14 冷たい校舎村10
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「しんじゃったらもう、これ以上いらないものは 入ってこないでしょ? だからね?ななちゃん、しんで?」
[ いいでしょ?ってひめちゃんは言う ]
「だってひめは、しんであげたよね? だったら今度はななちゃんの番でしょ?」
[ ほら、って指差されて振り返って見上げれば、 あたしの真後ろに、いつの間にかひもが下がってた。 輪っかになったひもが。 ご丁寧に踏み台まで用意してある。 そんなの、一瞬前まで絶対なかったのにね ]
(408) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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そっか……そうだねぇ……。
[ あたしはまじまじとひもを見る。 そのひもには、見覚えがあった。 きっとあの時のと同じやつだ。 だけど見たところ、切れ目が入ってるようには見えない。 そりゃそうだよね。今回のひめちゃんには、 あたしを生かす理由がない。
終わりにできるなら、それでいっか。 あたし、そんなことを思う。 終わりにしちゃえば、あたしももう、 これ以上ぐちゃぐちゃにならずに済む。 ひめちゃんが死んで、あたしも死んで、 これでお相子。イーブンで、ご破算。 それでいいじゃない?いいよね? ]
(409) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ あたし、「いいよ」って言おうとした。 いいよ、わかったよ。これでおしまいにしよう ]
(410) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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……………………やだ。
[ ――――――――――――――――――――あれ? ]
(411) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ あれ、あたし、今なんて言った? いいよって言って、全部終わらせるんだよね? だってあたしはもう、 これ以上ぐちゃぐちゃになりたくなくて、 だから ]
(412) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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……やだ。あたし、死にたくない。 あたし、友達がいるんだ。大事なものがあるんだ。 「死んで」じゃなくて「いなくならないでほしい」って 言ってくれる友達がいるんだよ。 だから、やだ。 死にたくない。
[ あたし、ぐちゃぐちゃなのに。 そんな自分にうんざりなのにさあ! もんどーむよーで入ってきたみんなが、 あたしのどこかをあっためるから。>>187 だから……だから、 あたし、死にたくない。 死にたく、なかった ]
(413) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ ああ……そっか。 あたし、やっとわかった。 この世界の主はあたしじゃない。 あたしじゃなかったんだ ]
(414) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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「そんなの、許さない」
[ ――――だけど。 ひめちゃんがそう言った途端、体が動かなくなった ]
(415) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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「ななちゃんにはそんなもの、いらないの。 ななちゃんには、ひめがいればいいの」
[ 動かなかった体が、勝手に動きだす。 は!?え!?やだ! よいしょって足が勝手に踏み台に上った。 目の前の輪っかに首を通す。 やだ!やだってば! ]
「大丈夫よ。だって一回やったことがあるでしょ?」
[ やだ!そんなことない!あたし死にたくないんだってば! ひめちゃんの声を否定したくて、 必死に首を横に振ろうとするけど、 やっぱり体はあたしのいうことを聞いてくれない。 声も出せない ]
(416) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ タン、とあたしの足が勝手に踏み台を蹴り倒す。 体が宙に浮いて、 一瞬後、ぐっと首にあたしの全体重が乗った。 息ができなくて、 苦しくて、 気が、遠くなって、
――――――ブツッ!
突然。ひもが、切れた。 あたしは床に叩きつけられる ]
(417) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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げほげほげほっ!
[ 突然酸素が体に入ってきて、あたしは盛大に咳き込んだ。 必死に酸素を吸い込む。 だけど、自由になるのはやっぱりそれだけだった ]
「あ、そっかあ。 ななちゃん、重くなっちゃったもんねえ」
[ のんびりした声が近づいてくる。 ああ……そっか。 小学生の体重を支えられたひもは、 高校生の体重には耐えられなかったか。 って、あたし本来は高校生ですらないんだ。 本当はもう19歳だもん ]
(418) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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「仕方ないからひめがやってあげるね」
[ 仰向けに転がされた。そしてあたしに影が差す。 あたしの顔を覗き込むひめちゃんの顔は、 やっぱりもやがかかって見えない。 ひめちゃんが両手を伸ばしてきて、 ぐっとあたしの首を絞めた。 体重をかけて、全力であたしを絞め殺そうとする。 体を床に叩きつけられて、酸欠で、 やっぱり体はぴくりとも動かせなくて。 あたしはただ、見てることしかできなかった。 ちょっと涙が出てきたけど、 それがどういう涙だったのか、自分でもわからない ]
(419) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ ひめちゃん。 忘れちゃって、ごめんね。 最後にそれだけ言いたかったけど、 その言葉にだけは「ざまあみろ」なんて気持ちは ひとかけらもなかったんだけど、 やっぱり声も出せなかった。 かろうじてごめんねって動かした唇、 ひめちゃんには読み取れたかなあ? ]
(420) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ ひめちゃんは、あたしのすべてでした ]
