人狼議事


10 冷たい校舎村9

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【人】 真向一気 シンイチ



.

(1098) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ かんぺきな一日なんてほとんどないまま、
 日常はたやすくせわしなく形を変えてく。

 みんな≠ヘみんな≠フままであると、
 慎一は根拠もなく信じてた節があるけど、
 その中にも、形を変えた関係があるなら、

 それを知るとき慎一は目を丸くして驚き、
 それから、「よかったね」って言うはず。
 心の底から、嘘偽りのない笑みとともに。]
 

(1099) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 不変のものなどきっと存在しないので、
 慎一もみんなと同じ頃に大学生になる。

 マクロだかミクロだか知らないけれど、
 案外講義に数字が出てこなくて悲しい。

 とはいえお金を管理する立場になると、
 テンパって犯罪者になりかねないので、
 なりたい職業はいまだなお白紙のまま。

 それでも時間は平等に進んでいくのだ。
 新歓の人混みにすたこら踵を返したり、
 ライブハウスに響く音に怖気づいたり。

 引き続き些事にひどく消耗しながらも、
 慎一は、面白おかしく毎日を生きてる。]
 

(1100) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ だからこれは、語り切れない日常の一片。]
 

(1101) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ

 ── 後日譚 ──

[ その四角い箱の中は騒々しかった。

 うるさいなあって慎一は思うけれど、
 ハッピーでご機嫌な大学生活には、
 未成年飲酒と乱痴気騒ぎでできた、
 こういう場も欠かせないって聞いた。

 実際、楽しくないわけじゃなかったんだ。
 半透明のピッチャーをなみなみと満たす、
 生温いビールが各テーブルに置かれたときは、
 さすがにちょっとびっくりしちゃったけれど。

 当然のように渡されたグラスを受け入れた。
 慎一はこういうとき、流れにあらがわない。

 さすがに未成年飲酒をえらいとは思わないが、
 今日も周囲の感覚に迎合する努力をしてる。]
 

(1102) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 基礎演習のクラスで知り合ったやつと、
 バスケやってたんだって話になって、
 じゃあサークルに入ろうってなったのだ。

 豊高のバスケ部は弱小だったし、
 あんまり上手じゃないよって言った慎一に、
 「うまいやつは体育会入るっしょ」って、
 へらへら笑ったそいつと来たはずだった。

 あるいは、基礎演習クラスの親睦会で、
 各クラスにつくメンターの先輩が、
 この場を取り仕切ってくれてるんだっけ。

 いけない。事実関係まで混線してきたな。
 けどまあ、そういうありきたりな場だ。
 慎一はここでも多数派を真似して生きてる。
 それなりに交友関係を広げて、日々愉快に。]
 

(1103) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ ところでみんなはもう酔っぱらったりした?
 みんなも自分の限界を越えてお酒を飲んだら、
 少しは慎一の視界を感じてもらえるかもしれない。

 部屋の中を動き回る人たちのカラフルな服が、
 あっちこっちで混ざってぐちゃぐちゃしている。
 カメラのズームボタンを間違って操作したみたく、
 視界の遠近感覚がおかしくなっているのは、
 おそらくお酒のせいだったけれど。

 前後左右の声や物音が全部ごっちゃになって、
 ボリュームの調節機能がバカになったみたいに、
 変に大きく聞こえたり小さく響いたりする。
 急にすべての音がこもって聞こえたりね。

 みんながみんなお酒を飲んだらそうなるのか。
 そんなこと知らないけど、とにかく、
 視界がいつもよりひどい。酔っぱらっていた。]
 

(1104) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 隣にいたはずのやつは気づけばいなくて、
 慎一はぼうっと座敷に座っていた。

 突然、「シン」って呼ばれる。
 ここにも慎一をそう呼ぶ人はいる。
 向井とも呼ばれるし、向井くんとも。
 どれをとっても慎一のことだった。

 それから、目の前にグラスが置かれた。
 透明な液体がその中を満たしている。

 「酔ってる?」って聞かれてうなずいて、
 「飲めば?」って言われてグラスを取った。

 何の疑いもなくそれに口をつければ、
 無味無臭を予測したのとは裏腹に、
 喉を焼くような刺激とひたすら苦い味がする。]
 

(1105) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 酒だった。
 噴き出す寸前でそれを飲み込んでから、
 せき込みえずいている慎一に、
 そいつは「気づかないかあ」って言った。
 それから「酔ってるね」としみじみと。

 それが悲しくてというよりは、
 せき込んだせいで涙がにじんだ。

 グラスがひょいと取り上げられる。
 そいつはぐいと中身を飲んでから、
 慎一の視線に気づいたようにこっちを見た。]
 

