27 【crush appleU〜誰の林檎が砕けたの?】
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[ 夢か現か分からないふわふわふとした意識の中、 俺の耳には聞き覚えのあるバリトンボイスが>>3:*0>>3:*1>>3:*2>>3:*3 はっきりと届いた。 ]
(+0) 2023/08/02(Wed) 10時半頃
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―― 病院・203号室の病室 ――
[ 俺の意識がある程度覚醒したとき、 俺が今いるのは病院のベッドの上なんだと気付く。 真っ白な部屋に消毒液のような独特の匂い。
まだぼんやりとした頭の俺は、 とりあえず誰か呼ぼうとナースコールを押したんだ。 ]
(+1) 2023/08/02(Wed) 10時半頃
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[ 病室に駆け付けた医師と看護師から状況説明を受けた。 どうやら、俺は体は打撲や擦り傷程度だが、 頭からの出血が酷かったらしく、 縫合処置を行ったとのこと。
処置後の経過は良好で、 検査の結果、頭蓋内出血も起きていないらしい。
あと、麻酔がまだ効いているようで、 もう少し寝ているといいという話だった。
未だにはっきりとしない意識の中、 俺はベッドに横たわり、瞳を閉じると そのまますやすやと眠りに就いた。 ]**
(+2) 2023/08/02(Wed) 10時半頃
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[>>6>>7>>20 幼子の容は銀のいるこちら側でも視認できた。 迷子? と訝しんだのは一瞬、紫の髪留めに正体が判明する。
覚束ない足取りで、心細そうな声で。 現況を理解している様子は見えない。 ならば、彼女にとってはそのほうがいいのだろうか。 慰めることはかなわない。]
高祈先輩と、仁科さん……。
[>>0 帰還者を告げる声。 ここまで、アリババの言葉は全て真実だった。 不用意に警戒し、疑念を抱いた高祈には あの後会う機会がなく、ガラスを割る行為についても やふやなまま。仁科とはカフェで二言三言話しただけだった。
ふたりとも、生きていてよかった。 その想いには嘘はない。]
(+3) 2023/08/02(Wed) 12時頃
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[少し前には柊と福原、それに骨谷の無事が判明している。 皆、どのような状態でいるのだろう。 ゆっくりと目を開けると、射し込んでくる光。
あれほど明晰な夢であったのに、 現実の光はこんなにも眩しい。**]
(+4) 2023/08/02(Wed) 12時頃
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[病院の窓から、遠雷の閃光が見えて、 オレ西洋美術概論の講義を思い出す。 トンネルを抜ける前、次第に近づく神鳴りを。
日本での雷は神罰にとらえられがちだけど、 西洋の神話ではゼウス(或いはユピテル)の象徴。 「雷に打たれた者(エリュシオン)」は神の祝福だった。 日本でも、佳人薄命、あまりに若く命を失えば 神に気に入られて連れて行かれたんだ、 なんて言葉で無理矢理に納得したり。
砕けた一つの林檎は、神の寵愛を受けたのだろうか。 その"慈悲"の世界に巻き込まれたオレは、 もうそれを荒唐無稽と嗤うことなどできない。
宣告は淡々と非情に>>0、 残りを三名にまで絞っていた。**]
(+5) 2023/08/02(Wed) 14時半頃
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―― 夢の中 ――
夢の中のことに、どんな理屈でとか言うのは 野暮なんだろうけど。
[ 俺はいつの間にか、あの夢の中の美術館にいた。>>3:*2 さっきまで麻酔でふわふわしていた意識は>>+2 いつのまにかクリアになっていて、 俺はきょろりと辺りを見渡した。 ]
こっちからは見えるのに干渉できないって 生殺しって感じだな。
[ ぽつりと呟いたところで、 アリババさんのお告げが聞こえた。>>0 ]
そっか。なるほど。
[ 次に目を覚ますのは、さっき俺のことを 魔法使いだと言ってくれた女の子と、>>3:240 ]
(+6) 2023/08/02(Wed) 21時頃
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生きてるんだ、高祈先輩。
[ 良かった、なんて口には出せないけれど、>>3:164 心のどこかで安心していた。
卒業の前に二度と先輩に会えなくなるのは、>>3:207 俺には耐えがたいことに思えたから。 ]
……俺に何ができるのかな。
[ 先輩の髪を結んでいたゴムがちぎれた後、 カラスアゲハの数が増えていき、 頬や首に致命傷にならない傷が増えていく。>>23
そっと近づいて手を上に伸ばして、 傷口に触れてみるけれど、 その血を拭うことすら俺にはできなくて、 ]
(+7) 2023/08/02(Wed) 21時頃
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[ ビデオルームに入った先輩の背後に 不穏な影が見えて、 仄かに生臭い香りが広がった。>>34 ]
そっかあ。黒猫に懐かれたんっすねー。 ……黒猫は何て言いながら、先輩を傷つけているんです?
