10 冷たい校舎村9
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……どっちがしたいんだよ、おまえはさ。
[ 思わず、少し笑って聞き返してた。 少し性格の悪い答え方になっちゃうけど、 慎一はまだどう踏み込めばいいのかわからない。 今までそんなことしてこなかったからさ。]
(+101) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ でも、そうだなあ。 何も話したいことがないわけじゃないんだ。 だから慎一は一瞬おいて、ゆっくり口を開く。]
……俺はなー、 レンってすごいやつだったんだなーって、 まさに今。そういうこと考えてたとこ。
[ これはふつーの話だと思う? それともまじめな話? どう思う?
行く当てもないから、ゆっくり歩いて、 いつもより少しゆっくりと言葉を吐き出す。]
(+102) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ ふつーでもまじめでも、どっちでもよくて、 ただその顔見てたら、口に出したくなっただけ。
どうだろう。慎一は静かに笑ってる。 「もう少し話す」のに相応しい話題だっただろうか。*]
(+103) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ じっと、その深い色の目を見てた。>>+86]
(+123) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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── 少し前・病院内 ──
[ ……なんか楽しそう。って、 うっかり言ったりはしなかった。
ただ、短く返された言葉を拾って、 「そう見えた」……そっかあ。
「人のことよく見てるんだね」とは、 そのとき、綿見には言わなかった。
同族嫌悪という言葉が浮かぶことは、 慎一の中ではついぞなかったが、 それでも、慎一も考えたわけだ。]
(+124) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[ たとえば。腹の奥底に飼うむなしさの話。 慎一に深く根付いて吐き出せないそれを、 あるいは似たものを内側に抱えてるなら、 やっぱり、慎一は「よかったね」と思う。]
……あはは、 じゃあ、似たようなもんだなあ。 少しだけでも、綿見が、 身軽になれたんならよかった。
[ それともたまには、あのときみたく、 「むなしいね」って言い合ってみる? ……そんな日が来ないのが一番だけどさ。]
(+125) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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破裂する前によろしく。 ……やさしく、な?
[ そんなこと言われたって怖いものは怖い。>>+88
いくら似たものを抱えていたって、 きっと慎一と君じゃあ怖いものは違う。
結局のところ互いに何を飼っていたのか、 その形そのものは知らないまんま、 慎一は綿見と番代に手を振って立ち去った。
お礼≠ニついで≠買うために。*]
(+126) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[ それで今、缶飲料を抱えて、 12月の冷えた空気の中にいる。]
(+127) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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── 現在・病院外 ──
……うれしいんだ、へえー。
[ わいわいと騒がしく言うやつがあったから、 慎一はわざとらしくよろめいて笑った。>>+116
いつものおふざけみたいなノリに、 慎一も同じように笑っていたけれど、
半信半疑であったなら仕方がない。 世界と同化する説なんてちっとも知らず、 悪い気分じゃないから慎一は笑ってる。]
(+128) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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……男前だよ、 その傷がなけりゃな。
[ すっかりあいた片手で、 デコピンのひとつでもしてやろうか。 もちろん、傷のとこは避けるからさ。
別にあながち冗談ってわけでもないから、 鳩羽憐に春が訪れない理由を論ずる会なら、 後日別途開催してもいい。喜んで参加する。
返ってきたどっちつかずの返答に、>>+119 慎一はへらりと笑って言っただろう。]
(+129) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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おまえがどうしたいか、 聞いてみたいと思ったのに。
[ やっと思ったんだけどな。 冗談みたいに軽い口調でね。
去ったあとでの校舎の出来事。 当たり前なんだけど、慎一は知らない。 なんかうれしそうだなあって、>>+119 不思議にさえ思いながら、また一歩歩いて。 コーラを右手に左手に持ち替えたりして。
だから、いつものどおりならさ、 適当にじゃれあうような話、 このままずうっとしててもよかった。 それでも慎一はきっと楽しい。]
(+130) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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[ でも、ほら。せっかくの機会だ。 勢いがいいなあって思ったし、>>+120 慎一は一瞬驚いたけど、聞くなら答えるよ。]
