14 冷たい校舎村10
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[ ─── そう、君と私は平行線だから。>>129
きっと距離は縮まらないし、 交わる事もないのだろう。
フェンスの端から地上を覗けばぶわり。 一際大きな風が、前髪やスカートを揺らした。
そのまま特に気負うことなく、身体を傾ける。 しかしいつまで経っても 予想していた浮遊感が訪れる事はなく。 ]
(142) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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[ 不知火真梛も自分の事をわかっていない。 河合和歌奈の言い分もまた、 至極その通りかも知れない。
繋がる手。 暖かい指に屋上へ引き戻されれば、 顔をあげて、その持ち主を確認してから。
やっと重なった瞳に向けて、 まずは河合和歌奈が知らない彼女自身の事を。 得意げな顔で告げようか。 ]
(143) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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ほら、やっぱり君は優しいじゃないか。
(144) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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[ 精神の世界だ。 飛び降りたところで、 実際の死が訪れるとも限らないのに。
それすら放って置けなかった優しい瞳に向けて。 私は再度微笑んだ。 ]
(145) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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それにここだけの話だが。
目玉焼き、本当に練習したんだ。 君は忘れてしまったかも知れないけど。 自分で言うのもなんだが、 なかなか上手く焼けるようになった。
その、 だから……
[ 屋上に戻った後。 続けた言葉はこれまでとは一転、若干気まずそうに。 君の意思を尊重したいのだけれど。 真梛個人の感情を滲ませてしまった自身の不甲斐なさ ほんのり頬を薄桃に染めて。 ]
(146) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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君が食べてくれないと寂しい。
[ 何とか言い切れば、話は終わり。 元々口は達者な方ではない。
ならばと助けを請うように視線を傾ければ、 やはり君はそこにいてくれただろうから。>>138
自身を投げ出すことしかできない真梛とは違う。 彼女を繋ぎ止めてくれる、力強い腕。 ふふと、自然に浮かんだ笑みのまま。 ]
(147) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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委員長殿のお話だ。 しっかり拝聴しないとな、副委員長殿?
[ 悪戯っぽく瞳を煌めかせれば、 真梛は書記の義務を放棄する。
その後語られる彼女達の会話。 記録する事なく、エレベーターに向かえば、 そこにいただろう大きな猫に 「似合っているな」と一声かけた後。
階下に続くボタンに手を伸ばした。 ]**
(148) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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[ エレベーターに乗り込めば、 行きには擦れ違ってしまった雄火がいた。 ]
そうか。 君達もいなくなってしまったのか。
[ そして姿が見えないもう一人。 幣太郎も、おそらくは同様に。 君達はいつだって誰かの為に駆けられる人達だから。 屋上にいない時点で、察せられていた事。
痛々しい傷跡。 悼むような眼差しを向けた後。 ]
(149) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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すまないな。 私では君を皆のところに運んでやれない。
[ いなくなり損ねた娘は。 そこにはいないだろう君達に向けて。 頭を下げると、自身の無力さを詫びた。 ]
(150) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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[ 次に向かったのは体育倉庫だった。 特に理由はなかったけれど。 強いて言えば他の場所は全て回ってしまったから。
途中に通りかかった体育館。 ステージ上に莉希の姿はなくて。 春満が望みを果たしてくれた事を知る。
彼女には舞台が似合うと思うけれど。 やはり生き生きと動いて台詞を言ってこそだから。
その隣に雄火がいてくれた事。真梛が知る余地は、 猫カフェで交わせた会話次第だろう。]
(151) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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[ 体育倉庫。 入った途端、ピタリ、車椅子が動きを止めた。
バッテリー切れ。 …… 何となく、予想していた事もあり。 思わず、ふふと笑みをこぼす。
狼を呼ぼうか? 少しだけ過った考えに蓋をする。
真梛はこの世界においても、 一歩も動けなくなってしまったわけだが。 心は意外なほどに凪いでいた。 この時間もそろそろお終いだろう。 それは、根拠のない確信。 ]
(152) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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[ 和歌奈、路子、春満。
君達なら、きっと大丈夫。 ]
(153) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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[ 窓から空を見上げる。
あの時はひとつだけだった過去からの光。>>0:320 今は無数の輝きで天を覆っていて。 柔らかな星明りが、真梛を照らしていた。
この世界からの贈り物。しばし堪能したのなら。 後はその時を迎えるべく、 真梛は静かに双眸を閉ざした。 ]**
(154) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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特に無茶はしてないな。 私はやりたいようにやったに過ぎない。
[ エレベーターに乗り込んで。>>158 扉が閉まるまでのわずかな会話。
真梛は時折空気が読めない発言をする。 勿論、あの場の和歌奈の行動自体は、 真梛にとっても喜びに繋がるものなのだが。
やりたいようにが、意味する事。 たとえあそこで助けの手が伸びなくても 自身の望みが叶っただけだからと。
それを口にしない選択は、幸いにして選び取れた。 ]
(164) 2021/11/14(Sun) 18時頃
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[ 手を必要としていないやつ。
誰のことだろう? 君の心が読めたなら、私はおそらく首を傾げる。
真梛はいつだって誰かの手を借りてばかり。 抱えてもらわなければ、階段は上れないし。 今だってほら。 エレベーター内で眠る クラスメイトを模したマネキン。
他者の理想に沿うべく必死に駆けていた 頑張り屋の君の事。 皆のところに連れて行く手を、足を。 真梛は持ち合わせていない。 ]
(165) 2021/11/14(Sun) 18時頃
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[ そう。不知火真梛は、いつだって、 誰かの手を借りて生きている。
ただ狼を呼ぼうと試みては、 何度も何度も失敗しているだけだ。 ]
(166) 2021/11/14(Sun) 18時頃
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[ ─── とまあ君の心が読めない以上。 それはもしもの仮定に過ぎず。 ]
君以外に頼れと言っていただろう。
[ だから拾えた言葉にだけ返す。 きちんと覚えているんだ。私は。 忘れないように気をつけているんだ。 ただ同時に君の言いたい事も理解していた。
迷惑だと言った覚えはない。
…… そうだなぁ。 そんなみんな≠焉A>>2:303 もしかしたら。何処にもいないのかもしれない。 ]
(167) 2021/11/14(Sun) 18時頃
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[ もう扉が閉まりかけていたから。 そしてその続きの言葉を、 平塚莉希の前に落としてしまったから。>>2:304
知っているよ。
[ だからこれから友を救おうと進む君に対して 返せたのは、ただの一言。 ]**
(168) 2021/11/14(Sun) 18時半頃
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