[ こんな面と向かって言う状況じゃなくても 先輩に嘘だと言えない俺は、>>49 何があなたに傷を負わせるのか遠回しに、 少しずつ先輩の本音を聞き出そうと言葉を零す。 先輩には当然俺の声は届かない。
もし初めから先輩に突撃していたら、 こんなもどかしい思いをしなかったかもしれないけど、 俺は変わらずに少しずつ努力して、 先輩の心を溶かしていくのが>>3:193 きっと正攻法なんだって信じたい。 ]
(+8) 2023/08/02(Wed) 21時頃
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[ どちらにしろ、高祈先輩には隠したい何かがあって ここで俺が勝手に見るのは フェアじゃない気がするから、 ここで俺はビデオルームを後にする。
ふわりふわりと館内を漂っていると、 辿り着いたのは、カフェの前。 ]
え? 田端先輩?
[ 仁科ちゃんと回谷先輩と1匹の狐が 小さな女の子に振り回されている様を おっかなびっくり眺めていたら、 田端先輩の名前が出てきて、俺は唖然とした。>>67>>72 でも、たしかにあの髪留めには>>6 見覚えがある気がして、 ]
(+9) 2023/08/02(Wed) 21時頃
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幼児退行、かな。 ……よっぽど心に負担が掛かってたんだろうな。
[ マイペースなところがあるからと あまり気にしていなかったけど、 こんなことになるなら、 もう少しフォローしておけば良かったかもと 俺は後悔した。
まさか、自分からみんなを遠ざけてたなんて>>3:102 俺は知らなかったから。 ]
(+10) 2023/08/02(Wed) 21時頃
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[ それから、ゆらりゆらりと移動すると、 いつの間にかエントランスに着いていた。 樹の下には潰れた林檎が1つと普通のものが4つ、 そして、樹に生った林檎が5つ。>>2:266>>3:22>>3:191>>3:192>>19
樹に生った林檎の一つが俺の姿に重なって、 そういえば、他の林檎も目を覚ました面々と どことなく重なるようで。
それでも、潰れた林檎が誰を指すのか分からない。 ]
例え、誰の林檎が砕けていたとしても。
[ あなたは災害なんかに 巻き込まれていい人じゃなかったって、 俺はいつまでもあなたの死を惜しむよ。 ]*
(+11) 2023/08/02(Wed) 21時頃
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――病院2F/休憩スペース――
[オレは西門教授に報告しようと思っていたけど、 目覚めたはずの先生の病室は面会謝絶だった。
アリババ氏の声は等しく聞こえているはずなのに、 そういえば覚める直前の教授の言動はちょっと 病んでるみたいでアブナかったな、などと思い出す。
大半は成人済みの大学生とはいえ、 課外授業の最終責任者は、大人は、教授だけだ。 きっと責任感や混乱で平静では いられなくなっているのだろう。]
(+12) 2023/08/02(Wed) 21時半頃
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――――、どうしよう、
[病室は出てきたけど、目覚めているのは シロマちゃん……女子の病室に見舞う というシチュエーションはオレに許されるのかッ!!? 非常事態ではあるが、現実の人の目もある。 つぶ(略)ブラザーズも一緒なら、勇気を奮って 赤信号みんなで渡れる気がしなくもないが。]
(+13) 2023/08/02(Wed) 21時半頃
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『骨谷ヘータより。
おはようございます。 (↑笑うところだから↑) 目覚め一番乗りってことで、 LINEなり何なりで、 みんなの様子を知れたら嬉しいかな。
まだ、誰が……かは分からなくて、 何となく顔合わせ辛いかも知れないけど。
西門先生は未だ病室行っても会えなかった。 オレはしばらく2階の 休憩スペースにいるんで、 気晴らしの話相手にでもなってくれたら。
P.S. カップは全員分デザインするつもり』
(+14) 2023/08/02(Wed) 21時半頃
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[思い出したようにスマホを取り出して 研究室のグループLINEに打ち込んだ。 そうして、手持無沙汰なオレは夢の中と同じ姿勢で スケッチブックを広げ、 1人1人の顔を思い浮かべながら、線を連ねていく。]
(+15) 2023/08/02(Wed) 21時半頃
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[病室のあった3階から階段を下りるのに、 少し躊躇したけど、普通の長さの普通の階段だった。
はぁ〜〜、と2階の床を踏んだオレの溜息は 5呼吸分溜めたくらい長かった。
小さなダイヤの粒が象嵌された タバたん先輩のカップデザインを考えていたら、 後ろの髪が数本引っ張られるような 妙な感覚があった。]
…………子供の、声?
