27 【crush appleU〜誰の林檎が砕けたの?】
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[視野の狭くなっていた成海は、死を求める故にアリババを全く警戒しなかった。 しかし判断自体は間違いではなかったのだろう。
花舞い祝福が捧げられる結婚式は、 この空間が慈悲により構成されているのだと感じさせた。]
(8) ガラシア 2023/08/06(Sun) 04時頃
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[笑みを抑える分かりにくさに、成海は気付ける資質があって。 つい日常に戻ってしまう思考回路。 なんとも変わり者が揃う同期三人でのやり取りを思い起こしていたのは、始まる前。
響く鈴の音とバリトン>>5:180>>5:193 誓いの末に行われる指輪の交換>>5:181>>5:195 名を呼び花咲く、穏やかな微笑み>>5:182>>5:183 そして、──>>5:197
拍手を捧げながら、 大藤久影の同期であり弟である者として 回谷こころの先輩でありその日常の片隅にいた者として。 決して忘れないようにしようと脳裏に刻む。
その一方、新郎新婦の所作や表情から感じ取れる 自分の知らない感情、自分の知らない幸福が 鮮烈に心に焼き付くようだった。]
(9) ガラシア 2023/08/06(Sun) 04時頃
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[成海にも贈られたメッセージカード>>5:204 なんとも彼女らしく、 痛いところを突いてくる言葉に至っては増えてすらいた。
それでも笑みが苦くなることは無かった。 残酷な事実を突きつけられた後に、 明るさと優しさを自分にも向けてくれている。
回谷本来の性格もあるのかもしれないが、 それは彼女が幸せになれたことを示しているように思えたから。
噛みしめるように時間を掛けて文字を追った。 ありのまま接することが出来る人と、幸せに── その文面を読んでいた時だけは 新郎新婦ではない誰かを思い描いていた。
いつか必ず、父の利益のある家の令嬢との縁談が来る。 「ずっと側に」と言ってくれた二人のどちらでもない者と契る未来。 当然の義務だ。今までそう思っていた。そして、]
(10) ガラシア 2023/08/06(Sun) 04時頃
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[巡る四季の絵葉書は、 何も起きていない頃の美術館を描いたもので>>5:206
美しいと、こんな光景にまた戻ればいいと願う一方 ──ああ、回谷は確かに自分達と同じ世界で生きていた。
当たり前で、決して忘れてはならないことを想い 一時目を伏せた成海に、無理をして保つ笑みは無かった。]
(11) ガラシア 2023/08/06(Sun) 04時頃
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[親同士の黒いやり取りの末の和解で、望んでもない兄弟と契らねばいけなくなった令嬢。
地域の自然や伝統を愛する父の変貌に、同じ思想を持つ彼女が何も思うことが無いわけがなかった。 それでも何も表に見せず、温かく接してただの少女の顔も見せてくれていたのに。
未熟な子供は勝手に同情し、可哀想な人だと義務意識を肥大させ 勝手に息苦しくなっているところがあった。 二度連なった悲劇に注目が集まった状態で凪いだ振る舞いを保つ努力の疲弊が、偲ぶべき場所で冷酷な思想を生じさせた。
確かにそこにあった彼女への人間としての好意と思い出を 無いものにしたように、悲しみと共に埋めてしまった。 我が心を憂う前に、自分を変える努力をするべきだったのだ。
自分は、天原真那の花婿には相応しくない子供だった。
真那さん、幸せな花嫁になれなかった人。 貴女もどうか、来世ではもっと温かな関係で幸せに。**]
(12) ガラシア 2023/08/06(Sun) 04時半頃
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── 再びの覚醒め ──
[──気づけば、蝉の声を聴いていた。 そこにはもうチャペルは無く、幸せな花嫁もいない。 回谷こころは、もういない。
看護師が廊下を横切っていくのが視界の端に入ったが たった一歩踏み出した先の現実が、 まるで見えない壁を隔てているように思える。 足音や患者のものらしき声が遠くに聞こえても 失われた現実感は、すぐには戻ってこなかった。
放っていたスマホでメッセージアプリを起動する。 あらゆる通知の全てを無視しグループを開くと、 今更の起床報告と身体に大事は無い話を送っておいた。*]
(25) ガラシア 2023/08/06(Sun) 09時半頃
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[どのように声を掛けるべきか迷っていた相手の一人から 個別メッセージが送られてくる。>>41
いつもそうだった。 彼女の行動の早さには男二人はついていけなくて 後から調整したり、割り振り自体与えられるのが関の山。
その強さの裏にあるものを垣間見た記憶は、 自分は触れずに閉じ込めるべきなのかなと、思っている。]
(46) ガラシア 2023/08/06(Sun) 15時半頃
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『いいえ、こちらこそ 二人の為に大役を務めてくださり 本当にありがとうございました。 きっと、残ったのが田端さんだからこそ あんな風に綺麗な姿で、大藤君と結婚式をさせてあげて 彼女を送れたのだと思います。』
『田端さんも上品で綺麗でしたよ。 あの天使は、貴方をよく見ていたんですね。』
[自分自身のこと、最後に残った田端のこと 思うものは色々あったけれど
彼女が送った意図を考え、ただ感謝を返し ついでに個人的な褒め言葉と感想も添えた。
人と人外に分かたれる男女にどんなやり取りがあったのか 成海は殆ど知らないことだ。 知っていれば気軽に彼に触れようとはしなかっただろう。*]
(47) ガラシア 2023/08/06(Sun) 16時頃
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[もう一人の名前を眺め、結局スマホを置く。
成海と大藤の関係は── あの例外のような時間を除けば、 距離感を意識するべきものの筈だった。
これから成海は彼の言葉を胸に変わるつもりで、 それによって関係も今までと違ってくるかもしれない。 一度話したいとも思っている。
だが少なくとも、生存者で誰より思うことがある青年を 成海は自ら現れるまで、放っておくべきだと感じた。 彼にしか分からない想いに耽らせてあげたかった。**]
(48) ガラシア 2023/08/06(Sun) 16時頃
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ええ……?
[田端からの返信に思わず小さな困惑の声が出た。 全ては終わり、天使は回谷を導いた筈ではないのか。 彼女はこれからもあの男に関わり続けるとしか読めないが。
成海の脳裏に過ぎったもの。 彼女は、神の慈悲たる空間で死者を幸せに送った立役者。 そして、神が命じて人間に付けるというのが守護天使。 ──教えに準じた想起は、正誤が入り交じる。]
(84) ガラシア 2023/08/06(Sun) 21時半頃
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『私はあまり田端さんとも彼とも一緒にいなかったので 一体どういうことなのか、思考が追いついていません。 ですが、お願い出来るなら可能な時に 下記の言葉をお伝えください。宜しくお願いします。
余計なものが見れる動きやすい身体になりました。 ハールーンにはなれずとも、自分なりに生きます。 祝電を届けていただきありがとうございました。』
[はっきりと説明を求めることはしなかった。 彼女が語っても良いならばいつか聞けて、 秘めたいことならば秘められるのだろう。*]
(85) ガラシア 2023/08/06(Sun) 21時半頃
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[その後少し考えて、骨谷へと個人メッセージが送られる。
彼は同期を喪っている。思うことは多いだろう。 しかし目前で泣いているならばともかく、 画面上で相手の想いも知らずに慰めることに 成海は違和感を覚えるのだ。]
(86) ガラシア 2023/08/06(Sun) 21時半頃
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『身体の具合はどうですか? お祖父様の件、責任持って私が同行します。 色んなことが落ち着いて、お互いの心が整理出来たら 日程の調整の話をしましょう。
そちらにはやるべきことも出来たでしょうから 焦らないでいいので、覚えておいてください。 誰に何を言われても、辛いことがあっても 己が選んだ道を貫き通してください。 タカナル先輩は、いつでも変わらずに応援しています。』
[彼が今でもボーンチャイナを造るつもりならば。 それをすぐに理解できるものばかりではないのだろう。 いつかの記憶が蘇り、そんなことを思い。>>2:276 今一度励ましを伝えたくなった。
我ながら手紙のようだと感じて、 最後に彼の内心が漏れたような呼び名を添えてみたけれど 骨谷は忘れてほしかっただろうかと後から過ぎる。 だが、一生覚えているつもりである。*]
(87) ガラシア 2023/08/06(Sun) 21時半頃
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至高祈念展 ナルミは、メモを貼った。
ガラシア 2023/08/06(Sun) 21時半頃
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[そうやって相変わらずベッドで過ごしている時 ドアが開き、成海は自分を呼ぶ切なげな声を聞く。
それは当然のように、肉親のものでは無かった。]
(99) ガラシア 2023/08/06(Sun) 22時頃
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── 再会 ──
[泣き崩れる女性の背中を摩りながら、申し訳なさげな男性に困ったような微笑みを向けた。
彼女は高祈が自分達の代わりに送った使用人の女性。 同じく、男性は料理を担当している。 最も古くから実家で働いている夫婦だった。]
……かすり傷だ、恵津子さん だからあなた方でいいと父も思ったのだろう?
[成人した当事者が意識を持って字が書けるなら、こんなにも軽症ならば親族はいらない。
両親に五体満足で生きていた子供に使う時間などは無かった。 例え長男を喪って唯一残った息子だとしても。 世話をさせることが選択の主理由だろう。
それは使用人夫婦、主に恵津子には違う受け取り方だったらしく 何でもギリギリまで抗議をしていたそうだ。 全く、彼女でなければ解雇されていただろう。]
(100) ガラシア 2023/08/06(Sun) 22時頃
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父はおかしくはなっていない 兄の時のことだって、あなたは覚えている筈だ あの人は常に、一貫しているさ……誰よりもね
[恵津子から見た、勤め先のお坊ちゃんは さぞ生きていたことが奇跡のように見えるのだろう。 道路に赤く花を散らした長男を重ねれば尚更なのだろう。
ただ、──高祈はそういう家ではないのだ。 “蔑ろにされた可哀想な成海様”すらも どこか他人事のように淡々と思考を巡らせている。
もっと質の良い個室に移すという彼女を止める。 後遺症の残らない裂傷で一体どれだけ入院するというのやら。]
(101) ガラシア 2023/08/06(Sun) 22時頃
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[結局、見えた気がしたものはなんだったのだろう。>>0:398 見間違い、他の客、はたまた……天使ではない人外の導き。
蘇った当時の記憶。 あの時揺れを感じて咄嗟に身を引かなければ、 落ちた林檎は二つあったのではないだろうか。
定められている無情な運命は 人間にはほんの些細なことで分岐しているようにしか思えない。
陸が崩れ、天が墜ちたように。]
(102) ガラシア 2023/08/06(Sun) 22時頃
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[成海は通過儀礼を終え、罰せられる願望から卒業した。 それでも生きていることそのものは、 自分自身のことは、今も肯定出来てはいない。
繋ぎ止める大きな意味をくれた大切な人がいるから、 荷を解くような言葉と抱擁をくれた兄がいるから、 可愛らしいごく普通の少女が得られない物を容易に 捨ててはならないと解っているから。
死ぬ覚悟が無いだけの無価値な存在ではなく 意志を持ち立ち上がろうと思っているだけだ。
誰かが願った、「ただの高祈成海」として。]
(103) ガラシア 2023/08/06(Sun) 22時頃
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[枝分かれる可能性を想うからこそ、 残酷にもなり得る生還し再会する未来を語らなかった気持ちを忘れて
未だ相手と向き合ってもいない弟は この先を愚かにも無根拠に、信じ込んでしまっていた。*]
(104) ガラシア 2023/08/06(Sun) 22時頃
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── ある日・とあるダイニングバー ──
カフェのほうが君の好みだったかな? だとしたらすまない、静かに話したかったんだ
[仄暗い照明、流れるジャズ。 柔らかなソファーに身を沈めテーブルを挟んで 福原と向き合うのは個室。
「二人きりで深い話がしたい」と呼び出した相手へと 白ワインが注がれたグラスを手に、問いかける。
両者の退院から暫く経ち、 渦中の人と化していた自分達への目も和らいで 心の整理の時間を置いた為に 季節はすっかり暑さの名残すらも忘れてしまった頃。]
(115) ガラシア 2023/08/06(Sun) 23時頃
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漸く静かに過ごせるようになったね だからといって、何もかも変わってしまったようだけど……
[一時柔らかく細やかに色づく水面を見つめた後、 視線を上げ弱々しく微笑んだ。
皆に共有された衝撃と哀しみは、 言葉にせずともそれぞれの胸の中にある。]
……まずは、ありがとう
生を望んでくれる君の言葉が、俺を繋いでくれました
君が皆に作ってくれた食事で 俺は日常に戻ったように落ち着いたり、 大切なことを思い出すことが出来ました
[あの夢の中で伝えるべきで、出来なかった言葉達。 もう他の誰かを語らずに、自分の想いを告げられる。]
(116) ガラシア 2023/08/06(Sun) 23時頃
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……福原君、なんで今日呼び出されたのか分かる?
