人狼議事


29 constellation

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/16(Thu) 23時頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/17(Fri) 00時半頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/17(Fri) 07時半頃


【人】 学園特警 ケイイチ

ーー別離ーー

愛情というものを基本で考えるなら相手の事をひたすらに想う、慮ることではないかと思われるが、人間の愛情さ嫉妬など我儘な側面があり、理屈でははかれない働きが多い。

神ではない、完璧ではない人は、正しいことなんかいつも選べないし、理想通りにも出来ず、それでもーー心に根付く信念や芽生えた愛情に沿って生きていくのだ。

お互いの最上、最愛であるために、僕らは互いの死を望むーー。

(9) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

ソファーで微睡む時間は、さっきまでの激しい行為とは打って変わり静かで穏やかだった。

ずっと傍にいる。
死ぬまで傍にいる。

今の誓いも、教会で誓った内容と違わない事に僕は気づいた。

「やだ。君を見ていたい。一秒でも多くこの目に焼き付けたいから……それに、最期は手を握ってたいし。」

愛する人を看取る。
想定よりずっと早いが、愛する人を得られない人生の方が多分不幸せだ。

彼がいて、僕は満ちている。
恐らく彼も。

僕は彼の肩に腕を回し優しく抱いた。愛おしく擦り、たまに髪に触れたりもする。

お風呂場でくすぐったがる様子、可愛かったな……。

僕は当然そんな彼が身を捩ったりする仕草に興奮はしたし、性欲大魔王であるからにして息子はギンギンにもなったが、これ以上の負担はかける気がなかった。

(10) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

意識を失ったあの時のように、僕に抱かれながら息絶えたら彼はーーもっと幸せだったのかもしれないが。

パイロットについては実は僕らが知らない所で、裏側で色々な思惑が進行していたわけだが、僕はこう答えるしかない。

「カガセンが動いてくれると思う。

……兄に似て、彼はしっかりした人だよ。

ーーうん。地球は続いていくよ、きっと。

僕らはーー人間は元々ちっぽけだもんね。一人二人消えても……。

でも、僕にとっての君はこんなにも大きい。

僕は君に夢中だ。馬鹿みたいに恋をしてる。
……恋をして、本当に好きな人と死ねる。
……君と出逢えて良かった。」

僕らの残り少ない貴重な時間。
最期まで傍にいると約束した。

(11) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

しかしそれは無粋な輩たちに邪魔をされる。
乱入して来た男たちは僕と彼を引き裂く。

僕が喚き、彼が叫んだ。だがそれは虚しく響いただけ。
何か薬物を投与され、連れ去られる彼の姿を僕は脳裏に焼き付ける。

誰だお前たちは!
何故僕らの邪魔をする?

激昂した僕は彼が見えなくなった後、更に暴力的になる。

押さえ付けてきた相手の手首に噛み付く。肉を食い千切る勢いで。その手が離れたならすかさず蹴りを鳩尾に叩き込み、康生を追い掛けようと立ち上がる。

「コウ!!今行ッーー」

僕が気を失ったのは鎮静剤によってではない。
後頭部を後ろから警棒で殴られたからだ。

絨毯の上に倒れ伏す。
意識を失うまで僕は、ただ彼の事だけを考えていたーー。

(12) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

ーー監禁、交渉、そしてーー

意識を取り戻した僕は病院の一室のような場所にいる。
白々しいほど真っ白な壁。窓らしきものはあるが、鉄格子が嵌められている。

頭に打撲傷が出来たようだが、治療が施されたのか、包帯が巻かれていた。

起き上がろうとして違和感に気付く。僕の両手足はベッドに拘束されていた。身動きが取れない。無理に動くと硬いベルトが食い込む。

「おい、ここは何処だ、僕を自由にしろッ

コウを返せ、返せッ」

ベッドを軋ませ僕は全身で跳ねて暴れ叫んだ。すると部屋に現れたのは二人の人物ーー

『気が付いたかしら、恵一くん。』

白衣を着た男性と、パンツスーツ姿の女性。
声を発した方は女性だ。

(13) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

『ごめんなさい、拘束なんかして。貴方は錯乱していたから。』

「そんなのはどうでもいいッ
コウは何処だッ」

噛み付くように叫ぶ僕に女性は冷ややかな視線を投げる。

『病院で治療を受けているわ。生死の境をさ迷っている。

場所は教えられないわ。
当たり前でしょ?
貴方は自分が彼に何をしたかわかってる?』

「……」

僕は押し黙る。小さな溜め息が聴こえる。彼女は後ろの男性と何やらボソボソ話した後。

(14) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

『貴方には取り調べを受けて貰います。

今回は特殊な事情があるから、大切なお話もあるから……もう起きれるわよね。

どうか暴れないで頂戴、そうでないともっとキツイ拘束をするしかないから。』

彼女は僕を締め付けていた四肢のベルトを解く。そして両手を差し出せと言う。嵌められた金属の輪は、刑事ドラマでよく見るような手錠だった。

僕は取調室に連れていかれた。
そこは机が1つ、椅子が2つ。
机の上には書類と筆記具があった。

(15) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

『貴方が犯した罪について。

暴行傷害罪、不同意性交罪は、貴方が未成年であることと、精神鑑定が必要であるなどを鑑みても余りに……余りに酷いわ。

でも、貴方には罪を免れる道がある。』

椅子に腰掛け僕は彼女の話を聞く。多分何を考えているわからず不気味に見えただろう。

不同意ではないとか言っても無駄な雰囲気だし。

『貴方が、あの巨大ロボットのパイロット候補である情報を私達は掴んでいる。

そして貴方が闘わなければ地球が滅びる事も。』

僕は眼を細めた。それは誰が洩らしたのだろう。そして、この女は何処の組織の者か。
軍?警察?政府?わからない。

(16) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

『貴方がパイロットとして闘ってくれるなら、罪は一切問わないわ。
この書類にサインして欲しいの。』

彼女は筆記具と書類を指差す。宣誓書?
僕は小さく嗤う。

「死ぬのに罪を気にする必要が?」

『……ご両親やお兄さんが、犯罪者の家族になるのよ。それでもいいの?

