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─命くん─
命くんと一緒にいるととても楽しい。
ドキドキしたり、焦ったり、切なかったり、──何でもしてあげたくなっちゃうんだ。
もっと頼ってほしいし、でも私も甘えたくなっちゃう。
でも、美味しいって私の作ったものを食べて浮かべる笑顔が可愛くて。もっと見たいなんて思ったのが始まりだったと思う。
でもとても綺麗だったよね!
私も一緒に夜空を見上げて空に咲く華を見つめてた。
そんな時に手を引かれて。
「私も…大和くんのことが、好き。」「私も、ずっと一緒にいたい…です。」
真っ赤になりながらそう答えて、そっと大和くんに身体を寄せた。
私はそれだけでも幸せだった。私から告白するつもりだったのに、大和くんも同じように思っていて告白してくれたんだもの。
まるで夢のようだと思って、その日は気持ちがふわふわしてなかなか眠ることが出来なかった。
でも、現実はなかなか上手くいかない。
元々大和くん──お付き合いを始めてからは命くんって呼ぶようにしてる──が忙しい人だって言うのは知っていた。
それが親のせいだって知ったら憤慨するしか無かったけど、私は法律に詳しく無い。どうにかならないか、と思うけど…落ち着いたらお父さんに頼ろうと思う。あの人なら、弁護士の知り合いとか居るだろうし、財務整理とか?して、命くんに責任が行かないようにしてもらうんだ。
復興支援だって危ないけど、お父さんのことがあるから誰かがやらなくちゃいけないと言うのも理解はしてる。
だから私も病院にお弁当を届けたりはしていたし、お父さんに言われたら荷物を運んだりもしてた。この数日で台車の使い方は随分慣れたんだ!
でもまさかこんなに街が破壊されてしまうなんて。
命くんの安否すらわからなくなるなんて!
こんな事なら…と、後悔しても始まらない。
不安でたまらなくて、そんなところに命くんが生きてる、無事なんて電話が来たら…涙腺崩壊待った無しだよ?
「命くん!私も無事、良かったああああ!」
両手を広げて私からも命くんに抱きついて、わんわん泣いてしまったからお互い泣いてしまってたんだね。
「ううっ、みこ、命くん…!
生きてて、よっ、よかっ、た…!」
私だってその時汗かいてたし、命くんが汗をかいて汚れてるなんて気にもしなかった。できなかった。
命くんが生きて無事でいてくれる奇跡に感謝するしか出来なかった。
でも、暫しそうして抱き合って、涙も落ち着いてきた頃。
「家潰れちゃったの!?
えっ、待って、じゃあこれから…。」
どうするの、と問いかけようとして言葉を止める。
手で涙をごしごし拭いてから、キリッと気合いのこもる顔になった。有無を言わせない、言わせたく無いそんな顔。
「命くん、うちに来て?
うちの方は全然被害なかったから大丈夫!」
その説得の中で、お父さんは医者で忙しいし彼女さんのこともあって今は家に一人暮らし状態な事や、そのお父さんの部屋が災害時の荷物部屋状態になってる事も話して。
こんな事態だからこそ、お父さんも許可してくれると思うし、許可させる。
「また、離れ離れでいて。
生きてるかどうか不安になるの、嫌だよ…。
だから、…一緒に、いて?」
またこんな風に不安になって飛び出すのは嫌。
感動の再会も要らない。それよりは、二人揃って状態がわかる方が良い。
またこんな事があると思うと想像しただけで視界が滲む。
そんな潤んだ瞳で命くんを見つめて、でも絶対譲らないと言う強い意志もそこにあった。**
――珊瑚さん――
[
生きて手良かったって喜んでくれるだけで嬉しいけど泣いてるとこも可愛いけどやっぱり笑ったり喜んでくれているほうが嬉しい。
抱きしめると珊瑚の匂いがして落ち着ける。
ここが自分の居場所だと再認識できた。
うっ、でも、その……。
[高校を卒業したら同棲しようと思っていたのに唐突に言われると男女が一つ屋根の下はとか考えてしまうけれど
うん、って肯定しないと泣いてしまう気がするし珊瑚の涙に大和は絶対勝てないようになっているんだろう。
大和は首を縦に振る]
うん……一緒にいる。
僕も珊瑚さんが生きてるって感じられるほうがいい。
でも……、寝るのは廊下でいいから。
[衣服の持ち合わせもないし珊瑚の父親の部屋が荷物部屋状態なら寝泊まりできるのは廊下くらいではと提案する。
ソファを勧められるかもしれないけれど――うん。
珊瑚の家にいくことだけは決定して手を繋いで帰路につく。
ところで被っているヘルメットの上で揺れてる白猫の耳があるわけで――]
珊瑚さんは猫耳が生えてると、
いつもよりもっと可愛いね。
[ってまさかヘルメットデコが流行ってるなんて知らないから物珍し気に見てしまうけれど、手の温もりを感じながらそんな風にお話できることを幸せに感じている**]
メモを貼った。
─命くん─
「お父さんの部屋も、段ボール沢山だけど
寝られなくはないよ?
