人狼議事


31 私を■したあなたたちへ

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銀河ギャル キャンディは、メモを貼った。

2023/11/19(Sun) 10時半頃


【人】 銀河ギャル キャンディ

――前日夕方――

 月面基地で宇宙人と死闘を繰り広げた後は、道々のオブジェを眺めながら、カプセルトイ巡りをした。いくら全無料とはいえ、園内のカプセルを貪り尽くしては他の招待客に申し訳なくて、1筐体につき3回まで、と決めて挑んだが、ほどなく戦利品でポーチがパンパンになってしまう。

 観覧車の側に差し掛かった時には、遠目に卯坂庵のマスターと中学時代の教師が下りてくるのが見えて、逃げるようにその場を去った。

 そして、夕食にはまだ早い頃合いにホテルへ向かう。徒歩移動に飽いて、園内に点在するレンタルスペースで、光るタイヤが二つ並行に並んだ立ち乗り二輪車を借りてみたら、SF世界の住人になれたような没入感と趣きが楽しめて、意外と悪くなかった。

(54) 2023/11/19(Sun) 12時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――前日夕方/ホテルロビー――

 ホテルの玄関から見えるラウンジの隅の席に腰を落ち着ける。こんな自己顕示欲の塊みたいなナリをして、人間の本質なんてそう変わらない。どの席を選ぶかなんて、子供騙しの心理テストを思い浮かべながら、青硝子のテーブルに本日の戦利品を並べていく。
 カプセルトイのついでに、自動販売機で買ったスナック菓子やポップコーン、宇宙ひも理論的なワーム状チュロス。カフェほどのメニュー数は提供されていないが、軽食で済ませる魂胆だ。足りないなら、後でルームサービスでも取ればいい。
 モナリザの姉妹機みたいな給仕ロボットに、ブラックコーヒーだけ注文して、一服。

「あ、ちょっと待ってよ。
他に用事ないなら、ここに居て、話し相手になって?

……一人の食卓は味気ない。」

 ロボットは機械音声で相槌程度は打ってくれるだろう、思わず引き留めてしまってから溜息。

 もう、随分前から食べ物の味を感じなくなっていた。餓死はご免なので、食感の軽いものを適当に抓む日々。テーマパークやコラボカフェで、試食動画も受けは良さそうだが、自分には不可能な芸当だ。

(55) 2023/11/19(Sun) 12時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「キミも名前はモナリザなの? 何号機、とかなの?

このコーヒーって、どれくらい苦いのかな。
前はね、もうちょっと、甘い苦いは分かったんだ。
…………るくあと食べた購買のパンは、
どんなご馳走より美味しかった。」

 頬杖をつきながら、三日月の形のスナックを口に放り込む。
 物言わず佇む白い機体に、何を聞かせているのだろう。

「ごめんごめん。
キミの淹れてくれたコーヒーも美味しいよ。

多分ね。」

 指先の油分を拭ってから、労わるように丸い頭部を撫ぜる。一つきりのレンズに写る自分は、迷子の子供のように、不安で瞳を揺らしていた。

(56) 2023/11/19(Sun) 12時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「そうだ! コレあげるよ!
みんな同じロボットだけど、
見分けついた方がよくない?」

 自分の髪を飾っていた、派手なピンクのリボンつきマグネットピンを外すと、モナリザの頭にえいやと引っ付けた。うんうん、と頷きご満悦。当社比10倍は可愛くなった。
 頬張ったポップコーンをコーヒーで流し込むと、ご馳走様をして案内された405号室へ。*

(57) 2023/11/19(Sun) 12時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――前日夜/ホテル405号室にて――

 入室した部屋は、火星がテーマだったのだろうか、赤茶けた絨毯にベージュを基調とした地層のような縞模様の壁紙。ベッドはクレーターの中心に置かれていて、洗面所にも過不足無くアメニティが揃えられていた。
 礼儀のように内装を撮影してから、これまた凝った宇宙仕様のバスルーム>>25で、今日一日の疲れを洗い流した。

