10 冷たい校舎村9
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……人の思考なんて読めないから、 そりゃ、本人じゃなきゃわかんないし。
それに、もしそうだとして、 お別れパーティーとか、ヤだけどさあ……
[ ……視点漏れ?>>503 ごめんね、慎一は気がつかなかった。 でもそれって、人に手を差し伸べようとするのが、 あんまり板についてたせいで──、や。言い訳。*]
(535) 2021/06/11(Fri) 20時頃
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── 昼・教室 ──
[ 慎一の日ごろの行いがよかったらしい。 毎朝ひとりで起きれることかな。>>557
儚い日常の断片が、 非日常会話に紛れ込んでは消えて。 引いては寄せて、みたいなことを、 繰り返していたお昼時。
ふたり、心に抱いた願望が、 重なったなら慎一もうれしかったよ。>>558 もしもその願望が本当になるなら、 一緒に思い浮かべてもらえたことも、うれしい。]
(569) 2021/06/11(Fri) 21時半頃
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……うーん、それはどうだろ。 自覚ない説あるじゃん。ここの持ち主。
[ 持ち主というより地主なのかもしれないけど、 鳩羽が懸命にそいつの望みを叶えようとするの、 慎一は見て思う。やっぱり日頃の行いだよ。
答えの出ない問いにうんうん唸るから、 慎一もつられてうーんって唸ってる。
言ってくれよ。とストレートな言葉に、 ちょっと笑っちゃったりもするんだけどさ。>>560]
(570) 2021/06/11(Fri) 21時半頃
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言えてたら、きっと、 こんなことになってねえよ。
全部、やり直せたらいいのに。 文化祭でも、おとといでもいいから、 こんなことになる前にさ。
[ そしたら慎一は、泣いて縋ってでも……や、 引き留められるかなあ。やり直せても。 誰かに、辛くても生きろと言えるだろうか。
そんなこと考えてたら、 急に鳩羽が叫びだすから、>>561 しんみりしていた慎一はビクッとなる。]
(571) 2021/06/11(Fri) 21時半頃
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おま、おまえ…… 打ち上げンときも叫んでなかった? なんで? 急にでけえ声出すなよ……!
[ 不穏な黒板の寄せ書き。 ラピュタみたいな教室。いなくなった友達。
どれを取っても非日常に、 あとほんの一コマだけ日常を織り交ぜるね。*]
(572) 2021/06/11(Fri) 21時半頃
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── それから ──
[ どのくらいそうしていただろう。
慎一は会話の途切れ目に立ち上がる。 人形を見てくる。と言った。
それで、黒板を一通り確かめて、 廊下のほうへゆっくりと歩き出す。]
(573) 2021/06/11(Fri) 21時半頃
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[ 張り紙を見て深呼吸をして、 教材倉庫の中に入った。>>3:417 布団の場違いさにも笑えない。
一瞬、それをめくろうとして──、 なんとなく、気が引けてやめた。
人形なの、わかってるはずなのに。 女子だしなあ……って思っちゃって。
昇降口。ふたりで呆然としたこと。 そんなことを思い出して、 「帰れた?」って聞いてみたくなる。]
(574) 2021/06/11(Fri) 21時半頃
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[ それから、1階の喫茶店にも。 炭蔵のメモ、ひねくれてるよな。 わざわざ樫樹とマネキンと、 別件の扱いをして書くんだもん。
喫茶店のセットに寝かされた人形。 折れた首はそりゃそうなんだけど、 うっすらとほほ笑む木製のそれを見てた。
やっぱり慎一には友だちに見える。 チャイムが鳴るたびに現れる人形が、 消える友だちの代わりなんじゃないかな。
……会えなくなったら寂しいから、かなあ。 それにしてはグロやホラーが過ぎるよって、 考えながら、その教室をあとにした。*]
(575) 2021/06/11(Fri) 21時半頃
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── 昼・教室 ──
そしたら──、 こうやってみんなでどっか閉じこもって、 非日常っぽい会話でも、してみるか。
[ やり直せたら何ができるか。 わかんないのは慎一もそうだった。>>577
ほとんど冗談みたいなことを言った。 だけど、楽しい日常生活の中では、 きっとすることのなかった話。
これをもっと早くにしていたらどうだろう。 どうだったかなんて、今さら確かめられないけど。]
(621) 2021/06/11(Fri) 23時頃