[覚えているだろうか。
いつか聞いてほしいと語った>>5:+57 福原も、話してほしいと言われたら話すと言った>>5:+70
それが今回呼び出した理由を意味するものなのだけれど。
成海の眼差しには少し緊張が滲んだ。*]
(117) ガラシア 2023/08/06(Sun) 23時頃
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── 入院中・田端 ──
『本当ならば叶わないことをご厚意で伝達いただき 深く感謝します。』
[はっきり言うと、少しも分からなかった。>>108 無理に聞こうとはしたつもりが無いのでいいのだが。]
『貴方の寂しさを和らげてくれる存在がいて、良かった。』
[一通目から数分後、そう再度送信する。 彼女はよく思わないかもしれない……そう思いつつも。
同行も許されない、戸惑わせることしか言えなかった そんな成海には出来ないことだから。 心からそう感じたのだ。*]
(121) ガラシア 2023/08/06(Sun) 23時半頃
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── ダイニングバー ──
そう、なら良かった ここのビールは美味しいと聞いたよ
[福原の返答に頷き穏やかな声でそう言った。>>133
ダイニングバーは、一般的なバーより料理の数が多い。 何か食べるかと、彼がビールを注文する際に聞いたけれど 特に望まないのなら成海が頼んだチーズの盛り合わせがやがて来るだろう。
彼の笑顔や素振りに、皆といる時とはまた違うけれどどこか自然ではないものを感じられる気がする。 あまり緊張されてもと思い敷居が高くない場所を選んだつもりだが、問題はそこでは無かったのかもしれない。]
(160) ガラシア 2023/08/07(Mon) 10時頃
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[戻らない過去を想う力ない微笑みが、変わる。>>134 その様子が語られる思いを何よりも証明していた。]
俺は皆を本質的には遠ざけていたから。 気持ちを伝える我儘を通そうとしてくれる人は貴重だった
[君だけだった、とは言えない。 繋ぎ止められなかった誰かは、夏と共に去っていったけれど。]
あの時はまだ、自分が死ぬ可能性を見ていた ──正直に言えば、望んですらいた でも君がそう思ってくれていたら 願いが叶わなくても意味が生まれると分かった
戻ってきて君が会いに来て実際に感じたのは、 夢の中よりもずっと強いものだったよ ……無気力ではなく意志を持って生きていけると、思えた
[疎む誰かとは自分自身>>3:164 これもまた、本筋とは違うが打ち明け話だ。]
(161) ガラシア 2023/08/07(Mon) 10時頃
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……そうか 覚えていてくれて、気づいてくれて良かった
[察していたことが正解だと、様子で分かる。>>135 けれど今は茶化すことはしなかった。 その緊張は向き合おうとしてくれているからだから。]
福原君のことは何でも知りたいと思っているよ。 でも、自分の話をするのは本当はまだ少し怖いんだ。 でも俺は卒業したら……だから、そんなに時間は無いだろう?
それで終わりの仲じゃなくても、 離れない内にお互いをちゃんと知りたい
だから、アルコールの力を借りようかと思って
[語った通りに、ワイングラスを傾ける。]
(162) ガラシア 2023/08/07(Mon) 10時頃
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……うん、言い出しっぺの俺の話からにしようか
多分知っているのかなと思っていたのだけど 俺は、とある企業主の息子だ
一代で財を築き上げた父と、 かつて務めていた会社の社長令嬢だった母から生まれて 感情の起伏が激しい兄が一人……いた
少し年が離れていてね、俺が小学校に入る頃くらいかな 彼は不自由な身分を疎んで反抗的になってしまった
高祈の家の、元からの教育方針として 感情を抑え身分に相応しく振る舞うように、とされている 兄のようにならないように、俺には一層に強いられた
(163) ガラシア 2023/08/07(Mon) 10時頃
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……でもきっと、俺の異常は そのことや父の血を引いてるからだけじゃない
[僅かに口籠ることがあっても 昔話をするように何気なく話していた様子が、 その一言で一転する。]
[──高祈成海は語る。
幼い頃から秘めていた冷淡な心を>>4:1 兄と婚約者、度重なった悲劇を>>1:150>>1:151 その裏で抱いた己でも悍ましい想いを>>1:367 願望と、それが生じた経緯を>>4:2]
(164) ガラシア 2023/08/07(Mon) 10時頃
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誰にも知られたくなかった でも、誰かに罰して欲しかった
[全ては過去形。かつてを想うように、目を閉じる。]
肌を裂いて、首を絞めて…… お前はおかしいのだと、罵って全てを否定してほしかった そうされながら、終わりたかった
[ 鎖骨の間の窪みに触れた指先 ゆっくりと上へ肌を辿り、 首筋に辿り着くと、手で輪を作り絞め上げる真似をする。
薄く開いたままの唇が、少し熱を籠もった息を吐く。 ]
望んだ罰なんて、意味が無いのにね
(165) ガラシア 2023/08/07(Mon) 10時頃
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[以前から、先輩と後輩として それなりに好かれてはいると思っていた。
夢の中や目覚めてすぐの時 思いが馳せるままに彼に何度も触れたけれど。 それは本来誰にでも受け入れてもらえることではないと、 今は正しく認識していた。]
随分とイメージが変わってしまったんじゃない?
[──でも、聞いた今はどうだろう。 目を開き、明るい声が問い掛ける。 けれど成海は笑っていなかった。
ずっと側にという言葉を信じていても、 自分を晒すことには不安が付き纏うものだ。*]
(166) ガラシア 2023/08/07(Mon) 10時頃
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……ごめんね。そんなに利他的な奴じゃないんだ むしろ、その逆をいっている
[福原の様子に責める色など無かった。>>180 それでも一時声が小さくなったのは 自殺を語る言葉が刺さった記憶が蘇ったから。>>2:173]
全部、一人では出来なかったことなんだ ……福原君に、会えてよかったな 君にはこれからも沢山頼ってしまう気がするよ
[──この先の話で変わらなければ、とは 心の中で呟いたこと。]
(235) ガラシア 2023/08/07(Mon) 23時頃
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[「そっちの話はもう少し待って」 なんて、朗らかに返せる余裕は無くて。>>181 決意のままに全てを語った。
静かに聞き役になってくれた福原が口を開いた時。 何を言われるのか少し身を固くしてしまった。 相手の心が動きは様子からは分からなかったから。]
……そう、なの? そんな風に考えたこと、一度も無かったな
[しかし、与えられたのは胸の痛みではなく 長らく抱えた思考の根源を揺るがされる発言。>>182 声には驚きと戸惑いが現れる。安堵も否定も、今は無い。
フラットな目線で見ているような冷静な言葉に、無根拠に卑下して否定をする気は起きなかった。 誰にも言えないばかりに、自分の思考は停滞していた?]
(236) ガラシア 2023/08/07(Mon) 23時頃
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[語る前提が何を伝えようとしているのかは分かった。 けれど、理由があれば罪が無くなるわけではない。 一つ一つの話に何を思ったのかも、聞かないといけない。
そうして語り部と聞き手は反転する。
冷えた温度で語られる言葉は>>183>>184 理解すらも、善意や感情で芯を失わない徹底した本音。 最も伝えることに抵抗があった どこか彼の過去を投影出来る婚約者の話にすらも。
他にも同じようなことが沢山あったんだよ、なんて 話したところでどうなるのか想像が出来る。 強く責める声など絶対に向かないのだろう。]
(237) ガラシア 2023/08/07(Mon) 23時頃
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[そんな彼が、どこか必死に問いかけてくる様子に 胸が締め付けられるような知らない心地を感じていた。
けれど、表には出すことはなく。]
自分自身のことは、今も好きじゃない
でも、心に変えられないものがあったとしても 父の道具から、ただの人間になりたいと思ったから
──君といつまでも一緒にいたいから そんな意志が存在価値なのかなと、今は思っているよ
[自分は好きじゃない、行動する意志が存在価値。 彼が望む答えではないのかもしれないと懸念する。
しかし、価値が喪失した理由が 己の選択は全て無意味だと思わされた為である以上 成海自身にとっては大きなことだった。]
(238) ガラシア 2023/08/07(Mon) 23時頃
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[触れた手は、温かい。夢の中とまるで変わらない。 この感触はこれからも、離れていかないらしい。
口許を緩めてみたけれど、 多分不格好な笑顔になってしまった気がする。 きっと、まるで泣きそうな顔に。 もっと強く感じたくて、指を絡める形に握り直した。]
君のあまり知らない姿を見せてもらえて、 全て知っても変わらない言葉をくれて──本当に、嬉しい
君の目の中では俺は人間でいられるんだね ……少しづつ、自分でもそう見れたらいいな
[イメージを変えたのはお互い様。それは肯定するが。>>185
思えば夢の中の彼は、 薔薇の部屋の件を除けば冷静な様子が多かった気がする。 予想外は不快や嫌悪に繋がらない。想いは、語った儘に。]
(239) ガラシア 2023/08/07(Mon) 23時頃
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[店員が近づく足音に、手を離す。 少し名残惜しく思い、膝に引くまで時間がかかった。
福原の注文のビールが個室に届けられた。 もう少しすればチーズもくるだろう。]
……福原君の話、聞きたいな
[乾杯しようと言い出したのは成海 大きさと形の違うグラスを合わせた後、ぽつりとそう言った。]
(240) ガラシア 2023/08/07(Mon) 23時頃
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確かにこんな話を聞いたら 普通はもう少し感情を出すとは、思う でもこれも福原君の一面なら、嫌じゃないよ
それに君は君なりに俺を受け止め、理解してくれた
俺が知らない福原君って、きっとまだ沢山いるよね ……教えてくれる?
