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珊瑚、とても綺麗だよ。 愛してる。
[姿勢を正した珊瑚を見つめて瞼を下ろした珊瑚に愛の言葉を紡ぐとその肩に軽く手を振れる。 どういう所作が正しいか、一瞬で忘れてしまった。 それくらいに珊瑚が魅惑的で顎を上げてキスしやすいようにしてくれると首筋を傾けて鼻筋が触れ合わないようにして、唇を近づけていく。
初めてキスをしてから何度キスをしたことだろう。 でもこのキスだけは人生の中で唯一で思い出に残るものになる。 じっくりと時間をかけてキスをしよう。 どれだけ自分が珊瑚を想い愛しているか万人に分かるようなキスをしよう。
長くも短い口づけを交わして――唇が離れると、ほぅ、と吐息を零した。 式はそのまま恙なく終わる]
(116) 2023/11/19(Sun) 15時半頃
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行こうか、珊瑚。
[珊瑚の手を取って祭壇の段を一段一段降りていく。 参列してくれた皆が作ってくれる祝福のトンネルを潜って、ライスシャワーの中を進んで扉の外へ。 眩い明りに包まれた世界に二人で飛び立とう**]
(117) 2023/11/19(Sun) 15時半頃
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──数年後の私たち──
そう言えばちょっと忙しくはなるけど、お互いの式には参列することになる。 お色直しとは違うけど、タキシードもドレスも脱いで正装をお借りして臨むんだ! 私はピンクのドレスで、内側は袖なしの肩が露出したワンピース、でも透ける生地とレースを沢山使った上着をつけて式に参列させてもらったの。 こういうのも楽しいね! また披露宴の時は一度ウエディングドレスに戻るんだろうけど、一緒にワイワイ、こんなのも楽しくて良いなあって思うんだ。 幸せになる人が一人でも多い方が素敵だもの!
(118) 2023/11/19(Sun) 18時頃
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順番からドレスをどのタイミングで脱いでとか着続けるとかはあるけれど、とにかく私の式では私たちが主役。 私も普段しない格好の命くんに見惚れて。
「私も…愛しています。」
>>116お互いの囁きはみんなに聞こえなくて良いの。 私たちだけに聞こえていればそれで。 いつも私の隣にいてくれる命くん。 写真をとられているのも気づかないくらいあなたに夢中で、であった頃よりもずっとずっと好きになってる。 ずっとあなたに恋をしている。 今は激しい思いではないけれど、温かなそれは平和になった今常に隣り合っていたいもの。 このあたたかな感情をこれからも大切に生きていたい。 決して後悔しないように、あなたと二人で。
(119) 2023/11/19(Sun) 18時頃
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長いキスを終えて、私も小さく吐息を溢した。 ほんのり頬を染めて、これでみんなの前で愛を誓い合ったんだと改めて幸せを噛み締めてしまう。
「うん、…これからずっと、ね♡」
彼の手を取り歩き出す。腕を組んで、祝福のライスシャワーと祝福の言葉を浴びながら。 ブーケトスを受け取ってくれたのはだれかな?真弓ちゃんかな、七尾ちゃんかな? それとも他の誰かかもしれないね。 青空にブーケが舞う。 華やかな声と、華やかな雰囲気に私は満面の笑みを浮かべながらまた命くんにキスをして。
「幸せ、お裾分けしてもしても溢れてるね。」
そんな事を囁いてウインクしてみせた。 だってこんなにも幸せな日々、夢見てた日が来るだなんて嬉しくて。
(120) 2023/11/19(Sun) 18時頃
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披露宴は最初はウエディングドレスだったけど、合同なら高砂席が二組、私たちと柊木くん恵一くんの分。 お色直しでは私たちは着物の予定! あ、カラードレスじゃなくて色打掛にしたのは…命くんの和装が見たかったから! 着物で登場したけど、指定の場所に行くと白いエプロンをつけてスタンバイ。 招待客の皆様に自由に具を選んでもらって、〆に新郎新婦で出汁をかけたお茶漬けを食べてもらうんだ! 奥さんとか女将さんぽくて似合ってる…と良いな? だって披露宴のお料理は美味しいけどみんなにお腹を美味しく休ませて欲しかったし、キャンドルサービスよりは性に合うし、個々人ともお話の時間を取れるかなって…。 手紙より、こういう和気藹々としたのに時間をとりたかったもの。式場側からもお勧めされたしね。