(421) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ ひめちゃんは、あたしのたったひとりの親友で、 ひめちゃんの分まで、あたしは生きなきゃいけなくて、 あたしは一生、ひめちゃんのことを胸に、 生きていくんだと思っていました ]
(422) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ 本当に、そう思っていたんだよ ]
(423) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ ねえ、ひめちゃんの思惑通りだった? ]
(424) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ でも、人は忘れてしまう生き物なんだ。 本人の意志とは関係なく。 指の隙間から砂粒が零れ落ちてくみたいに、 少しずつ少しずつ、 あたしの中から思い出が零れ落ちていく。 そこだけは、ひめちゃんも計算外だったかもしれないね。 ごめんね ]
(425) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ でもね、あたしは、それでも。 真実を知った今でもね、 ひめちゃんのこと、嫌いになりきれないんだ。 やっぱりあたしはひめちゃんがすきだよ ]
(426) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ ――――ああ。でももう、 ひめちゃんはあたしのすべてとは、言えないなあ。 今のあたしにはひめちゃん以外にも、 大切にしたいものがある。 好きな人たちがいる。 そしてね、その中には、 この校舎の主さん、あなたのことも、きっと、
――――――…………きっ、と ]
(427) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ ――――――――――――――――――――――――― ]
(428) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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―― AM8:50 ――
[ 屋上の扉の前に、一体のマネキンが転がっている。 全身をぶつけた跡があり、髪は乱れ、 首には小さな指に絞められたような跡がついている。 顔には涙の跡のようなものもあるが、 その表情は、どこか笑っているようにも見える ]**
(429) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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七星拳 ナツミは、メモを貼った。
2021/11/10(Wed) 23時半頃
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―― もう一度文化祭を ――
[髪色全然違うもんね。 長さだって。 身長は…あの頃から然程変わらなかったけど。 だから別に察しが悪いとは思わないよ。
本当ならホラー定番のワイヤーが切れて匣ごと 落ちちゃわないだろうかとか、そんな心配を していたところだったけど。 真梛さんの声は落ち着くから、紡がれる言葉を 静かに聴いていられた。]
(430) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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……うん、そうだね、何処にもいないよ。
真梛さんは強いなぁ。 人に恵まれたのかな? 気にしていた時間が無駄だったな。
[繋がったままの手も真梛さんの言葉も、温かい。 心のつっかえがが2で割られたみたい。 過去を完全に消せはしないけど、軽くなった。]
(431) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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あはは、うん、ありがと。 こっちこそ、聞いてくれて感謝だよ。
[辛気臭い話はここで終わらせて、今は文化祭を 楽しもうと促す言葉>>302に頷く。]
確か縁日とかあったよ。 射的や輪投げにヨーヨー釣り。 それから天文部や写真部の展示に―― って真梛さん危ないよ!
[扉が閉まりかけているのに進むとはなかなか チャレンジャーだな。 慌てて開ボタンを連打すれば、扉に当たる事態は 避けられただろうか。]
(432) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[ふいに主語のない言葉が零れた。>>304 私も大概察しが悪い。 どこに繋がる言葉なのかすぐに理解は出来なくて。 エレベーターの外で再会した和歌奈さんと真梛さん が話してる間も考えてたけど答えは出なかった。 だから、]
……真梛さんのことも、また教えて欲しいな。 私より頼りになる人いっぱいいるけどさ。 ほら、私ばっかり話聞いてもらうのもあれだし。 気が向いたらでいいから。
[心当たりはないかという質問に、メールを送るのが 苦手だからと理由をつけた真梛さん。>>165 じゃあメールじゃなかったら、心当たりはあった のかなって引っ掛かりはあったんだ。]
(433) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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[だから、陽気なBGMに完全に紛れる前に、 昔の私みたいなその髪を見つめながらそう伝えて。 終わったはずの文化祭を一緒に楽しむために 連れ立って廊下を進んだんだ。
私は楽しかったよ。 二人で回れて。 真梛さんはどうだったかな―――]
(434) 2021/11/11(Thu) 00時頃
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[ 平野莉希は普通の女子高校生 ]
(435) 2021/11/11(Thu) 00時頃
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[ に、なりたかった ]
(436) 2021/11/11(Thu) 00時頃
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いただきます。
[こんがり焼いたトースト。 彩り野菜と海藻のサラダに生姜とネギ入りの 温かい春雨スープ。 トロッとした卵にトマトを合わせたスクランブル エッグはちゃんと冷蔵庫に入っていたやつを 拝借した。 それからフルーツのヨーグルトがけ。
いつものようにそんな朝食を用意した。 食堂に食材がある>>346と、石頭君が教えてくれ たから。 いろいろ手伝えなかった代わりにみんなの分も 作ろうと思ったけど、さすがに八人分は作ったこと ないから足りるかどうかもわからない。]
(437) 2021/11/11(Thu) 00時頃
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