[自分も酷い人間で嘘吐きだと言った。>>5:+70 遠ざけていた話に共感を示していた。>>179 記憶に残る中庭での出来事が思い起こされる。
強いられた不自由とは>>183 日頃のやり取りや親の話から思うことはある。
気になることは沢山あって、どれも聞かなければ確証は持てない。*]
(241) ガラシア 2023/08/07(Mon) 23時頃
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至高祈念展 ナルミは、メモを貼った。
ガラシア 2023/08/07(Mon) 23時半頃
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── 回谷こころの葬式 ──
[式場は悲しみを表すような静けさに包まれていた。
招待を受けた研究室の者達の一人である成海もまた、式場に足を運んでいる。>>186 入り口で静かに頭を下げ、式場の奥に進んでいく。 その途中でいくつもの、記憶に重なる囁きを聞いた気がした。
中央には自分が知る彼女と寸分違わない見目の、笑顔の遺影が置かれている。 彩る花の控えめな色合いが幻想のように美しかった式で見たそれによく似ているのに、全くの反対の意味を示しているなんて。
その記憶に重なる姿の福原が目に映れば一層に、酷い運命に思いを馳せてしまうのだ。>>222]
(254) ガラシア 2023/08/08(Tue) 00時半頃
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[ごく普通の、可愛らしい子。 それは何も目に止まらない雑花というわけではなく。
このような若さで死んでいい筈がない 誰もが思い描くような、大きな山も谷もない穏やかな幸せを 得る権利があるべき女の子だった。
夢から醒めてそれなりに経った今思い返せば 不安な状況に置かれた女性の前でなんて姿を見せていたのか。
けれど彼女は声を掛けてくれて、 突き放す対応をされても考えを変えなかったのだ。
──その言葉を素直に受け取れなかった。 本当は、成海自身が分かり合おうと思えたのなら きっと、方法はあったのかもしれない。
あの夢の中では時間が足りなくとも、 回谷こころは日常の中で生きていたのだから。]
(255) ガラシア 2023/08/08(Tue) 00時半頃
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[研究室の者達の一部が遺族と話をしていた。
けれど喪に服す黒を纏った成海は、 正しくも有り触れたお悔やみの挨拶をして場を辞したのみ。
他の者が知らない回谷こころの姿や思い出を語れない。 意図してなかった言葉で動揺させた時すらも、 最も彼女を知っていそうな男が側にいたのだから。
美しい花嫁の姿と共に、細やかな後悔は胸に残るだろう。*]
(256) ガラシア 2023/08/08(Tue) 00時半頃
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── ダイニングバー ──
[自分がどこまでも利己的だという考えは 成海の罪悪感の根源に近い部分にあった。
他者も含まれるところまでその認識を広げる言葉。 どれ程に衝撃的だったか。 そういうものなのかと目を白黒させていた。>>259
でも、それだけじゃない。 頼り頼られる、それも互いの利己で成り立つのならば もう情けないなんて思わずに素直に頷けたのだ。]
(306) ガラシア 2023/08/08(Tue) 20時半頃
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[成海の心の形に関する話も視野が広がるようだった。
確かにそうした症状は聞いたことがある。>>260 けれど、自己を肯定出来ないのは こんなにも歪んでいるのだから当たり前なのだと思っていた。
一人では気づけなかった角度からの言葉に 感謝を述べ、自分でも調べてみると告げた。
福原はいつか賢くないと言っていたが、間違いだと思う。 あの時は成海についてろくに知らされていないのだから、分からなくて当然だっただけだ。]
(307) ガラシア 2023/08/08(Tue) 20時半頃
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[この答えは彼にとって望ましくないだろうか? そんな不安に気を取られていた成海は、 まさか褒められると思わず、>>261>>262 少し驚いた後に笑い声を零した。]
ふふ。急に褒められて恥ずかしい。でも、ありがとう
本当に二人はよく似ているということだね 君にそう言われると、拒絶する気が起きない ……なんだか魔法みたいだな
[当然の義務であり、頑張っているだなんて思っていなかった。 けれどそれがこの青年との類似点だというなら 否定よりも悪くはないという思いが勝るのだ。
絡められた指を握る強さが、 前向きな二人の未来を語る言葉が、>>263──心強かった。]
(308) ガラシア 2023/08/08(Tue) 20時半頃
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[惜しみながら手を離し、乾杯を終える。
彼の語りの合間に届いたチーズも手を付けずに、 時折相槌を打ちながらも、黙して話を最後まで聞いていた。 >>264>>265>>266>>267>>268>>269 なんとなくそうじゃないかと思っていた内容、本当に知らなかったこと。その言葉の多さに準じて成海の思考も多く揺れた。]
大丈夫、沢山の話をしてくれてありがとう。 福原君のことが知れて、満足したよ。 貿易会社だとうちとはあまり関わりが無いかな。 だから知らなかったけれど、 なんとなく近い生い立ちなのかなとは思っていたんだ。
[自己否定に繋がる醜悪さ、家庭事情により抱いた惨めさ。 形は違うがどちらも頑なに秘めてきたもの。 打ち明ける約束から季節は流れども過去とするにはまだ浅い その中で充分に話をしてくれた福原に感謝し、思考を述べる。]
(309) ガラシア 2023/08/08(Tue) 20時半頃
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福原君なら分かってると思うけれど、 感情的にならないことは悪じゃない。 一つの個性として、認められるものだ。 少なくとも俺にとっては君の一部でしかない。
でも生きる為に諦めるというのは少し悲しいし、 同級生の話は俺も似た経験をした記憶がある。
だから君が愛されて育っていたのが嬉しくて、 捨てられたようなものだと思うようになったのは、悲しい。
お母様のことは、あの時しか話に出てこないからなんとなく。 彼女はとても深い傷を負って、 お父様にも色々な思いがあった
……でもやはり俺には、一番の被害者は君だと思える 子供にとっての家庭は世界だと言ってもいい程に重要だ
(310) ガラシア 2023/08/08(Tue) 20時半頃
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最初から与えられない、与えられていたものが消えたり変わる。 どちらがより酷なのかなんて決められないし、 同じものでもない。
だから簡単に同調して良いとは本当は思えないのだけど、 やっぱり俺と似ていると感じたのは間違いじゃなかったんだね。
君の自分を守るような振る舞いが通用しなかった時、 側にいられて本当に良かったと思う。
今思えば少し俺の言い方がきつかった気がするけど、 ごめんね、そういうところがあって。
でも今の君なら言われなくても適度に気を抜くことが出来るよね。 親の被害者な子供からそんな風に成長した福原君が 俺はとても、誇らしいな
(311) ガラシア 2023/08/08(Tue) 20時半頃
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冷静さを人より保てる性質であること、 周囲の様子に合わせて言葉を変えられること。
本当に深く関わりたい相手には 後者は向けるべきではないかもしれない。 確かに俺は君とお互いに、誠実でありたい。 嘘を付かれる心配は最初からしてなかったけどね。
でも君が身につけてきたものは、場面が変われば 社会人になれば当たり前のように求められることもある。 ただ嘘は使い方を見誤り乱用すれば、 いずれ必ず露呈するけれど、福原君は賢いから。
つまり、俺はそんな君も好ましく思うよ
俺が出会ったのは幸せに愛されている子供じゃなくて 辛い経験をして一人で頑張ってきた君だから。
(312) ガラシア 2023/08/08(Tue) 20時半頃
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今の君が持っている性質は、 誰かと共に生きる時、相手によってはその役に立つスキルだ
[それが自分だとは、なんだか恥ずかしくて言えなかった。]
勿論、俺の言葉で前向きになってくれるところも嬉しいし これから変わっていく姿も楽しみにしてるけどね。
話してくれて、ありがとう お祖母様とお祖父様のことは、本当に良かった。
お母様については、無理はしなくていい。 どちらか一人でも心に負担がある状態では 本当に正しい再会が出来るのか、危ういからね
[そこまで述べれば、チーズを食べるかと勧めた。*]
(313) ガラシア 2023/08/08(Tue) 20時半頃
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── とある日・大学にて ──
おはよう、仁科さん
[少なくとも軽症の者達は学業に復帰した頃のこと。 その日午前中は講義を取っていない成海は 昼時に現れ、メッセージアプリの個別に連絡し 二人で会えないかと聞いた。
一人でいるのならそこに赴き、違えば中庭のベンチに呼び出した。 差し出す袋にはとある洋菓子店専門店の名前。 中には保冷剤とスプーンと、瓶入りのティラミス。]
上着を買って返す必要は無かったわけだから 俺なりに考えたお礼だよ
形が崩れなくて家以外でも食べやすいものはこれかなって ……大丈夫?嫌いじゃない?