[お腹が空いているのか迷子なのか、 わんわん泣いている、稚い高い声。 おかしいな、外来の時間は終わったし、 この階は小児科もない入院病棟のはずなのに。]
(+16) 2023/08/02(Wed) 21時半頃
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―― 病院・病室203号室 ――
[ 眠っている間に麻酔が切れたのか、>>+2 いくぶんかスッキリとした思考で 目を覚ますことができた。
ベッドの側に誰かがいる気配を感じて、 俺はゆっくりと首を動かしたんだけど、 ]
あ……お婆ちゃん……。
[ 入院手続きをするために、 緊急時の連絡先に電話がされたようで、>>1:30 お婆ちゃんがこの病院まで駆け付けてくれたらしい。
心配そうに俺のことを見つめていた顔が、 安心したように柔らかな笑みに変わったんだけど、 ]
(+17) 2023/08/02(Wed) 22時頃
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迷惑かけて、ごめんなさい……。
[ 俺の言葉に、お婆ちゃんの笑顔が固まった。 ――ああ、違う、 そんな顔をさせたいんじゃなかったのに。
色々な事情があって離れ離れになって、>>1:29 たしかにどう話していいか分からないような 間柄ではあったけど、
それでも、俺のことを心配して こんなところまで来てくれた人に、 他人行儀なことを言って傷つけていいはずがない。 ]
(+18) 2023/08/02(Wed) 22時頃
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[ 思えば、先に距離を開けたのはどっちだったか。
どうせお爺ちゃんもお婆ちゃんも 父さんという娘を傷つけた男の息子でもある俺より、 実の娘の方が大事に決まっているって、
最初から決めつけていたのは、 俺の方じゃなかったか―― ]
(+19) 2023/08/02(Wed) 22時頃
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[ 入院手続きに行くからと 病室を出ようとしたお婆ちゃんの手首をつかんで、 俺はお婆ちゃんを引き留めながら、小さく笑う。 ]
来てくれてありがとう、嬉しい……。
[ そういうと、お婆ちゃんはぽろぽろと泣きながら 俺を抱き締めてくれたんだ。
「今までごめんね」と言うお婆ちゃんの言葉に、 俺は何度も首を横に振りながら、 お婆ちゃんのいつの間にか痩せて薄くなった体に 腕を回したんだ。 ]
(+20) 2023/08/02(Wed) 22時頃
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[ それから、お婆ちゃんとはいくつか話をしたけど、 「病み上がりだから休んでなさい」と言われて、 入院手続きのために病室を後にするお婆ちゃんを 横になりながら見送った。
病室に一人になると、俺はスマホを開く。 研究室のメンバー以外の人から 俺のことを心配するメッセージが大量に届いていて、 ちゃんと元気な振りして返信できる気が しなかったから、未読スルーの形になる。
もし読んでいたら、事故の詳細について 少しは知れたかもしれなかったけど。>>3:*4
とにかく、もうスマホは放置しようか というタイミングで、 グループLINEの通知が届いた。>>+14 ]
(+21) 2023/08/02(Wed) 22時頃
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あ、骨谷先輩。 はは、どう笑えばいいんすか、これ。
[ 乾いた笑いを浮かべつつ、 俺もぽちぽちとメッセージを送る。
『福原徳人 今起きました』 『頭に怪我しましたが元気です』 『休憩スペース俺も行きます』 ]
さてと、移動しますか。
[ ベッドから起き上がって、俺はスリッパを履いた。
ちなみに俺は、ノックして問題ないと言われたら、 常識の範囲内で銀先輩の病室を見舞うことは 悪ではないと思っている。>>+13 ]*
(+22) 2023/08/02(Wed) 22時頃
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―― 病院・2階休憩スペース ――
骨谷先輩、おはようございます?