貴方が取引に応じるなら、貴方がした事は関係者以外には、つまり世間には漏れないわ。』

成る程、的確に弁慶の泣き所をついてくる。

(17) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

僕はまた黙った。僕の今の一番の不満はコウに逢えないことだ。口ぶりでは彼はまだ奇跡的に生きているらしい……逢いたい、彼に。

「誰から情報を得た?」

僕の問いに彼女は腕組みしながら答える。

『言えない。私達は貴方たちをパイロット契約させた存在と直接交渉が出来ない。

ある人物を通して情報を得ているわ。

その結果、パイロット候補である貴方たちを監視、保護していたの。』

成る程、それで僕の家にパトカーと救急車が来たわけか。

内通者は誰か。加賀先生が動いたのか。情報を持っていると考えるなら僕の両親、雨竜先輩のお父さんも考えられる。

政府なのかなんなのかわからないが、僕はそもそも情報の秘匿自体に反対だ。
むしろさっさと警察とか国を頼るべき案件と考えていたから。
そうして助けて貰うのが当たり前だと。

(18) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

しかし今はそれが僕には都合が悪い方に運んでいる……。

彼らが僕を闘わせたい、闘わなければ困るならカードはこちら側にある。
僕はムスッとしたまま言った。

「コウに今すぐ逢わせて。逢わせないなら闘わない。」

『めちゃくちゃ言わないで。』

「めちゃくちゃ?何がめちゃくちゃなんだ。こんな風に僕を監禁拘束する方がめちゃくちゃだろ?」

うんざりした表情が目の前に広がる。
嗚呼、この女は馬鹿だ。
なんでこんな簡単な事がわからないのか。

イライラし始め、僕は貧乏ゆすりをした。
彼女は肩を落として困り顔を浮かべ、そしてーー

『彼は面会出来る状態じゃないわ。それに、貴方がした事はレイプよ。彼を殴り、脚を折り強姦しーーそんな彼に逢って、まだ危害を加える気?』

(19) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「違うッ僕は彼をただ傷つけたかったわけじゃないッ」

『何が違うのよッ貴方みたいな恐ろしい子供は初めて見たわッ』

「黙れッ」

僕は椅子を蹴って立ち上がる。机の上にあったシャーペンを咄嗟に掴んだ。それを自身の喉元に宛がう。

「近寄るなッこれで喉をつくぞッ

コウを連れてこいッ」

狂ったように喚く。
狂ったように?いや、きっと僕は狂っていた。

『やめなさい』

彼女の声は震えている。
手錠があれば暴れないと勘違いした?甘いな!

(20) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「ガタガタ偉そうに抜かすなこの腐れマンコッ
てめえもぶち犯して欲しいか?!

嗚呼、僕は彼を抱いたよ。壊れるまで、殺そうとして抱いたんだッ

僕が赦されないなんて、最低だなんてお前なんかに言われなくても知ってる!」

シャーペンを喉に突き立てなかったのは、コウがまだ生きているから。もう一度、一目彼に逢いたいと願ったから。

その代わりに僕が何をしたか。

「アアアアッー!!」

迸る鮮血。視界か赤く染まる。

(21) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

僕は自身の右目をシャーペンで突き刺した。激痛が走る。

赤い赤い赤赤々赤。
痛い痛い痛痛痛い痛いコウーーコウ。

脚を折られた時の悲鳴に比べたら。痛みに比べたら。
こんなのはかすり傷。
全く足りない、全然足りない。

でも僕は彼みたいに強くなかった。僕はそのまま気を失い、倒れたーー。

(22) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

それからは、僕の拘束が解かれる事はなく。
何回か取り調べがあったが僕は一言も話さず過ごした。

彼らがなんの組織なのかなんでどうでも良かった。もしかしたら懸命に代わりのパイロットなどを探しているのかもしれない。それでも、僕というパイロットを失うわけにはいかなかったのだろう。

僕は生かされた。
排泄や食事も自信の意思ではさせて貰えない環境でただ生かされ、そして。

コックピットに移動した。

(23) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

ーー再会/コックピットーー

転送された僕は、ジャージのような上下を着た格好だ。
幸いベルトやベッドまでは一緒に転送されはしなかったので久方の自由である。

見慣れたコックピットの風景。僕の椅子であるyogiboもある。
スクリーンに敵の姿があるがまだ動いていない様子。
僕はまず彼を探した。

「コウッ!」

彼も同時に僕に気が付いた。
走り寄る、彼の元へ。

「コウ……!逢いたかったよ、……コウ!!」

脚のギプスや包帯が痛々しい。でも僕は躊躇わずに両手を広げて彼を抱き締めた。

彼はきっと、僕の左目の眼帯に驚いたであろう。
問われるなら適当に誤魔化す。

(24) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

加賀先生や他のパイロットたちはただ、康生や僕の変わり果てた様子に固まり、声も出せないでいるようだ。
邪魔しないで欲しいからむしろ有難い。

戦闘が始まるまで時間はない。僕ははらはらと涙を流してただ彼の温もりを確かめた。

あの時は確かに殺そうと心に決めたが、やっぱりこうして逢えたのが嬉しくて仕方ない自分に苦笑しかない。

「コウ……コウ。」

短い猶予に僕は何を話すべき?わからない。わからないから黙って微笑み。

(25) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「……愛してる。

君だけの為に此処に来た。
君だけの為に闘う。
君だけの為にーー死ぬ。

順番、逆になったけど。
僕が君と一緒なのは変わらないから。

……どうか最期まで傍にいて。僕を見ていて。」

包帯がない彼の額、頬、そして唇に触れるだけのキスを。

もうここは僕らだけの空間だ。誰も口出しも干渉もして来ないだろう。
戦闘アドバイスもないかもだが、僕には康生がいる。
他は必要なかった。

「一緒に敵を見てアドバイスをくれないかな、コウ。」

彼が先に死んでいたら戦闘が苦手な僕はどうしてたんだろう?

(26) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

そう思うと自分の無計画に溜め息が出そうになったけど。

yogiboを持ってきてベッドの上に座る。彼と手を握りスクリーンに向かい合いたい。

いよいよ始まる。
僕の最初で最期の戦闘が。

(27) 2023/11/17(Fri) 11時半頃

学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/17(Fri) 11時半頃


──if・瑠璃川珊瑚の戦い──

大和くんの入った壺を抱えながら、私は病院の待合によく置いてある腰掛けに座って戦いに臨んでいた。
大和くんの戦いで、別の世界線?別の地球?が存在してして、そちらで戦うこともあるのだと知っている。
それをアウェイとハロは呼んだ。
七尾ちゃんの時はあちらにとってのアウェイだったから。場所のことなんて気にせずに思い切り勝負を挑んできたんだろう。
大和くんはアウェイでもなるべく被害が出ないようにしてくれたけど──私にあんな戦いかた、出来るだろうか。
でも、早く終わらせられればそれだけ早く大和くんと一緒になれる。
私が死んだら父さんには知らせずに一緒に埋めて欲しいとハロにお願いしていた。
父さんには──遺書を残しておいたから、それで察して欲しい。娘が巻き込まれていると知って、その裏に軍や政府も絡んでいると知って、世界を恨まないで欲しいから。
だからハロにも、私の名前は他で出さないで欲しいとは願ったけど…それは後に残された人々次第かもね。
私は待ち望んだその日を冷静に受け止めた。
一ヶ月近く経ってしまった。でも四十九日には間に合ったから、きっと隣にいけるよね。