 ウィッグの下に隠れていた黒髪を拭きながら、鏡台に写った自分と目が合う。クレンジングでメイクオフした、凡庸なモブ顔がそこにあった。素顔まで秀麗に整っているだろうキランディとは天と地の差。高校生になったるくあの隣を堂々と彼氏面で歩いていた坂理も、女性受けの良さそうな容姿端麗ぷりだった。

「るくあってば、面喰いだったんだね。

平凡なボクがどんなに努力したって、
キミに好かれることはない、
キミに見つめてもらえない、
キミに――――



  …………るくあ……。」

(73) 2023/11/19(Sun) 13時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「でもボクは、ずっとキミを"見守って"いるよ。

雛子ちゃんから聞いた。
かくれんぼが、好きだったんだってね。


急にボクの前から姿を消したキミのこと、
……今度はボクが探して、見つけるよ。」

(74) 2023/11/19(Sun) 13時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 バスローブだけ羽織れば、随分と地味で軽装になった。誰かに見られたら、別の招待客だと疑われるだろう。中学生の頃と左程変わらない、この姿を一番見られたくない相手が隣の406号室>>65に泊まっているとは露知らず。

 さてもう後は寝るだけ、目を瞑れば1秒で睡魔に襲われるだろう、という段になって漸く、重大な過失に気が付いた。

「あれ……? ない、『アレ』がなくなってる!?

もしかして、どこかで落とした??」

 プチパニックになって、自分の手首を確認し、そして脱いだ衣類やポーチの中身を布団の上に並べて行く。どれもビビットでカラフルな、キャンディを粧う装飾品たち。
 その中で唯一、無彩色なキャンディに似つかわしくないブレスレット。萌え袖に隠れた手首に、汚れてくすんだ灰色の編み紐の輪――肌身離さずいたミサンガが、見当たらないのだ。

(75) 2023/11/19(Sun) 13時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――翌朝/ホテル405号室――

 アラームもセットせず、倒れるようにして掛布団の上で眠りこけていたら、随分朝寝坊してしまったようだ。
るくあが死んだとされてから、数ヵ月。日課だった登校の"見守り"は必要なくなったから、ゆっくりとキャンディの顔を作るため鏡と対面する。緑と紫のカラーコンタクト。地毛を隠すウィッグの、昨日給仕ロボにあげたリボンのスペースには、ガチャでゲットしたゆるい顔つきの地球クリップを留めて。

 その時、『アポロ』に着信が。
 眠気まなこを見開いて、マスカラを乾かしている最中だった。
 まるで誰かの遺髪めいた見慣れたミサンガが、千切れることなく写った添附ファイル。

(111) 2023/11/19(Sun) 15時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 急いでメイクを仕上げなければ!
 慌てている時に限って、リップラインが歪んだり、ピアスを付け損なって床に這いつくばる破目に陥るのは何なのか。縺れる指を引っかけて、ラメを左手の甲にぶちまけたりしながら、昨日よりクオリティの低い顔面で、ホテルの部屋を飛び出して行く。
 うっかり、厚底ブーツでなく室内用スリッパを履いたまま。*

(119) 2023/11/19(Sun) 15時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――回想/黒須???――

 中学校で報道部に所属していたのは、意外と性に合っていた。一人で家にはなるべく居たくない、さりとて休日に遠征試合等で、両親を送迎で煩わせるような運動部や吹奏楽部には入れない。
 報道部は、お昼休みに放送室から校内情報番組を流すこと、体育館の舞台の照明装置や裏方担当、毎月の校内新聞の発行などが主な活動内容だった。僕が選んだのは、校内新聞用の写真や、新入生募集用の学校案内、部活紹介等の短い動画を撮影する係。
 どうせ僕が写っていたところで、誰が喜ぶわけでもないし、自分が撮られる側でないことに逆に安堵したり。存在感の薄さも幸いして、いつ撮られたのか分からないような自然なスナップ写真は、評判も悪くなかった。