[女性に甘いものは安易な思考ではある。ただ、形に残るものは重いと考えた。]
(314) ガラシア 2023/08/08(Tue) 21時頃
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本当にあの時はありがとう、そしてすまなかった
年下の女性が不安になる時に、 俺は一体何をしていたのだろうね
[少しだけ自嘲をするけれど、 そこに思いつめた深刻さは無く。]
結婚式の時の仁科さん、素敵だったよ ……お姉様にそっくりだった
話したことはろくに無かったけど、 とても綺麗な人だったね
[あの頃学内で聞いた彼女の死因や噂には 自分からは触れないことを選んだ。 それが真実かどうか不確かで、 話した通りの関係性しかなかった以上は 「大学の先輩」が踏み込んでいい範囲は限られている。]
(315) ガラシア 2023/08/08(Tue) 21時頃
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例え夢の中だったとしても 仁科さんが助けてくれたこと、忘れないよ
もう誰かに辛い顔をさせないように生きる
[仁科の泣きそうな顔が未だに焼き付いている。 本当に自分は、自分のことしか考えていなかった。
回谷が生きられなかった世界で不要な血は流さない。 そんな思いも語った理由にはあったけれど、 未だ彼女のことを容易に口に出すには日が浅い。]
本当にありがとう、……それじゃ
[それからどんな話をどれくらいしただろう。 貴重な時間を使わせている以上、 最初から長居をしないつもりであったが。
終わりにはもう一度お礼を言って立ち去った。*]
(316) ガラシア 2023/08/08(Tue) 21時頃
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至高祈念展 ナルミは、メモを貼った。
ガラシア 2023/08/08(Tue) 21時半頃
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── ダイニングバー ──
バイトとその理由が大きかったかな、 言語学に熱を注がれたことは無いけど重なった。 といっても裕福な家庭だろうと思ったくらいだ。
あと君、明るくしていても粗雑さがあまり無いよね それは性格面のこともあったのかもしれないけど。
でもあんまり深く考えてなかったよ。 生い立ちなんて関係無く、 福原君っていう可愛い後輩と接してるつもりだったから
[福原にとっては疑問があることだったかもしれない。そう思い至り、相槌を一度拾った。>>335
思いを馳せるような様子は、黙して見ていた。 可能性を話しても仕方ない。 それでも思考してしまうのが人間というものだ。 当人にはより多く、思うことがあるだろう。 自分のことは自分自身が一番気になるものだと、成海はよく知っていた。]
(342) ガラシア 2023/08/09(Wed) 00時頃
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[危惧の否定の言葉には、少し安堵し力を抜く。>>336 あの後彼がどうしたのか、知らなかったから。
こちらが聞く側の筈なのに、語ってくれた相手に安心させられているなんて。 そう思えども憂うことはないのは、告げた通りに今はただの可愛い後輩なんかじゃないからだ。 照れ笑う姿を、微笑ましく見守った。>>337]
そうだね、辛かったことは忘れなくていい でもそんな風に思ってくれていたら、俺は嬉しいよ
もし、自分が自分らしくなっている なんて感じることがあったとしたら、 昔の話だって今の話だって、沢山聞くからね
[会えて良かった、そんな話は両者病院でもした。
もしかしたらこれからも何度だって繰り返すのかもしれない。 それはきっと、素晴らしいことだと思う。 緩んだ顔を見ていると一層に成海にはそう思えた。]
(343) ガラシア 2023/08/09(Wed) 00時頃
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[最初はお互いあんなに緊張していたのが嘘のように 二人の空気は明るくなった気がする。>>338
自然な微笑みで一つ一つの言葉に頷いていたが、 口籠った後に零れた言葉には思考の間が空いた。]
……そのことは、うん。伝えておこうかな あまり何もかも待たせるのは悪い
折り合いをつけるというには余りにも乱暴なのだけどね 君の卒業後にも関わる話だ
[チーズはビールともワインとも合う、そう告げてから
残ったワインを全て飲み干した。]
(344) ガラシア 2023/08/09(Wed) 00時頃
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俺はね、高祈の城を破壊しようと思っている
母親は問題じゃない、全ては父親だ
正直に言えば、今更歩み寄ろうなんて思えない あの人と俺は似ているけれど同じではない。
[曰く。 不正取引、裏金、後ろ暗い類との関わり 把握している黒い情報は数多に。
数年で証拠を揃え、父の影響外の地域から後援を付け 各種メディアに訴え出るつもり。 甘い汁を吸いに傘下に入った親戚筋共に裁かれる。 ──天原真那の父親も、恐らくは。]
(345) ガラシア 2023/08/09(Wed) 00時頃
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……君と一緒に生きやすくする為だけじゃない。 それだけで沢山の人間の人生に影響を与えたりしない。
腐り切った土台の上の玉座を受け継いでも あの人と同レベル、いやそれ以上の手腕が無ければ いずれは倒壊するだろう。
形ばかりの継承の末の斬首刑は御免だ。
[夢から醒めさせたあの絵画は、調べた限り架空のものだ。 しかし、意志を持った今は重ねずにはいられない。]
その後どうなるかについては 多くの人間が関わるから、断定は出来ない。
クーデターを起こした本人を持て囃す者が出てくるだろう それ以上に、沢山の恨みを買うだろう。
ホールディングスが何らかの形で残り、望まれるのなら 残る罪の無い人達と尽力するつもりだけどね。
(346) ガラシア 2023/08/09(Wed) 00時頃
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[少しだけ首を傾けて、苦く笑った。
大胆な話を唐突に打ち明けた内心は不安。 その想いをきっと、長らく感じ続ける。 混沌とする地に招くより自由にさせてあげたかった。 けれど、離れ離れになりたくなかった。
──感情の名前に、検討がついていた。
父親の支配から脱却しなければ、 かつての少年を苦しめた男と変わりない。 重なる要素を持ち合わせるからこそ、 堂々ともう一度抱き締められる時までは。
今言えることはただ、 不安定な未来で側にいてくれることへの願いだけ。 ほんの少し、狡い言い方で。*]
(347) ガラシア 2023/08/09(Wed) 00時頃
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── 西門教授をはげます会 ──
[元から神経が太くはない教授について心配はあった。
成海は注目を集めることに慣れていたが、種類が違う。 責任者である彼は学生達と違い矢先に立たされていた。
しかし部外者の勝手な言葉に最も有効なのは、 全てが過ぎ去り興味を失われるのを待つことである。
彼に何が出来るのか、それは悩ましい問題だ。 お疲れではないですかと珈琲を差し入れたりしたけれど むしろ成海にそんなことをされるのが心苦しい、 そんな風に見える様子だった。
動いたのはやはり田端だ。>>290>>291 彼女は、思考が長く無難な行動を取る成海の前を征く。
それを当たり前のように思ってはならないのだけれど。 後手に回る性質は中々変わらない。]
(350) ガラシア 2023/08/09(Wed) 00時半頃
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お疲れ様でした
[田端に続いて皆の後に声が重なった時。 成海の手には度数の低い酎ハイがあった。 近くにいた柊とグラスを合わせ、微笑む。>>348
己の力量は他人に醜態を晒す前に弁えた。 教授の為の場だからではなく、見せたくないからだ。 酒は選ぶし、多くは飲まない。
そうして教授を取り巻く様子を見ていた。 田端が気遣って>>292 福原が励まして>>302>>303
ああこんなにも愛されているじゃないか、と。 どこか安堵した気持ちでいたのだけれど。]
(351) ガラシア 2023/08/09(Wed) 00時半頃
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わかめとシュリンプの和え物をください [問答無用で柊の口を覆って、 成海にしては大きな声で無理な誤魔化し方をした。>>349
酔ったらしい教授単体ならまだしも、無邪気な後輩との連鎖は止められなかった。*]
(352) ガラシア 2023/08/09(Wed) 00時半頃
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── ダイニングバー ──
[普通以下の限界を気にし、 ちびちびと口に運んだ残りだったワインの温さに対して。
最早慰めや肯定だけで済まされない話に返った言葉は やはり冷え、広い視野を持って語っているようで 重い打ち明け話をした時と違うものもある。
濁る言葉尻、案ずる様子。>>355 それでも支持してくれるという彼だからこそ 好ましい存在で、これからも共にいたいと思える。]
(371) ガラシア 2023/08/09(Wed) 12時半頃
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[何でも、そう彼は言った。>>356
──成海は、当然のことながら 父が自分にしようとしているように、 福原を目的の為に利用したいわけではない。
それでも狡い問い掛けをしなくてはいられなかった。
その将来の何もかもまで口を出すつもりは無くて 彼が選んだ道相応のことを求める気だけれど。 孤独な戦いを一人で続ける心の負担を、 甘んじて駒となる以上に会えなくなる日々を想えば。
あの時は本気だと思っていなかった言葉を、 こちらから希わずにはいられなかった。
相変わらず弱い男のままで もうすっかり彼を頼ってしまっていた。]
(372) ガラシア 2023/08/09(Wed) 12時半頃
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[その言葉だけを聞けば、 唯の健気な後輩とも取れる範囲だった。>>-585
これまでの話が、二人の重ねた時間が、 意味を正しく受け取らせ、 語られない重みを確かに感じさせる。
手を取らせた責任を、取らなくてはいけない。]
…………ありがとう 応えてくれた君に、今保証出来る未来は少ない。 でも、泣かせない為に誠心誠意努力すると誓うよ
[噛み締めるような少しの沈黙の後、 成海の表情から苦さは消えている。>>357]
(374) ガラシア 2023/08/09(Wed) 12時半頃
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[それからは、合間にチーズを摘んで 再び度数の低いワインを頼んだりしながら、 努めて何気ない話をした。
重いことばかり語り合ってしまったけれど、 残り少ない大学生活を彼と楽しみたいのもまた事実。
好きな食べ物は、休日の過ごし方は そんな随分些細すぎることから、 田端のお陰で西門教授をはげますことが出来た話とか、 あの時飲んでなかったけどお酒はどうなのかとか。
少しでも気軽な話でも笑い合えたのなら幸いだ。]
(377) ガラシア 2023/08/09(Wed) 12時半頃
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──―やあ、二日酔い大丈夫? 昨日は飲みに付き合ってくれてありがとう、徳人君
[翌日の大学構内。 一目で分かった後ろ姿に追い付けば、 そんな声と笑顔を向けて通り過ぎて行った。
少しづつ互いを変えていきながら、 二人はまだ、大学生という平穏の肩書を負っていた。*]
(379) ガラシア 2023/08/09(Wed) 12時半頃
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[海沿いにあるとある市。 都会と呼ぶには何か一つ足りない、自然に囲まれた土地。
豪邸が立ち並ぶ住宅街の一角 重厚な造りの門を通り抜け、純和風建築の邸宅が近づく。 木材と瓦が使用されたガレージに駐車した高級車 そのドアが外側から恭しく開かれる。]
大丈夫、よく似合っているよ。 どこに出しても恥ずかしくない、立派な大人の男性だ
[この時の為に一緒に買いに行った服を着た骨谷へ 安心しろと言うように肩を叩いた。]
(383) ガラシア 2023/08/09(Wed) 14時頃
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[成海は意思を尊重し相手からの連絡を待った。 骨谷が高祈家を訪れることとなったのはいつだろう。>>257 冬季、春季、はたまたそれ以降? 成海は卒業が控えていた都合上、 場合によっては空港で迎えてからの同行となる。 仕方ないことだ。 高祈ホールディングスの本拠は北海道なのだから。]
それに話した通り今日は父はいないからね
[事前に話したが、不本意だったら申し訳ない。 骨谷の希望する日程と父のスケジュールを合わせ、絶対に会えない日を訪問日とさせてもらった。
しかし会っても良いことなど無い筈だ。 あの男は骨谷の思いなど理解せずに、金を積んで祖父と同じ道に進ませたがるだろう。]
(384) ガラシア 2023/08/09(Wed) 14時頃
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── 高祈邸 応接間 ──
[畳張りで襖で区切られる座敷。 差し込む光を目で追えば、その先は日本庭園。
緑茶と和菓子が用意された木製のテーブルを挟み 座布団に腰を掛けて向き合った。
息子に少し似た面立ちの高祈夫人は 夫が会えなくて残念がっていたこと、彼の雷門氏の作品への想いを静かに語った末に下がっていった。 彼女は元から男性の後ろに静かに控えている性質だが、ここ最近は加えて病に伏せることが多くなっている。]
(385) ガラシア 2023/08/09(Wed) 14時頃
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さあ、骨谷君。 もう此処には俺達しかいないよ 作法のことは忘れて、どうぞ近くで
[二人がいる場所から奥手にある床の間 掛け軸の前にかの花器は鎮座している。 いつだってあの男は両者を隔てる襖を開いて 雷門氏の逸品を来客に見せつけていたのだ。
一度促した以降は彼がしたいままに行動させて、 その様子を少しの間じっと見ていた。 それから邪魔にならなさそうなタイミングを見計らい、 近くに寄れば声を潜めて問い掛ける。]
(386) ガラシア 2023/08/09(Wed) 14時頃
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もし、この花器が高祈の手を離れる日が来たら ──君はお祖父様の作品にどうなってほしい?
