14 冷たい校舎村10
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[もうすぐ始業時間だというのに集まる人数はまだ少ない。 休校かどうかの真実を確かめに行った委員長はどうしていたか。
>>0:579夏見さんが言った、圏外という言葉。 それを耳にして、はて、と自分のスマホをいじる。 道中でチャットの通知が鳴り響いていたのはよく覚えているのだけど。]
……あ、俺も。
[いつの間にやら。 圏外という文字が浮かび上がっていて。]
(8) 2021/11/07(Sun) 00時半頃
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[それからバタバタと、人が増えたと思ったら、 チャイムの音が鳴り響く。
自分の席でスマホを片手に、それを聞いていた。 圏外の画面に、着信の表示が出てくるのを、見ていた。**]
(9) 2021/11/07(Sun) 00時半頃
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[クラスの女子たちのコミュニケーションを不思議そうに眺めた。
彼女たちは、友達相手にすぐ「好き」と言う。 何かあれば抱きしめ合って、嬉しさを共有し、悲しみを分かち合う。 冗談か本気か、デートしよう、結婚しよう、と軽く言う。]
(130) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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[俺とユイの間にはそんなことはない。
将来を誓い合った仲。 関係を確かめ合うのに言葉を交わす必要はない。
って、昔からずっと思っていた。 正しくは、錯覚していた。
なんでも俺の言うことに従い、逆らいもせず、 自分の好みを主張するでもなく、3歩引いた後ろを歩いて支えてくれる、 そんなユイの姿こそが理想の女性であるのだと。]
(131) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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[結婚とは、恋愛の末にするものではありません。 結ばれてから相手に慣れていくことを言うのです。
——父さんの部下が、いつか俺に言った言葉。]
(132) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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[黙って、スマホの画面に浮かぶ“遺書”を眺めていた。
心当たりなどない。 けれど、心の奥底で共感する気持ちが、無いわけではない。]
(133) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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……なんなんだよ。
[さっきから誰もが混乱している。 そんな音だけが耳にずっと入ってくる。
こういう時は冷静に現状を確かめるのに限る。 俺だって全然何も分かっていないのに、 >>47我らが委員長から齎された報告はとても完璧で、 座ってそれをただ聞くだけでいた。
電話がつながらない。 そんなことあるか?と、試しに自宅にかけてみたが、 繋がる気配はまるでなくて、いよいよ非現実じみてきた。]
(134) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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…………はぁ。ったく。
[らしくない雑な溜息。 この異常事態に慌てて、叫んで、慰めて、立ち直る、 女子たちのコミュニケーションをただ見ていた。
彼女たちの反応は至極当然なので文句があるわけでもない。 ただ、少し心の疲れに響いた気がした。]
帰れるんなら帰ったほうがいいよな。 俺もうちょっと様子見とく。 他に誰か来るかもしれない。
[>>110黒板に書かれる力強い帰宅宣言に目をやり、 クラスから散り散りになるみんなを眺めながら、俺はまだ教室に残る意思表示。*]
(135) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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[さて、教室に残りながら、 >>141何やら窓にかじりついている虎次郎の様子を見ていた。]
おいおい、割れたら怒られるぞ。 修理代出せないだろ。 っていうか寒いだろ。
[いつものように、弟分を窘めるように声をかけたが、 何やら様子は尋常じゃない。
やがて虎次郎はどこかへ行ってしまったため、 >>142残っている副委員長の河合さんと目が合った。]
(155) 2021/11/07(Sun) 19時頃
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どうって、
[意見を求められても、自分の手で確かめなくては何も言いようがない。 河合さんが窓を開けようとして、開かなくて、まさか、とは思った。 だから俺もそれに倣って同じことをしようとして——]
接着剤とか……。
[誰かが悪戯で窓をぴったり接着してしまった。 最初に浮かんだ発想はそれだ。
他の窓も試してみる。 隣も、開かない。その隣も、その隣も。 いつも当たり前のようにここを開けて、風通しを良くしていたはずなのに。]
(156) 2021/11/07(Sun) 19時頃
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……今すぐ答えを出さなきゃだめ?
