15 青き星のスペランツァ
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……けどさ。アンタはそんな事もう何百回だって考えた筈で、それでももう逝くって決めたんだろう? だからオレは止めないけど、その代わり…………立てよ。 腹は立つから、一発殴らせろ。
[やっぱり、自分は酔ってるのかもしれない。でもこんな話、素面で聞いたって殴りたくなってたと思う。オレが何人に死なれてると思ってんだ、バカ。あっちで、ハロやギロチンに怒られてしまえ。まだ近くに居るだろうから、既に耳元で怒りまくってるかもしれないけど。自分が殴った所で大した威力にならない事はわかりきってるから、尚更腹立たしい。]
(161) 2021/11/14(Sun) 21時半頃
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[強い口調に、目を伏せる。どうして、ライジがそんな事を言うのかわからない。自分が、関わってきた人達の死体の山の上に立っている事実は、変わらないだろうに。]
……そうだよ。オレの種族は、もうオレしか居ない。 知ってたかの様に言うね? そんな有名な話でもないと思ってたんだけど。
[種族が滅ぶなんて、ありふれた話だ。ありふれた話なだけに、原因は多岐に渡る。略奪は、仮定にしたってまず最初に挙がる原因ではないだろう。ライジは、惑星アーラの話を知ってたのだろうか。それとも────。]
…………仮にそうだとしても、さ。 “キランディ”が──オレ以外の最後の一人が死んだのは、どうしたってオレのせいなんだよ。
[諦めていれば、嘆かなければ。命を擲たせる事なんてきっとなかった。*]
(162) 2021/11/14(Sun) 21時半頃
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─ 四日目・朝/??? ─
[きっとアンタは、誰にも知られたくはないだろう。オレだって、誰にも言う気は無い。そんな裏切る様な事をしてまで、アンタの“自由”を奪いたくはないから。]
……けど、これくらいは許してくれよな。
[こっそりと艦を抜け出して、高く高く空へ舞う。万が一抜け出してると気付かれても、自分の座標がバレていたとしても、目的を悟らせない程の高所へ。]
[遥か遠くに見えるのは、豆粒の様なオレンジ色。海の方へと向かうそれを、見失わない様に視線で追った。進路上には、一段と濃い蒼が在る。]
[────きっと、あそこだ。最期まで、目を逸らせてなんかやるものか。*]
(171) 2021/11/14(Sun) 22時頃
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[世界は暗転した。
それきり、ハロの世界は終わってしまった。
何が思えるでもなく、何が聞こえるでもなく。
痛みや苦しみを感じられる時間すら、瞬きほどもなかった。
駆け出すキランディの羽ばたきを聞いたかもしれない、というのが最後だ。
ハロという生き物にとって、それは幸福だったと思う。]
[これがもしも、長いしっぽや下半身だけを大岩に挟まれて、意識は保ったまま、もしくは一命をとりとめでもしたら、きっとハロは苦しんだだろう。
自分を見舞うクルーを見るのもつらかったし、タプルの手を煩わせることになるのも嫌だった。
自分のことで悲痛な面持ちになるクルーがいるのは、耐えられなかったと思う。
そんな顔をさせたくない。笑って、採集のお土産を持ってきてほしい。
それで充分だけれど、それだけにならないことも容易に予想がつくからだ。
いっそLOSTしてしまえたら、とすら思うかもしれず、けれどハロ自身は自らの命を断つすべを知らない。手足は短く、自分を害することなどできそうにない。
スペランツァのクルーにとっては、その方が幸福だったとしても。]
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─ 三日目・夜/談話室 ─
[“死神”だったと言うライジに、何かすとんと腑に落ちた心持がした。きっとこいつは、あっち側の人間だったんだろう。] [だからと言って、恨む気持ちは湧いてこなかった。そもそも直接襲われた訳でもないし、互いに素性は明かしてなかったんだから、騙した騙されたの話でもない。襲って来たのがライジの一族であったと仮定してみても、自分にとってはあまりに昔の事過ぎて、今更恨みを掘り出す方が難しい気もする。] [何より、スペランツァのクルーであるライジ・チリガネ個人には、世話になってばかりなのだ。恩も返せぬままさっさと死のうとされてる事には腹が立つが、それ以外には無い。 ……いや、もう少し長く接せば何かしらあったかも知れないが、それも向こうが終わりにする気満々なのだから、考えるだけ無駄だ。全ては、IFにしかならない。]
……そういう事。オレは唯の、マユラ。 忘れていいよ。もう二度と使わない名前だし。 新しい名前を付けてもらう当ても、ちゃんとあるからさ。
(183) 2021/11/14(Sun) 23時頃
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[立ち上がったあなたに合わせて、マユラと名乗った青年もまた立ち上がる。]
そんな犬みたいな顔するなよ。 やりにくくなるだろ。やめないけど。 ……そんじゃ、歯ぁ食いしばれ、よッ!