(1106) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 明るい髪の色をしていた。
 長く鬱陶しそうな前髪の下で、
 一瞬、目を三日月みたく細めてみせた。

 くりくりとした形の目のせいか、
 鴉みたいに深い色の瞳のせいか、
 その視線はなんだか妙に力強い。

 やたらと瞳の印象が強いが、
 正面から見ると整った顔をしている。
 少しやせすぎなくらいの頬を緩め、
 静かに、穏やかな笑みを浮かべていた。

 場の熱気と酔いが回ったせいで、
 薄着になっていく人間たちの中で、
 長袖を捲りもせずにきちんと着ている。]
 

(1107) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ ……たぶん、そのせい。
 慎一はそのときなんだかふいに、
 「帰りたいなあ」って思って、

 それに被せるようにそいつが、
 「帰る?」って尋ねてくるから、
 慎一は余計に帰りたくなっちゃった。

 でも、こいつのことよく知らないな。
 一緒に来たんでもない気がするな。誰だっけ。
 名前の字面は覚えられても顔覚えは悪いんだ。
 慎一の家、大学から結構遠いんだよなあ……。

 「どこに?」薄ら笑いの伝染った慎一に、
 「どこでも」いい加減なこと言うせいだ。

 その瞬間、慎一の頭の中まで、
 カラフルで賑やかでめちゃくちゃになっちゃう。]
 

(1108) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ たとえば、真っ白な雪道。
 それを背景に佇んで、
 なぜか眼鏡を大切に持つ人。

 クレープ。パンケーキ。
 生ぬるくなったコーラ。
 ひしゃげてしまった菓子パン。 
 ピンク色のフーセンガム。

 打ち上げに添えられた黒板の整った文字。
 右斜め上を向くチャートと手作りスイッチ。
 放課後の美術室、ホラーな試作品と屋台装飾。
 薄っすらとした手首の傷。踵のバンソーコー。

 揺れる黒色のしっぽを目で追いかけたり、
 誰かの世話する鉢植えを静かに眺めたり。
 冷蔵庫に並んだチューハイ缶を無視して、
 人の家でオレンジジュースを啜る夜。]
 

(1109) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ いろんな光景や、みんなの声や、
 そのとき鼻の奥を通り抜けたにおいさえ、
 嵐のように頭の中を通りすぎてって、
 慎一はどういうわけだか泣きそうだった。

 気分が悪いのはお酒のせいで、
 この場があんまりうるさいのは辛いけど、
 思い出して泣きそうってなんなんだろうな。

 お酒で余計に涙もろくなるなんて知らないし。
 それなのに慎一は少し笑ってもいるんだ。
 いったいなんだっていうんだろう。いや……、]
 

(1110) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 慎一にはあの日々が愛しかったし、
 今、無性に恋しくて仕方なかった。]
 

(1111) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ ──…………、]
 

(1112) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 「わ」と誰かが言った。そいつだった。
 次の瞬間、さわり心地の悪い湿った布が、
 慎一の顔面にぎゅうっと押し付けられている。

 「鼻血」って言われなくたって、
 生あたたかい感触で慎一は気がついたし、

 たとえ「気分は?」って聞かれなくても、
 「……最悪だ」ってつぶやいていたと思う。

 「そういうこともあるよね」って、
 そいつはぼんやりとした視界の中で笑った。
 うん。あんまり気分が最悪すぎるから、
 慎一も泣き笑いだよ。そういうこともある。]
 

(1113) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 今日もまたかんぺきな一日じゃなかった。

 右から2番目の改札を通って、
 4両目の真ん中の扉から電車に乗っても。
 さっきお手洗いに立ったときだって、
 左右を慎重に確認して靴を履いたのに。

 賑やかな場に来るのは少し億劫で、
 来てみたら楽しかったはずなのに、
 結局、慎一はまたぐったりしてる。

 慎一の人生はそういうことの繰り返し。
 特別なことはなにも起きない。
 きっと、そんなに特別な話でもない。]
 

(1114) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 休んでるように言われて、
 壁にもたれて蛍光灯を見てたんだけど、
 慎一はふいに立ち上がって、
 静まる気配のない喧騒の中を横切ってく。

 会費は事前徴収制だった。
 というか一年生はほとんど取られなかった。
 だから大丈夫。慎一はもう帰る。それだけ。

 左足からくたびれたスニーカーを履く。
 後生大事におしぼりを握っていたが、
 気づいたら鼻血はもう止まっていた。

 ガンガン痛む頭をおさえながら、
 慎一はその箱の中をひとりで抜け出す。]
 