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[ 鳩羽がはっきりとした口調で、 とんでもなく重荷に思える宣言をするから、>>578
慎一はさ、馬鹿にするんでもなく笑ってた。 すごいなあ。えらいなあ。って、 慎一にはまだそれはちょっとしんどいなあ。 誰かが疲れたとき、疲れたねって言うくらいが精々。
でも、よかったら一緒に休憩しようね。 どんなに些細な理由でも、理由なんてなくても、 慎一はなんにも言わないようにするから。]
(622) 2021/06/11(Fri) 23時頃
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[ それが、日常めいた昼の話。*]
(623) 2021/06/11(Fri) 23時頃
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[ これは、非日常めいた朝の話。]
(630) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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── 朝・渡り廊下 ──
[ 暮石が両手を目元にあてがっていた。 ぐりぐり。すると、腫れるよ。>>583 慎一はそういうのちょっと詳しい。 自分がそうしてるとき、 言われるのヤだから、言わないけど。]
……うん。
[ 「たぶんすき」の裏に隠されている、 確信とか、推測とか、慎一は知らない。
慎一がしたのは「誰か」のことで、 そこにもし個人名が入るなら、 この気持ちも何か変わったんだろうか。 短い返事をしながら、小さい暮石を見てる。]
(631) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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— 病院 —
[車のエンジンが止まる。
運転席の母親が、背中を伸ばしながら欠伸をした。
いつもはそろそろ寝る時間だもの。ごめんね。]
じゃあ、行ってきます。
[気持ちが逸る。車のドアを開け、走り出そうとして、
そんな私を母親が呼び止めた。]
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自分で招き入れた人に、 好きでいてもらえたら、 うれしいだろ、たぶん……
[ きっと、慎一が何を言ってもさ、 違うんだろうなって思っているけど、 慎一が何か言いたかったんだ。聞き流して。]
(632) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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「あのね。……ひとみに何かあったら、って。
私もお父さんもずっと心配なのよ。
あの時ね、目を離した隙に、あんな怖い思いをさせてしまったから。
お父さんと2人で、絶対にひとみを守るって誓ったの。」
[なんだか申し訳なさそうに、
静かに心の内を語ってくれた母親の顔。
私はそれに向き合わなければならないと思っている。]
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[ 慎一のものさし。どんなにちっぽけだろう。 なにかできることなんてあるのかな。>>584]
やれること、かあ……
[ 慎一にできること。きっと少ない。 それでもなにかないだろうかって、 慎一はそのとき考えたんだった。
……難しい、けど。 そのとき思いつかなかったから、 お昼まで、ひっそりと考えてた。 きっと、これからも考え続ける。]
(633) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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「でも、もうひとみは大人になるのにね。
いつか慣れなきゃいけないとは思ってるのよ。
……ごめんなさいね。」
[ううん、違うよお母さん。
私、もっと自由になりたいと思ってたけど、
誰かに守られてるんだってことを忘れて生きてた。
自分の心の傷を忘れて生きてた。
自覚しているより自分は弱かった。
それを思い出して、ようやく向き合おうと思えたから。]
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[ 10円と、危機的状況の暮石の話。>>588
びっくりしたのは慎一も一緒だった。 そんなことになると思ってなくて、 わあっとずいぶん焦った顔をしたはず。
……だからだよ。 飛び出してきた言葉がへんちくりんだったの。
駄菓子でも買いに行こうという提案に、>>590 うん。と素直にうなずいている程度には、 慎一の心臓は早鐘を打っているし、
ここは暮石のでも、慎一の世界でもない。 そう、当たり前みたいに受け入れていて、]
(634) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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[ ……暮石は笑っていた。>>590