 煙崎るくあと出会った日から、写真に、映像に、彼女の姿が増えていった。

 カメラ係という大義名分で、新聞や動画の素材集めのフリをしつつ、ファインダーは執拗に彼女だけを追っていた。自分用に、るくあのデータを拝借することもあった。

(136) 2023/11/19(Sun) 16時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 思春期だったから、僕はそれを"恋愛感情"だと信じて疑わなかったけれど、どちらかというと親鳥を慕う雛の刷りこみ現象(インプリンティング)に近かったのかも知れない。僕の世界に、初めて彩りを与えてくれたひと。日本人の例に漏れず無心論者の僕だけど、苦しい時に救済を求める対象を神と呼ぶなら、僕にとってそれはるくあで、僕は彼女に縋ったのだ。

 他の誰でもない、キミに見つけて、認めて貰いたかった。
 いつも群衆に埋没して"その他大勢"にしかなれない、
 誰も覚えず気にも留めない、希薄な"僕"の存在を。*

(137) 2023/11/19(Sun) 16時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 バタバタバタバタ!!
 騒がしい見た目の人影がエレベーターから飛び出すと、可能な限り大股で足音も騒がしく廊下を駆け抜ける。

「あああぁ!! 居た、坂理ってキミだろ、

 そ こ へ 直 れ っっっっ!!!!!!」

 勢い余って彼を通り過ぎてから、キキーっと急ブレーキをかけて180度Uターン。ぜぇはぁと肩を大きく上下させながら、酸素を吸って吐いて吐いて絞り出すように。

「ごっ、ごめん、 口が、 滑った、 えと、

ソレ、見つけて、 くれて、
    あり、 がとっ……ぜぃ。」

 両手を膝に置いた前傾姿勢で、顔だけは真っ直ぐ彼の手の内の落とし物に向けていた。*

(138) 2023/11/19(Sun) 16時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――ホテル廊下――

 必死すぎて取り繕えない顔には、『よりにもよって、コイツに拾われるなんて』と書いてある。身に覚えのない剥き出しの敵意を隠そうとしない相手に、あくまで優しくソツない対応の坂理のイケメンぷりときたら。完全な敗北感に打ちのめされた惨めな敗者は、それでも心底ホッとしたように、自分の手元に戻ってきた宝物を崩さないよう胸に抱いた。

「……ほんとに助かった。
     不本意だけど感謝してる。

だってこれは、るくあのか、――っ
  かか形見、みたいなものだから!」

 髪、と言いかけて慌てて誤魔化しつつ、嫌々頭を下げる。すっかり色褪せ捩れほつれた紐束を通す左手は、ラメでやたら綺羅綺羅しい。

(144) 2023/11/19(Sun) 17時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 目の前の相手は失せ物取得の恩人ではあるが、やっぱりどうにも透かした顔がいけ好かない。ちょっと驚かせてやろう、くらいの出来心が過って、神妙な声音で問うてみる。

「ところで、

……るくあを殺したのはボクだ、って言ったら


  キミはどうする?」**

(145) 2023/11/19(Sun) 17時頃

銀河ギャル キャンディは、メモを貼った。

2023/11/19(Sun) 17時半頃


【人】 銀河ギャル キャンディ

――回想/るくあのミサンガ――

 煙崎るくあは、クラス内で特に目立つ要素もないのに、不思議と目を惹く存在だった。浮いているわけではない、けれど僕みたいに有象無象と紛れることもなく、他の生徒とは明らかに纏う雰囲気が異なる。後に知るキランディの芸能人オーラほどではないけれど、特異な存在感。

 下ろしていても束ねていても、真っ直ぐ優美な彼女の髪が、微風を孕んで背で揺れる、その一本一本の微細な動きにすら魅入られた。最初に彼女を保健室へと誘導する際、手の甲を擽っていったサラサラ滑らかな感触。思い返す度に、ぞわりと背筋に甘い痺れが奔り、劣情にも似た恋着に煩悶することになる。ああ、あの髪にもう一度触れたい、可能ならこの手でくしけずり、撫でる権利を得たい。