いっつも笑ってるとこ。 こっちがつられて笑っちゃうくらいに。
人前で機嫌よく振舞えるとこ。 ヤな顔もせず人に手ぇ貸せるとこ。
相手の「してほしいこと」ばっかり、 うんうん考えて、しまいに叫びだすとこ。 ……そいつの顔もわかんねえのに。
[ 「まだいる?」って慎一は笑った。まだあるよ。 いっこも嘘じゃない。こっちもそんな顔してる。]
(+131) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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……どっちがすごいとか、 どっちのががんばってるとか、 言い合ったって、不毛だって。 素直に褒められとけって。
[ 本心だったのかもしれない。 あるいは励ましだったのかも。>>+121
だけど今だけは、 その屈託のない笑顔が刺さるなあ。
「すごく頑張ってる」って、 何を指して言ってるんだろう。]
(+132) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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……がんばってるよ、俺も。 みんな何かしらがんばってんだろ。
[ ぶりかえしたように、喉元が痛痒くて、 あいているほうの手でセーターの襟元、 なんとなくいじってみたりもするけれど。
「苦しい?」投げかけられた問いに、 慎一は一瞬たじろいで──、人形かな。それとも? なんでそれを聞かれたか、考えたりもする。
おもしろがるんでもない、 ただまっすぐな目が、こっちを見てる。>>+122]
(+133) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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……苦しかったよ。
今は──、少しマシ。 今は夜で、ここは静かで、 目の前におまえしかいないから。
なあ、それ。俺の人形見たから聞いてる?
[ 「俺、そんなにひどかった?」って、 慎一は苦笑してもうひとつ質問を挟んだ。
嫌とか怒ってるとか、そうじゃなくて、 ただ、これでも慎一は隠してたつもりだったから。 ことごとくバレてるなあって自分に呆れただけ。]
(+134) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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[ だからちょっと諦めたみたいに、 慎一は笑いながらその話をしている。 自分の話。うまく説明もできないから、 他人にする気のなかった話の断片。]
……心配してくれてんなら、 マジで、あんまり気にしないで。 なんていうか──、そういうもんだから。 たぶん、ちょっと脆いんだよね。俺って。 別に、悪者がいるような話でもないし。
どっちかっていうと、そんな傷作ってくる、 おまえがどうしたんだって聞きたいくらい。
[ 後半部分は大まじめにね。前半もまじめだけど。 笑みを引っ込めて心配そうな目を向けていた。**]
(+135) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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── 現在・病院外 ── ダメとは言ってねーだろ。 俺もうれしかったよ。……うん。 ただ、ちょっと驚いた。うん。 [ 自分で言いながら納得するように、 慎一はうんうんうなずいていた。>>+136 たぶん、慎一もわかりやすい方だろうけど、 鳩羽の背後にはたまにしっぽが見える。 びゅんびゅん振れてるそれを見て、 驚いたとしても、ヤなはずがなかった。]
(+144) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ だから本当に、女子ってわからない。 本当にみんな残らず帰ってきて、 気兼ねなくうれしがれる時がきたら、 男子みんなで顔を寄せ合って話し合おうか。 女の子は秘密のお菓子パーティーをしたという。 男の子にもなにかがあってもいいだろう。 ……それで対抗できるのか? わからないけど。 しかし困った。 あいにく当方、春は在庫切れだなあ……。]
(+145) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ こんな話はまた今度でもいいね。
「知らなかった」と鳩羽は言う。>>+139 知らせようとしなかったのは慎一だ。] ……知ってもらう気なかったからね。 だってさ、変に気遣われると、 俺、変な奴みたいじゃん……そうなんだけど。 [ ちょっと言いづらそうな何かとか、 間のあいた相槌とか、そういうの全部、 なんだか少しもどかしかった。 モヤモヤさせたいんじゃないんだけど。 人との向き合い方がへたくそでごめんね。]
(+146) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ 教室に辿り着けなかった慎一は、 そのことを指摘されて笑う。>>+139] ああ、遠かったなあ……、 集まろうって言うくせにさ、 時間の決め方、すんげー雑で、 なんなんだよって思ってたの。 うれしいって、おまえ、 マジで人がいいというか……、 [ おかしなことを言うなあって思ってた。 なんていうか、再会の「うれしい」も、 今の「うれしい」もピンとこなくて、 慎一はただ、いいやつだなあって思って。]