まだ慎一の頭の中は、 再起動がかかっていないような状態だけど、 つられたように、少しだけ笑おう。
それで──、ほかの言葉は「預かり」ってことで。 だって、「今度」があるんだろう。 それなら今は、ここでその背を見送ろう。
それも信じているから、 ほかの話はそのときでいいよ。*]
(635) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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いいよ。
ね、お母さん。お父さんにも。
私を子供でいさせてくれてありがとう。
[慣れなければいけないのはこちらもだ。
心配されない大人にならなきゃ。
見えない友達がいなくても強かに生きてけるように。
にこやかに笑って、暗い空気の中を病院へ駆けていく。]
[あの校舎から帰ってきてから、ぼたんの声はまだ聞こえてこない。
病院の夜間受付に辿り着いて、
集中治療室に運ばれたらしい乃絵ちゃんの場所を訪ねる。
夜の病院は静かで、通路は狭く感じる。
恐怖が少しフラッシュバックする。
基本的に健康児だったから滅多に病院のお世話にはならなかったけど、
そういえばあの誘拐事件の後、殴られた頭の傷の治療のために来たことがあるなあって、
今になってそんなことも思い出す。]
[そして集中治療室の前のベンチで、
両手を合わせながら何かの呪文のような言葉を繰り返す利美ちゃんを発見した。
近付いて彼女の名前を呼ぼうとしたら、
来るのは分かっていたわ、と言いたげな目線を返され、微笑んでくれた。
集中治療室のランプは赤く光る。
乃絵ちゃんは、まだあの校舎の中に自分を閉じ込めている。
どうしてだろう。私に知る機会はやって来ないまま。*]
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[ その日の慎一の夕飯はパンケーキだった。>>525]
(645) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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── 夜 ──
[ 卵がなくなっちゃう前に、 どうにかならないと困るなあ。 毎日減ってるんだ。綿見だと思う。 毎日食べてる身でなんだけど、 少し節約してほしいです。……なんて。
チャイムが鳴る前、 慎一はそういうことを考えてた。
今日も夕飯代わりにパンケーキをつまんで、 明日もお米が炊けるようにして、 明日に備えて……備えたんだけどなあ。
文句ばっかり言ってごめんね。 そのときも慎一は自分の心の平穏を、 決まった手順で守るべく、忙しかった。]
(646) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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[ 食堂にほかの人がいたんだか。 慎一はチャイムの鳴る前に立ち寄って、 それで、自分の用事を済ませただけ。
それから、購買にも立ち寄った。 見慣れた陳列棚を見ながら考えてる。
いつまでここにいれるんだろう。 ……ふたつの意味で。
いつまでここにいることを許されるかと、 慎一がいつまで耐えられるんだろうってこと。]
(647) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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[ 嫌いじゃないこの世界で。 慎一はやっぱり息がしづらい。 もうずっと、いつもの自分でいる方法がわからない。]
(649) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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[ ……ああ、でも。
「21時少し前に集まろう」 ──って黒板のメモにあったから。 そう思って購買の扉に手をかけた。
……8時50分になる直前だった。 どうでもいい話だけど慎一は、 「少し前」って書き方、好きじゃない。]
(650) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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[ 開いた扉の隙間から、こぽりと泡が立つ。]
(651) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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[ 意味がわからない? わからないね。 慎一も。なにひとつわからなくって。
なんで。 って言おうとした口の端から、 声の代わりに泡が膨れてこぼれた。
なんだか体が重い。 床に足つけて立ってるだけなのに。
開いた扉の向こう。伸びる廊下。 その様子は文化祭の日のままなのに。]
(652) 2021/06/11(Fri) 23時半頃
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