(192) 2023/11/19(Sun) 21時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 ある日、彼女の立ち去った後のベンチに、きらりと一筋光るものを見つけた。抜け毛だ。色、長さ、細さ、間違いない。
 いけないことだと分かりつつ、異常なほどの興奮と背徳感を抑え切れず手を伸ばす。先程まで、彼女の一部だったもの。せめて実物で叶わないなら、風に散らされいずれは屑籠行きのそれを、自分のものにしても構わないのでは?

 それから、僕はるくあの髪を集め始めた。
 気付かれぬよう距離を置き、彼女が去った後に痕跡を探して嗅ぎ回る。どこからどう見ても異常な変質者だ。集めた髪束がじょじょに太くなっていくのに、得も言われぬ達成感を噛み締めた。
 そうして出来上がったるくあの抜け毛の束を、僕は編んで腕輪にした。愛着というより執着の為せるワザ。ミサンガは切れた時に願いが叶う、なんて言うけれど、僕の願いは多分叶うことはない。左手首にいつも、るくあとの絆を巻いて。肌身離さず、僕はるくあにいびつな想いを募らせていった。

(194) 2023/11/19(Sun) 21時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――ホテル廊下――

 挑発的な態度の悪企みにも、淡々と憎らしいほどに平坦な調子で紡がれる返答(>>163)。むしろ此方の頭に血がのぼっていく。

「――――お察しの通り、ボクはるくあが好きだ。
るくあの望みなら、この命だって捧げられるくらいにね。


なのに、るくあはもうボクに振り向いてくれない。
ボクじゃないヤツの隣で笑い、
ボクじゃないヤツを"推し"だ何だ熱狂的に崇拝して、
ボクじゃないヤツと食事したり相談したり談笑したり、

っ――気が狂いそうだ。
いや、とっくに狂ってるのかも。

いっそボクの手で殺せたら、
るくあはこれ以上ボクを苦しめない。
今際の際に、ボクの存在を無二に感じてくれるなら、
こんな素晴らしいことってないだろう――!!」

(195) 2023/11/19(Sun) 21時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「――――――こんな感じで、どぉ?」

 彼女のことなんて、長年尾行して得た表面上のものしか知らない。増して何を考え、悩んでいたかなんて。(ストーカー被害については、多少は気味悪く困っていたかも知れないが)
 殺した理由については、なかなかに迫真に迫る演技ができたのではないだろうか。ぎらぎらと嫉妬に燃える瞳で坂理を睨みつける。

「ボクのこと知ってるんだ。
滑稽な負け犬だと思ってる?

ボクの方がこんなにも、るくあのことを――

なのにキミは、るくあを殺したと言う相手を前に、
顔色を変えもしない、怒りもしない。


…………薄情な彼氏くんだなァ。」

 何もかもを見透かすような視線が気に食わない。詰め寄り、胸元に掴みかかろうとしたところで、ここがホテルのロビーに近く、食事中の者もまだ居たことを思い出した。
 パッと身を翻す。女性を、るくあを、虜にするだろうお綺麗な面を殴りたくないと言えば嘘になる。苛立ちは収まらないが、大事なミサンガに免じて、今回は見逃してやろう。チッと舌打ちを一つ。

(196) 2023/11/19(Sun) 21時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「キミは犯人じゃなさそうだ。
  それに、ボクを殺してくれそうにもない。

        ――つまらないな。」*

(197) 2023/11/19(Sun) 21時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「何を笑ってるんだ。そんな目で見るな。」