それかソファ。廊下はあんまりだよ!」
マットレスを運んで廊下に並べようかとも思ったけど、それをするにはお父さんの部屋のクローゼットをどうにかしなくちゃいけない。
それをするには大量の段ボール箱をどうにかしないといけないから、一先ずソファをお勧めする。
さっ、流石に私の部屋のベッドはね、お付き合いしてるけどお付き合いしたてだからマズイかなくらいの理性はあるよ!
着替えはクローゼットじゃなくて、普段使いのカラーボックスに入ってたからお父さんのを借りれば何とかなると思う。
足りないのは買い足そう。
そんな計画を頭に思い浮かべながら手を繋いで歩き始めたんだけど…。
「えっ!? あっ、ありがとう…。
七尾ちゃんとお揃いなの。
七尾ちゃん黒猫で、私が白猫。
えへへ、本郷さんと連絡取れたら
本郷さんにはピンクのつけよって話してるんだ。」
ふにゃっと目元が緩んで嬉しくて笑っちゃった。
バタバタしててメロメロとかとは別だけど、可愛い頂きましたよ七尾ちゃん!
そのまま帰宅したら先ずはお風呂を沸かして先に入ってもらって、その間にご飯の準備。
甘い卵焼きとお豆腐のお味噌汁、ほうれん草の胡麻和えにウィンナーを焼いたのと簡単なのだったけど、一先ずお腹を満たして欲しかったんだ。
お父さんにも連絡入れておく。
『彼氏の家が潰れたけど彼氏は無事でした。
大和命(やまとみこと)くんです。
お父さんのいろいろ借りるけどこんな時だから良いよね。
家が無いからうちに泊まってもらいます。』
相談じゃなくて決定事項として。
その後、ちょっと情緒不安定だった瑠璃川先生(お父さんね?)なんて、私は知りません。**
メモを貼った。
――珊瑚さん――
珊瑚さんの家の廊下ってさ潰れた家の寝床より、
実はあったかくて寝心地がいいんだよ?
[築60年以上木造二階建てアパートよりも鉄筋コンクリート造マンションの廊下の方が寝やすい悲しい事実がある。
廊下にマットレスを敷いただけで今まで以上の十分な寝床になる。
ソファはリビングにあるし、リビングは珊瑚さんのお部屋と扉一枚でしか隔たれていないから緊張してしまうのだ。
それに大量のダンボールを移動させる先がないから父親の部屋に放り込んであるのだろうし――と考えてはいるけれど珊瑚に言われると、うん、としか答えるつもりがないのでソファに寝泊まりすることになった。
お金は持って出れたが問題はお店が開いてるかどうかであるが珊瑚の家の周辺は図ったかのように被害がなくてちゃんと街として機能しているようだった]
七尾は黒猫なんだ。
すると珊瑚さんに白猫を推したのは七尾?