……可能性の一つとして、考えて 君が思うままに答えてほしい
[申し訳無いが意図は話せない。
その代わり、何と返ってもその答えを尊重しよう。*]
(387) ガラシア 2023/08/09(Wed) 14時頃
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── はげます会 ──
[銀が驚いて自分の名を呼んだようだったが>>375 本当のことなど言えず、曖昧に笑って頷くしかなかった。
本来の名前はわかめとエビの中華和えなのだが 何を言ってるのか理解出来ない程の違いではなく、 店員の繰り返しで訂正され少し恥を抱き終わる。
そして柊を解放した結果、困惑と動揺に襲われたのだ。 柊からすれば疑問に思い問うのは当然だろう。>>411 声を抑えてくれただけマシだろう。 しかし突発的行動は、そこまで考えたものではなく。]
(417) ガラシア 2023/08/09(Wed) 22時頃
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え、いや……それはだね……
[戸惑い言い淀んでいる内に、自力で調べてしまった。 此方と比べて彼の冷静さときたら。 少年と呼んでも未だ良さそうな可愛らしい容姿に対し こちらは腹黒だプライド高いだと言われる大男だというのに。
知ったのは飲み会で田端にセクハラする先輩から>>363 それとなく両者を引き離そうとしたり 性に関わらないものに話題を変えようと苦心した記憶。
そうした事が彼女以外とも何度もあって、 自分自身も巻き込まれそうなら上手く流してきたけれど。 真っ向から発言させられそうになった事は無かった。]
(418) ガラシア 2023/08/09(Wed) 22時頃
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…………ッ
[口許を手で覆い、伏し目がちに視線を逸らした。 酎ハイを一杯しか飲んでいない、殆ど平静の様子から一転 隠されない目元は赤く染まっている。
柊が教授と骨谷に絡みに行っても暫くそのままだった。>>414
恥じていた。 発言を求められて当然の状態に自らしてしまったことを、 柊は何も気にしていないのに一人で狼狽えていたことを。
敬虔な教会信徒の家の娘である母に禁欲を教えられ 将来の結婚までそうした事柄とは無縁であることを 成海は別段不満にも思わず、当然として受け入れていた。 自分とは違う者達に囲まれる大学生活でも それを変える気はなく、他人事としていた。
──要するに、耐性と経験が無い身体であった。]
(419) ガラシア 2023/08/09(Wed) 22時頃
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[そんなこんなで心中は穏やかさと平静を見失い。 元から賑やかな場では、多少の騒動は耳に留まらない。
その状態から我に返らせたのは 誰より可愛がってきた後輩の、やや作ったような声で。]
……萌え萌えキュン?
[仕草と表情を傍から確かに確認し、>>391 未だ赤い顔のまま、表情だけがいつものものに戻った。 あんなことをする福原は見たことがない。
萌え萌えキュン、未知の言葉である。 口上からして他者への応援を意味するらしい。 しかし使われた場面を見たのはこれが初めてだ。
今度二人でいる時に、もう一度見せてもらおう。 そしてその発祥や使用に適した状況について教えてもらおう。 高祈先輩は密かにそう決めた。]
(420) ガラシア 2023/08/09(Wed) 22時頃
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[教授が、田端が、酔っ払いの言動行動を始めたのならば しっかりしないといけないのは成海だった筈なのだが。
衝撃、狼狽、羞恥、驚き、思考 ずっと頭は使いっぱなしでいた為に。
タイプの違う美女二人により公衆の面前で とんでもないことが起きていると中々気づかずにいた。
追いつかせたのはグラスが落ちる音と仁科の声。>>413 柊が世話を焼いているのを眺めて、>>415>>416 何があったのか、騒動の元を漸く目が探して、そして。]
(421) ガラシア 2023/08/09(Wed) 22時頃
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〜〜ッッ!!??
[声にならない悲鳴が出た。 なんとも華やかで耽美な光景だ、だからこそ。 わかめ酒について説明を迫られるのとは比べ物にならない。
今までも酔った男二人が、なんてものは見る経験があった。 それはおふざけと笑いの中にあったのだ。
しかし彼女達ときたらどうだろう? まるで互いを想い合っているようにすら見えるじゃないか。 まるで何の邪魔もない恋人同士の一時じゃないか。>>403]
た、田端さん……銀さん…… 未成年の子もいるんだよここには……!
[精神の乱れが声の掠れに現れた。 見ないようにしながらのその声が、 酔いに花開いた美しい二輪の百合に届くかは、さて。*]
(422) ガラシア 2023/08/09(Wed) 22時頃
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── ある日の昼時・大学の中庭 ──
[未だあの日の面影を失っていない季節、 青々とした緑が時折風で葉が擦れる音を鳴らしていた。 仁科と二人、ベンチで隣り合わせに座り言葉を交わす。>>392
汚したのは夢の中だから現実では大丈夫。 そう思い込み、特に上着がどうなったか聞いてもなく 未だその末路は知らないままだ。>>393
仁科がティラミスに快い反応をすれば、 成海もまた安堵し表情は穏やかになる。]
その夢中が俺の傷を治したわけだから 胸を張って良いと思うな
[気づいた仮説をろくに話もせず終わったことも忘れ、 勿論相手もそれは知っているだろうという風に 何気なく言葉を拾った。]
(440) ガラシア 2023/08/10(Thu) 00時半頃
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[なんとなく、彼女ならそんな反応をする気がした。 故にこちらは落ち着いたものだったけれど。
改めてその瞳を見ると──ああ、同じ色だ。と>>394 部外者ながら少しだけ切ないような心地を抱いた。
知っていると確りと言えるのは 犯人がストーカーという話くらい。
人格、振る舞い、妹との関係性、何も分からないけれど 華のように咲いて散ってしまったのだろうと 儚く表現された仁科の言葉に胸の内で思っていた。]
(441) ガラシア 2023/08/10(Thu) 00時半頃
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仁科さんは後悔を無駄にしない人なんだね。 それは大切なことだと、俺は思うな
[身内にしか分からない悔やむ想いがそこにはある、そんな気がした。>>395 けれどそれと同時に仁科は、停滞してはいないようで。 告げたままに良いことだと感じる。
むしろこちらこそ不躾だったかもしれない言葉、それでも捕まえてもらえるのならば。]
無理もない。その気持ちはよく分かるよ
[彼女が気にしないで息抜き出来るように 穏やかに同調を示し、今暫く留まることにした。
一つ一つの話に頷き、時折言葉を挟んでも基本的には聞き手となって 進捗については楽しみにしていると応援した。
互いに礼を向け合い別れるまで、 少しでも気楽に過ごさせてあげられたのなら幸いだ。*]
(442) ガラシア 2023/08/10(Thu) 00時半頃
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── S・H・G ──
[不思議そうな目が鋭く変わる。 まるで、空気の読めない非常識な男を見るように。 ……おかしいのは自分なのか?
押しが強いほうではない成海はつい 彼女達の様子に呑まれ、自らを訝しんでしまう。]
キスしかしてないのは分かった上で、ですね……
[そして反論がか細く自信なさげになってしまう。
そのキスの仕方や空気が問題なのですが。>>423 と指摘するのは、恥が躊躇わせた。]
(445) ガラシア 2023/08/10(Thu) 00時半頃
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[元から田端に言論で勝ったことなど無い。 意見を受容された経験は皆無ではなかったかもしれないが。
という個人的な想起はともかく、お気づきだろうか? 誰もそんなことは聞いていないのである。>>424 ただ人目を気にしてやめてほしかっただけなのだ。
何を、何を聞かされているのか……本当に。]
……ふしだらだ
[キスすら初めては結婚式でするつもりだった男。 もう顔を覆って項垂れることしか出来なかった。
するんですか、それ以上のことを。 まだした事がない、ってことは いずれするし嫌じゃないってことですもんね。
何で皆こんなに段階を早く踏んでいくのか。 成海には全く理解出来なかった。*]
(446) ガラシア 2023/08/10(Thu) 00時半頃
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── 続 S・H・G ──
[ぽつりと落ちた声を耳は拾って そして、感じる視線に落ち着かなくなっていた。
彼の様子の冷静さときたら。>>443 少しも酒が入ってないからで済む話なのか。 ……変な先輩に、見えているのだろうか。
あの夢を経験して以降、 以前より感情が出やすくなっている気はするが ここまで乱されたことはない。
自分程まで慎めと押し付ける気は無いけど、 せめて人前では、間違った話だろうか。]
(447) ガラシア 2023/08/10(Thu) 01時頃
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まだ飲みたい人がいるなら、俺は残りますけれど……
[顔を覆ったままそんなことを言われて じゃあそうしようと思うかはともかく。
どう考えても落ち着いていて飲んでない福原のほうが しっかりして見えるのもともかく。>>444
なんとか体裁を取り戻そうとしていた。*]
(448) ガラシア 2023/08/10(Thu) 01時頃
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── 10月のある日 ──
[一つ一つ、過ぎ去っていく時間を数えて 失ったものを想いながら、成海は変わっていった。
黒い服ばかりを身に着けなくなった。 微笑みは常に浮かべるものではなくなっていった。 少しだけ他者と向き合う姿勢が改善された。 周りの出来事を他人事のように思うことが、少し減った気がする。
一線を置く以上は放っていた女の子達を、何かと優しく理由を付けて物理的にも遠ざけるようになった。
未だ学生の身分の内はそうして、ただの「高祈成海」として成長していく時間となる。 この先の未来が嘘のような、平穏な日々の中。]
(449) ガラシア 2023/08/10(Thu) 01時半頃
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『現実でも君のご飯が食べられるなんて嬉しいです。』
『楽しみにしてお腹を減らしておきます。』
[その通知もまた、 平穏の中の少し嬉しい出来事。>>434>>435
彼にとっては不本意で突発的なことかもしれないけれど、 喜んだって構わない筈だ。
成海は相変わらず何も作れない。卵すら割らない。 それでも食事を楽しみになんて表現させているのは 紛れもなく作った者が彼だから。*]
(450) ガラシア 2023/08/10(Thu) 01時半頃
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至高祈念展 ナルミは、メモを貼った。
ガラシア 2023/08/10(Thu) 01時半頃
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── 分岐点 ──
[「兄」との対話はいつ、どこで成されただろう。 待つことを決めた「弟」の元へ必ず彼は現れた筈だ。
そのやり取りの中で成海は、 己が生還者となり数多の助けで前を向いたことによる 無根拠な未来への妄信から脱却する。
教えてもらえたわけではないだろう。 全てを既に定めた彼は、誰かへ理解も求めないだろう。
それでも、気づいてしまった。 大藤久影は自分と同じものを望んではいない。 勿論、今まで通りの距離感の日常への回帰でもない。]
(456) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[成海が告げる感謝や、あの時向けられた言葉達にどう向き合っているかなど 何一つ心を素通りするわけではなかったとしても とても彼を繋ぎ止められるものではない。
あの結婚式は、彼の花嫁との愛の誓いは 美しい思い出への昇華や遠い未来の再会の約束になど 留まってはいないのだ──
時間を置き漸く果たされた語らいにおいても、 回谷について触れるのは躊躇われたが あくまで自分が思うこととして、 今まで周囲で二人の人物を亡くした話をしながら
「遺された者の責任」 「故人が望む望まないに限らず、 続きがあった命を無碍にしてはならない」
そんなことを語ったけれど、 大藤の中に響いたようには、あまり思えなかった。]
(457) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[あの日俺は何を掬えなかった? 君の憂いを、見落としていた?>>4:166 時間も回谷も気にせず引き止めれば何かが違っていた?
