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【人】 水商売 タバサ………………はあ。 (3) 2023/08/04(Fri) 00時頃 |
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[スポットライトの明かりではない白を見上げながら
生き返ってしまった実感に、苦笑いした。
願望が叶わなくなった喪失感を覚えながら
それでも、思っていたような絶望は無かった。]
── 209号室 ──
[吹き抜け廊下の手摺と柱の間にいて無事だった。
ただ硝子を多分に浴びて、切り傷が多い。
実家には連絡が行っている。地方の為、未だ着いてない。
要約すればそんなところだ。
あちこちに包帯が巻かれているが、手足が問題無く動かせる。
ならそれ以上思うことはない。]
…………、
[何を呼び掛けられても在るべき世界の空気を感じても
どこか虚ろに、朧に、揺蕩う感覚。
未だ夢と現の境界にあるというように。
彷徨う意識が最期の宣告を聴いた。
最も残酷な答えを出したなと
舞台からも立ち去った立場から、冷静に思ったのは
やはり全てを平等になど見ていない利己的意識の持ち主だからか。]
――病院2F/休憩スペース――
[まだ白の面積の多いスケッチブック。
鉛筆は鈍足の末、迷い、停止する。]
――……、もう聞こえない。
[あの迷い子の声は。
そこだけ、と切り取れるよう念じれば、
数分閉じた目蓋の裏に、イメージが焼きつく。
モノトーンで描かれたスケッチブックの頁と。
紫羅欄花の花と。
堂々と飾られた絵画と。
並ぶ黒い背中。
――そして、最期の宣告
鉛筆が折れ、掌に血が滲むまで。**]
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……これで、三度目
[感情の見えない朧な声が、雨が近しい者を奪った数を無機質にカウントした。
あの花のような少女が太陽の下に戻れずに、冷たい心の死に損ないが戻ってくるなどと。
いつか伝えられると知っていた真実は、重い。
人でなしすらも、無邪気に同期達の帰還を喜ぶことが出来ない。*]
―― 病院・2階休憩スペース ――
ああ、たしかに米を炊くなら
土鍋か高い炊飯器で炊くのが
一番美味いものができると思うっすよー。
電気圧力鍋もメーカーによるんでしょうが、
俺が持っているものだと、正直美味さはあんまりだし、
炊飯時間も炊飯器の方が早い気がするっす。
へえ、手作りの土鍋をプレゼントっすか。
彼女さん喜んでくれました?
[ その土鍋がそんな不格好なものとは知らない俺は、
単純に羨ましいなとは感じつつも、
適度に家事は手抜きをする俺には、
きっと使いこなせないだろうなとも思って。 ]
ふっふっふ、いつでも電気圧力鍋の便利さは
レクチャーできるっすからねー。
[ カラ元気の応答を骨谷先輩としつつも、
いつか骨谷先輩の都合のいいときに
料理教室を開こう。と決意して
俺は黒い雷神を咀嚼した。 ]*
―― 夢の中 ――
[ アリババさんの最後の宣告が聞こえる。
生きているのは大藤先輩と田端先輩。
それはつまり―― ]
そっか。回谷先輩……。
[ 俺が色々と誤魔化したりせずに
もう少し深い話ができていたら、
なんて思っても、もう遅くて。
悲しみと後悔が混ざった痛みが、
胸にきゅっとした刺激を与えた。 ]*
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[ステージで項垂れた時、懐から落ちたコインが
遊ぶように回りその仕組みを見せつけ、転がって
一時成海の意識を死者から奪ったように。
運命は手の届かないところで定められている。
砂粒一つから空の星まで、きっと。
無力感の中では起き上がる気になれず、目を閉じた。**]
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【人】 水商売 タバサ―現在:一階奥― (14) 2023/08/04(Fri) 06時頃 |
【人】 水商売 タバサ……だとしたら私、完全にお邪魔虫ね。 (15) 2023/08/04(Fri) 06時頃 |
【人】 水商売 タバサ……死を司る天使って案外居るのね。 (16) 2023/08/04(Fri) 06時頃 |
―― 夢の中 ――
[ アリババさんの最後の宣告以降、
ふらふらと館内を彷徨っていた俺の意識は、
大藤先輩が回谷先輩を
抱きしめている場面に出くわした。
秘かに仲いいのかなって思っていた2人が
こうしている光景は、日常の場面だったら
微笑ましいものだったはずなのに。
残酷な現実に俺の心は
さらにひしゃげそうになったけど、
俺が2人の時間に立ち入っていいはずがないから、
俺はすぐにその場から離れて、再び館内を彷徨う。 ]
回谷先輩や大藤先輩本人に聞かないと
お邪魔虫かどうかは分からないんじゃないかな。
[ いつの間にか元に戻っていた田端先輩と
アリババさんの会話する姿が目に入って。