 勝者の余裕に浸るでもなく、突然に逆恨みをぶつけられても、彼は反発して来ないどころか嬉しそうに認めるのだ。ただ憎いだけだった相手が、分からなくなる。いっそ憐れまれた方がまだ良かった。何故、自分が焦がれてやまない立ち位置を奪った相手に、羨望の眼差しを向けられねばならないのか。
 感謝のことば(>>210)に、思考はますます混迷を極め、相手が喋っているのが日本語でないような錯覚を覚える。到底受け入れられず、ショッキングピンクに輝く髪を駄々っ子のように振って、腹の底から低く唸った。

「それでも、るくあはボクでなくキミを選んだ。

話がつまらなかろうが、薄情だろうが、
ボクよりキミの方が良かったんだ!」

 所詮世の中顔なのか、と口走りかけて、ふいに脳内にるくあの声が響く。滔々と澱み無く流れる台詞に愛情は感じられない、そう彼の告解(>>208)と同じ温度で。

『あなたは、何も知らない。』(>>0:175)

 死刑宣告に等しい、関係を断ち切り拒絶する彼女に、絶望の淵に叩き落された。

(235) 2023/11/19(Sun) 23時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 今、眼前の相手は凄絶なほどの笑みを浮かべて、真っ直ぐに自分を捕らえている。不覚にも一瞬見惚れてしまったのは、彼の端正な美貌のせいではなくて――るくあを重ねてしまったからだ。

 彼等が、似たもの同士と言い合っていたことは知らない。
 最愛にして心の拠所であった彼女の面影を、憎い恋敵の中に見出してしまうなんて、惨敗どころではないではないか。その言寿ぎは、生きているるくあ本人から、一番聞きたかったものだったから。


「あっそう。どういたしまして。



…………ボクはキミが大嫌いだ。」

 強がりで、そう絞り出すのが精々だった。
 どうせ、自分がるくあを殺せていないことくらい、キャンディの正体を見破った彼にはお見通しだろう。
 引き留められなければ、ミサンガの礼にもう一度だけぺこりと雑に頭を下げて、ロビーの方へ向かおうと。*

(236) 2023/11/19(Sun) 23時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――ホテルロビー――

 るくあの隣に立つことを許された男坂里との対峙は、思ったより心身を消耗させた。まだ、朝起きたばかりだと言うのに。
 ラウンジの昨日と同じ席に、ドサリと身を投げ出す。まるで連勤続きの疲れたサラリーマンの風体。

「あー モナリザー おはよーぅ。
昨日と同じコーヒーを貰えるかな。」

 複数働く御馴染みの機体の中から、自身のトレードマークでもあったピンクのリボンを冠したロボットを、にこやかに手招きしてデバイスを翳した。

 今朝(と言ってももう正午近い)はテーブル上の角砂糖を10個ほど黒い液体に放り込んでみる。混ぜるスプーンがたてるざりざりした音。最早泥のような砂糖にコーヒーが染みている、みたいな有様だが、壊れた舌では昨日の一杯と違いを感じられなかった。

(264) 2023/11/20(Mon) 02時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「それから、オムレツが食べたいな。
ね、ね、ケチャップで何か描いて! 憧れてたんだ!」

 一旦調理スペースに引っ込んで行ったモナリザが、1分経たずに内側が湯気で曇った透明なクローシュ付きの皿を運んできた。ワクワクしながら蓋を開けると、閉じ込められていたバターの香の湯気が広がる。

「――――――――っ。」

 ギャラクシーランドのフードメニューだから、無難に月星や惑星の記号が描いてあるだろうと思っていたのに。園内で多用されている角ばったフォントで、寸分違わず描かれた赤い『SUSUMU♡』の羅列。メール用のアカウントは変更できても、デバイスの持ち主の登録名はバレバレなのだ。
 坂理の前では意地でも見せなかった涙が一滴、頬を伝ってスプーンに落ちた。

(265) 2023/11/20(Mon) 02時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「もうさぁ、 もうさぁぁ!!

