14 冷たい校舎村10
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七星拳 ナツミは、メモを貼った。
2021/11/11(Thu) 00時頃
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―― げんじつせかい ――
[ コンコン。 ノックの音が聞こえて、あたしははっと顔を上げた ]
ふあっ!?
[ あたしの声は返事になってなかったし、 なんなら返事じゃなかったんだけど、 ドアを開けてお母さんが入ってくる ]
「寝てたの?」
[ お母さんはあきれ顔。 手にはトレイを持ってて、そのトレイには、 レンチンの焼きおにぎりが2つと 具沢山のお味噌汁が載ってる。 お母さん、よく夜食を持ってきてくれるんだよね。 あたしが真相を知った日以降、特に。 あたしが何かやらかさないか、きっと心配なんだと思う ]
(+0) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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[ あたしはというと、机の上に参考書とノートを広げて 寝てた。寝てた……んだ。 なーんだ、夢かあ。 夢……だった? ]
「七星?」
[ お母さんが怪訝そうな声であたしを呼んだ。 トレイを机の端に置いて、 あたしに手を伸ばしてくる ]
「首、どうしたの?痣になってる」
…………え。
[ お母さんの手があたしの首に触れた。 ポーチから手鏡を出して確かめてみれば ]
(+1) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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うわっ。
[ 怖いんだけど! 指で首絞められたみたいな痣ができてるんだけど! あれはただの夢なのに! そうでしょ? だって、ただの夢じゃなかったら、それって ]
(+2) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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[ ぴこーん。 聞き慣れた音がしたのは、その時だった。 スマホのメッセージ受信音だ。 条件反射みたいにあたしは確認しちゃう。 送信者は……日食君? こんな時間に珍しいな。 日食君といえば猫だけど、 こんな時間に猫写真を撮ったわけでもなかろうに。
そんなことを考えながら、メッセージを開けば ]
今、病院に着いた……?
[ 病院?なんで病院? よくよく見れば、グルチャに送られた 日食君のメッセージは、それだけじゃなかった。 あたしは瞬きを忘れて、 ついでに目の前にいるお母さんのことも忘れて、 慌ててメッセージをさかのぼる ]
(+3) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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[ 病院って不穏な単語に、お母さんが首を傾げて、 話の途中だっていうのに口を挟まずに待ってくれてるの、 気づく余裕は今のあたしにはなくて ]
(+4) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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『帰ってきた。病院行く』 『今家を出る』
[ 帰ってきた?帰ってきたって、どこから? 日食君のメッセージは要領を得ない。 イラっとしそうになったけど、 他にもメールが届いてることに気づいた。 飯尾先生?と、和歌奈ちゃん?>>13>>15 グルチャにメッセージじゃなくて、メール。 首を傾げながらあたしはまず 和歌奈ちゃんからのメールを開いて ]
(+5) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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[ 血の気が一気に引いた。 和歌奈ちゃんから送られてきたメールは、 あの校舎で読んだ遺書だった ]
(+6) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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お母さん、
[ がくがくと体が震えて、 あたしは忘れてたお母さんのことを都合よく思い出した。 片手にスマホを持ったまま、もう片方の手で、 お母さんの腕をつかむ ]
お母さん、どうしよう。 和歌奈ちゃん、和歌奈ちゃんが、死んじゃう。
「七星。七星、落ち着きなさい」
[ 空いてる方の手で、お母さんが背中をさすってくれる。 でもあたしは落ち着けない。落ち着けるわけない。 どうしよう。止めなきゃ。行かなきゃ。でもどこに?