私の戦場はアウェイ。
相対したロボットは完全に見た目が遠距離型の、大きな銃が車体に乗っているような見た目をしていたから私は体勢を低くさせながら近づいていく。
早く。早く終わらせたいんだ。
早く終わらせて次に繋いで、私は大和くんと一緒に眠りたいの。
でも、相手は微動だにしなかった。
そろりそろりと肉薄する。
その時──。


「っ!?」


軍のヘリだろうか。それが、私たちに肉薄する。ダダダダダダッ!と射撃音が鳴り響いて、私たちに攻撃されたのは理解できた。
だけど。


「…撃たれてる?」


跳躍して距離を取りよく見れば、相手のロボットも軍に攻撃を受けている。
勿論、これくらいの射撃では双方共にダメージは無いのだけど…。
それでも相手は沈黙している。
相手も敵だと認識されている?
ぐっ、と喉元に迫り上がってくるものがあった。だけど、それはチャンスかもしれない。
私は軍の攻撃網を掻い潜り相手に急接近。
銃と車体を引き剥がし、その合間に隠されていたコアを見つけて──ぐしゃりと踏み潰した。
踏み潰した、けど。


「終わらない…???」


ドッドッドッ、と嫌な心臓の響き方。
死ぬと思ったのに。終わると思ったのに。


ハロ曰く──。


コクピットを壊すだけでは戦闘は終わらない。
パイロットを殺さなければ勝利認定されないんだと伝えられて。


「──パイロット? と言うことは同じ人間?
 殺すの? 私の手で?
 そもそもどうやって探せば──!?」


ああ、大和くんの元に行くまではまだ遠い。
どうしてパイロットは逃げ出したのか。
軍と敵対していたらしい様子から見るに、世間からもバッシングされていたのかもしれない。
        怖い。
ロボットは破壊したのに。
直接手を下さなくちゃいけない?
            こわい、こわい。
どれだけの人がいると言うの?
こんなの、砂漠から一粒の砂を探せと言うような──。

怖い、嫌、やだ、助けて──!!!!


「ひぐっ、う、げほ…っ。」


私は椅子から降りて蹲る。
真っ青を通り越して真っ白になりながら、大和くんを抱きしめながらかからないようにだけは注意して、吐いた。
口の中が酸っぱ苦い。私はまだ、生きている。
怖い。いや。たくさんの人の恨みを買うの。
たくさんの命をこの手で摘み取るの。


「…大和くん…。」


めそ、と泣きながら震える手で大和くんを抱きしめる。
ハロは、早くどうにかしないと、とか言ってたかもしれない。けど。
応援の声があったかもしれないけど。

私はしばらく震えて動けないでいた。
コクピットを潰して終わりじゃない。
その戦い方に、畏れを抱いて。**


――IF・死した後に遺せるものはなく――

[大和 命にできたことと言えば薬を渡せるくらいだった。
それでも珊瑚は生き続けてくれて弔ってくれた。
生きて語ることができるならば涙を流しながら感謝を伝えたろうが語る口は既にない。

 孤独が心を蝕んでいっても何もしてあげることはできない。
唯一一緒に眠る未来しか希望をあげられないでいる。
それもまた歯がゆく思うこともできない。

 助けてという願いも叶えてあげられない。
ただ骨壺が珊瑚の腕の中で冷たく硬い感触を返すばかりだ。
そこに温もりはなく愛の言葉を囁く声もなく。

 まるで畏れ慄く心を凍らせてしまうように。
熱くなる思考を、優しい心を今だけは凍てつかせてしまいたいと、生きていればそう願わずには居られなかっただろう。**]


──if・珊瑚の戦い──

千映の次にパイロットに選ばれたのは大和であった。

彼の傍には珊瑚が寄り添っている。二人の仲は明らかだ。
僕と康生と同じように恋人同士なのだ。

僕はただ見守るしかできない。

勇猛果敢に闘う大和の姿は僕の胸を強く打った。
息を引き取る彼を見ながら、僕はSMSで彼が言っていた事を思い出す。

彼は愛する人、つまり珊瑚の為に命を散らしたんだ。
1日でも珊瑚の命を延ばすために。

僕は隣にいる康生の手をギュッと握る。

どうしても闘わねばならない時が来るならば、僕もーー

愛する人の為だけに闘おう。


大和が死んでも闘いはまだ続く。まるでノルマをこなすように次々と、僕らは死出の道を歩く。

ーー敷かれたレールから降りることは出来ない。

珊瑚が指名された時、僕は激しく泣いた。千映、大和を失いもう心が麻痺したかと思ったが、瑠璃川珊瑚という大きな光を失うダメージに堪えられず崩れた。

大和が亡くなった後の珊瑚の落ち込みは酷かったから、彼女が早く彼の元へ逝けるのは良いのかもしれないけど。

でも嫌だ。珊瑚を失いたくない。
僕の数少ない大切な友達を。


千映、大和に続き珊瑚の戦場もアウェイであった。
もう1つの地球の様子、街の光景が僕らの住む地球にそっくりなのに複雑な気持ちになる。

珊瑚は大和の骨壺を手にコックピットに現れる。
その姿に僕はどう声を掛けたらいいかわからない。
康生ならちゃんとアドバイスとか出来るだろうけど僕は……。

戦闘が始まる。珊瑚の椅子は病院でよく見るような腰掛けだ。

千映の時も思ったが、彼女たちは普通の女の子だ。男だってあれだが、女の子がこんな戦場に立たねばならないなんて、残酷過ぎる……

祈るように手を合わせ僕は見守る。応援というものは、僕には出来ない。
彼女は死に向かっているのだから。


しかし、彼女が悲鳴をあげた時は声をあげた。

「珊瑚ッ!」

軍の攻撃に動揺する彼女。
僕は強く唇を噛んで叫ぶ。

「珊瑚の邪魔をするなッ……!」

彼女は奮闘した。敵ロボットのコックピットを破壊したのだ。

こんなにもか細く、華奢な女の子が必死に闘っている。
なのにまだ戦闘が終わらない?!

「そうか、パイロットを……」

殺さなければ勝利にはならない。

コックピットにいないなら、パイロットは何処にいる?


