10 冷たい校舎村9
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[痛みは、乃絵ちゃんが生きていくために どうしても必要なものだったんだと思う。
だからわたしは口を噤み続けた>>200。 乃絵ちゃん>>211、身体中を刺したんだって。 絶対痛いのに、痛みで手を止めてもおかしくないのに、 それくらい、どうしようもなかったんだ。
乃絵ちゃんは死ねたらラクなんだって言う>>208。 生きるのは苦しいんだろう。辛いんだろう。 前のわたしなら、もう何も言えなかったかもしれない。
……でも、ね。 ラクと楽しいが別々で、必ずしもイコールじゃないこと、 わたしはもう、知っちゃったの。]
(222) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[だから、たとえワルモノになったとしても、いいや。]
(223) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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——ダメ。
(224) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[わたしは乃絵ちゃんの言葉>>212に、また首を横に振る。 重ねた手を片方外して、右ポケットに入れた。 大事なお守り。ひとみちゃんが渡してくれた、ぼたん。 ぎゅうって握り締めてから、わたしは口を開いた。]
綿見さんと仲良くなりたいのに、終わりなの。 話せただけでいいの?
これから、でしょう。 クレープ焦げちゃったんだよって、一緒に言おうよ。 教えてもらったら、今度は上手にできるかも。
[乃絵ちゃんが語る家族のこと>>209。 お姉さんの代用品だって話。 乃絵ちゃんの家族のことは、乃絵ちゃんが一番知ってる。
だからわたしが伝えられるのは、楽しかったって 言ってた文化祭、一緒にいたわたしたちのことだけ。
ポケットから手を出し、食べかけのクレープを示した。]
(225) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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現実は、楽しいことだけじゃない。 苦しくて、つらくて、どうしようもないこともあって。
だから、わたしここも結構すきだったよ。 永遠にいられるなら、それもいいかなって思うくらい。
[でもそんなことはありえない。 わたしはそれを理解しているから帰るの。
苦しくて、つらくて、どうしようもないこともある、 それでも大切なものがいっぱいある現実へ。]
(226) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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まだ、思い出にしないで。置いていかないで。 全然ラクじゃないかもしれないけど、 死んだら、楽しいことなくなっちゃうよ。
……乃絵ちゃんはそれでいいの。 思い出だけで、いいの。
わたしはヤだなぁ。 これからの未来に乃絵ちゃんがいないの、ヤだなぁ。
[わたしは乃絵ちゃんを包んでいたもう片方の手も離し、 手のひらを乃絵ちゃんへ向ける。]
(227) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[わたしの手は、炭蔵くん>>217の隣に並んだ。 乃絵ちゃんへ二本の手が差し伸べられる。]
現実は、怖いだけ? 乃絵ちゃんの中に、もうそれしかない?
……一緒に、帰ろうよ。
[ぐるぐる回って、たどり着いたのは結局最初と同じ。 わたしはわたしの気持ちを押しつけただけかもしれない。
でもほんの少しでも同じ気持ちがあるのなら、 どうか、手を取ってほしい。
わたしはそう伝えて、ほのかに笑った。 乃絵ちゃんの願いを、選択を、答えを 待つ。]*
(228) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[乃絵ちゃんの質問>>231に、 わたしたちはわたしたちなりの答えを出した。]
(237) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[炭蔵くんのわがままとわたしが積み上げる心残りが、 乃絵ちゃんの中に届いたのかな。 乃絵ちゃん>>232>>233はわたしたちの答えに笑った。
さっきあんなに首を振っていたのに>>230 もしかしてって期待しちゃいそうになる気持ちを堪えて、 わたしは手の差し出し続ける。]
(238) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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……うん。
[乃絵ちゃんが願いを口にした。 最初はいらないモノのこと>>234。 次に欲しいモノのこと>>235。
後者の話を聞いた時、わたし、指先が震えちゃった。
夢じゃないかな。 わたしが言って欲しいって思ったこと、 聞こえてるだけじゃないかな。
でも乃絵ちゃんの目からはぼろぼろと涙が溢れていて、 わたしは鼻を啜りながら笑った。 今度は強がりなんかじゃない、本当の笑顔だった。]
(239) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[乃絵ちゃんはちょっと待ってねってクレープを食べる。 わたしはわたしたちの手を見て、炭蔵くんの顔を見て、 それから乃絵ちゃんを見て、からりと笑った。 何だか、ちょっと力が抜けちゃったね。
——わたしたちはみんな、二本の腕を持っている。
涙味のクレープがなくなるまで待って改めて。 わたしたちは、真正面から向き合った。]
……全然上手じゃないけど、いい?
[わたし、嘘つくのあんまり気にしないんだけど、 今だけは何の嘘も紛れ込ませたくなかったから、 乃絵ちゃんにひとつだけ尋ねた。 願い事には、わたしのピアノが含まれている。]
(240) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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絶対叶えるよ。約束する。
一緒にいよう。思い出作ろう。 ピアノも弾く……いつか、いつか。 ……ううん、未来のことは分かんないけど。 わたし、がんばるから、
乃絵ちゃんも、そこにいてほしい。
[わたしは差し出した手をもっと前に伸ばす。 いつの間にかわたしの目からは涙が消えていた。]
(241) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[わたしは、わたしの宝物で、友達を迎えに行く。]*
(242) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[乃絵ちゃんの控えめなわがまま>>247にわたしは笑う。]
それまでしか一緒にいてくれないの?
[なんて、ちょっと意地悪。 わたしのピアノを望んでくれた乃絵ちゃん>>246に、 それまでなんてある訳ないのにね。]
ずっと一緒にいたいってことだよ。
[約束じゃなくて、わたしがそうしたいから。 乃絵ちゃんに伝えて、わたしは乃絵ちゃんの手を引く。 そうしたら、乃絵ちゃんのもう片方の手を取った 炭蔵くん>>245にもその力が伝わるかな。 わたしは、校舎の果てから出ようと促した。]
(251) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[音楽室の中、 わたしは手を繋いだ乃絵ちゃんを見上げる。 少し身体を傾けたら、向こうに炭蔵くんも見えた。]
乃絵ちゃん。
[わたしは大切な友達の名前を呼ぶ。 一緒に帰ろう。明日へ進もう。 そのために、まずはどこへ向かおうか。 道のりは分からないけれど、ひとつだけ確かなのは、 わたしが乃絵ちゃんの手をもう離さないことだけ。]*
(252) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/15(Tue) 23時半頃
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