決して何も悟れなかったわけではない。 奥にある重みに触れられないまま、変化には気づいた。>>4:174 けれど、他者への踏み込みに慣れない心は乱れた後で 二人には時間が足りていなかった。
そうして自分だけが見れた色は消えて>>4:187 心を多く占める者との約束と、 果たされない願望にケジメを付ける路へとついた。
選んだ道で得たものが不必要だったとは思えない。 それでも可能性を求めてしまうのが人間だ。
もしかしたら、違う道が── もしかしたら、全ては杞憂で── 物分りの良い弟の顔で見送った胸中は穏やかではなく。]
(458) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[忙しく変わった大藤の隣に座れる時は減った。>>137 見掛ける機会も、きっとそうなっただろう。
漠然とした誰にも語れない不安を抱えて、 まるで何も無いというように大学生活を続けた。
……都合の良い可能性は潰される時が来た。
「最後」を告げる「いつも通り」>>138 相変わらずの最適化を突き詰めた言葉数。>>139 何人ものあの夢を共有する者達が話し掛けるのを見つめる。
少し遅れたタイミングで近寄り、 当たり障りの無い言葉を告げ肩を叩いた耳元に。]
(459) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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── 終着点 ──
[打ち寄せる波の如く。 大藤の進んだ道に関する話が聞こえるようになり そして、話題から消え始めた頃。>>144
研究所の本棚の見慣れない白を、 成海は一人、引き寄せられるように手に取った。
他愛もない風景の写真を、 つまらない小説を読み飛ばすように 何の思いも無く眺めていった視線の行き着く先で
──声も無い衝撃、見開かれた目。
蘇るのは、最後にバスから降りてきた大藤を迎え そして置いて館内に向かうまでの 青空の下の、他愛もない二人のやり取り。
そして、白薔薇の花びらが二人の行く末を語る。>>220]
(460) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[動揺で手が震え、アルバムを取り落した。
環境上常にこの場は清潔に保たれている筈だが これを置いた者が誰なのか気づけば 少しでも汚したくない、慌てて拾って──
滑り落ちたロータリーらしき写真。 花びらと共に今度は落とすことなく手の中へと。
しかし宙に舞う内に、処刑の場でコインが廻った如く その仕組みを、本当に遺されたものを>>144 選ばれなかった者へと見せつけた。]
(461) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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……嗚呼
[ やはり想像通りだった。
やはり、海外など行っていない。
嘘つきだ。コインのことも罵り忘れてしまった。]
[似た黒色は、決して同じなどではなくて 片羽根と呼ぶ程に隣り合うには不似合いだった。
その色は、生と死 それぞれの路《みち》へと、鏡合わせのように。
大藤久影は、自らの選択で 全てを、一つにはなり得ない弟を、置いて逝った。]
(462) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[蘇る、唯一自分に判らなかった不可解な黒蝶の記憶。 発見する以前に聴いた、シャッター音。]
[ あなたは蝶を追い払ったのではなく、 俺から奪うように連れて行ったのだ。 ]
(463) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[何の根拠も無い筈の可能性を、確信している。 まるで自分達は元は一人だったのだというように。
震える指が全てを元通りに直し収めた瞬間、 意識が遠くなる感覚と共に蹲った。
大の男が、そんなことをしていても 見つけに来ることも、抱きしめてくれることもない。
堪え切れない嗚咽が大きくなっていく。 あまりに早すぎる「四回目」は 一時でも己の身を預けられるような、相手だった。
君は気づいていたのだろうか。 寡黙な聞き手にとって悪くなかった時間は、 お喋りな語り手には一層だったことを。]
(464) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[そうだね、君はあの夢の中で 徹底して他者の生だけを願っていた。 それはきっと高祈成海が還りゆく後輩達へと 福原徳人へと何かを託そうとしたことと同じだった。
言えよ、言わなければ誰も理解しないだろ。 何で一人で全てを決めるんだよ。 君にとっての正解は誰かにとっての不正解だろ。 自分自身にも突き刺さる言葉を振り翳しても ……もう届きすらしない。
結婚式でめいいっぱいに祝福した。 だからもうこれ以上、祝ってなんてやらない。 どうせ二人で幸せそうにしているんだろう。
選ばれなかったこと、同じように抱擁出来なかったこと 見ていた未来なんて相手には何の意味も無かったこと。 それがただただ、悔しかった。]
(465) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[君すらもいなくなる世界で、 誰も救えない人でなしが生き続けるなんて。
そう再び憂いて死を願うには、 コインが確かに互いが片割れであると証明した男を 衝動のままに追いかけるには──
陸も天も影も亡くした世界で、 昏い海へ光を届ける者がいた。
冷ややかな水に内包される人間らしさを、 確かに存在するものとして、照らしていた。
結局のところ、 お互いよりも選ぶ相手がいたことすらも同じだった。]
(466) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[君のことを忘れない、ことある毎に思い出す その度に何回だって傷つく あの時こうすればもっと君と仲良くなったかもとか、 些細なことを悔やみ続ける。>>4:141
望まないことをしたのはそちらが先だろう?]
──―ッ……
[通り雨が降り始め、蹲る成海の嗚咽と泣き声をかき消した。]
(467) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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ここから先はあの事故から一年と四十九日後
回谷こころがこの世界からいなくなったその先で 大藤久影が皆を置いて行った後の 誰も知らない、少しだけ寂しい話だ。
(468) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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── 誰かの終わりの先で ──
[ついに社会人となり、 後継として仕事を教えられている最中の高祈成海は
忙しい日々に纏う色とは違う黒色、喪服姿で 夜の海に佇んでいた。
──成海は、大藤の終わりを悟っただけだ。
それがいつ何処でなのか、どんな気持ちだったのか どれ程苦しかったのか、 あの噂以上のものがいつまでも流れてこない以上 知る由もない。
ただ、海とは霊に引き込まれる場所であり 彼岸と繋がっていると、聞いたことがあった。]
(469) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[月が綺麗な夜だった。
白い輝きが、その光で誰かを導く如く 細く眩く路のように夜闇の水面を照らしている。
成海が投げ入れた白い百合の花束が、 ゆっくりとゆっくりと、波に攫われていった。]
(470) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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今でも許してなんていないよ
[隠し事ばかりの弟にあれだけの願いを告げられた兄が 自分を好ましく感じられていると、 気づかなかったとは言わせない。
その言葉は君の選択で齎されたものだ。 甘んじて受け止めるがいい。 ──どうせ涼しい顔で、平気でするのだろうけど。
それでも君にとって間違ったことをしたとは言わない。 どれだけの思いがあったのか、 あの憂いに手を伸ばせなかった男が 正しく理解出来るわけもないのだから。]
(471) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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[どうぞ、後悔の代わりに安らかな眠りと安寧を。
──二人に死すらも別つことの出来ない愛を。
独り閉ざした瞼の下で、 あの日二人の上にあった夏の空が青く澄む。**]
(472) ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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至高祈念展 ナルミは、メモを貼った。
ガラシア 2023/08/10(Thu) 10時半頃
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── S・H・G ──
お疲れ様でした…… もう遅いので、気をつけて帰ってください……
[帰る後輩達をしっかり見送ることも出来ず>>452>>455 田端が安心して任せられるような平静にも戻らず>>506>>507 去ってゆく者達に向けた言葉だけが、あるべき形を保っていた。
そんな最中で漸く顔を上げたのは、 この後についての言葉に福原が反応して>>498 他の残留している者達について、思い出させてくれたから。
いつまでも一人で勝手に恥じているわけにはいかない。 いつも通りに戻らなければ、 まずは今の残る者の様子を確認する為に見渡して──]
(514) ガラシア 2023/08/10(Thu) 23時頃
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ええ……?教授……?
[いないんですけど。 羞恥の熱が一瞬で冷めるような出来事だ。
オブラートに包まれた福原の言葉の意味を漸く理解した。 故に、それが誰とどのような様子でとは知る由もない。 もし後日にでも誰かから聞けば「知りたくもなかった」とでも思うことだろう。 成海は義務、責務、責任、そうした言葉に煩い男だった。
福原へ何とも言い難い表情で視線を向ける。 何があっても笑顔を保つ努力をしなくてもいい、大藤の言葉に報いる第一歩であった。]
(515) ガラシア 2023/08/10(Thu) 23時頃
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お開きだね、徳人君
[このまま飲み続けられる状態ではあるまい。
骨谷は睡魔と格闘中か既に敗北済みか>>439 何にせよ残留した彼は自分達とは様子が違うので 呼び掛けて様子を確認したり、可能なら水を飲ませようと。]
もう帰ったほうがいいと思うな 大丈夫?歩ける……?
[声にはどんな反応が返ったか。 何にせよ安心して放っておけるようには思えなかったので、 タクシーを呼ぶことにした。
参加費のシステムは今回どうだったか。 立て替えが必要な場合、それは成海が請け負うだろう。 金銭くらいなら役に立つことも出来る。]
(516) ガラシア 2023/08/10(Thu) 23時頃
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[同意を受けども問題と見る比重が明らかに違っていた>>497 そんな後輩に何気なく接するには、少しまた己を恥じる心地が蘇ってくるのも事実だったが。]
いや、今回の飲み会は派手だった うん、沈んでいるよりはずっと良いのだけど
[まともに対話可能な唯一の人間と化した彼へ 労う思いを込めて呼びかけた。
今回の集まりは名目が名目だった。 アルコールで紛らわせている部分があったとしても 暗く沈まなかったことは、幸いといっていい。]
(517) ガラシア 2023/08/10(Thu) 23時頃
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でも、沢山人がいて騒いでいると 気遣ったり世話をすることがどうしても優先になる
……今度、二人だけで飲もうね
[最後の一言だけは少し声を抑え、微笑みながら告げた。
今度と言わず何度だって、卒業までは重ねたいけれど。 一つ一つ、こうやって決めて叶えていけたら良い。
その口約束を叶える場で、未来の為に本当の自分を打ち明けることを考えるのは未だ先の話であった。*]
(518) ガラシア 2023/08/10(Thu) 23時頃
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── 10月のある日 ──
……あ
[物が少なく、ハウスキーパーの掃除が行き届いた それにより生活感が最低限と化しているマンションの一室。
ボックスソファーに独りで身を預けていた成海は スマホの通知に小さな声をあげると 全体に送られたものに続き>>487 自分にだけ向けられる個別メッセージを読んで>>-748
ふ、と穏やかに表情を変えた。 それはまるで、無機質にも映る空間の唯一の温度のように。]
(521) ガラシア 2023/08/10(Thu) 23時半頃
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[翌日、しっかりご飯を抜いて待ち侘びていた成海は 名前の書かれたおにぎりを受け取った。>>488
夢の中と違って彼にも予定や時間があるだろうに この丁寧さと手際の良さは流石だ。
無作法であると思いつつ、すぐに一つに齧りつく。 口の中に広がるネギの風味、よく合った味噌と米の味。]
……美味しい これなら本当に、二個食べられそうだ
[素直な感想を述べ、 言葉通りに二つはその場で無くなった。
もし家庭事情が覗くやり取りがあったのならば>>489 成海は黙したまま温かな目を向けていただろう。
誰もが少しづつ変わり、前へと進んでいく。*]
(522) ガラシア 2023/08/10(Thu) 23時半頃