ボクは別にここから出られなくても
全然、一向に、困らないワケ。
底辺配信者なんて、更新止まっても
リアル多忙やメンタルやられて失踪した
とか思われるだけだし、そんな事例ゴマンとあるし。

1人暮らしだし。父親も母親もボクが
生きてようが死んでようがどうでもいいだろうし。

でももし、ここから出ることになるならさぁ、
ボクはキミを連れて帰りたいよ。切実に。」

 目印のリボンなんていつ外れてしまうか分からないから、ポーチから取り出したメタリックな深紅色のマニキュアで、モナリザの胸部ディスプレイの隣にハートマークを塗りつける。オムレツのケチャップのお返しだ。

「我ながら情緒不安定でおセンチな気分だな。
全部アイツのせいだっ」

 スプーンで掬った優しい淡黄色を口に運ぶ。蕩ける食感は、僅かにしょっぱい。*

(266) 2023/11/20(Mon) 02時頃

銀河ギャル キャンディは、メモを貼った。

2023/11/20(Mon) 02時半頃


【人】 銀河ギャル キャンディ

――回想/僕とるくあと卯坂庵――

 煙崎るくあが高校に進学すると、引っ越しによる物理的距離が開いたこともあって、"見守り"は困難になっていた。さすがに四六時中とはいかず、たまに午後の授業を抜け出して電車に乗り、るくあの下校を待ち伏せたり、休日にるくあの行動範囲のスポットを偵察したり。

 卯坂庵はるくあの行きつけの喫茶店らしく、彼女が三度その扉の向こうに消えるのを見届けると、僕は次の来店時期を予測して店を訪れた。これがもっとシャレオツで女子高生が映えるスィーツを撮りに並ぶような店だったら、当時の僕は怖気づいて回れ右しただろう。モダンながらも落ち着いた和風の店構えが、マスターの人柄と相俟って居心地の良さを演出していた。歌舞伎趣味といい、るくあは和風テイストが好みだったのかな、と今になって思う。
 近くの高校はまだ授業中であろう時刻にやって来る、帽子を目深に被った私服の若者。特に何を喋るでもなく、文庫本を開いたりスマホを弄ったりしながら、コーヒー一杯だけ飲んで去ってゆく。不審な存在だが、幸い通報されることも、素性を探られることもなかった。

(289) 2023/11/20(Mon) 12時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 一日置きに張り込むこと9度、ついにるくあが友人を連れて卯坂庵の扉を潜った。高鳴る胸を抑えながら、卓の下で足を落ち着きなく組みかえる。どこか儚さを湛えながら、るくあは日に日に大人びて優雅に咲き綻んでいく。僕はその芳香に惑わされる小さな虫。店内の和紙越しの柔らかな光の下で、僕のるくあは今日も抜群に綺麗だった。
 此方に背を向け、大福のセットを注文するるくあを、学友と和やかに時を過ごするくあを、僕は一分一秒を惜しむように、目に焼き付けた。
 茫っと見惚れてしまっていたら、持ち上げたコーヒーカップがソーサーに着地し損ねて、硬質の音を響かせる。その時、ふっとるくあが此方を向いた。目が合った。

「…………っ!!」

 不覚だ、尾行に気付かれるなんて。偶然だね、なんて声をかける度胸もなく、僕は3分の1飲み残したコーヒーと紙幣を置いて、お釣りも受け取らず脱兎の勢いで店から逃げ出した。

(290) 2023/11/20(Mon) 12時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 それから一か月も経たぬ内、るくあの隣に顔ヨシスタイルヨシのスラっとしたイケメン(※坂理だ)が並び歩くことになる。仲睦まじそうな空気感の二人を目にした時の絶望たるや、僕が魔王なら世界を33回くらい滅ぼしちゃっていたところだ。
 それ以上二人を追えなくて、けれど遠ざかる二つの背から目を逸らせなくて。僕は悔しさと憤怒のあまり血涙を流し、隠れ蓑の電信柱をへし折る勢いで掴んでいた(※イメージ)。