[悪戯にしては手が混みすぎている。 というか、虎次郎が叩いても割れなかった。 ガラス自体の強度がおかしい気もする。
石頭幣太郎の結論としても、お手上げだった。 意見を求められても何も言えないので、保留ってことでいかがですか。
決を取って結論を出す委員長はここにはいない。 なので代理で副委員長、君に委ねます。*]
(157) 2021/11/07(Sun) 19時頃
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— 回想:不知火さん —
[不知火さんがいなくなって、ちょっとした騒動があった日。 それが終わってから、彼女に声をかけて、そして謝って。 彼女からの反応は、想定していないものだった。>>0:457>>0:458]
……いや、そういうわけじゃ……。
[欲張り。そう言われて否定しそうになるが、言葉が見つからない。 なんの予防線を張ったんだよ、俺。 足が不自由なこと、それにも関わらず一人で行動しようとしたこと。 それが悪いわけじゃないって伝えたかった、だけだったのに。]
(158) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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自由な奴が、不自由な人の重荷を背負うことぐらい、 当たり前でいさせてくれよ。
[それは、欲張りなんだろうか。 言われてみれば、わからない。
俺は恵まれている人間だ。 将来は人の上に立つことが約束されている人間だ。 だから、これは義務だと思っているのに。]
(159) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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あっさりと行方不明になられたら、みんなびっくりするんで。
[>>0:459不知火さんの、案外平気そうな顔に戸惑いながら、 笑い事じゃなかったんだぞと、軽く笑う。 みんな探していたこと、それは伝わっているはずだから。]
罰則? いやいや……。 じゃあ、次のクラス委員会の議題にでもする? なんつって。
[>>460真剣な顔でそんなことを言うもんだから、 さて、なんて返せば良かったのやら。
気安く罰を与えられるほど、俺は女子たちのような親しい距離は取れそうになくて。 それは、俺と彼女では立場が違うという、暗黙の上から目線だったかもしれない。*]
(160) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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[俺は将来の製薬会社社長で、 ユイは子会社の代表として嫁ぎに来る。
立場は最初から違っていた。 俺だけが呑気に、浮かれていた。*]
(161) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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— 回想:VS衣装係 —
無理やりやらせても上手く連帯感は出ません〜〜〜〜 やりたくない奴がトラブル起こすかもしれません〜〜〜〜 集合写真は……俺も撮りたいけど!!!
[>>73最後の抵抗を試みるも、決壊するのは時間の問題であった。 男子がかわいい猫耳をつけるのはネタにしかならないが、 まあ、最後のお祭りに浮かれるのもしょうがない。
>>74みんながみんなギャップ萌え起こすと思うなよ! 事故起こしたら居た堪れないだろ! と、衣装担当の平塚さんと論撃を交わした長時間。
ごめんな、男子のみんな……諦めて……。]
(166) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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そこまで言うなら平塚さん、 男子に猫の演技指導する覚悟がおありで?
[崖際の抵抗でそんな言葉をチクリと刺してみたものの、 これを超えられたらもう反論材料がないのである。
彼女が昔見たあの子役であり、今も演劇部をやっているならば、 演技に関してはきっと専門と言っていいほどの人材なのだろうから。*]
(167) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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[婚約者、室家 唯。
幼い頃、父さんに婚約者だと紹介されて、 へぇそうなんだ、と何も疑わずに受け入れた。
物静かで口数少なく、今にも儚く消えてしまいそうな同い年の女の子。 最初はパッとしない印象で、一緒にいても楽しくなかったけど、 中学生の頃、会社主催のパーティー会場でドレスアップしたユイを見て、 俺の中での認識が大逆転した覚えがある。
いつもの暗いような印象が、大人びた落ち着きに。 華やかなドレスに彩られた細い手足は、雪のように白くて透き通る美しさが際立つ。 これが同い年の女性だなんて、と、一気に見違えた。]
(183) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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[ヒールの高い靴に慣れなかったのか、つまづいていたところを咄嗟に支えたら、 恥ずかしそうに「幣太郎さん」と初めて名前を呼んでくれたその声が、忘れられない。
ああ、俺はこの人と一緒に人生を歩んでいくんだな。 この瞬間に、社長の息子はその自覚を持ち、そして自らの幸せな身分を知った。]
(184) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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[>>0:469婚約者のどこが好きかって?