(+147) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ ……思ってた。 「心配したい」と言われて、>>+141 人が良すぎるって思い始めるくらいには。] そーいうとこだよ。 すごいなっつってんの。 あれもこれも人のこと心配して、 全部知っても、疲れるじゃんか。 [ 少なくとも慎一にはできないソレ。 確かに、そういうことかもしれない。 みんなに優しい男はモテないって聞いた。]
(+148) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ そう。そういうふうに考えてて。 やたらと「うれしい」とか、 妙なやつだなあって思ったりもしたけど。 なんだか話の雲行きが妙だった。 というか、慎一からすると不思議だった。 「自分でやったの?」と眉をひそめて、 まじまじとその傷を見つめたりしながら、 鳩羽が息苦しさを語るのを聞いていた。>>+142 慎一の周りの人たちは思い切りがよくて困る。 黒沢も、炭蔵も、鳩羽もみんなそう。]
(+149) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ 礼を言われて、慎一は不思議だった。>>+143 「息が吸えた」と言われて、 「シンといたときは」と言われて。 慎一は一瞬、意味がわからなくて──、 それで、ぽかんとしていたんだけど、 だんだんと込み上げてくるのはなんだろう。 「うれしい」で合ってるかな。 たぶん、そのときやっと気づいたのだ。 友だち甲斐のないやつでごめんね。]
(+150) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ 「みんな」の中のひとりじゃなく、 たくさんいる中の友だちAでもなく、 どうやら鳩羽は慎一に言っているらしい。]
(+151) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ いつだって誰かの背を追いかけている気でいた。 みんなより遅れて、先をいく背中ばかり眺めて。 ひとりはさみしい。 慎一の視界からみんなが消えたらさみしい。 そう考えることはあっても、 前を向いて先を行く他人の視界に、 自分がなにかの意味を以て存在するなんて、 慎一はたぶん、想像したことがなかった。]
(+152) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ だから、あの世界に呼ばれてうれしかった。 少なくとも誰かの中に存在したんだと思えて。 「俺だったらどうする?」って聞かれて、>>2:364 同じように聞き返す気だって起きなかった。 慎一が消えて泣いたやつがいたなんて知ったら、 そりゃあもう、抱きしめちゃうだろうね。力一杯。]
(+153) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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……そっか。そっかあ。 [ へへ、みたいな笑いを堪えきれずに、 慎一はちょっと視線を泳がせていた。 少しだけでも、誰かにとって、 お荷物なだけじゃないなにかになれてたら、 慎一はうれしいよ。とてもうれしい。 「ありがと」と言われたら、 「どういたしまして」がお決まりだろうに、 どうも言うタイミングを逃してしまった。 代わりに、笑みを浮かべたまま口を開く。]
(+154) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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レンが他の奴にするみたいに、 当たり前みたいに接してくれて、 俺はさ、楽しかったよ。うれしかった。 人付き合い、苦手なのに、 そういうの憧れだったから。 息をするのが少しくらい大変でも、 俺、おまえとバカ騒ぎしてたかった。 でもさ、どっかで思ってたんだ。 俺にとっては特別なことでも、 レンからすれば当たり前なんだろうって。
(+155) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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……だから、なんかさ、 ああやってバカ話してるだけの日常が、 レンにとっても意味があったんなら、 なんか……よかった、……ありがと。 [ へらりと笑ってみたりするけれど、 これは何も上っ面の笑顔ってんじゃなく、 ただ、なんか力が抜けちゃっただけ。 これくらいはちゃんと立ち止まって言おう。 なぜか大事に抱えちゃってたコーラは、 たぶん、もうちょっと、いやだいぶぬるい。 だってこの寒い中、慎一は結構あたたかい。]
(+156) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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……なあ、また、 一緒にアイス食ったり、 昼飯食ったり……食ってばっかだな。 そういうふつーのこと、してくれる? レンがそうしたいときだけでいいよ。 深呼吸に疲れたときだけでもいい。 ……俺も疲れちゃったときは、 今日はパス! って言うかもしれないし。 [ 願わくばどちらか一方の望みとしてじゃなく、 そういうふうに続いていけたらいいって、 そんな大それた祈りを込めて、慎一は笑った。**]
(+157) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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