(121) 2023/11/19(Sun) 18時頃
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でも、命くんは私の旦那様だし、私は命くんの奥さんだよ〜! キラキラした目で命くんを見る子もいたけど、結婚式への憧れって事で無かったことにしてあげるからね?まったく!**
(122) 2023/11/19(Sun) 18時頃
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――数年後の僕ら――
[式から式への着替えもしっかりとサポートしてもらっている。 白いタキシードと黒い礼服は色的にも真逆である。 タキシードって以外と着るの大変だったから脱ぐのも大変でコーディネートの人が手伝ってくれなかったらきっと間に合ってなかった。 ピンク色のドレスを着た珊瑚はとてもよく似合っていて可愛かった。 袖なしで肩が露出しているからついついそこに視線が向かってしまう。 魅惑的なのだから仕方がない。
>>119返される囁きににっこり笑みを浮かべてしまう。 燃え上がるような熱情は二年半の間にじっくりと熟成されてきている。 好きという感情には深みがありずぶずぶと底なしに沈み込んでいく。 隣にいると幸せで温かな気持ちになれるところが素晴らしい。 >>120ずっと一緒にと望んでもいい幸せと、ずっと一緒にいられる幸せに包まれながらブーケトスを眺めて人生で最高の瞬間は幸せをお裾分けする程に幸せな一時だった]
(123) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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[披露宴――。
お色直しでは着物を所望されたので二つ返事でオッケーと伝える。 和服姿が見たかったらしいけれど命もまた珊瑚の和服姿が見たかったのでとてもお得だった。 和服姿の珊瑚もとても可愛い。 和服姿にエプロンとか最高ではないだろうか。 >>121出汁をかけて回る夫婦の共同作業をして回る。 料理も美味しそうなものを選んだし来席している皆がお腹も心もいっぱいになってくれるといいと思う。 キャンドルサービスではないのは珍しいし、珊瑚の家庭的なところを皆が知ってくれるとそれもまた嬉しい。
乾と柊木の方はどんな催しをするのだろうか。 そちらも楽しみに見ながら、珊瑚が自分の奥さんであることをどんどんと見せていこう。
皆笑顔で小さい子も憧れを抱いてくれるなら――>>122なんでそんなにニヤニヤ笑ってそうなのかなと苦笑しながら小さい子にも丁寧に対応していく命であった**]
(124) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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――数年後(墓下軸の続き)――
僕らの就職は大学に進学したらもう目と鼻の先だ。
康生は教師になる道を選択。 高校時代にいつも彼から勉強を教わっていた僕としては、適任だと一番に感じる立場。
「コウが先生になるのか……教壇に立つ姿、きっとカッコいいだろうな。スーツも似合うと思うし。
でも、君から勉強を教わったという意味では僕が最初の生徒だけどね?」
未来の生徒たちに謎のライバル心を燃やす。
説明下手に関しては、愛情なら身体を重ねるだけであっという間に互いに伝えられるが教師ぬるなら彼に生徒を抱かせる訳にいかないし(いや生徒が彼を抱く……?どちらにしろ駄目だ駄目だ!)、必死に二人でトレーニングに勤しんだ。
(125) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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対して僕の方はといえば、意外な形で就職先の目処がついてしまうのだがーー。
僕と康生は珊瑚たちと一緒に結婚式と披露宴を行うことになった。
結婚式は別々に。披露宴は一緒に。僕は仲良しの四人でそんな嬉しい事を出来るだけで幸せだったし、形に拘りはない。
拘るのは康生のウェディングドレスだけだ……!!
そして僕は、結婚における最重要イベントに挑む。
(126) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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康生の両親と僕は既に知り合いである。僕の家を避難先として提供した事があり、以来は家族ぐるみの付き合いだ。 四人で食事をすることなどもあったり。
僕らは各両親からどう見られていたのだろう?