[ 休憩スペースにやってきた俺は、 骨谷先輩の姿を見つけると声を掛けて、>>+15 先輩の向かいの席に座ろうかと近寄った。
俺は何ともない調子で声を掛けたけど、 頭に包帯を巻いている俺を見て、 骨谷先輩はどう思ったかな。 ]*
(+23) 2023/08/02(Wed) 22時頃
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[オレは腰を浮かせて周囲を見回して、 気のせいだったかと座り直すも、 どうにも落ち着かない。 小さな子供の声って、やたら神経に引っ掛かる。 アラートなんだから、本能としては それが正しいんだろうけど。]
…………こんばわー。
ノっくん、頭大丈夫?
[訝るオレに声をかけたのは、子供でなく 目覚めし者――ノっ君だった。 ボケの応酬に正しい時刻の挨拶を返す。 夢の中のタカナル先輩の腕はスルーできたけど、 さすがにリアルで頭に包帯は看過できなかった。 何とも失礼な心配の言葉になったのはご愛敬。 此方の頬のガーゼは、説明するまでもない、 35億分の一の破局の結果。]
(+24) 2023/08/02(Wed) 22時半頃
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ここに来るまでに、 子供とすれ違えへんかった?
なんか、泣き声みたいの、聞こえて――、
[それとも、夢の余波か幻聴で オレがおかしいこと口走っているのだろうか。
普通に考えれば、子供が迷い込むはずのない 時間と場所で。誰かの御見舞いではぐれたにしろ。
オレは眉間に皺寄せ深刻な面持ちで、 包帯男と化したノっ君に問う。*]
(+25) 2023/08/02(Wed) 23時頃
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―― 病院・2階休憩スペース ――
はい、こんばんは? [ 時間間隔がない頭だったが、 そうかもう夜だったのか、なんて思いながら、>>+24 ]
はい、頭の出血は止まってますし、 特に問題ないそうっす。 いくつか脳細胞は死んでるかもっすけど、 知能レベルも問題ないはずっすよー。
先輩の頬は…… 美術館に行く前のアレってことでいいんすかね。 それとも同じところに新たな怪我を?
[ チラリと骨谷先輩の頬を見つつ、 ]
(+26) 2023/08/02(Wed) 23時頃
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子供の泣き声。いや、俺は見てないっすけど。
……もしかして、先輩、一瞬居眠りしてませんでした? それがあの夢の世界だったなら、おそらく――
[ つられたように深刻な気持ちになりながらも、>>+25 そこで俺は言葉を切る。
夢の世界で幼児化した田端先輩のことを>>60>>+9 俺は思い出していたのだけど、 勝手に言い触らすのも憚られたから。 ]*
(+27) 2023/08/02(Wed) 23時頃
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――病室
[半身を起こしても痛みや気怠さがなかったため そのまま立ち上がろうとして、足首に巻かれた包帯と、 その部分が左右で僅かに嵩が違うことに気づく。
ナースコールを押しての病室での診察で、 外傷は右足首の捻挫程度であることを知った。 杖の必要はなさそうだが、すぐに退院というわけには行かないようだ。]
……腫れてると思うと 急に痛い気がしてくるわね。
[ひとりになると病室内を見回して、 床頭台に置かれた自身のバッグを手に取った。 病室内での携帯の使用は許可されている。
何件かの通知。 家族へ連絡が行っているのだろう。 母と姉から安否を問うLINEにまずは返信を。]
(+28) 2023/08/02(Wed) 23時頃
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『銀です 検査結果待ちだけど ケガは足の捻挫ぐらいで概ね元気✨ 皆の具合はどうでしょうか』
[グループLINEへ送信。 頭を怪我したという福原は気になったが、 併せて元気とも書かれていたため、差し当たって 言及を避けた。 ついさっきまで、夢の中で遣り取りした 皆のメッセージは残っていない。 骨谷から届いたメッセージ以前の履歴の日時は 美術館に着く前のもの。 判りきっていたことなのに、物寂しい心地になる。]
『統一したモチーフで考えていないなら 私は蔓(葡萄か藤)とカギを組み合わせた デザインがいいな』
[こちらは骨谷への個人メッセージで送った。]
(+29) 2023/08/02(Wed) 23時頃
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