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── 追憶の投影画 ──
[あまり影を作らないよう、遠慮がちに覗き込む成海は それでも一つ一つを、食い入るように眺め>>491 福原と銀の言葉に微笑んで頷いた。>>508>>519]
……とても素敵だ
想いの籠もった絵は、 事実を描き出すだけではなくその気持ちまで宿すんだね
[生死の境界のような世界の光景を、写真として持ち帰ることは決して出来ないのだろう。 線の引かれ方からは仁科がその代わりとして出来る限り新郎新婦を、祝福の光景を描こうとしたことが伝わってくるようだった。
あの夢のような時間が蘇るような様も素晴らしかったが、そうした部分に成海はより思いを馳せるのだ。 祝福されて逝くという、全ての死者が為せるわけではない幸せを得た花嫁を想って。]
(526) ガラシア 2023/08/11(Fri) 00時頃
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[彼は以前から周りを気にし、行動言動を合わせていた。 それでも、今この時はあまりに分かりやすい。>>509
ああ、いい子だなと思う。 自分がもし二人目の死者だったら 彼は何処かで堪えられない涙を落としただろうか。 ……ならきっと、生きていて良かったのだ。
そうやって自分の命を肯定しながら 誰かの死を忘れずに生きていく、それが人間なのだろう。 いずれ記憶と紙が掠れゆく未来を想い、少しでも永く覚えていられるようにじっと見つめた。*]
(527) ガラシア 2023/08/11(Fri) 00時頃
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[そうして月日は流れてゆく。
あの瞬間世界で一番幸せだった若い新郎新婦を置き去りに。
死者への福音は過去のものとなっても、 季節は回り、影は伸びては消える。
天を雲が覆い雷が貫く時があっても、 雨が過ぎ去れば晴れた空は遥かに澄んだ。
人々が終わった夏に思いを馳せていても、 実りの恵みが世界と命を継続させてゆく。
海は暗く骨は黙する、命が西へと沈む厳しさの中でも 陸を覆った白銀の美しさが心を動かした。
そうしていつか訪れる 桃が花開く祝福の季節を──そんな未来を、誰もが希う。]
(531) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[高祈成海はまともな就職活動はすることはなく。 残された時間を、ただの大学生として満喫した。
研究室の皆と悔いなく過ごせるように 以前よりもイベントごとに頻繁に出るようになったり、 時に大切な人に好んだ菓子をねだる我儘を見せたり。
それがバレンタインデーのことだったので、 ホワイトデーにはネクタイとネクタイピンを贈ったり。
飛行機の窓から見た遠のく景色に切なさはあったが、 ただの高祈成海として、幸せに生きたつもりだ。]
(532) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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── 後日談 ──
卒業おめでとうございます、徳人君
……君に会える日を、楽しみにしているから
[いつもメッセージのやり取りをしているけれど。 大切な日の祝福は、通話で行った。
そこに籠められた意味は、 徳人のこれからによって違うだろう。
彼が就職活動に入る頃、意思を確かめる連絡をした。
もし希望する仕事が他に存在するわけでは無かった場合は 改めて願ったことだろう。 ──名実共に、自分の側にいてほしいと。]
(533) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[ホールディングスを構成するのは 実際の経営、販売を行ういくつかの事業会社。 そして、それらを傘下に置いた持株会社。 前者をそれぞれ連携させる役目と経理、法務を後者が担うのだ。
持株会社はそれぞれの事業会社の社員が出向し働き 明確に在籍する者は極わずかである。
成海もまた、将来移る為にも経験が必要な為 創設者兼持株会社のトップの嫡男ではあるが 事業会社に在籍している。
高祈の発祥たる不動産開発、最も大きな子会社だ。 海外事業にも進出しており、 語学に堪能な社員は国内滞在でも求められる存在だろう。
明らかに父の手を加えられながら、成海は数年で出世していった。 もし徳人が入社することとなれば上司と部下という存在になる。]
(534) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[意に反した大学に進学し一時でも手を離れた息子を 高祈氏は何ら意に介さず迎え入れ、育てている。
その程度の想定外は彼にとって何ら問題ではなかった。 従順に用意した通りの道を踏んでいく姿に、 漸く役に立つ存在になりつつある駒に、満足していた。
長男のほうがずっと優秀だった。 だが構わない。あれは気性が激しすぎた。
己以外は真に信用し頼ることはない高祈氏は 外に出しても恥にはならない程度の資質があり、 意志が無く言うことを聞く次男がいれば 少しの不満も無かったのだ。
海を隔てた遠い地で起きた非現実的事象、 その結果起きた駒の内質の変貌など、 自分がそうした分だけ信用されなかった父には 全く知る由もない、理不尽ですらある話だったが──]
(535) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[──彼は息子の卒業から八年で玉座より下ろされる。
かつてこの市を長らく揺るがした 開発を巡る市議会議員との対立の結末すらも 裏金による茶番だ、などと。
そこから得た繋がりによる不正な土地取引、 暴力団関係者を利用した同業への圧力。 数多の賄賂、資金洗浄の手口。
高祈ホールディングスは 瞬く間に望まぬ形で全国区の知名度を得て注目と批判を浴びる。]
(536) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[マスコミ各社への情報提供は、揉み消しを困難とした。 証拠は容易な否定の叶わない程に揃っていた。 まるで、内部の内部、核の部分にいる者が集めたかのように。
不正取引に関して証言を行った子会社の告発者達の情報は、 徹底して伏せられたが。 それらの説得やマスコミへの働きかけと 一人で派手に動きすぎていた首謀者が ──高祈成海であるという衝撃的事実は突き止められる。
しかし最初からそのつもりだったという風に 当人は堂々と、影響下に無い地域の弁護士と共に会見を行った。
未だ社会人としては若く、 前髪を分けたミディアムヘアの──誰かの面影を宿す 華やかではないが涼し気な容姿。 そして巨悪であった上流階級の父への造反を成したとなれば 「高祈のプリンス」「悪王へのクーデター」 などと話題性を求めるメディアが過剰に持ち上げるのは当然だった。]
(537) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[息子の精神の病の捏造、 天原氏と対立する市議会議員との繋がりがあるという主張。
高祈氏は意志が無い筈の息子の裏切りへの衝撃の中、 分が悪い状態で出来る限りの抵抗はしていたが 会社に強制的な調査が踏み込まれれば、終わりだった。
事前に察知していれば揉み消すことが出来ただろう。 息子を監禁したり抹消することも厭わなかっただろう。 しかしその冷淡さと権力が、 懐のネズミを飼いならした気でいた侮りにより機能しなかった。
警察保護下でホテルに滞在していた高祈成海は 己が父、親戚、多くの幹部陣の逮捕を 彼らによって知らされることとなる。]
(538) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[そうして成海は 高祈に関係する人々の人生を、滅茶苦茶にした。
メディアすらも決して称賛一色ではない。 父が残した疑惑を真実ではないかと疑う者、 甘い蜜を吸って生きてきた子が親を裏切ったことを 真っ白な正義としてはならないのではと語る者。 コメンテーターや出演者も一枚岩ではない。
そんなものは生易しいほうだろう。 面白がりあれこれ陰謀を語るインターネットの匿名達も。
一体何人に殺してやりたいと思われているのか 本人にすらも、想像がつかない。]
(539) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[しかし高祈成海は、今もホールディングスにいる。 事業会社から持株会社へと籍は移ったが。
内部告発を理由に解雇出来ない法律の都合上、 一度ライバル会社への意図的な情報漏洩という冤罪を理由に退職させられていたもののそうした事実は確認されなかった。
結果、父の代わりにその座についたある種哀れな立場の 裏の事柄には関わらせてもらえていなかったらしき、元幹部陣に呼び戻されることとなった。 空きすぎた重役の席、成海は現在その男の殆ど右腕のような立場だ。
膿を排出しようとも、多大な信頼を失い いくつかの子会社が潰れ、事業が閉鎖された。 しかし全てが砂と化すにはホールディングスは大きすぎる。
仕立て上げられた英雄がこの事態の原因であっても、 民衆へのアピールには最適だった。]
(540) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[目的の為に早々にこちらでも一人暮らしをし 少しづつあらゆるものの名義を自分へと変えていった。
もう既に思い入れが薄れつつあるが、 生まれ育った実家はやがて別の誰かの物となるだろう。 現在は好奇の目が多く、住むには適さないけど。
雷門氏の作品はその孫があの時望んだ形になるように取り計らった。 それがどんな答えであれ、祖父を敬い同じ道に進み誰より想いと価値を理解しているだろう彼の選んだものに間違いがあるとは思えない。
母親は精神的な負担のせいか病気が悪化し、病院にいる。 ……今後の警察の調べによっては、彼女も何らかの罪に問われる可能性がある。 その控えめさと従順さにより、夫の行いを誰より近くから見た上で良しとしてきたが為に。]
(541) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[長かった戦いの日々を想う。 窓からは初夏の心地よい風が吹き込んでくる。
こうしていると何もかもがあの日から変わった気がした。 けれど、ずっと側にあったものもある。
新しく移り住んだマンションの最上階で 高祈成海はスマホを手に取った。]
(542) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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……ああ、徳人君。今いい?
暫く連絡出来なくてごめん 漸く落ち着いてきたから、声が聞きたくて
うん、終わったよ。全部終わったんだ。 色々心配掛けたよね、……すまない。
それでなんだけど 引っ越しが済んだからさ、会えないかな? ちょっとまだ気軽には外に出れないんだ
うちに来てほしい、場所は──
(543) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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|
[厳重なセキュリティは 望まれた来訪者には当然、意味を成さない。
迎え入れた青年は、もうすっかり大人の姿。 いつかダイニングバーでそうしたように 二人テーブルを挟んで向き合った。
そこには品なんて無くたっていい。
いつか好きだと言っていた唐揚げを沢山並べて 昼間から度数の低いアルコールを出して まるで大学生のままみたいな食事をしよう。 本当は少しだけ、油ものがきつくなりつつあるけど。]
(544) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[元より互いが社会人 本格的に動き出して以降は、中々会えなくなった。 だからこうしていられるのが本当に嬉しくて。
数多の代償を積み上げた先の未来なのに、 この数年間を語りながら幸せそうな顔で喜んでしまった。
やっぱり冷たくて、自分のことばかり考えているのかも。 いや、それは間違いか。何故ならば──]
(545) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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|
[料理がすっかり綺麗に無くなった頃。
待っているように告げて一度別の部屋に向かった成海は、 腕にあるものを抱えて
──夏の海が見える大きな窓の前 テーブル席に座る徳人の側へと向かい
少し照れたように微笑みながら、それを差し出した。]
(546) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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[徳人が男性が好きという話は聞いたことが無かった。
けれど、何度も未来を望みあって描きあった 二人で時間を惜しむように思い出を作った。 ……深い覚悟を持って、ついてきてくれた。
そんな相手に今更、性別の心配はしない。 気掛かりとすれば彼の父と重なる自分を、信じてくれるかどうかだ。 その為に長い時間待たせて何も縛られなくなり、漸く言えるようになったつもりだけど。]
(547) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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今まで本当に沢山、君は俺に付き合ってくれた 卒業してからは特に、不安にさせたこともあったと思う
だから指輪は二人で選びたいと思うんだ ……これからの人生は、 そうやって全てを一緒に決めていこう
[もし、もし 一つ段階を飛ばした高祈成海なりのプロポーズに ただ一人愛せたその人が、頷いてくれるのならば
微笑みを一度驚きに変えて、不格好に笑い直し 別れを覚悟したあの日ぶりに抱き締めてそう語っただろう。*]
(548) ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時頃