ただの仲良し?友達?親友?だが、同居中に一緒に風呂まで入るのは友達を越えた関係だ。 キスとかは見られないよう極力気をつけて隙を見ていたが、 僕の両親は薄ら勘づいていた。
それで先駆け、僕はハッキリと事情を説明した。
彼と僕は恋人であり、最愛であり、将来を誓った仲であると。
流石に二人ともびっくりした様子だった。しかし僕の両親は性嗜好や属性に偏見はない。ただ純粋に息子の幸せを祈って祝福してくれた。
「恵一、康生くんとずっと仲良くね。二人で助け合うのよ。
助け合うというのは、どっちが頑張りすぎても駄目なの。 貴方も康生も好きな人のために無理をするタイプだから……気をつけてね。」
(127) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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母の言葉に僕は深く頷くと同時に、僕を責めたり異常扱いしない二人に深く感謝を捧げた。
そしていよいよ、康生の両親への報告である。
僕はその日新調したスーツに身を包み、柊木家を訪れた。 お土産を渡したり丁寧な挨拶の上、ついに。
息子さんをお嫁さんに。 一見おかしな言葉だが僕は真剣だ。康生のお父さんに何を言われても諦めない、食い下がると心に決めていたから、床に頭を擦り付けてお願いを続けた。
僕のお嫁さんは康生しかいないんだ!
そこでお父さんに言われた言葉に僕は驚く。
「息子……?僕が……息子、……それって。
ーーあ。」
(128) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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思わず敬語を忘れた僕は漸く理解する。そして、ポロポロ涙を流した。激しく頷いて。
なんて暖かく、心の広い答えだろうか。
「ありがとう……お父さんッ!!」
立ち上がった僕は感極まり、康生のお父さんに抱き着く! 康生とお母さんの目の前で!
ぎゅーっと抱き締めたお父さんは何処か、康生と似た香りがしたような気がした……
……一悶着あったかないかはともかく、僕は康生の家で夕飯を呼ばれる事に。 僕がお父さんから事業を継ぐ話をされたのはこの時だ。
正直驚いた。僕が自分を糞雑魚ナメクジ呼ばわりするのは康生が傍にいて自信を与えてくれるお陰で随分軽減されている。
(129) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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そんな大きな期待に応えられるか震えたが、康生がこれで心置きなく夢を追いかけられるなら。
しっかり力強く僕は頷いただろう。
それから、僕は急速に康生のお父さんと仲良しになった。 まさかお父さんがゲームが好きだなんて思わず、しかも一緒に遊ぶと中々に上手くて。 新しい友達が一人増えたみたいな喜びがあった。
康生も僕の両親や兄に甘えたり、交流を深めたりしてくれたら嬉しい。
ウェディングドレスについては、僕らのLINEでは一番活発に交わされた話題だったかも。
康生には窘められたけど、思うと僕が言ったような無邪気はむしろ昔の康生がよく言うような口振りだった。
彼は教師という目標を得て着々大人に成長しているのか。 僕もしっかりしないと追い越されてしまうし、かかあ天下が発生し尻に敷かれてしまうかも?なあんて。
(130) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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珊瑚が送ってくれた写真はとても素敵だった。大人びはにかむ彼女の艶姿が素晴らしい。 これがマーメイドラインというのだなと僕は学ぶ。
珊瑚のアドバイスの通り、康生にはお姫様ぽいのが似合うと僕も思った。
前に試着した時もめちゃくちゃ可愛くてその後ホテルに駆け込んで五発ぐらい抜かずにしてしまったし……。
僕には何故かたまに思い出す不思議な記憶があった。
康生と二人で訪れた、想い出の教会。 そこで彼はウェディングドレスを纏い、僕となんちゃってな挙式を挙げるのだ。
参列者は誰もいない、お遊びの。
あの記憶はなんだろう。 僕らはとても悲しい運命を背負っていた気がするんだが……。
(131) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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ーー僕らのウェディングベルーー
愛を誓うだけなら僕らはもう済ませていた。だから、もしかしたらこの挙式は僕らではなく、見守ってくれる両親たちや祝福をくれる友人たちの為なのかもしれない。
勿論僕はセレモニーが大好きだし、康生の可愛らしいウェディングドレスを拝めるだけで嬉しいから、可能なら何回でもやりたい。
ちなみにドレス以上に僕が拘ったのはガーターベルトだ。
「花嫁は白のガーター!!これが正義。」
びしッと指を立てる僕を康生はどんな目で見ていたか。
嗚呼、裸にガーターと白スト、そして頭にヴェールだけをつけた康生とガンガンやりたい!