「パイロットがコックピットにいないなら、向こうはロボットを操縦出来ないじゃないか。

こんなの珊瑚が勝ちでいいだろッ!不戦勝にしろ!」

理不尽だ。しかしそんな風に叫んでも事態は何も変わらない。

珊瑚が嘔吐している。
流石にじっとしていられず僕は駆け寄りハンカチを差し出すが、彼女が受け取るかはわからない。

「大丈夫?珊瑚……まだ時間はある。敵は動いてないし、まだーー」

しかしどうやって勝つんだろう、こんな闘いに。
彼女は大和の名を呼んだ。
僕も彼に生き返り助けて欲しいと切に願った。*


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/17(Fri) 17時半頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/17(Fri) 22時半頃


【人】 学園特警 ケイイチ

──コックピット/僕の闘い──

好きな人を瞳に映すだけで、こんなにも胸が熱くなるものなのか。

今ならハッキリと言える。
僕は雨竜先輩に1ミリも恋などしていなかった。
こんなに胸が騒がしくなったりなど、まるでなかったのだから。

離れ離れになっていた間ずっと彼の事を考えていた。
ただひたすらに、真っ直ぐに想いを燃やして。

恋は焦がれる。
狂おしく身を焼かれるように僕はずっと思慕を募らせた。

逢いたくて話したくて触れたくて。
抱きたくて愛しくて堪らなくて。
愛しさの極みがこの手で殺してしまう事だった。

それが叶わなかった事により僕の気持ちは更に強く強くなっている。

(33) 2023/11/17(Fri) 23時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

世界なんて見えない。
僕は彼だけを映した。
たった1つとなった瞳に。

彼は僕を見て綻んだが、やはり眼帯については心配されてしまう。僕は目線を泳がせて。

「ちょっと怪我しただけだよ、大丈夫。片目でもちゃんと見えるし。

……コウこそ大丈夫?熱があるんじゃ……」

抱き締めた彼の体温が高い。セックスの時の熱い肌とはまた違う。僕は彼が心配になった。
殺そうとした相手の身体を慮るのをどうか笑わないで欲しいが。

今はただ彼に浸りたい。僕はそんな想いでいっぱいだ。
彼のお願いならなんだって聞く。
するとーー差し出されたのは指輪だった。もう血は付着していない。彼は大切に大切にしっかりそれを握っていたようで、掌が汗ばんでいる。

「何度だってプレゼントするよ。
僕が指輪を贈る人は君しかいない。
君だけなんだから……。」

(34) 2023/11/17(Fri) 23時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

みんなが見ているが構いはしない。恥ずかしいなんて全く思わなかった。

彼の掌を下から支え。指先に愛の証である指輪を嵌める。
キラリ、と光るその輝きに僕は目尻を緩めて微笑んだ。

彼も僕に溢れる愛と決意を語ってくれる。順番は最早重要ではない、と感じた。

潤んだ目尻に唇を充てる。涙の一滴すら溢すのは惜しい。
彼の体液のすべてを飲み干したい。なんなら噴き出す血ですらも。

幾度も求め、重なり合う。
唇と唇で交わす想い。伝わる、確かなもの。

(35) 2023/11/17(Fri) 23時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

真面目な彼は熱がある状態でちゃんとアドバイス出来るかなんて心配している。

そんなのは杞憂だ。
彼はきっと的確に状況を見抜くと僕は信じているから。
たとえ間違えたとて、二人で考えたらきっとリカバリーは可能だ。

「大丈夫。君を信じているから。

ーー誰よりも、何よりも。」

心からの言葉を送った。

敵は目の前にいるが、何の恐怖もない。
僕は独りじゃないんだ。

(36) 2023/11/17(Fri) 23時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

僕は康生の椅子である病院ベッドに並んで座る。不安定なyogiboに座るのではなく膝に載せる。彼との手はしっかりと繋いで。

そして目の前に広がるスクリーンを見据えた。

今までの千映戦、大和戦と同じように敵ロボットは僕らの学校近くに出現した。

学校は休校が続いており生徒はいないはずだ。近隣にも避難勧告が出ている為、辺りは無人に近い。

それでも、下手な戦いをしたら学校や周囲の建物は倒壊するだろう。

まず僕もパイロットになったみんながそうしてきたのに習い、敵ロボットの形状を確認する事にした。

全体像からの印象を簡単に述べるなら火星人……よく漫画に出てくるタコみたいなアレを連想させる。

頭かと思われる部分は半円形で、その周りを帽子のつばのようなものが囲う。

(37) 2023/11/17(Fri) 23時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

つばからはまっすぐにカーテン状の覆いが下に延びていて、一見マントというか服を纏っているかのようであった。

ちなみに色は頭もカーテン部分も真っ黒だ。

戦闘の勝利条件は”コアの破壊”である。
あれがアストロと同じように人型と考えるなら、一見頭部っぽい頂上の半円がコアのようにも思えるが。

「コウ、あの形状から敵の攻撃方法や武器を予想出来る?
コアはどこだろう?」

彼は今までの戦闘にて溢れる知識と臨機応変な判断を披露して戦闘を助けてきた。

その知恵を借りたい。

ちなみに僕らのロボット名であるが、千映が提案したアストロという名前が浸透している。

僕は”コウ大好きラブラブ号”といううっとりするほど格好いい名前を提案したが賛同を得られず。

大和は「乾戦の時だけその名前にしたらいい」みたいな優しい意見を言ってくれていた記憶がある。

(38) 2023/11/17(Fri) 23時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

だから、僕はその名前でロボットを呼んでもいいわけだが、きっと康生が恥ずかしがると思って黙っていた。

でも心の中では呼んでおこう。

行くよ、コウ大好きラブラブ号!

僕と康生が敵についてなどを話し合っている間、向こうのロボットもじっと動かず静かにしている。

僕は密かに”コアはコックピットであり、向こうのコアに敵のパイロットが乗っているのでは”と予想を立てている。

戦闘に勝利する事はすなわち、そのパイロットを殺すに同義だと。

以前の僕なら人を殺めるという事に強く抵抗を示した。
だが、今の僕は康生の為に闘うという目的がある。

彼のためなら僕は人を躊躇いなく殺せる。
何人だろうと。どんな残虐な方法でも。

(39) 2023/11/17(Fri) 23時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

命の価値は等しいとよく人は言う。だが本当にそうだろうか?
僕の価値なんて、大和はそんな事ないと慰めてくれたがごみ屑同然だし。

康生より尊いものなんてこの世に存在しない。

その命を一度奪う決意をした僕にはもう怖いものも、躊躇いもないのだ。

暫く睨み合いのような状態が続く。

僕は気付いた。そも、アストロは僕の思い通りに動くのか。
大和戦の時は最初アストロは全く動かなかったりした。

試して見た方がいいかも。

「一歩、踏み出せ……」

声に出してハッキリ命令した方がいいのも履修済だ。
そして僕は脳内にアストロが細い脚を踏み出す様をイメージする。

(40) 2023/11/17(Fri) 23時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

コックピットに振動が走る。
画面を見るとアストロが一歩脚を踏み出している。

「動いた……動いたッ!」

まだ戦闘は何も始まっていないが僕はそれだけで歓喜の声を上げる。
コウは何か言うだろうか。

しかしそんな喜びも束の間だった。アストロの一歩を攻撃開始と認識したのか、敵も動き出したからだ。

正直カーテンの中がどうなっているのか、カーテンが硬いのかすら全くわからなかったのだが、敵の移動で1つ判明した事がある。
カーテンの下、地表との隙間に脚の爪先らしいものが見えたのだ。
敵はそれを踏み出し、アストロとの距離を詰めた。つまり双方が一歩ずつ近付いた訳である。