 その時るくあは、まるで最初から気付いていたように、ゆっくりと振り返り僕の方を見つめた。唇が諭すように動いて、その時紡がれた言葉が謝罪だったのか、諦めを促すものだったのか、聞こえはしなかったけれど。何という皮肉だろう、僕の希望を木っ端微塵に砕いたその瞬間にこそ、彼女は"その他大勢"に沈んだ"僕"を、確かに見つけ出してくれたのだ。直後奈落に突き落とされた僕は、すごすごと最寄り駅へと引き返すしかなかった。

(291) 2023/11/20(Mon) 12時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 こんなことで、僕が諦めると思ったなら、るくあは僕のことを何も理解しちゃいない。るくあのことを忘れて、身の丈の生活に甘んじ、別の誰かを好きになるなんて――冗談じゃない!!
 一度決めた相手以外に心変わりするなんて、大嫌いな僕の父母と一緒だ。僕の想いはどんなに捩じくれ歪められても、対象を変えることは絶対にない。してはいけない。

 るくあが僕を選ばなかったことも恨むけれど。るくあの眼差しを、笑みを、語らいを、或いは可愛いおねだりを、向けられる相手を殺したいほどに憎悪するだけ。いつかるくあに好きになって貰うために、るくあが好むものを、この薄っぺらな身体に詰め込んでいくだけ。

 そうして僕は、今日も明日も明後日も、キミを愛し、キミを案じ、キミを"見守って"いくのだ。

(292) 2023/11/20(Mon) 12時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――ホテルラウンジ――

 心の隙間に滑り込むような、穏やかな男性の声(>>274)。醜く愚かな嫉妬の炎で焦げた身を、黙って聞いてくれるモナリザに慰めて貰っていたけれど、配慮に溢れた声はまた別の傷に染入る。

「どーもしない。
独りで飲みたい気分なんだ……。」

 映画のワンシーンを気取ってみても、モナリザ相手に愚痴を零す情けなさは打ち消せない。未成年だからカウンターで渋く酒杯を傾けることもできない。
 ちらと声の主を認めて、かつての卯坂庵での一幕を鮮明に思い出して。気不味さを覚えながらも、いや、とかぶりを振る。

「やっぱり、少しいいかな。
話しを聞いてよ、マスター。」

 最早底に砂糖しかないコーヒーカップを両手で包んで、苦渋に満ちた溜息を吐く。居酒屋のオヤジにくだを巻く酔っ払いの戯言の調子で、喫茶店の店主に向かいの席を*促した。*

(293) 2023/11/20(Mon) 12時半頃

銀河ギャル キャンディは、メモを貼った。

2023/11/20(Mon) 13時頃


【人】 銀河ギャル キャンディ

――ホテルラウンジ――

 数年越しの不思議な邂逅。
 るくあの"見守り"(≒ストーキング)を通して、招待者の半数以上は一方的に知っていたけれど、彼等からは自分は未知の存在だろう。メイクを始めはっちゃける前は、極力目立たないよう日陰を歩いてきたのだから。
 卯木からの注文を受けて去るモナリザを微笑ましげに見送ってから、再度嘆息。

「辛いこと……そうだな、失恋はもうとっくに
トドメは刺されてるし。

敢えて言うなら、好きな人が、
ボク以外の誰かの手で殺されたらしいこと、かな。」

 それだけで、想い人が誰であるか容易に察せる状況だ。
 卯木の視線を追って、オムレツに目を落とす。モナリザの心使いの♡から食べ始めていたから、逆さから見ても『SUSUMU』の文字ははっきり判読できるはず。右端からスプーンで削って、はくりともう一口。
 1人に暴露した以上、あまり正体を隠し通す意味はない。せいぜい、中学教師の菊水先生に見られたら気不味いな、程度。

「ボク、こんなナリで動画配信とかしてるけど、
中学の時のるくあの、 ……知り合いで。
招待状はそっちの――黒須ワ宛でした。」

(322) 2023/11/20(Mon) 16時頃

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