10 冷たい校舎村9
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そんなん、耐えらんなくて当然じゃん
そんなん、酷すぎんだろ
そんなことが、現実で起きてるとかさ
全然、想像すらできなかったんだなって、
[言葉を切る。
ノエを追いやったやつへの怒りだけじゃない。
非日常から帰ってきたっていうのにさ、
相変わらず日常らしからぬ感情で、忙しい。]
[病院の名前、教えてもらう。
他のやつらが多分無事、だということも。
順番に帰ってきているんだろうか。
最初にトシミから連絡が入ってるっつーことは
あの世界を抜けた順に、この世界に戻ってる、
そう思っても良さそうで。
つうか今何月何日だ??まあいいや。
けど、まあ。
きっとユーガとメイは「まだ」なんだろう。
無事に帰ってくることを、いまは願うだけ。 ]
ああ、うん。
ユキも、これからもよろしく。
[あらたまった挨拶、ひとつ
悪友であり、類友であり、戦友であり、級友であり。
なあもしよかったら、親友も名乗らせてもらっていいかな]
[ちなみに電話を切る前にさ]
とりあえず病院行く、でいいよな
それとも先、ノエんち殴り込みにいく?
[って言って「嘘だよ」ってすぐに撤回したのは
まあ6割くらいは冗談だったかな。 ]**
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— 食堂 —
[不貞腐れたような炭蔵くん>>44の声にわたしは笑う。 一対一で喋ったことがなかった炭蔵くんに わたしがすぐ親しみを覚えたのは、 炭蔵くんの中身を見た気がしたからだ>>1:524。
ずっと、あの眸>>1:486をまた見たいと思っていた。
少し遠くからじゃ覗こうとしてもできなくて、 手を伸ばそうとしても届かなくて、 ようやく叶ったわたしの願いは、 炭蔵くんがわたしと同じ人間だって教えてくれる。
わたしもちゃんと人間なんだって教えてくれる。]
(51) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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嬉しいよ、わたし。
炭蔵くんが同じ人間で。 ここにいたのが、炭蔵くんで。
[だからわたし、素直にその気持ちを伝えた。 今はたぶん、言って伝える場面だと思ったから。 向き合って一緒に深呼吸。一回、二回。 胸に手を当てると、鼓動も落ち着いていくのが分かる。]
(52) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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そんな顔見せられたら、 わたしも一緒に頑張りたいって思うもの。
[完璧、というのが何事にも冷静沈着で 正解を選び続けることを言うのなら、 今の炭蔵くんは完璧じゃないのかもしれない。
でも、それがいいの。 わたしにはぴったり、大正解。
ここにはもうわたしたちしかいなくて、 埋もれられないどころか民衆でもなくなっちゃった。
王様と民衆じゃなくて、炭蔵くんとわたし。 再度繋がった視線>45は、 前だけを見つめているような気がした>>31。]*
(53) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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[お互いの意思を確認した上での作戦会議>>30。 わたしは心当たりがある様子の炭蔵くん>>46へ 不思議そうな顔をする。
もし炭蔵くんがカッターナイフを取り出したなら、 わたしは懐かしそうに目を細めた。 わたしが聞いて>>1:138、炭蔵くん>>1:325が拾った。 はじまりの日のことだ。
もし見せられたのが左手首なら、 わたし、炭蔵くんの頬に指を伸ばしてつねったと思う。 自分で自分の手を傷つけるなんて、何してるの。ばか。
言いたいことは分かるけどね。 真実は、生クリームみたいに甘くない>>4:522。]
(54) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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……わたしもあるよ、心当たり。
[乃絵ちゃんがわたしにだけ零してくれたこと>>0:718。 だからその詳細までは話さないけど、 わたしが聞こえなくなったため息を探すように 耳を澄ませたら、何かあることくらいは伝わるかな。]*
(55) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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— 3-9教室 —
[最初に気づいたのは炭蔵くん>>48だった。 昨日までなかった足跡が、扉の外へ続いている>>4:496。 どうやら3階の階段を昇ったようだった。]
うん。
[分かっていたことだった。 何ならさっきまでそれを前提に話してた。 でも直面するとやっぱりわたしの身体は強張る。
九重さんを思い出した。ひとみちゃんも、向井くんも。 それが本当じゃなくても、人が死ぬことはやっぱり怖い。
炭蔵くんの視線に気づかないまま、わたしは教室に入る。 気づいてないから、泣きそうな顔も隠せなかった。]
(56) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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[わたしは鞄からヘアピンを取り出すと、 炭蔵くん>>49の言葉に顔を上げた。
みんなでいろいろ書き込んだ寄せ書きみたいな黒板。 壁にはフォトフレームに収められた写真が並ぶ>>10。 廊下とは違い、今度は文化祭以外の思い出もたくさん。]
こういうのは、卒業式にやるものじゃん。
[お別れはまだ、ちょっとだけ早いよ。 わたしは一人呟いてから炭蔵くんの見ているものを見る。
『 じゃあな、いってくる! 』だって>>4:497。
その意味を知る人はここにはいない。 でも、わたしは返すためのコートを強く握りしめた。 こんな時でも深爪は、何の跡も残してくれない。]
(57) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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[わたしは炭蔵くんに黒いシンプルなヘアピンを渡した。 そのままの足で、わたしは教壇をのぼる。
足元にはチョークが落ちていた。 縁から零れたというにはあまりにも遠く、 まるで、持っていた誰か>>4:498が落としたみたいだ。
わたしは屈んで、チョークを摘み上げる。 いつかのように、三本の指だけが白く染まった。]
……ねぇ、炭蔵くん。 頭の中の世界って、どれくらい頭の中だと思う?
