31 私を■したあなたたちへ
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あ……。 あの船がそう? 思ったより随分早く、 …。
[島に閉じ込められたことに 特に不都合も不便もない。 どことなく、夢の終わりが近づいているような 残念そうな声になってしまう。]
灰羅さんは、 この後、どうしますの?
[遥か向こうの点から、すぐ目の前のひとへ。 先延ばしにしていた問いを向けた。*]
(389) azure_blue 2023/11/27(Mon) 22時半頃
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―― 観覧車 ――
後始末……
[大々的に救援を呼んだことが 外部にどう受け止められるかという危惧はあった。 孤島での数日間が彼等――彼に、不利益を齎すのではと。 説明を付けられる用意があるのなら 全て任せるしかないのだけれど。]
…… 口裏は合わせるつもりです。 灰羅さんにも、キラ様にも。
私に出来ること、なにか他にあったら 遠慮なく言ってください。
[危ない事はしないと約束してくれているから。 彼の返答には、ゆっくりと頷きを返す。>>392]
(440) azure_blue 2023/11/28(Tue) 07時頃
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[遠く眼下に見えるキラキラとした夢世界。 救援が来て、遊園地を後にして島を出たなら ゆるやかに現実に戻ってゆくのだろう。
一歩踏み出せば夢は終わる。 きっともう、会うこともないのだろうなと。 そう、どこかで思っていた。]
……… え
[だから、灰羅さんの言葉の意味が 私にはすぐには飲み込みきれなくて。 彼が捉えた私の瞳は、どこか呆けたような 色をしていたかもしれない]
(441) azure_blue 2023/11/28(Tue) 07時半頃
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……っ、
[私の反応を待たず連ねられる言葉に 明確な彼の意志を見取り、瞳が揺らいだ。 彼の声は、穏やかな海に白波を立てる強風の如く 無意識に遠い世界に境界を引くことで 一時の凪を得ていたこの心にまで小波を立てる。]
私、 は ……
[腕を取る彼の手が、大きくて、熱くて。 何か口にしなければと思うのに、 声がまともに出てこない。 泣き出しそうな心地ですらあった。
心彷徨わぬように繋ぎ止めるこの手に 重ねても良いのだろうか。僅か先の未来を。]
(442) azure_blue 2023/11/28(Tue) 07時半頃
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………あと数時間で、 忘れる準備を していたの。 たぶん、無意識に。 ………でも、
[一歩でも近づこうと、シートに浅く腰掛け直す。 我彼の距離はそれでも意外と遠く感じられて 意を決したように腰を浮かせると、彼の隣へ。
ゴンドラは僅かに傾いてしまうだろうか、 この数日間で、揺れて傾き続けた私の天秤のように。
そうして、そっと肩に額を預けた。]
(443) azure_blue 2023/11/28(Tue) 07時半頃
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私も、また、あなたに会いたい。
のぞみは出来る限りで叶えてあげたいし ……応急手当が必要な時は、できたら頼ってほしい。
………ふしぎね。
[たった数日で、こんな気持ちを抱くことが あるなんて思ってもいなかった。ぽつりと呟く]
もっと深くまで、あなたを知りたい。
[空に二人きり。 誰に聞こえているはずもないのに 囁くほどにまで声を落とし伝えるのは――『是』。]
(444) azure_blue 2023/11/28(Tue) 08時頃
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教えてくれる?
[私の腕を取るその手に、 もう片方の掌を重ね置いた その意図が伝わるだろうか。
寄り添う身体を少し離して僅かに目を上げれば きっと、視線は再び交わって。小さく微笑む。*]
(445) azure_blue 2023/11/28(Tue) 08時頃
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[キラ様のことも、元より口外する心算はない。 彼等を取り巻く事情についても、 私は良くは知らないために、静かに首肯した。
私に課されるものがあるとすれば、 無断欠勤への学校への説明義務だけ。 救援要請が発されていたことを加味すれば 必要以上に責を負うこともないだろうから。 大丈夫ですと首を振ってみせただろう。]
(474) azure_blue 2023/11/28(Tue) 14時半頃
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………そうなの? あんなに 余裕そうに見えていたのに。
[顰めた声で、くすくすと。 内緒話でもするかのように、笑う。 昨夜。空っぽだと切実な響きを以てして 彼が口にしたその箇所にも、 叶うならそっと指先を添えて、するりと撫でた。]
(475) azure_blue 2023/11/28(Tue) 15時頃
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[いつの間にか天辺を越えたのだろう。 彼の腕に引き寄せられた瞬間、その肩越しに 陽を受けた水面が白く輝くのを見る。]
―――…
[近づく顔が重なる前に、そっと瞳を閉じた。 高度を下げるゴンドラ、身も心も 空に居られる時間はあとわずか。 短い間に、繋がった箇所から どれほどのものが伝えられたことか。]
(476) azure_blue 2023/11/28(Tue) 15時頃
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――――― ―――――
……涼しい。
[ゴンドラを降り、風に身を浸す。 夏の終わりの日差しは今日も変わらず、 けれど空の高さや雲の形は間違いなく 季節の移り変わりを示している。
彼は先に降りただろうか、後に続いたか、 ふと思い出したように、その顔を見上げて]
(477) azure_blue 2023/11/28(Tue) 15時頃
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……そうそう。 わたし、『密星 偲風』と申しますの。
以後お見知りおきを?