(132) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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僕の妄想は膨らんだ。 どうでもいい僕のタキシードは灰色。大和の白もかっこよく迷ったが……
僕らの式はお父さんと共に歩くバージンロードを康生がおごそかに歩き、それを僕が迎え入れるオーソドックスに始まった。
最前列の僕の母さんは嗚咽し、兄と父が支えている。
神前でみんなに見つめられて、改めて愛を誓い、僕は彼の唇に唇を寄せる。
ピンク色でふっくらして。 微笑むと天使みたい。 そんな彼を花嫁として。 永遠に、僕のものにーー。
珊瑚と大和たちの挙式には、僕らは参列者として席につく。
(133) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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ビシッとタキシードを決めた大和はイケメンだ。キリッとした眉、意思を感じる瞳。 彼なら絶対珊瑚を幸せにするだろう。
珊瑚は本当に綺麗だった。 小さな頃の彼女を知る僕は、人の成長って凄いなとしみじみ思う。
二人の幸せが自分の事のように嬉しくて堪らない。
「おめでとう、珊瑚、大和。末永く幸せに……!」
二人の手を硬く握り僕は告げただろう。*
(134) 2023/11/19(Sun) 20時半頃
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─乾恵一戦 コックピットにて─
[私にも康生にも、乾恵一に語り掛ける者の言葉は判らない。彼自身が零す言葉から、断片的に推測するしかない。彼の兄と、雨竜春音に語り掛けられている様だが、彼等が今声を掛けて来るとは思えないから、幻覚なのだろうと当たりが付く程度だ。正確には、彼に最初に語り掛けて来たのは彼の母親の声だった>>62>>96>>97のだが。私達に、そうだと知る術は無かった。]
[そして、この時点で私達が知らない事実がもう一つ在った。それは、康生が冷静さを欠いた理由にも大きく関わっている。勿論、精神攻撃が作用した可能性もあるだろう。だが、易怒性に人格変容>>7>>75、項部硬直>>93、意識消失>>95──康生は、髄膜炎を起こしていたのだ。]
[彼から与えられた毒は遂に康生の脳を冒し、その人格までをも壊した。嫉妬>>75も極端な自己卑下>>94も依存傾向>>99も、本来の康生からは縁遠い物だ。乾恵一は宣言通り>>0:89康生を壊し、作り変えてしまったのだ。彼の事しか見えず、彼だけを愛する存在に。]
(135) 2023/11/20(Mon) 00時半頃
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[髄膜炎にこそ気付いていなかったが、康生が彼に身も心も全て捧げ、その上で尚置いて行かれたのは私にも判った。存在しない腸が煮えくり返る様な怒りを覚える。視界は閉ざされているが、耳を塞ぎたくなるセリフ>>104は嫌でも鼓膜を揺らした。康生を放置しておいて、言うことがそれか。この、男の風上にも置けない、下半身で生きる性欲魔人が。私に身体が在ったら、是が非でも去勢してやったのに。]
[繰り広げられる光景>>104>>105を知る術が私達に無く、康生の網膜が穢されなかったのが唯一の救いだろう。コックピットに居る他の面々の短い悲鳴や息を呑む音の後、機体は再度揺れた>>106。そのせいか彼は持ち直した様だが、だから何だとしか思えない。怒りの籠った言葉さえも、品が無い>>107>>108。]
[私はそこそこ倫理観の高い方だと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。これ以上康生の耳を穢す前に、さっさと死んでくれとさえ思っていたのだから。死して尚、他人の死を願う事が有るとは、生きてた頃は想像もしてなかった。**]
(136) 2023/11/20(Mon) 00時半頃
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ーー僕の闘い/コックピットーー
カッとなった僕は歯止めが効かない。敵ロボットに何度も何度も武器を振り下ろした。
刺しているのはアストロなのだが、僕の手にはその手応えが伝わってくるような不思議な感覚の共有がある。
特に念入りに刺したのは子宮の辺りだ。剥がれたのは装甲だが 肉を裂いて中身をメチャクチャにするように。
最初はそこにコックピットがあると考えたのだ。もしそうなら、闘いはあっという間に決着が着いていただろう。
(137) 2023/11/20(Mon) 09時頃
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丸くモンスターボールみたいなつるりとした形状のコックピットは腹部に隠れていた為致命傷は逃れる。
とはいえ露出したならそれを一気に突き刺せば終わりだ。
ーー終わり、つまりは勝利。 すなわち僕の死が確定する。
「……アストロ、武器を下ろせ。そのままマウント姿勢で押さえ付けていろ。」
そう、静かな声で指示を出す。 そして僕はスクリーンに背を向けた。 一同を見渡した僕の頬は紅潮し目は輝いている。
(138) 2023/11/20(Mon) 09時頃
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「みんな……僕はやったよ。僕は、みんなみたいに正義感の強い人間じゃない。弱虫で意気地無しの矮小だよ。
兄さんには何をやっても及ばなかった。 頑張っても失敗ばかりでーー活躍できた野球も怪我で止めることになった。
取り柄がない、価値がない、僕だ。
だけどーーだけど僕はもう勝ったも同然だッ ここまで追い詰めたなら、僕の勝利だッ!