[炭蔵くんはここで前髪留めるかな。 わたしはみんなの文字がたくさん並ぶ黒板を見ていた。 置いていく10円>>3:590だって 頭を振ったら耳から出てくる訳もないんだから、 問いの答えは想像に容易くはあるんだけど、それでも。]
(58) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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ここに書いたら、伝わるかなぁ。
[楽しかった文化祭、目を惹く綺麗な文字>>1:317。 あの日黒板に書かれたのは、楽しいことだけだったね。]
(59) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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[結局、わたしが待たせちゃったかも。 チョークを元に戻して、手を叩いたわたしは 炭蔵くん>>50と一緒に教室を出て行く。
教室には写真と寄せ書きと。思い出だけが、残った。]
……行こう、きっと待ってるよ。
[『一緒に帰ろう』 右肩上がりの癖のある文字は、無人の教室に佇む。
わたしたちは足跡に導かれるように3階へ進む。 みんなの待つ、3階へ。]*
(60) 2021/06/14(Mon) 15時半頃
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— 3階 —
[途中、1枚欠けた写真>>4:507には気づけたかな。 3階に上がると寒さが増した気がした。 制服姿のわたしは身を震わせる。
少し先、開いた窓>>4:520が原因のようだった。 雪が降り込んでいる。]
……こんな時まで仲良しなの。
[窓の下に何かがあるのは、この距離からでも分かった。 それに——わたしは階段を上がってすぐにある 教室>>4:496の中を見る。
こんな時まで、近い場所>>4:494にいるんだね。
わたしの腕は二本しかないし、身体は一つしかない。 炭蔵くんと同じ。だからわたしはまず教室に入った。]
(61) 2021/06/14(Mon) 15時半頃
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— 階段前の部屋 —
[衣装部屋だったらしいそこは、 ラックとハンガーが脇に並んでいただろうか。 中央にできた道の先には姿見があって、
——鳩羽くんが、倒れている。]
……。
[わたしは血溜まりの前まで近づいた。 裾が床につかないように気をつけながらしゃがみこむ。]
(62) 2021/06/14(Mon) 15時半頃
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また明日って言ったじゃん。
[わたしは鳩羽くんに話しかけた。返事はない。 下手くそな「笑顔」がマネキンに赤く刻まれていた。
抜け殻みたいだなって、思った。 それに、何にも似てなんかないのに、 向井くんの話をした、あの廊下を思い出した。 涙が水たまりになったみたいな、あの廊下を。
ほんのちょっとの間だけ、わたしはコートに顔を埋める。 感情を逃すように息を吐いた。]*
(63) 2021/06/14(Mon) 15時半頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/14(Mon) 15時半頃
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— 教室まで —
[死んだらそこで終わり>>1:527。 わたしは一昨日、炭蔵くんとそんな話をした。
どんなに思い出を大切にしたって、 そこに新しい何かは二度と生まれない。 声も、顔も、温度も、過ごした時間も、人の気持ちも、 全部、掠れていくばかりだ。
それは、嫌だった。怖かった。 帰ったって信じようとしても、 終わった姿を見るのはお母さんを思い出すから。]
……だいじょーぶ。
[頭を叩かれる感覚がして、 炭蔵くん>>66がわたしより先に教室へ入っていく。 その腕にはまだ絆創膏>>2:364があったかな。 向井くんが悪いと主張する炭蔵くん>>65だったけど、]
(76) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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あって五分。
[と、わたしはその意見を却下した。 向井くんがこんなびっくりすること望む訳ないでしょ。 わたしの中の向井くんはそういう人だ。 でも炭蔵くんの前では違うのかなって思うから、五分。
本人>>0:707は仲の良さは否定してたけど、 長い付き合いであることは言葉の端々に見えてたから。]
向井くんはつねったらびっくりしちゃうよねぇ。
[そんな話も少し前のこと。 わたしたちが目にするのは卒業アルバムみたいな教室。 そこでわたしは文字を書く。
わたしが書いている間に炭蔵くん>>67も身支度を 整えたみたいで、ファッションチェックを仰せつかる。]
(77) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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なんか、ちょっと幼く見えるね。
[留め方の問題かな。それとも眸がよく見えるから? 頭のてっぺんで固定された前髪は量が多くて、 ヘアピンだとちょっと力不足だったかなって思う。 わたしは表情を和らげながら、ヘアピンから逃れた 端の前髪に手を伸ばして、横へ流そうとした。]
よく見えるよ。わたしはこっちの方がすき。 だから……似合うんじゃない。
[わたしの返答はやっぱり自分基準で、 少し考えてから依頼主>>69に沿う回答も付け加える。