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至高祈念展 ナルミは、メモを貼った。
ガラシア 2023/08/11(Fri) 03時半頃
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── 冬/高祈邸 ──
[骨谷平太朗を迎えた北の大地は、厳しい寒さと白に包まれていた。
あれは彼から予定を聞き、調整や計画を始めた頃だろうか。 立ち位置こそ正反対ではあるが他人との生活環境の違いには進学当初困った記憶がある成海は、互いの縁を知った頃に服について骨谷が触れていたのを覚えていた。
少しでも助けになれたらと、持て余さず過度な金銭的負担にならない範囲で骨谷の卒業後も使えるような服を探して連れ立ったのだ。>>501
買ってあげても良かったのだけど、きっと恐縮するだろうし こちらも自分の生活に用いる全てが親の金であることを意識するようになった頃だった。]
(592) ガラシア 2023/08/11(Fri) 21時半頃
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[しかしそれは、相応しく整える手助けになっただけで 伸びっぱなしの背筋から力を抜かせてあげるには、もっと違う行いや言葉が必要だったのか。はたまた無理な話だったか……。>>500
真実を教えないままで彼に詫びさせてしまい、罪悪感を覚えながら丁重に受け取らせていただいた菓子。>>502 何度か見た記憶のある店のもので、服とは違うところで無理をしたのではと少し心配した。 その思考はおくびにも出さず骨谷の親の気遣いを知ることもなく、目的の花器の元へと彼を導いた。]
(593) ガラシア 2023/08/11(Fri) 21時半頃
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[どうやら本物かどうかの確認に入ったらしい。 意識が逸れないよう、沈黙し様子を見る。
骨谷の様子は女性に頬を張られては現れる普段からは別人のように真剣に見える。きっと彼と自分では同じ作品を見ても目に映っているものが違うのだろう。>>504
この家で育った為に身の回りには常に、父の趣味の格式高い調度品や芸術品が揃っていたけれど 勿論それだけで細かな筆遣いや作品の輪郭などから真贋を見分ける術を持つことは出来ない。 海を超える程の情熱だ。祖父の作品は特別なのかもしれないとも思うが。]
(594) ガラシア 2023/08/11(Fri) 21時半頃
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そこまで心を動かしたのなら、連れてきた甲斐もある
[気づけばその眼差しは真剣というよりは、思慕に似た熱を宿しているような……。>>505 明確な同一ではなくとも、陶芸という道の先を征く巨匠たる血縁。その遺作をそんなにも想えるなら素晴らしいことだろう。
静かに穏やかに返す声に、身内を賛することへの呆れなど無く。 生きていたからこそ見れた、後輩の満たされゆく姿を見守って。 だからこそこれからについて、考えてしまって 頃合いを見計らいより近くへと詰めた距離、耳元に囁きを落とした。
若き芸術家の感嘆にも先程のように声を返すことはせず>>549 向き合う瞳に探ることも許さない黒が、じっと迷う青年の姿を見つめていた。]
(595) ガラシア 2023/08/11(Fri) 21時半頃
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なるほど、君らしい答えだ
身内としての感情ではなく 芸術家としてその相応しい居場所を求める。
うん、きっとそれが正解なのだろうね。 ……変な質問に答えてくれて、ありがとう
[小さく頭を下げたのならば、いつも通りの高祈先輩へ。>>550
使用人が踏み入ったのは入室した当初のみ、著名な芸術家の血を引く青年の邪魔をしないよう言いつけられている筈。 断りには快く頷いて再び黙した。 響くシャッター音がどれ程続こうと、咎めるものはいない。]
(596) ガラシア 2023/08/11(Fri) 21時半頃
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[初めて約束を結んだ時は、未だ成海は父の意志無き駒だった。
心境変化と未来の見定めにより問いを向けることになったが、元は類稀な縁で繋がった後輩の願いを純粋に叶えたかっただけ。]
気にしなくてもいいんだよ でも俺にも作ってくれる筈だったよね、カップ それには期待させてもらおうか
[開かれたスケッチブックを疑問には思わない 夢から醒めた当初のメッセージを今も覚えている。>>551
死んだ自分に彼の思うままに造られた作品が捧げられる、それが本来望んでいた形だったけれど もう惜しいとは、思わなかった。]
(597) ガラシア 2023/08/11(Fri) 21時半頃
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……そうだね、仲睦まじい新郎新婦の邪魔をしてはならない それは彼等にこそ似合うデザインだ
[回谷と大藤、誰もが忘れられない二つの名前。図案を見せてもらってから、少し遠くを眺める。>>552
慎ましい愛を表現したペアに、類似したもう一作は不要だ。 ──成海は大藤の片羽根ではないのだから。 静かに首を横に振り、僅かに空いた思考の間。]
海が良いな 明るく照らされて輝いている、真夏の海
残念ながら君は冬に来てしまったけれど 中々綺麗なものなんだよ、この辺りのそれは
[語るのは、去りし者への憂いなど無い微笑み。 対話を終えて彼を送るまで、その様子は変わらなかっただろう。
この地の景色が、彼が一人一人を想い造り上げる作品が 芸術家骨谷平太朗の未来の礎となることを祈った。*]
(598) ガラシア 2023/08/11(Fri) 21時半頃
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── 大切な日 ──
ふふ、元気だなぁ 少しも疲れてなさそうだね?
[自分だけが言葉を交わすことを望んでいたわけじゃない それがはっきりと分かるのが嬉しかった。>>559
その様子が可愛らしいというように、笑い混じりで誂う声。 就職先について話をした時の真剣な様子は、今はまるで嘘のようだ。
彼を信じ成長を見てきた成海は、口添えなどしなかった。 もし叶わなくてもそれだけで縁が途切れるわけじゃない。 しかし結果的に見事に内定を勝ち取ったのだから、その報告を聞いた時の喜びもひとしおだった。
より大きく広がっていこうとする高祈には、最適な人材だったのだろう。]
(599) ガラシア 2023/08/11(Fri) 23時頃
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[一般的な同種企業がどうなのかまでは知らないが 成海と共に徳人が働くこととなる職場は、 不動産による家賃収入は許される範囲であった。>>560
そうした細かな話にも付き合ったのは 慣れない土地に来てくれる徳人を想ってのことだが
新居探しでやって来た彼に会った時は、 大学の頃のように側にいられるのが嬉しかった記憶。 ……恐らくそれが下心というやつなのだと、 未知の感情を理解していく段階の一つになった。
初めて呼び方が変わった時、 涼しい様子を保つことが出来なかったのも、
もうすぐ会えるというのに 電話を切るのを惜しんでしまった気持ちも、きっと。]
(600) ガラシア 2023/08/11(Fri) 23時頃
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[──それで言えば、学生時代のバレンタインも
本当にただの先輩なら不適切かもしれないおねだりを きちんとした事も告げられずにした成海に 快く受け入れ当日明るく渡してくれた姿に>>583
後ろめたいものを感じる一方で、 ああこの人とずっと一緒にいたいと なんだか胸の奥で熱くなるものを覚えていた。
声にならない意味を籠めた春のお返しは 将来役に立つ物には違いなかったけれど狡かったと思う。
しかし勘違いではなかったとしたら、 先にそれをしたのは彼のほうだろう。
スイートポテトの優しい味に対し、 チョコレートキャンディは ……どうしてかとても、甘美だった。]
(601) ガラシア 2023/08/11(Fri) 23時頃
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[新入社員になった彼は日々立派に変わってゆき>>562 それと共に、造反を成す日も近づいていった。
慣れてきた頃に、 海外との過去の取引の原文翻訳を頼んだことがあったが、 多大な量ではなく、それ以外の形では関わらせなかっただろう。 成海の立場だからこそ得られる情報が多いのもあり、 心配だったこともある。 しかしただ仕事を精一杯頑張ってくれるだけでも、 業務をこなしながら裏で動く成海の負担の軽減になっていた。
義務を教えられて生きてきた成海には、 支配から脱却を望むようになってもやはり、 努力する様子は尊く眩しいものに思える。
上司と部下の仮面を着けたまま、 職場で飲みの席で労うことが時折あった。 募っていく感情を押し隠すのは、なんとも大変だったけど。 彼に何かがあってはならず、二人の未来を邪魔するものが現れるのも避けたかった。]
(602) ガラシア 2023/08/11(Fri) 23時頃
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── それから ──
[高祈の中で最も大きな子会社は、 幹部に入れ替わりが発生しつつも経営が続いた。>>566
ただし成海はホールディングス復活の象徴化される為に 元通りに帰ることは出来ず、持株会社へ移った。
持株会社で働くのは多くが子会社で経験を積んだ者だ。 徳人が仕事を続ければ再び同じ職場になるかもしれないし、 子会社同士を繋ぐ役割上顔を合わせることもあるだろう。
余りに忙しなく身の危険も感じる日々には、 酒を酌み交わし相手の前だからこそつい限度を超えた二人どちらも泣いてしまって、後日笑い話とした思い出があるあの部屋にも通えなくなって 今この時彼の身に何かが起きていたらなどと、憂いてしまう瞬間もあったけれど。
同じ気持ちでいたと分かった瞬間、全て報われた気持ちになったのだから。感情とは不思議なものだ。>>567]
(603) ガラシア 2023/08/11(Fri) 23時頃
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[そんな相手の他に愛せる存在などいるだろうか?
二人の想いは一瞬で熱烈に燃え上がりすぐ分かち合ったようなものではなく、きっと別の形でも共に居られれば幸せだった。 緩やかに育まれた感情は、いつどの時決定的に芽を出したのかと聞かれても定かではない。
そうした感情以外の側面でも、今でも彼が大切だ。 唯一無二の対象、その性別などどうだっていい。 男性だったから男性としての格好良さ頼もしさも好ましく思っているだけのこと。 何も語らないまま密接な関係を続けてくれた彼も、きっと同じなのだろうと言う思考が思い上がりではないと良いのだが。>>571
けれど悲しい現実から引き離した時のように手を繫いで生きたかった。 忘れぬように抱き締めた温度に、何度だって触れたかった。 無価値な存在の生に意味を注ぐ言葉は眩ゆかった。
──仮定の死者として呪いを吹き込もうとした時、きっと確かな執着が存在していた。
長らく温めても腐らなかった初恋。 驚いた様子、変わりなく頼もしい冷静な言葉、綻んだ表情。>>571>>-808>>572 ……その一つ一つが愛おしい。]
(604) ガラシア 2023/08/11(Fri) 23時頃
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……俺は徳人君一筋だったよ?
[君もでしょうと、困惑する様子に目を丸くした。>>573
恋人というのはつまり人生の相手を定める前のお試し期間。 そんな不誠実なことはしないし、 何より二人に必要とは思えない……というのが成海の考えだ。
彼が理解し、受け入れる姿勢を示してくれたので 生い立ちに関わる思考の跳躍は置き去りに 愛する人をその身体で、抱き締めた。]
(605) ガラシア 2023/08/11(Fri) 23時頃
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[誰がなんと言おうと、 彼が受け入れるのならばこれが正しい選択だ。 君が厭うかもしれない花言葉に、想いを込めた。 けれど縛る何もかもを切り捨てた身は、己の口でも告げる事ができた。
──ずっとこうしたかった。
今でもあの日々を覚えていると語るような姿で応じ、自分が好んだスイートポテトを持参してくれた。>>568 何もかも他人事だった日々には感じ得なかった、感情の波の強い打ち寄せがそこにはあって。
祝福の場で見とれた姿を見慣れたものにした今>>569 けれどかつてのように語らい距離と隙間を埋めて ほんの少し無理をして食したスイートポテトが、ずっと欲しかった穏やかな幸せの味を感じさせてくれた後。>>570
まるで過去と現在、どちらの福原徳人も抱き締めているようだった。]
(606) ガラシア 2023/08/11(Fri) 23時頃
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[胸いっぱいの温かさ、感じる体温。 それらは夏場でも決して不愉快ではなく いつまでも感じていたいものだったけれど。
いつかと立場が逆転したような触れ合い>>574 10cmの差はほんの少しの努力で容易に互いを近づける。
その意味に気づかない程、 愛する人と結ばれて尚恥じらう程、 子供の心を持っているわけではない。
回った腕は淡く繊細な色を宿した髪に触れる。 二人の唇が重なった瞬間、 吹き込んだ夏の風が白いカーテンを乱した。
二つの別れを経験した季節。 その傷を抱えたまま、幸せも積み重ねて どんなことがあっても、この人と最期まで生きようと決めた。*]
(607) ガラシア 2023/08/11(Fri) 23時頃
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