……病院! そうだ、病院って、さっき読んだ! ]
(+7) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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……病院!日食君、着いたって……。
[ どこの病院かは書いてなかった。 っていうか日食君はどうして知ってるの? 誰から聞いて……あ。 先生からのメール! あたしは慌てて先生からのメールを開く ]
(+8) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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……お母さん。
[ メールを読み終わって、あたしはお母さんに向き直った ]
友達が、病院に運ばれたの。 あたし、行きたい。
[ 先生からのメールには、 和歌奈ちゃんが望高の屋上から飛び降りて、 望月病院に運ばれたって書いてあった ]
(+9) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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行かなかったら、あたし多分一生後悔する。 夜食は、持ってく。
[ あたしは、なんていうか、ぐちゃぐちゃだ。 認める。あたしにはそういう部分がある。 多分あたしの言動で、お母さんはあたしの友達が 病院に運ばれた理由を察したと思う。 ぐちゃぐちゃなあたしを、自殺を図ったであろう友達に 関わらせたくないと思う。 でも、行かなきゃ。絶対行かなきゃ ]
(+10) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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……あのね、あたし、夢の中でひめちゃんに会ったの。
[ ひめちゃん。 その言葉に、お母さんの肩が震えたのがわかった。 だけど構わずあたしは言葉を続ける ]
ひめちゃんに死んでって言われたけど、断った。 あたしは生きたいって。 ちゃんと言って、ちゃんと決別できたよ。 だから……あたしは、大丈夫だから。
[ 実際のところ、そんな簡単な話じゃないと思う。 今でもあたしのどこかはやっぱりぐちゃぐちゃだし、 カウンセリングとか、多分そういうの、 あたしには必要なんだと思う。 だけど、今は。今だけは。 大丈夫だから行かせてほしい ]
(+11) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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[ お母さんは大きなため息をついた ]
「食い意地が張ってる間は大丈夫そうね。 お味噌汁はスープポットに入れていけばいいでしょ。 お父さんに車を出してもらいなさい」
[ お母さんの言葉に、あたしは目を見開いて、 それから抱き着いた ]
うん、ありがと。 ……あのね、あたし、お母さんのこと、大好きだからね。 お父さんのことも。
(+12) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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[ コートを着て、マフラーを巻いた。 首が隠れるように、しっかり。 玄関のドアを開ければ、そこは雪景色じゃなくて、 だけど冷たい空気がほっぺたを冷やす。 お父さんは、もう車のエンジンを掛けてくれてた。 乗り込んでシートベルトを締めて、 そしてあたしはグルチャにメッセージを送る ]
『ただいま!夏見、帰還しました! 今から病院へ向かいます!』**
(+13) 2021/11/11(Thu) 20時半頃
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七星拳 ナツミは、メモを貼った。
2021/11/11(Thu) 20時半頃
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―― 望月病院 ――
[ お父さんは、車を病院の正面入口の前じゃなくて、 夜間入口の近くに停めてくれた。 あたしはありがとうってお礼を言って、 トートバッグを持って車を降りる。 お財布とかハンカチとか、 ラップに包んだ焼きおにぎりとか お味噌汁の入ったスープポットとかが入ってる。 スマホはすぐに気づけるようにコートのポケットの中だ。 帰る時は迎えに来るから連絡しなさいって言う父に、 あたしはもう一回ありがとうを言った ]
日食君。
[ 夜間入口を入ってすぐ、 自販機コーナーに日食君がいた。 思わずあたし、大きな声を出しそうになって、 慌てて口をふさぐ。 いけないいけない。ここは夜の病院だ ]
(+14) 2021/11/11(Thu) 23時頃
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[ メッセージは届いてたんだからさ、 無事なのはわかってた。 あたしだって、あの世界で死んだけど、 こうやって生きてるんだし。 だけどやっぱり無事な姿を見ると安心するね。 おかえりって言ってくれる日食君に、 あたしはうんって頷いた ]
日食君も。無事でよかった。 日食君、マネキンになってたんだよ。 あたしと路子ちゃんで運んであげたんだから。 感謝しろよな!
[ 血まみれになって云々はさすがに言わないけど、 恩はしっかり売る! 両手に花だったんだんだから! 意識はなかっただろうけど! そしたら、ジュース奢ればいい?なんて 自販機の方を向こうとするから慌てた ]
(+15) 2021/11/11(Thu) 23時頃
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なんでそーなるっ! ……そーだなあ。日食君といえば猫じゃん。 和歌奈ちゃんさ、きっとすぐ退院ってわけには いかないよね。 きっと退屈するだろうからさ、 選りすぐりの猫写真、グルチャに流してよ。 あたしも見るし。
[ 小6のあの日、飛び降りようかって言ったあたしを ひめちゃんは止めた。 飛び降りだと、あたしの生死を コントロールできなかったからだ。 飛び降りだと死ぬってひめちゃんは考えたんだろう。
和歌奈ちゃんは、望高の屋上から飛び降りた ]
(+16) 2021/11/11(Thu) 23時頃
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[ ……そーゆーことは今は考えない!! 和歌奈ちゃんは、ひとりじゃない。 ひとりじゃないから、大丈夫のはず。 みんなが一緒に連れて帰ってきてくれるはず。 なにしろあそこには、 「持ってる」路子ちゃんだっているんだし ]
(+17) 2021/11/11(Thu) 23時頃
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[ あたしはあの世界を夢だったとは思ってないし、 日食君もそうみたいだった。 こうやって話が通じるのが何よりの証拠 ]
……さて。先生来てるんだよね? 和歌奈ちゃんのご家族とか。 挨拶してくるよ。 日食君はまだしばらくここにいるの? なら、誰か来るかもしれないし、出迎えよろしく!