[そうだとするなら七尾はいい仕事をしたと心の中で誉めておく。
今度出会えたら直接誉めたい。
合宿まで月一でしか会ったか会ってなかったかで合宿で少し距離感を確かめあった間柄だが今後はもう少し話せる機会が増えるといいとは思う]
……本郷さんはピンク色なんだ。
てっきり七色に光るやつかと……いや、なんとなくだけど。
[ピンク色の猫耳ヘルメットを被った本郷とゲーミング猫耳ヘルメットを被った本郷。
どちらが似合いそうかはちょっとどちらも見てみたい。
それにしても頬を赤くしてすごく嬉しがってくれている珊瑚はとても可愛いかった。
大和の反応で嬉しがってくれて喜んでくれてとしてくれる、温かい存在で――]
珊瑚さんを好きすぎて、
可愛いとこ見るとすごく胸が苦しい。
嬉しすぎて頬が、やばい。
[う゛っ、てなる。これが尊いというやつなのだろうか。
珊瑚の家に到着したらお風呂に放り込まれた。
家にはそれぞれの匂いがあって、お風呂に入ると珊瑚と一緒のシャンプーとボディソープを使うから同じ匂いになっていく。
その匂いに身悶えてしまうのだからお風呂上りの際は温まった以上に頬が赤くなっていて、珊瑚を直視できなくて口元を抑えながら視線が彷徨ってしまっていた。
服は珊瑚の父親のものを借りることができたのでそれを着て、用意されていたご飯を見たけれど先に珊瑚にお風呂に入ってもらうことにした。
少し冷めてしまうかもしれないけれど珊瑚も汗をかいていただろうしとお願いした。
二人してさっぱりしてからご飯を頂こう]
[珊瑚の料理は家庭的だと思っている。
何せ大和の食生活は聞いていると寒くなれるものだ。
復興支援にいくようになって賄いでもらう弁当も基本的に冷たいものだった、何せ電気が使えない。
甘い卵焼きはお弁当でいつも作ってもらっているもので卵焼きといえばすっかりこの味だと覚えてしまった。
ほうれん草の胡麻和えも美味しいしウィンナーもぱりっとして美味だ。
お味噌汁もこれが珊瑚の味なのだと舌が覚えているもので食べていると涙が出てきそうになる。
すっかり食べ終えると御馳走様と手を合わせて、食器を洗ったりしまったりと一緒にしてから二人でソファで寛ぐことにした。
珊瑚は父親に連絡を取っていたようで、そちらも無事で良かったと思う。
テレビをつければ街が壊滅状態になっているとかそんな番組しかないだろうから星座の話が出た辺りで消して、静かになった空間で肩を並べて座る珊瑚の手を、指を絡めて握っていた]
こうしていられるだけで僕は幸せだな。
[今後の復興のことはどうなるかはわからない。
被害が大きすぎて手がつけられないことは確かだろうけれど、大和は珊瑚の手伝いをして二人で過ごしていくと決めていた。
けれど、今はこうしていられる幸せを噛みしめながら目蓋を閉じて珊瑚の存在をしかと確かめている**]
メモを貼った。
―― 瑠璃川先輩とヒミツの話 ――
[大和くん、と言われて浮かんだのは
部室で極々まれに遭遇しておやつを食べていた、
合宿の日にも列の最後尾に鎮座していた
あの大和先輩の事だった。]
―― 大和先輩ですか?!
わあ、気付かなかった…!
[ショッピングモールの大通り、思わず大声を出す。
で、でも周りの人は皆他人だから大丈夫…かと!
カップケーキと言われて思い出したのは
合宿でのお弁当タイム。
そういえば瑠璃川先輩からって言っていたし、
そこで勘づくべきだったんだと
自分の直観力のなさを嘆い(?)た。]
大和先輩、あんまりお話した事無くって
どんな人かそんなに印象ついてないんですよね…
先輩、大和先輩ってどんな人ですか?
[これは純粋な疑問です。
決して根ほり葉ほり聞こうとしてるんじゃなくって…。
ともあれそんな感じに瑠璃川先輩から
大和先輩の事を聞き出しながら、
雑貨屋の次に本屋さんにも寄ってもらって
あたしは簡単な星座の本を購入した。
合宿を通して、あたしは以前より
ほんのり星に興味を持っていたから。
[そうして他にも沢山お店によったりして、
カフェでスイーツなんかも食べたりして。
二人で沢山荷物を抱えながら、
それぞれ別方向へと帰路に着きました。
その数日後かすぐ後にか、
瑠璃川先輩と大和先輩が
お付き合いを始めたらしくって。
あたしにバラしちゃったくらいですから、
きっと瑠璃川先輩から報告をもらったりして?
そうしたらあたしは心の底から感激して、
一日中ニコニコしちゃってた事でしょう。]
[そんな中で、
三度目の襲撃が……やってきてしまったのだった]
**
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