わたしたちは足跡を追った。 炭蔵くん>>68の伝えようって言葉が胸に残っている。]*
(78) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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— 3F階段前の部屋 —
[さっきは頭、今度は背中。 炭蔵くん>>71の温度が冷えたわたしの身体に広がる。 カッターを拾う姿は見えなかったけれど、 続く言葉にわたしは息を吐くのをやめた。]
ここに、明日≠ヘない……。
[何度朝を迎えてもスマホの日付は変わらなかった。 わたしたちは、同じ一日を繰り返している。 止まった校舎に明日はないんだ。 黒板に書かれた文字>>4:497を思い出していた。 わたしは顔を上げて炭蔵くん>>72を見る。]
(79) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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……うん。
[やっぱり、よく見えるよ。泣きそうな顔。 わたしは指摘することなく頷いた。 だって、きっとわたしも同じような顔をしている。
だからこのことは二人だけの秘密にしよう。 わたしは人差し指を自分の口元に押し当てて笑った。]
(80) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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[それから炭蔵くん>>73は部屋を豪華に飾りつけている。 文化祭の時、鳩羽くん情報量過多だったよね。 ごちゃごちゃとした装飾にそんなことを思い出していた。
……うん、もう大丈夫。 わたしは自分の足で、もう一人の下へ向かう。]
(81) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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[開いた窓の下を覗く勇気はわたしにもなくて、 炭蔵くんが窓枠に手をかけるのを見ていた。
そういえば、2階の窓を閉め忘れてた気がするけど、 廊下には雪が積もってなかった。 誰か>>1:649が気づいて閉めてくれたのかも。 わたしはそんなことを思う。
それから、柊くん>>4:520へ視線を落とした。 炭蔵くん>>75と一緒に雪を払い除けていく。]
うん、そうしよう。 一人は、寒いもんね。
[わたしは炭蔵くんの提案に賛成して、 二人で協力して柊くんを階段前の部屋まで運ぶ。 雪みたいな冷たさに、わたしの指先がじんと痛んだ。
なんとか運び切ると、 赤く彫られた笑顔とぽっかり抜け落ちた顔が並ぶ。]
(82) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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……待っててね。
[ここに明日≠ェ来ないなら、 待ち合わせをした月曜の放課後だって二度と来ない。
わたしは柊くんの輪郭に手を伸ばした。 指先で触れるとひんやり冷たい。]
それじゃ、いってきます。
[わたし、柊くんの名前の由来なんて知らないから、 わたしの中の柊くんは今でも春色をしてる>>0:572。
春って、あたたかくてほっとするでしょ。
鳩羽くんの隣、 手足が折れ曲がってしまった柊くんの身体には、 丁度いいサイズのダッフルコートがかけられていた。]*
(83) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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— 3階の果て —
[鳩羽くんの足跡に導かれて3階へ来たわたしたちは、 最初に二人を見つけた。
これでもう、迷いはない。 鳩羽くんと柊くんが先に明日へ進んで、 炭蔵くんとわたしは同じ道を歩いている。
わたしたちの心当たりは確信になった。]
……できることを、しよう。
[結局まともな作戦会議はできなかったけれど、 わたしの心はもう揺らがなかった。 隣には炭蔵くんがいて、未来にはみんながいる。 わたしたちは同じ方向>>64へ進んだ。]
(84) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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[音楽室は校舎の端>>0:678にある。 夜にピアノを弾いた後、わたしは鍵をかけなかった。 わたし以外、誰かが来るって思わなかったから。
ひとつひとつ部屋を確かめた最後、その果てに。 わたしたちが探し求めた人>>9はいたかな。]*
(85) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/14(Mon) 18時頃
[黒沢から聞いた、優しくない人の話。
自分勝手で、他罰的で、思い通りにならないと気がすまない人。
それが誰を指しているのか、
具体的には聞かなかったけれど、]
……俺もはっきりとは聞いてないけど、
たぶん親とか、家族……… じゃないかな。
[見放されたら生きていけない
俺はそれを聞いて、咄嗟に親だと思った。
ってのは今まで俺がそう生きて来たからなんだけど
直感はそんなに間違ってないと思う。]
[俺達未成年の行動範囲なんてたかが知れてる。
あんな空間を作り上げる黒沢が、
学校で嫌な思いしてるとは思えないし
恋愛絡みとかでもないと思う。ないよね。
黒沢を支配して根本的な価値観に影響を与えた大人。
親か、兄弟か、それに類する保護者の誰か。]
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