僕はーー僕はやったんだよ。 ……ねえ、褒めてよ。 みんな、七尾さんの事も大和の事も、褒め千切って感謝してたじゃないか。
僕にも感謝してよ……僕、死ぬんだよ?」
それは当たり前に得られると思っていたのに、誰も、何も言わない。もしかしたら音楽攻撃の影響で動けないのかもしれないが、僕にはみんなが畏怖の表情を浮かべているような気がした。
みんなは僕を見ている。
(139) 2023/11/20(Mon) 09時頃
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だが一歩下がり、気持ち悪そうに、道端の吐瀉物や腐った林檎でも見るかのような視線を投げている。
僕の差し出した手を取るものは誰もいない。 舞台の幕はもうすぐ降りようとしているのに、拍手喝采は起きない。
ただ独り僕は、ポツリと。
「……コ、ウ。コウ……コウッ!何処、何処にいるんだ?」
みるみる青ざめ狼狽した僕は彼を探した。しかし立っているメンバーにはいないし、彼の椅子である病院ベッドは空っぽだ。
点滴が倒れている。 その先の床にも”何か”が転がっているが……なんだ?
僕は近付き、足先で”それ”を転がして仰向けにする。
(140) 2023/11/20(Mon) 09時頃
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乱れた髪はぼさぼさで艶がない。顔は赤黒い腫れがあり形が崩れて醜いし、巻かれた包帯もゾッとする感じだ。 もっと酷いのは脚で、ギプスが重たそうに纏わりついていて人間っぽくない。
「誰だ、お前。」
髪の色は何処か康生に似ているがーー違う、彼ではない。
何故なら?簡単だ。 だって康生の髪はサラサラで。 頬は桜色でもちもちしていて。 脚はスラッとしてもっと格好いい。 そして何より康生でない証拠は、彼は僕を深く愛しているから名を呼んだらすぐ応えてくれるはずだ。
あの澄んだ声で、ケイ、どうした?とか言って笑い掛けてくれるはずなんだ。
(141) 2023/11/20(Mon) 09時頃
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ーーケイ凄いな!ちゃんと戦えたじゃん、格好良かった。 惚れ直した。
このぐらいは褒めてくれるんじゃなかろうか。
しかしこの芋虫と来たら、無様に転がるだけで息も絶え絶えの様子だ。
何か話すなら聴いてやるが、言葉を発するだろうか?
「おい、なんとか言えよお前。僕が話しかけてんのに……話せよ、ほらッ!」
足先で、僕はその頭をぐりぐり踏みつけ最後に蹴った。
みんなは凍り付いている。 誰も、動かない。
(142) 2023/11/20(Mon) 09時頃
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コウは何処にいるんだ?どうして姿がないんだろうか。 頭の片隅がチリチリして、鍋が焦げるみたいな臭いがする。
とても不快で、胸がムカムカして吐きそうだ。 このままコイツの顔の上にゲロってしまおうかーー。
(143) 2023/11/20(Mon) 09時頃
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スクリーンを見る者はいるだろうか。
敵ロボットがゆっくりとーー身を持ち上げようとしていた。*
(144) 2023/11/20(Mon) 09時頃
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ーー四人の披露宴ーー
珊瑚が纏った長いヴェールは神秘的であった。天の川という喩えはまさに。 隣に並ぶ白いタキシードの大和は学生の頃より背が伸びより男らしい。
2人の結婚式は最高だった。 互いに挙式に参列出来るなんて、僕らは本当に幸せだ。
披露宴は高砂席が用意されて、珊瑚と大和は和装に。 僕らも同じように合わせることにした。
結婚式の和装と言えば白無垢か色打掛である。簡単に違いを言うなら、白一色なのが前者、色が混じれば後者だ。
珊瑚は豪華絢爛な色打掛を着ている。ドレスとは一変してまた素晴らしい。
僕は康生に白無垢をお願いした。 康生の肌は白粉を塗らなくとも綺麗なぐらい白いから、きっと似合うだろうと。
(145) 2023/11/20(Mon) 21時頃
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