[ あたしはそう言って、病院の奥へと足を進めた ]*
(+18) 2021/11/11(Thu) 23時頃
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七星拳 ナツミは、メモを貼った。
2021/11/11(Thu) 23時頃
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わたし [そう、平塚莉希が死んでも ママは悲しまない。
天野莉希の死を、悲しむだけ。 だってそういう人なのだから。]
(+19) 2021/11/11(Thu) 23時半頃
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わたし [ 平塚莉希は 貴女の どこにいますか? ]
(+20) 2021/11/11(Thu) 23時半頃
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[文化祭が終わって春が近づくにつれ、 どんどん憂鬱になっていった。 進学するにしたって、ママが納得するところに しか行かせてくれない。 レッスンやオーディションだって再開する心算 だろう。
……また雁字搦めの生活に戻る?
ううん、この三年間だって、 糸は絡まったままだったよ。]
(+21) 2021/11/11(Thu) 23時半頃
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[ まるで操り人形のように ]
(+22) 2021/11/12(Fri) 00時頃
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―― 帰還 ――
―――――っ!
[何かに弾かれるようにばちりと目が覚めた。
鼓動が早い。 呼吸が浅い。 嫌な汗だって流れている。 まるで悪夢を見た時のように。
息を落ち着かせながら沈んでいたベッドから身体を 起こした。
えぇと、私何してたんだっけ? ……そうだ。ママと電話して一方的に色々言われて、 しんどくなってベッドに身を投げたんだ。]
(+23) 2021/11/12(Fri) 00時頃
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[窓の外はとっぷりとした闇に染まっていて、 冬の空気が星の光をより綺麗に瞬かせている。 思わず窓を開けた。 窓はすんなりと開いた。 雪は積もってはいなかった。]
……夢、だったのかな?
[夜空を見上げれば綺麗だなぁと思ったけど、 身体が冷えればママに怒られる、とやっぱり すぐにからりと閉めた。]
(+24) 2021/11/12(Fri) 00時頃
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[やることやらなきゃと思って時間を確認しようと ベッドに投げ出されたままだったスマホを手に取る。 そこでいくつか通知が入っているのに気づいた。 それは日食君、それから飯尾先生、和歌奈さんの 順に表示されていて。 どうしたのかなって、一番上の日食君から目を 通した。>>+5]
病院? どこか怪我したのかな?
[もしかして送信先間違えた?なんて思ったけど、 次に飯尾先生のメールを開けば、その意味はすぐに 知れることとなる。]
(+25) 2021/11/12(Fri) 00時頃
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……夢、じゃ、なかった? あの世界は。 ホストは、和歌奈さんだったってこと?
[あの世界で見た同じ文面>>1:1が、一言一句違わず 確かにここにある。 その画面を凝視していると、もう一件、通知が 入った。>>+13]
……行かなきゃ。
[七星さんも帰って来た?って思ったけど、 今はそんなこと気にしてる場合じゃない。]
(+26) 2021/11/12(Fri) 00時頃
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『平塚莉希も帰還 病院、私も向かいます!』
[私もグルチャに返信を打って、部屋を飛び出した。]
(+27) 2021/11/12(Fri) 00時頃
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[ 手術室に、人影が見えた。 手術中の赤いランプが灯ってるのも、見えた。 あたしはゆっくりと近づいて、頭を下げる ]
こんばんは。
[ 来たのか、と声を掛けてきたのは飯尾先生。 和歌奈ちゃんのお父さんは、 わざわざありがとうございます、って 子供のあたしに敬語で挨拶して、 頭まで下げられてしまって、あたしはちょっと慌てた。 和歌奈ちゃんのご家族には文化祭の日に会った。 覚えてる。
和歌奈ちゃんのご家族は他に誰か来てたかな。 皆さんお揃いだったかもしれないし、 もう夜も遅いから、お母さんと妹ちゃんは お留守番だったかも ]
(+28) 2021/11/12(Fri) 00時頃
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[ 和歌奈ちゃん、来たよ。って、 あたしは手術室の扉を見つめた。 この向こうに和歌奈ちゃんがいる ]
(+29) 2021/11/12(Fri) 00時頃
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