「何をしてくる気だ……?
よし、攻撃してみる!
アストロ、右手の爪を伸ばせ!敵の真ん中あたりを狙え!」

(41) 2023/11/17(Fri) 23時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

あれが人型ならば胴体あたりを指示した事になるか。

アストロは僕の言う通りに腕を伸ばした。先端は爪と言うよりは細長い鎌のような。
それをカーテンに突き刺そうという行動だ。

敵は避けるか?いや、移動はしない。その代わりーー

「なッ」

ただ垂れ下がっていただけのカーテンが、いきなり高速回転を始めたのだ。ギューンという凄い音がする。カーテンの裾は広がり敵ロボットの二本のスネらしきものが見えた。

ぐるぐる回転するカーテンは爪を弾き返す。キィン!と金属と金属がぶつかるような甲高い音。

「腕を戻せ、下がれ!」

攻撃が失敗したら隙が出来る。アストロに後退を指示した。
すると敵ロボットのカーテンは回転を止め、また元の形状に。

(42) 2023/11/17(Fri) 23時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「あのカーテンは装甲と言うか、覆いみたいなもの?
コウ、どう思う?
あれをまず破る必要があるのかなーー」

ゆっくり話す時間はないだろうが、僕は康生の意見を求めた。*

(43) 2023/11/17(Fri) 23時頃

学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/17(Fri) 23時頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/17(Fri) 23時頃


─IF 瑠璃川珊瑚からの連絡─

[康生の頼みを、瑠璃川珊瑚は引き受けてくれた。実際に、七尾千映は彼女の存在に助けられた事だろう。私達がそれを確かめる時間は、残念ながら殆ど無かったが。彼女は瑠璃川珊瑚へ「大丈夫」と答えたし、両親が生きる世界を守る為に立派に戦い抜いた。]

[康生は、瑠璃川珊瑚と乾恵一が自分を含む恋愛話をしてるだなんて想像もしてないだろう。自分の存在が乾恵一にとって其処まで大きいものだと、この時点では自覚していなかったのだから当然だ。]

『や。縁士だってきっと、内心では悔やんでるよ』
『俺がぶっ倒れちまったりしたから、表に出し損ねちまったとかじゃねーかな?』
『縁士は、元々誘われた側ってのもあるかもだし』
『本郷もだけど、しっかりしてるけど実は……ってパターンもあるかなって、俺は思ってる』

[彼女が疑惑を溢した時点では、これが康生の本音だった。私も、本郷真弓と天道縁士は天文部の部員だった訳ではないから、誘われたという意識の方が強いのではないかと考えていた。そうでなくとも、心の内を秘めるタイプの子だからではないかと。 ──椅子を見るまでは。]



『怒らねーよ』
『瑠璃川が最後になった時、戦えないかもってんならさ』
『それまでに俺、なんとかならないか試してみる』

[そう返した康生が胸に手を当てていた事を、彼女は知らないだろう。何処かでそうだったのよりも少し早く、康生はこの段階で補充パイロットについて考え始めていたのだ。私達は、自死すれば交代出来るという情報を既に得ていたのだから。]


─IF 大和命戦とその後─

[大和命が瑠璃川珊瑚の為に戦ったのは、明白だった。最期に口付けを交わしていたのだから、恋愛事に鈍い康生でも察せた筈だ。]

[私達のものではない地球の知らない街で、彼は命を落とした。にも拘わらず周囲に被害を出さない様にしていたのだから、立派なものだ。元より人間が余程出来ているのか、或いは瑠璃川珊瑚がそれだけ彼の支えになっていたのだろうか。確かめる術は、もう無い。康生は静かに、乾恵一の手を握り返した。参列出来る物であれば、葬式に足を運んだりもしたかも知れない。“家族”葬であれば、お邪魔する様な無粋はしないが。]

[それから一ヶ月と少し。初戦以外に校舎へのダメージも無かったから、日暈学園は授業を再開していた。だが、瑠璃川珊瑚は姿を見せなかった。]

『瑠璃川、調子どう?』

[偶に、そんなLINEを瑠璃川珊瑚へ送っていた。「心配ですにゃ……」と書かれた猫のスタンプを添えて。返信が有ろうと無かろうと、どうしているのか気に掛け続けただろう。そういう子だから。]


─IF 瑠璃川珊瑚戦─

[そしてとうとう、瑠璃川珊瑚が戦う日が来た。彼女の座る椅子は私にとっても見慣れた物で、だからこそ疑問に思った。彼女は、どうしてそれを“自分の椅子”と定めたのだろう──と。]

[康生がずっと入院していたから、手続その他で、似た椅子に腰掛けた時間は相応にあるつもりだ。だが、座り心地も悪く落ち着く訳もない其処は、自分の居場所とは到底思えなかった。瑠璃川海星が医師だとは知っているが、それでも違和感は残った。それ程までに、彼女にとって父親の存在は大きいのだろうか。或いは、別の理由が在るのか?]

[大和命と同じく、彼女はアウェイで戦う事となった。大和命で“アウェイ”を知った康生はハロに追加で幾つか質問を行い、私達が戦う相手が同じ人間だと確信を得るに至った。相変わらずの説明下手気質と、士気を下げるべきではないとの判断から、やはり誰にもそれを伝えなかったが。]



ッ、……!

[判断が裏目に出たのは、言うまでも無い。彼女はこの土壇場で、敵が何なのかを知ってしまった。真っ白な顔で、骨壺を抱いたまま蹲る。身体的事情のせいで、嘔吐する者に康生は近付けない。ベッドに座ったまま康生は呟いた。]

……焦らなくていい。まだ時間はあるから。
48時間以内に決着が付けばいい。そうだろ?