2人だけの時間はもちろん必要だろうけど、
田端先輩に託したいものや、
先輩としか共有できないものも
きっとあるんじゃないのかなって俺は思うけど、
勝手に想像するだけで口出してちゃ駄目だよなって、
俺は小さくかぶりを振った。 ]*
―― 病院・病室203号室 ――
[ 目を覚ましてベッドから起き上がった俺は、
気を紛らわせようと、
放置していたメッセージを読み返した。
別に回谷先輩が亡くなったことから
目を逸らしたかったわけではないけれど、
メッセージの中には、それとなく先輩の死を
指し示すものも含まれていて、
ままならない現実を突きつけられた俺は、
メッセージに返信する気分になれずに、
既読スルーすることにした。 ]
――屋上
[屋上のフェンスを掴んで立っていたから、
ただしく眠っていたのではないのだろう。
夢うつつの状態で聞いた告達は――――。
――――はー……。
[空を見上げる。
この空は夢の中までは繋がっていない。
ここは、既に彼女のいる世界ではないのだ。
まだニュースは銀の耳に入っていない。
それでもアリババの声は最後まで真実なのだろうと、
理解してしまった。]
来週は、エビ天そばなのになぁ。
[
一緒に食べるランチを楽しみにしてると言った。
回谷の好物だったかは知らないが、
"待ってる"と。]
……………ふ……っ
[フェンスの網が手のひらに食い込んで、
それでも案外血は出ないものだ。
多分痛いのだろうと思う。
傷にもならないこの程度でも十分に痛いのに。]
うー―…………。
[
胸を貸すどころではなかった。
喚くことはせずに、声を殺して泣いた。**]
―― →病院・病室209号室 ――
……そういえば、高祈先輩はもう目を覚ましたのかな。
[ アリババさんは還っていったと言っていた。
思い立って俺は病室から出ると、
看護師さんに高祈先輩がいる病室を尋ねた。 ]
高祈先輩、福原です。
[ 209号室のドアを3回ノックした後、呼び掛けたけど、
先輩から返事はあったかな。
返事が無かったり、会いたくない旨を言われたら、
大人しく帰るつもりだったけど、
俺が夢の世界で見た一部の光景だけでも、
先輩が生きたがっているように俺には見えなくて、
心配する気持ちが大きかった。 ]*
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── 209号室 ──
……どうぞ
[静かな病室に響いたノック。
もう二度と聞けないのかもしれないと一度は思っていた声。
虚ろな意識の輪郭は確かになり、声を返せばベッドの上で上体を起こした姿で彼を迎えた。]
やあ、来てくれて嬉しいな
思ったよりは酷い姿じゃないね、お互いに
[腕から甲まで、包帯が目立つ片手を挙げた。
明るく声を向けつつも彼の姿を頭から足まで確認し
……安堵したように息を吐く。]
[本当なのだろうと、どこかで思っているが。
アリババの声を聴いた気がしたのは真実か、寝惚けていたのか。
成海一人で可能性を絞れるものは何も無かった。
未だあちらと繋がる方法があるなどと、知らないのだから。
──この後輩が、宣告を受けた後の自分を見ていたことも、勿論。*]
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―― 病院・病室209号室 ――
失礼します。
[ 迎え入れる声がして、
俺は病室のドアをゆっくりと開いた。 ]
はは、それだけ酷い姿を想像してたんですか。
[ もし、座っても良さそうなら、
俺はきっと先輩のベッドの側にあった椅子に
腰かけながらも、
先輩の声音と対照的に、俺は苦笑を浮かべた。
頭に包帯を巻いた俺が言えることじゃないかもだけど、
先輩の腕にも首にも包帯が巻かれていて、
明らかに痛々しい。 ]
先輩はアリババさんの最後の宣告を聞きましたか?
誰と誰が生きていたのかっていう……
[ まだ聞いていない可能性を考えて、
誰が亡くなったのかは明言することなく
俺の声は尻すぼみになるけど、
これで、先輩にもあの夢の世界と繋がる方法があると
気付いてもらえたかもしれない。
今、この言葉を言うのは、
きっとあのときと重みが違いますが、
それでも俺は思います。
――高祈先輩が生きていて嬉しいって。
[ 夢の世界での別れ際と違って、
回谷先輩が亡くなったことが決まった場面で、
この言葉を口にするのはあまりに罪深い気もする。 ]
[ 回谷先輩の死を軽んじているわけではないけど、
回谷先輩本人や親しい人が聞いたら、
きっといい気はしないと思われる言葉。
それでも、俺にとっての高祈先輩は、
恩人であって、別れがたい大切な人だったから、
それを口に出すことに躊躇はなかった。 ]*
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【人】 水商売 タバサ頂くわね。……子供扱いされるの、好きよ。 (34) 2023/08/04(Fri) 14時頃 |
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