問われたら、「見た目」と「守りたくなるところ」としか答えられないけど、 それじゃ不服だったかな?]
(185) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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— 回想:文化祭前日 —
そうやってクラスの中ではいじるけど、 一般客にとってはナニコレだろ〜〜〜が〜〜〜〜
[>>83前日に至っても、衣装さんと交わした無駄な抵抗をここでも続ける会計。 せっかく夏見たちが準備してくれたパーテーションの布が少しずれそうになった。
まあ、もう、しょうがない。 決まった以上は文句言わずにやるよ。 な、春満?
彼は彼で、猫の着ぐるみを被る羽目になったとか。]
(186) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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[>>85婚約者とのツーショット写真。 おう、と薄く笑ってそれを受け流す。 今更照れることもないはずだけど、この会話が長引くのも居た堪れないし。*]
(187) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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— 回想:そして文化祭 —
[——文化祭当日。 俺が3-1の喫茶店に連れてきた婚約者のユイは、ほんのりと愛想笑いをした。
その場にいたクラスの連中には丁寧に頭を下げ、 カフェオレを注文して、ゆっくりと飲みながら軽く会話をして、 そして一緒に別の場所を見に行こうと立ち去るまで、 スン、と澄ました顔で、愛想笑い以上のものを浮かべずに佇んでいた。
猫耳を見ても、一瞬だけしか笑わない。 「可愛いと思います」と、社交辞令のように言って、ただそれだけ。
もしそれについて聞かれることがあれば、 そういう奴だから、と俺は説明をして、彼女を伴って去っていく。 別に、理解されなくてもいい。*]
(188) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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— 現在・3-1教室 —
[副委員長に結論を委ねていた、その横で、 >>176>>177平塚さんが窓を破ろうとしていた。 危ないので止めるべきだったろうけど、本当に割れないかどうか、 確かめるための材料が欲しかった気持ちはある。]
仕方ない、修理費は俺が出す。
[と、暗に認めた発言をして。 その様子を見守っていたが——
きっと、その結果は喜ばしいものではなかっただろう。*]
(189) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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— 回想:不知火さん —
[>>168>>169彼女との話はどこか平行線。 俺のほうが勝手に線を引いていることに、俺自身が気付いていない。]
そりゃあ、びっくりしたから!
[>>169当然だぞ、と声を張る。 でも俺は、心の中では俺以外の女子たちのほうが心配の度合いは強かったろう、と、 そう思っていたところもあって。
>>170彼女の謝罪でこの話は終わった。 角を立てないようにして、そして、角が立たなかったならホッとして。 俺の中で、何が正しいかは分からないままに。*]
(190) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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[文化祭が終わり、しばらくして、秋も深まり次の季節が顔を出す頃。 ユイの誕生日が今年もやってくる。
プレゼントを毎年欠かさず贈っていたから、もちろん今年も欠かさない。 何が喜んでくれるか考えて、相談に乗ってくれた女子の皆さんは本当にありがとう。]
(199) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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[今年のプレゼントはケーキにした。 コンビニスイーツ……は流石に採用しなかったけど、女子は本当に甘いものが好きだ。 街で有名なケーキ屋さんに1ヶ月前から予約をして、誕生日当日に届けてくれるよう手配した。
2人で食べるサイズの上等なチョコレートケーキ。 チョコで象った薔薇の細工が、いかにもな特別感を演出してくれる。]
(201) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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[いろいろあって、すっかり忘れていたキャンセル連絡。 ケーキは予定通り、明日の誕生日当日に届く。]
(203) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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— 回想:何もない日 —
なぁ、今日うちに遊びに来ない? 親が用事でいないから、暇でさ。 でかいテレビでゲームし放題だよ。
[その日は、本当に何もないように装って、 クラスの男子数名に声をかけた。]
虎次郎は来るだろ? お菓子たくさん食わせてやる。 雄火はヒマ? 春満は?
[声をかけた奴らのうち、来てくれる奴らを連れて、 両親がいない広々とした我が家にご招待。]
(206) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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[誕生日プレゼントの相談をした相手は女子たちだったから、 男子たちなら何も知らないだろう、と思って。]
(207) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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