[機体を動かせなかった場合も、コックピットから逃げた場合も、勝利条件は変わらない筈だ。だが、48時間というのはあまりに短い。彼女を落ち着かせる事は出来たとしても、数十億の中から一人のパイロットを見つけ出して殺すにはあまりにも────]

探す必要なんて、ないしな。

全員……殺せばいい。
俺らが勝てば、どの道死ぬ人達なんだから。

[……康生らしからぬ発言だと、聞いた誰もが思っただろう。だが康生にとって、これは“自分が告げなければならない事”だった。天道縁士が未契約者だと知っているから。瑠璃川珊瑚が、天道縁士に不審を抱いたのを知っていたから。天道縁士がその案を口にしてしまう前に、自分が提案しなければならないと判断したのだ。]



……けど、瑠璃川がしなくてもいいんだ。
すげえ酷い話になるけど……。
死んだら、パイロットは交代できる。

[感情を無理矢理押し殺した、静かな声で康生は語る。]

──瑠璃川に限らず、さ。
「んなことするなら死んだ方がマシ」だってんなら
文字通り、そうやって逃げてくれていいんだ。

[逃げたい者が全員死という形で逃げ出せば、いずれは私か康生の番が来る。そうなれば自分がするからと、そう言ったに等しい。二席分を占めているのだから、当たる確率が相応に高いというのも計算の内だろう。]

[柊木康生は大和命ではないから、そんな道しか示せなかった。*]


【人】 学園特警 ケイイチ

──コックピット/僕の闘い──

「痛くないよ、大丈夫。」

処置が早かったからかもしれない。失明は当然免れなかったが。たまに奥が疼くように感じもしたがそんなの、彼が乗り越えていた痛みや苦しみに比べたら。

僕はもっと苦しんで然るべきだ。彼をあんなにも至り傷付けたのだから。

そうか……彼もまた、こういう気持ちだったのか?

漸くこの時僕は、彼が何故僕の自宅ですべてを受け入れたのかを知る。

(51) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

僕の”共に生きたいと願って欲しい”という望みを叶えられず、僕を深く傷付けたと考えた彼はーー罰が欲しかったんだ。

もし彼が僕の事なんかどうとも思っていなかったらそんな風には考えない。

つまり彼は、僕を……。

僕の片目も、ある意味の彼への贖罪である。
僕は「熱は慣れっこ」みたいに強がる彼の額を軽くコツン死。無理するなよと言い添えた。

僕は彼の死を望んだ。
しかし、もし僕が戦闘中に彼が体調を崩すなり倒れるなりしたら闘ってなどいられなくなる。

僕の性格をよく把握し尚且つ聡明である彼はそれをよくわかって入るのだろう。

きっと彼はどんな高熱に犯されても歯を食い縛る。
僕に脚を折られた時のように。

彼は強い。僕はーー弱い。
でも僕らは1つだから。

(52) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

きっと、負けはしない。

(53) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「平安時代の女の人?ああなんか、編笠みたいの被っているやつか。薄いヴェールがついてるよな。

下は着物だけど旅支度みたいな感じの。」

水戸黄門だののドラマで見たことがある。とはいえ、その姿にどういう意味があるかはまだ不明だ。

「そうだね。まるで隠すみたいにしてるもの。

あ!マジックでさ、助手の女の人が身体をすっぽり覆うマントを着てたりするよな。
あれっぽくもある。

下はセクシーな下着みたいな格好で。」

ロボットがセクシーな格好を?
ちょっと想像つかない。
セクシーコマンドーの使い手だろうか……すごいよマサルさん。

「布の下か……見えたら手の内がばれちゃうもんな。
頭っぽいけどそこがコアとは限らない、僕もそう思うよ。
わかった、ありがとう、……愛してる。」

(54) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

愛してるは必要ない局面だか、息を吐くように言った。

恐らくみんなは呆れ果てて既に僕たちに話しかけるのを諦めたろう。
そも、僕は敵ロボットと康生しか見てないし声も聞こえないからそれでいい。

愛してるなんて言ったから?
彼は僕らのロボット名について訊ねる。

「……ッ!……」

ドキリ。あの時彼は入院中でミーティングにいなかった。
だから知らないんだ、あの神々しいまでに素晴らしい、もし世間に広がるなら今年の流行語大賞ノミネート間違いなしの感動的な名前を。

大和は何故彼にそれを告げたのだろう。気遣い?

「いやあの、そんな恥ずかしいとかじゃないよ?

みんなの士気を高める名前を僕なり考えた結果だよ!
恐らくみんなだって聞いた瞬間感動にうち震えたはずだ!
みんな黙りこくったし。」呆れただけである。

(55) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「コウ……コウ大好きラブラブ号。

これは別に僕だけの想いじゃない、珊瑚も大和もみんな、君が大好きなんだから……!」

今の彼は僕にぞっこんだけど、この名前には引くのだろうか。
それとも照れるのか、喜ぶのか。わからない。

敵ロボットが動かないのは空気を読んだ結果か。いやそんな馬鹿なことはないが、兎に角戦闘はすぐには始まらなかった。

僕がアストロを一歩動かすと彼が褒めてくれた。
そんな些細が何よりも嬉しい。
野球だって、兄や両親が褒めてくれたから始めたんだ。
そんな事をふと思い出す。

敵ロボットに脚があることが判明し、アストロの攻撃は跳ね返されたが少し情報が得られた。

「確かに回転中は、カーテン以外の部分は無防備かもだね。

うん、わかった、やってみる!」

(56) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

防御と攻撃は同時に不可能。ならばこちらが攻撃し防御回転をさせ、すぐにまた攻撃したらいいと僕は考えた。

幸いアストロも人型。腕らしきものは二つあるから、左→右と動かせばいけるか。

左はわざと一撃目同様カーテン狙いで、右の二撃目は頭部を狙う。コアは頭部ではないだろうが、脚よりは当たりやすいと思うし攻撃が当たれば何かしらの突破口が開けるはずーー

「アストロッ!左で胴体、右で頭だッ!」

僕の命令をアストロは瞬時に理解し動く。
先程弾かれたのと同じ動きを繰り返すのは判断しているわけではなく、機械だな、という感じだが。

(57) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

向こうは回転を始め爪を弾く。だがここからが違う。
アストロは右手を振り上げてーー

傾いた。

「わあッ!」

ぐらりと右側に肩が落ち、アストロは片膝をつく。
ドシンッ!地震のような揺れ。

僕は咄嗟にコウを抱き締める。
正直ベッドの手摺に掴まった方が安全な気がするが。

「大丈夫か?!」

アストロより彼を心配する。
しかし勿論、ゆっくりいちゃつく暇はない。

敵が動いたからだ。

(58) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

追撃がなく、アストロが体勢を崩してチャンスが出来たと見られたか。

無防備なアストロに何が向かってくるのかーー 

麦わら帽子のようにこんもりとした半円形の頭が、二つに割れて開く。
プラネタリウムの展望台の頂上みたい、と思う暇があったのは、そこからすぐに攻撃が来なかったからだ。

「え?」

拍子抜け。頭が割れてそこにあったのは……

スピーカー?拡声器?
勿論ロボットの大きさから考えると戦車ぐらいの大きさか。

(59) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

そこからミサイルが出てくるという形状にも見えない。

「あれは?!」

コウだって何が起こるかわからないだろうが僕は無意識頼る。そして僕は肝心なすべき事を忘れている。

立ち上がる、という事を。

アストロは勝手に闘ってはくれない。僕がしっかりしなくては。

もしコウが指示してくれるなら建て直せるかもだが。

どちらにしろ僕らはもたついた。
そして敵はーー

それは外にいたなら、生身の人間には騒音と呼ぶレベルなのかもしれない。

(60) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

たとえるなら調べ。
軽やかで美しい音楽。

クラシックだろうか。
オーケストラ?ピアノ?