[敢えてなのか、口にしたくないのか。 嬢ちゃんだのアンタだの呼ばれていたこと 忘れてはいないのだ、と、ふふりと笑った。*]
(478) azure_blue 2023/11/28(Tue) 15時頃
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―― それから ――
[救援により銀島での一件は幕を下ろし、 きっと各々、ゆるやかに日常に戻って行ったのだろう。 ギャラクシーランドのカプセルトイの景品たちが コスプレ写真とともに保健室常連の女生徒達に 好評を博したくらいで、私も何も変わりはしない。
少し違うのは、携帯端末に何件か 招待客だった面々の連絡先が増えたことと。 『彼』に逢うための外出が増えたこと。 相手の多忙を縫っての予定だから、 そう頻度が高くはなかったかもしれないけれど 出来る限りで時間を作り、逢うようにはしていた。]
(505) azure_blue 2023/11/28(Tue) 21時頃
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―― 秋の銀島 ――
[クリスマスローズの種子は、 本来はポットに蒔いて植え付けを行うものらしい。 地植えをするなら、この時期までに蒔いて 二月から三月にかけて、植えたい場所に株を植えこむ。
ただ、銀島は船で渡る場所で、 居住地からの利便性も良くはない。 直接蒔いて、現地のモナリザにある程度を任せ 時折様子を見に来ることにはなりそうだった。
その頃には、土地の権利書は巡り巡って 卯木店長の手に渡っていただろうか。 彼の手にまだそれがあるなら、彼に。 手を離れていたなら、その時の権利者に。 手続きをとって行き来することにはなるのだろう。 >>463>>495]
(506) azure_blue 2023/11/28(Tue) 21時頃
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クリスマスローズを植える場所は 真夏の間に、太陽が強く当たらない 半日陰の場所が良いのですって。 ――…繊細で控えめなお花なのね。
[るくあが好んだというこの花の花言葉が 『追憶』『私を忘れないで』『慰め』 『私の不安をとりのぞいてください』など 儚げで切ないものであること、 いつかの折に彼にも話しただろうか。]
できれば、島の出入り口にも植えたいんです。 成長すると、こんもりとしてお花をたくさんつけるから 並べて植えると絵になって素敵かしら って。
それに、この島に降りてすぐに るくあちゃんに迎えて貰えている気持ちになれそうだから。
(507) azure_blue 2023/11/28(Tue) 21時半頃
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[大体の場所は、最終日に選定してあった。 そこに加えて、彼女の遺灰が多く蒔かれた場所へも。
さらには大観覧車の近くにも。 黒須くん――キャンディちゃんと名乗っていた彼が あの日助け出された場所でもある。>>500>>501
アポロで連絡をしたことがあったとはいえ、 救援直前のその時が初対面になってしまった 彼の事情は私には知り得るはずもなかった。 ただ、灰羅さんを始めとして、彼を知る人々から 黒須くんを含め、るくあを取り巻く人間事情の 一端でも聞くことが出来ていたら―――
そこにるくあの花を植えることで 失われた魂への慰めにならないかと考えて。]
(508) azure_blue 2023/11/28(Tue) 21時半頃
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[半日近くの時間は要したけれど、 スムーズに種植えを終えることができて ほっと安堵の息を吐いて胸を撫で下ろす。 一人では難しかった、と、微笑み湛えた礼とともに 傍らの人を振り仰いで。]
…… うん ……これで大体完了、ですね。 手伝ってくださって、ありがとう。
丈夫に育って、綺麗な花を見せてくれますように。 花盛りを迎えるまでにはまだ数年かかるんですって。
また定期的に、様子を見に来られたらと思うわ。
[土の上をそっと撫で、植えたばかりのこの種子たちが 純白や薄桃の花弁を花開かせる日へと思い馳せた。**]
(509) azure_blue 2023/11/28(Tue) 21時半頃
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―― 銀島への再渡航前日 ――
……灰羅さん。 今日もお疲れ様。
ええ、来週の土日を使う予定で――… そうなの?じゃあ、港で待ってます。 種はとってもいいものが手に入ったの。 土はあらかじめ島に発送しておきました。
あとは、…なにかあったかしら……?
[予定確認の何気ない通話にも ついつい表情が綻んでしまう。]
(529) azure_blue 2023/11/28(Tue) 23時頃
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…………うん。 私も、寝る前にあなたの声が聞けて良かった。
[声を聞けば幸せで。 名を呼ばれれば鼓動が早まって。 抱き締められると、私の最奥が ほわほわと温まる心地になる。
多忙な彼だ。 長話になってしまってはいけないと思うのに ついつい、通話を長引かせて。 得難いものを得ていることに、瞳を細めた。]
(530) azure_blue 2023/11/28(Tue) 23時頃
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