手術室前の待合スペースで、
そんなことをやる度胸はいくらあたしでもない。
自販機横のベンチなら許されるかなあ。
飲んでいいなら食べてもいいんじゃないかなって、
あたし病院内の自販機コーナーに向かった ]**
メモを貼った。
[私は別に天才子役というわけではなかった。
台詞だってすぐには覚えられないし、すっと役に
入り込めるわけでもない。
何度も何度も読み込んで、演じる役の背景や
気持ちを理解して、ようやくって感じ。
それでいて自分で発した言葉が自分の胸を抉って
いるんだから、役者は向いてないって思う。
だからとっさに上手く隠せない。
ううん、そもそも隠す必要はなかったよね。
大丈夫っていった言葉は、嘘ではないから。
だから浮かべた表情は造り上げたものではなく、
いつも通りの平塚莉希だったはず。
[校舎の主だと気づいていなかった。
そう思えば和歌奈さんの態度に違和感がなかった
のも頷けて]
そういうものなのかな。
じゃあ現れた卵は驚かせる為とか楽しんで
もらう為とかそういうものじゃなくて、
和歌奈さんの深層心理の現れ…になるのかな。
[何を教えて欲しいのと問いかけたそれ。
和歌奈さんの心の声、ともとれるけど。
そういう言葉をよく向けられていた和歌奈さんを
思い出すんだ。
何かそれと関係あるのかな。]
[でもどうしたって推測の域を出ないから、
意味はあったとだけ納得させて。
こっくりと頷く七星さんに良かったというような
笑みを向けた。]
[大賛成してくれた様子の七星さん。
背中がちょっとくすぐったい。
うん、そうだね。
二度と変な気が起こらないくらい、
私たちがいるよって伝えたい。
[もし荒木君がめんどくさがったら引っ張って
来てね、なんていいながら。
星が瞬く空の下で、今のこの気持ちが届けば
いいななんて、眼を伏せた。]
[誉め言葉だと七星さんは言う。
そう見えるように振舞ってきたと。
性格は元来のものだと思っていたけど
それも違ったということかな?]
七星さん役者になれるんじゃない?
[昔のことを知れたなら、同じことをまた言う
自信はある。
もう演劇部ではないから、勧誘は出来ないけど。]
あはは、うん、ありがと。
私だっていつでも呼んでいいんだからね!
[そう言ってくれる友達がいることが嬉しい。]
生きていると苦しいことや辛いこと、
沢山あるけどさ。
居心地いい世界になるよう私も大事な友達に
関われたらなぁって思うよ。
[そう思える友達がいることは、幸せだなって
思うんだ。]
[それは紛れもなく、ママが用意したり関わった
ものじゃない、私が築いた絆だから。
私にはもう、ママだけじゃないから。
いつか、それ込みでありがとうって伝えたい。]**
【人】 綿津見教会 マナ
(165) 2021/11/14(Sun) 18時頃 |
【人】 綿津見教会 マナ
(166) 2021/11/14(Sun) 18時頃 |
[恨み言に返す役
また無茶言ってくれる。随分と重い仕事じゃないか。
けれども、それも悪くねぇな。
任せておきな。
[今度ばかりは作った言葉じゃない。
オレがしたいことだから。]
一休さんじゃねぇけど、まずは当の本人も含めてみんな出してみてくださいって話だけどよ。
[その事実は変わらない。バスケがルールの中でしか勝負できないのと同じで。
なら与えたカードでくらいは勝負してやろうか。
待っていても仕方がないと立ち上がれば、病院の中庭へと向かった。]
そういや雪なんて降ってねえじゃん。超晴れてる。
[そこには満天の星空が広がっていた。オリオン座と北斗七星しか分からなくても、冬の空がどこまでも透き通っているのは分かる。]
勿体ねえぞ、天文部にとっちゃ絶好のシャッターチャンスじゃん。
— 病院 —
[タクシーの運転手にお礼とお金を投げつけるように渡して、
病院の夜間出入口へ向かっていく。
そこに入ると、近くの自販機コーナーに虎次郎の姿があった。]
お、お前ーっ。
[急に視界に現れたもんだから、
素っ頓狂な声を上げて、虎次郎の頭を揉みくちゃにしてやる。]
探したんだぞ、あっちで。
[そう言われても困るだろうけど、
とりあえず俺の鬱憤を投げつけて発散した。]
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