僕は音楽に詳しくないが荘厳でありながら穏やかな音色が耳に入る。

「なんだこれッ……コウ、聴こえる?なんだ、曲か?」

彼がクラシックや讃美歌に知識があれば『主よ人の望みの喜びよ』という曲であるのがわかるかもしれない。

戦闘に似つかわしくない雰囲気に戸惑う。音が流れたところでなんのダメージもないからアストロは立ち上がった。

(61) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

     ーー、……恵一。

「……?誰?」

名を呼ばれた、確かに。僕はキョロキョロする。しかし康生は僕の言った意味がわからないような顔をした。

     恵一……駄目よ、危ないって言ったでしょ。

「危ないって?お前は誰だッ」

声は女性だ。何処か懐かしい響き。

     ……貴方はどうしてそうなの?
     お兄ちゃんが作業している時に、
     傍にいたら駄目って言ったでしょ……?

(62) 2023/11/18(Sat) 11時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「作業?作業って、……あ。」

僕はベッドから立ち上がった。yogiboを離して、康生の方すら見ない。

だって、僕の脳裏にはハッキリ見えたんだ。

象さんの絵が描かれた手作りの滑り台と兄の姿が。

「にい、さ……」

僕は突然はらはらと涙を流す。
その姿は周囲にはきっと、意味がわからないだろう。

敵ロボットは微動だにしていない。*

(63) 2023/11/18(Sat) 11時頃

学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/18(Sat) 11時頃


【人】 学園特警 ケイイチ

――数年後(墓下軸の続き)――

僕と康生は恋人同士だ。

康生家族が僕の家に一時的に避難している際、僕らは初めて身体を重ね、身も心も1つとなった。

同居が終わってからも交際を続き、指輪を買いに行ったりとラブラブな関係を続けている。

高校卒業後僕は大学に進学する。康生ほど成績は良くないから同じ大学には行けなかったけれど。

大和と珊瑚は同棲を開始したが、僕は実家に住み続けていたから生活は別だ。
兄が帰国し実家にいたのも理由の1つ。

それでも週末のデートはかかさなかったし、その度に激しく康生の身体を求め貪り、僕らはゲイカップルokのラブホテルの常連と化してはいた。

将来一緒に住むかとかは、康生がどんな仕事に就くかによるかもしれない。

(67) 2023/11/18(Sat) 15時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

どんぐり亭に関しては意外にも兄が継ぐと言い出したので、僕は普通に就職活動をしようと考えていたが……

大和と珊瑚が学生の内に結婚式を挙げるという話を聞いた時、自分の事のように僕は喜び、おめでとうを連呼して何度も祝福をした。

しかしW結婚式をやらないか、という提案には驚いた。

僕と康生は海辺のリゾートホテル内の教会でこっそり愛の誓いを立てた事がある。

その後、ウェディングプロデュース事務所にて指輪を購入する時に康生に花嫁衣裳の試着をして貰ったりはしたが、正式な式を挙げた訳ではない。

将来の夢が一気に現実味を帯びドキドキする。

康生も乗り気になってくれるなら、大和と珊瑚に一緒に式をやりたいと告げただろう。

(68) 2023/11/18(Sat) 15時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

さて……もしちゃんと式を挙げるとするなら、両親の了承が必要になる。

僕の両親は割りとそういう部分おおらかだからいい。
だが、康生の両親はどうだろうか……。

「コウ。僕、君のお父さんにきちんとご挨拶に行きたい。

君と僕が挙式を挙げるとしたら、それは戸籍上などの関係でなくとも必要なことだと思うんだ……」

“お父さん、息子さんをお嫁さんに下さい。必ず幸せにします。”僕は彼の父親にそう告げたが、反応はどうだったのだろう。

彼のウェディングドレスを選ぶなどのお楽しみはそれからだから……。

ちなみに僕は康生の女装が好きで好きでたまらないので、ラブホテルに行く度にメイド服やら魔法少女の衣裳やらを持参し、彼に着て貰っては濃厚プレイを楽しんでいる。

だから康生もウェディングドレスにもう抵抗はないと思われるが。

(69) 2023/11/18(Sat) 15時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

僕は式を楽しみとし、大和や珊瑚とは四人のグループLINEで話題を弾ませた。

『珊瑚はどんなウェディングドレスにするの?』

『大和はさ、珊瑚をお姫様だっこして登場とかはどう?』

そこには幸せが溢れていた。
僕と康生にも、珊瑚と大和にも。*

(70) 2023/11/18(Sat) 15時半頃

学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/18(Sat) 15時半頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/18(Sat) 23時頃


【人】 学園特警 ケイイチ

──コックピット/僕の闘い──

康生が僕に嫉妬?
ーーマ?

僕は一瞬耳を疑う。

えッ僕が女の子(※ロボットです)に興味を持つ(※武器や性能には興味がある)のが嫌?

焦った僕は慌てて言っただろう。

「そんな事あり得ないよ!!
あのカーテン下の身体がどんなにナイスバディだろうと、コウに敵うはずがないじゃん!

考えてくれコウ、君の花嫁姿は三国一だった。あんなに可愛らしいウェディングドレスで僕を魅了しまくった癖に、あれ以上があると思う?

あり得ないな!!」

(79) 2023/11/19(Sun) 00時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

そもそも相手はロボットだ。
女型でもせいぜい土偶だ。
そして痴話喧嘩をしている場合ではない。

だいたい、嫉妬という感情を彼に対して先に抱いたのは僕だ!