(1115) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 慎一の知った話じゃないが、
 今、箱の中では派手な頭をした奴が、
 今度こそ水の入ったグラスを片手に、
 誰もいない壁際を不思議そうに見ている。
 数秒経って、そいつも騒ぎの中を横切ってく。]
 

(1116) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ だから、たぶん。
 そんなに難しい話じゃないんだ。

 疲れるよ。
 生きるのは疲れる。
 情報量が多すぎる。
 見たくもないものとか、
 聞きたくもない音とか、
 知りたくもない情報が、
 いつも慎一をぐちゃぐちゃにしてく。

 でもたぶん、おぼれかけたときに、
 誰かの腕に捕まって息継ぎすることもできて、

 そうすればきっと、慎一だって、
 この立派な二本の腕でハグしてやれる。
 自分以外の誰かを、めいっぱいの力で。]
 

(1117) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ ……思い出した。急に。
 なりたかったものの話。
 子どもの頃の作文の話。

 同級生たちがなりたい職業や、
 どんな大人になりたいかを綴る中で、
 慎一は「魚」って書いたんだった。

 でも、18歳の慎一は人間になりたい。
 立派な二本の腕を持った人間にね。

 これも成長って呼んでいいのかなあ。
 我ながらゆっくりすぎてヤになっちゃうけど。

 でもまあ、えらいよね。慎一もみんなも。
 がんばっててえらいよ。生きてて今日もえらい。]
 

(1118) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ つまり──、
 心配無用さ、くろねこ氏。>>718

 日常は形を変えてくから、
 新たな居場所を作るのには、
 ちょいとばかり時間がかかるけど、

 そういうときは踵を返して、
 「ただいま」を言うアテもあるから。
 きっと十人十色の声音で、
 「おかえり」が聞けるって信じてる。]
 

(1119) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ 初夏を感じさせる風が心地よかった。

 まだまだ夜はこれからって時間で、
 人通りもある道を慎一は抜けてく。

 お酒のせいで頭が重くて、苦しくて、
 水面から顔を出すみたいに上を向いたら、
 夜空にぽっかりときれいな月が浮かんでた。

 あの冷たい校舎では白に隠れてた月だ。
 帰ってきたあの日の夜空はどうだっけ。

 とにかく、きれいだなあって慎一は思って、
 そう、月がきれいで、みんなのことを思った。]
 

(1120) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ パシャリ、と一枚。
 スマホのノーマルカメラで撮った空には、
 月も星もほとんど輝いては見えないけど。]
 

(1121) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ グループチャットに、
 不鮮明でブレた夜空の写真が一枚。

 それから、なぜかとぼけた顔のヤギが、
 「ただいま!」って両手を広げている。

 きっと意味なんてわからないだろうけど、
 よかったら気まぐれに空を仰いでみてね。

 慎一はちょっと今日の夜空に詳しいんだけど、
 このあたりは雲ひとつなく月がきれいです。

 like≠ニlove≠フ判別はつけがたいが、
 あんね、慎一はみんなのことが好きだよ。とても。]
 

(1122) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ ただいま≠言えるこの居場所だけは、
 ずっと変わらないって信じてもいいかなあ。
 慎一がもう少し大人になるまでだけでも。ね。]
 

(1123) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ ……ただでさえ酔っぱらってるのに、
 歩きスマホなんてするもんじゃない。

 小さな段差に足を取られかけて、
 慎一は派手によろめきながらも、
 すんでのところで強く地面を踏みしめた。

 危ない。ビビッてドキドキしちゃうけど、
 足も立派なのが二本ついててよかった。
 バカみたいでちょっと笑えもするけれど。

 ひとりでへらへら笑っていた慎一を、
 追いかけてくる派手頭がひとつあって、
 慎一は酔った頭で「ヘーキ」と言うけど、
 まあ実際、あんまりヘーキじゃないので。

 きっと明日、礼と謝罪を込めて昼食を奢る。
 それで、やっとそいつの顔と名前を覚えて、]
 

(1124) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 真向一気 シンイチ


[ そして明日も、明後日も、その先も。
 かんぺきでない日をゲラゲラと笑おう。**]
 

(1125) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃

【人】 架空惑星 レン

 

  そうだな、
  最後にしようと思ってたのは
  未来の話じゃなくて

  今の俺の話。

  どうして過去形かって?
  いまはそれは、気にしないで。

 

(1126) ししゃもん 2021/06/21(Mon) 23時頃

【人】 架空惑星 レン

 

 ── 冷たい校舎の時は、動く ──

 

(1127) ししゃもん 2021/06/21(Mon) 23時頃

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