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![]() | 【人】 綿津見教会 マナ
(48) 2021/11/11(Thu) 09時半頃 |
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(51) 2021/11/11(Thu) 09時半頃 |
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(53) 2021/11/11(Thu) 10時頃 |
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(59) 2021/11/11(Thu) 10時頃 |
―― げんじつせかい ――
[ コンコン。
ノックの音が聞こえて、あたしははっと顔を上げた ]
ふあっ!?
[ あたしの声は返事になってなかったし、
なんなら返事じゃなかったんだけど、
ドアを開けてお母さんが入ってくる ]
「寝てたの?」
[ お母さんはあきれ顔。
手にはトレイを持ってて、そのトレイには、
レンチンの焼きおにぎりが2つと
具沢山のお味噌汁が載ってる。
お母さん、よく夜食を持ってきてくれるんだよね。
あたしが真相を知った日以降、特に。
あたしが何かやらかさないか、きっと心配なんだと思う ]
[ あたしはというと、机の上に参考書とノートを広げて
寝てた。寝てた……んだ。
なーんだ、夢かあ。
夢……だった? ]
「七星?」
[ お母さんが怪訝そうな声であたしを呼んだ。
トレイを机の端に置いて、
あたしに手を伸ばしてくる ]
「首、どうしたの?痣になってる」
…………え。
[ お母さんの手があたしの首に触れた。
ポーチから手鏡を出して確かめてみれば ]
うわっ。
[ 怖いんだけど!
指で首絞められたみたいな痣ができてるんだけど!
あれはただの夢なのに!
そうでしょ?
だって、ただの夢じゃなかったら、それって ]
[ ぴこーん。
聞き慣れた音がしたのは、その時だった。
スマホのメッセージ受信音だ。
条件反射みたいにあたしは確認しちゃう。
送信者は……日食君?
こんな時間に珍しいな。
日食君といえば猫だけど、
こんな時間に猫写真を撮ったわけでもなかろうに。
そんなことを考えながら、メッセージを開けば ]
今、病院に着いた……?
[ 病院?なんで病院?
よくよく見れば、グルチャに送られた
日食君のメッセージは、それだけじゃなかった。
あたしは瞬きを忘れて、
ついでに目の前にいるお母さんのことも忘れて、
慌ててメッセージをさかのぼる ]
[ 病院って不穏な単語に、お母さんが首を傾げて、
話の途中だっていうのに口を挟まずに待ってくれてるの、
気づく余裕は今のあたしにはなくて ]
『帰ってきた。病院行く』
『今家を出る』
[ 帰ってきた?帰ってきたって、どこから?
日食君のメッセージは要領を得ない。
イラっとしそうになったけど、
他にもメールが届いてることに気づいた。
飯尾先生?と、和歌奈ちゃん?
グルチャにメッセージじゃなくて、メール。
首を傾げながらあたしはまず
和歌奈ちゃんからのメールを開いて ]
[ 血の気が一気に引いた。
和歌奈ちゃんから送られてきたメールは、
あの校舎で読んだ遺書だった ]
お母さん、
[ がくがくと体が震えて、
あたしは忘れてたお母さんのことを都合よく思い出した。
片手にスマホを持ったまま、もう片方の手で、
お母さんの腕をつかむ ]
お母さん、どうしよう。
和歌奈ちゃん、和歌奈ちゃんが、死んじゃう。
「七星。七星、落ち着きなさい」
[ 空いてる方の手で、お母さんが背中をさすってくれる。
でもあたしは落ち着けない。落ち着けるわけない。
どうしよう。止めなきゃ。行かなきゃ。でもどこに?
……病院!
そうだ、病院って、さっき読んだ! ]
……病院!日食君、着いたって……。
[ どこの病院かは書いてなかった。
っていうか日食君はどうして知ってるの?
誰から聞いて……あ。
先生からのメール!
あたしは慌てて先生からのメールを開く ]
……お母さん。
[ メールを読み終わって、あたしはお母さんに向き直った ]
友達が、病院に運ばれたの。
あたし、行きたい。
[ 先生からのメールには、
和歌奈ちゃんが望高の屋上から飛び降りて、
望月病院に運ばれたって書いてあった ]
行かなかったら、あたし多分一生後悔する。
夜食は、持ってく。
[ あたしは、なんていうか、ぐちゃぐちゃだ。
認める。あたしにはそういう部分がある。
多分あたしの言動で、お母さんはあたしの友達が
病院に運ばれた理由を察したと思う。
ぐちゃぐちゃなあたしを、自殺を図ったであろう友達に
関わらせたくないと思う。
でも、行かなきゃ。絶対行かなきゃ ]
……あのね、あたし、夢の中でひめちゃんに会ったの。
[ ひめちゃん。
その言葉に、お母さんの肩が震えたのがわかった。
だけど構わずあたしは言葉を続ける ]
ひめちゃんに死んでって言われたけど、断った。
あたしは生きたいって。
ちゃんと言って、ちゃんと決別できたよ。
だから……あたしは、大丈夫だから。
[ 実際のところ、そんな簡単な話じゃないと思う。
今でもあたしのどこかはやっぱりぐちゃぐちゃだし、
カウンセリングとか、多分そういうの、
あたしには必要なんだと思う。
だけど、今は。今だけは。
大丈夫だから行かせてほしい ]
[ お母さんは大きなため息をついた ]
「食い意地が張ってる間は大丈夫そうね。
お味噌汁はスープポットに入れていけばいいでしょ。
お父さんに車を出してもらいなさい」
[ お母さんの言葉に、あたしは目を見開いて、
それから抱き着いた ]
うん、ありがと。
……あのね、あたし、お母さんのこと、大好きだからね。
お父さんのことも。
[ コートを着て、マフラーを巻いた。
首が隠れるように、しっかり。
玄関のドアを開ければ、そこは雪景色じゃなくて、
だけど冷たい空気がほっぺたを冷やす。
お父さんは、もう車のエンジンを掛けてくれてた。
乗り込んでシートベルトを締めて、
そしてあたしはグルチャにメッセージを送る ]
『ただいま!夏見、帰還しました!
今から病院へ向かいます!』**
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