[左手で拳を握り、頬を狙って思い切り振り抜く。手加減をしたつもりはないけれど、人を殴った経験自体がほぼ無い。利き手でもないし、片腕が固定された状態では動きも制限される。加えて体重が無いから、その一撃はケトゥートゥの全力パンチと大差無い威力しか出なかっただろう。*]
(184) 2021/11/14(Sun) 23時頃
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─ 三日目・夜/談話室 ─
[二度と使う気は無かったし、名乗る気も無かった。それなのに名乗ってしまったのは、死ぬ気しかないコイツが悪い。でなきゃ酒のせいだ。もしかしたら自分のせいも少しあるかもしれないけど、今日は色々あり過ぎて参ってるんだよ本当に。]
……いいけど、一文の得にもなりゃしないよ。 持って来たいって言うなら、止めないけど。
[笑うライジに対して、自分は憮然とした表情になってたんじゃないかと思う。“キランディ”なら、まずしない顔だ。互いに、らしくないなと思う。] [顔に来るとは思ってなかった癖に、随分と余裕のある態度だし、此方の拳の心配までしてくる始末だ。それにまた、腹が立つ。]
平気に決まってる。 こんなので折ったりなんかしてみろよ、タプルを驚かせるじゃ済まないだろ。
[右腕を折ってる身で言う事じゃないが、どれだけ脆いと思われてるんだろうか。]
……もういいよ、バカライジ。 アンタなんか知らない。何処へでも、好きにいっちゃえ。
[杯を重ねて、最後の夜を過ごす。別れた後は、処置室へ戻り、そのまままんじりともせずベッドに座っていた。] [ライジを示す座標が、動き出すまで。*]
(193) 2021/11/15(Mon) 00時頃
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─ 四日目・朝/??? ─
[予想通り、オレンジ色は速度を上げて、蒼の中心へと飛び込んだ。大きく上がったであろう飛沫も、この高さからだと小さなものにしか見えず。輝く泡もやがて消えれば、水面は平穏を取り戻す。どれだけ目を凝らしても、目立つ補色である筈のオレンジは見えない。]
[発信機のデータは、敢えて見なかった。其方は、きっと誰かが見てるだろうから。自分は、自分だけは、最期の最後までこの光景を見ると決めていた。] [この様子だと、きっと『成功』したのだろう。してしまったのだろう。その身体が、バイタルがどうなったかまでは知らないい知りたくもないけれど。]
…………バーカ。
[それは、誰に向けた物だっただろうか。ライジだったかも知れないし、“マユラ”にだったかも知れないし、先に死んでしまったハロやギロチンやアシモフ、或いは今頃大騒ぎしているであろう他のクルー達へだったかも知れない。] [緩みかけた涙腺を、昨夜殴りつけた左拳で雑に拭って。気付かれない内にと、静かに地上へ戻る。]
[これから、何食わぬ顔をしてスペランツァへ戻らなければならない事を思うと、吐き気がした。 ……自業自得でしかないけれど。*]
(194) 2021/11/15(Mon) 00時頃
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