合宿にて彼が倒れた時、担架の上に寝そべる彼から僕は珊瑚へのお土産を預かった。

康生の性格を落ち着いて考えたら、友達から頼まれたら好意の深さに関係なくお土産を買うのは僕ですらわかることなのに。

あの事件がなければ僕は康生への恋心をしっかり自覚することはなかった。

嫉妬は度が過ぎれば困るものだ。だけど僕は、こんな僕に嫉妬してくれる彼が凄く可愛かったしーー嬉しかった。

(80) 2023/11/19(Sun) 00時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

僕らはもう憚る事なく愛を語りあう。
場の空気を読んでいない自覚はあったが、もうすぐ死ぬのであれば、遠慮なんかしてる場合はない。

そういう意味では”行け、コウ大好きラブラブ号!”と高らかに叫びながら闘っても誰も気にしないのかもだが、照れる彼が可哀想だからやめておこう。

彼が指摘するように、僕は自身への好意に鈍感というか懐疑的だ。
それが彼を拗ねさせていたなんて思いもよらなかったから、
微笑んで彼の頭を撫でただろう。

正直もしこのアツアツぶりを敵パイロットが見ていたらドン引きして白旗を上げてもおかしくはない。
そんな勝ち方もありだったろうか。いや、ない。

(81) 2023/11/19(Sun) 00時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

アストロが揺れた時、僕は彼が転ばぬよう支えるのには成功した。しかしこの時点滴が抜け落ちてしまう。
僕はそれに気を取られ、彼を心配する。戦闘より彼の方が大事だから。

彼の注意喚起がなければ音楽にすら気付かなかったかもしれない。

康生は曲を知っているようだ。

「レヴァ?ああ、アニメか。その劇中曲なの?」

僕はアニメにはさほど詳しくない。特にレヴァは話題になっているのは知っていたが見ていなかった。

僕が知っている範疇の知識は、少年がロボットに乗り闘う事。

そうだ、今僕らはロボットに乗っている。
アニメと同じーー?

しかし僕は脳内に聴こえた声に気を取られてしまった。

(82) 2023/11/19(Sun) 00時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

聴こえる、見える。
僕は耳を澄まして目を閉じた。

嗚呼。あそこは僕の家だ、庭だ。どんぐり亭は今より真新しい。庭にはーー滑り台がある。

……声の主は母さんだ。
作業というのは、兄さんが滑り台を作ってくれた時の事。

あの時僕は滑り台の完成が待ちきれなくて兄にじゃれついた。

『痛いッ』

金槌を使っていた兄が悲鳴を上げる。指を怪我したのだ。

美しいピアノの旋律は、僕にじわじわ浸透していく。
隣で誰かが叫んでいても聴こえない。

忘れていた。そして僕は思い出した。小さな時は家にあったのに、今はないもの。

(83) 2023/11/19(Sun) 00時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「……ピアノ、だ。うちには大きなピアノがあったんだ。

小さな頃に兄さんが弾いていた。ピアニストになりたいって、言ってて……

いつか、そのピアノはなくなった。僕は忘れていたけどあれは、兄が指を怪我してピアノを辞めたから。

……僕のせいで怪我をしたから。」

   ーーやっと思い出した?
   そう、貴方は匡の夢を奪ったのよ。
   そしてそれを忘れ、のうのう生きてきた。

「兄さんは僕を責めなかったし、指を使わなくていい新しい趣味を始めた。それが天体観測だったんだ……。」

兄の指は動かなくなった訳ではない。ただピアノのように繊細な動きが必要とされるものは難しくなっただけ。

(84) 2023/11/19(Sun) 00時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「兄さんは優しかった。自分の夢を奪った僕にずっと。

僕を護り愛してくれた。
それなのに、僕はーー兄さんの恋人、を……」

自分のしでかした大きな罪。
それが消える事はない。

「あ、あ、ーーあああッ」

僕は叫んだ。肩を震わせ、頭を抱える。

「兄さん、ごめんなさい。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ

僕はやっぱり最低だ、最低の蛆虫だッ

他人を傷つけたり迷惑をかけることしか出来ないクズだッ」

音楽はどんどん大きくなる。

(85) 2023/11/19(Sun) 00時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

頭が割れそうだ!

僕は見る余裕がないが、敵ロボットのカーテンがゆっくりと開いた。

確かにロボットは人型であった。しかも僕らの予想通り女性の身体をしている。胸に二つの膨らみ、腰は細くしまり、お尻が大きい。

     ーーそうよ、貴方は最低なの。
     だから私とお似合いなのよ、恵一くん。

また声だ、今度はさっきより若い。

「……せん、ぱい?」

     ーー貴方みたいな無価値な人間が
     誰かに愛されるわけないでしょ?

     私も匡から愛されなかった。
     貴方も同じ。
     貴方が恋人だと思ってる人は、本当に貴方を好きなの?

(86) 2023/11/19(Sun) 00時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「コウは……コウは、僕を愛してるって、愛してる、って、……ちがう、の?違うの、か?」

言葉が消え入る。彼は僕にまだ語りかけているだろうか。

敵ロボットは両手を広げるようなポーズを取った。
その形状が変化する。
胸の膨らみ二つから無数の鋭いトゲが突き出たのだ。

     いらっしゃい、恵一くん。
     慰めあいましょ?
     さあ、私を抱いて……早く。
     貴方の太いので貫いて……

(87) 2023/11/19(Sun) 00時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「……雨竜、先輩、……せん、ぱい……」

敵ロボットと雨竜先輩の裸体が重なる。
アストロが一歩踏み出した。
それが僕の意思だからだ。

僕は完全に精神を支配されている。このまま進めば死の抱擁が待っている。

僕を救えるのはたった一人しか、いない。*

(88) 2023/11/19(Sun) 00時頃

学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/19(Sun) 00時頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/19(Sun) 07時半頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/19(Sun) 10時頃


【人】 学園特警 ケイイチ

──コックピット/僕の闘い──

僕が正気であったなら。

点滴が外れ床に倒れた康生をそのままになんかしなかったろう。

だが今や僕の精神は完全に蝕まれていた。

清らかな音楽に耳を犯され、思考を奪われて。
懐かしい光景を見せられて。

だが、母の言葉はありもしないものだ。

(96) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

確かに兄は怪我をした。それは事実。そしてピアノを辞めたのも指が理由だ。

だがそれで僕を責めるような母ではない。幼い僕が兄にじゃれついてしまったのは仕方ない事で事故でしかない。

むしろ兄も両親も、僕に自責の念を抱かせぬ為に必死に隠してきたぐらいだ。

つまり僕は脳内に偽りの声を聴いた。ただし、外部からその声が実際に送り込まれた訳ではないだろう。何故なら、母の台詞を捏造するには僕の過去を正確に把握する必要があり、そんなのは外部の人間には不可能だから。

僕は起きた事実は把握していたから、母の声の内容は恐らく、僕の深層心理が産み出したものなのだ。

人は勝手に他人がこう思っているんじゃないか、を産み出し思い込むのが得意であるから。

(97) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

それは僕が知らずに抱えていた重荷であった。

では何故それが唐突に解放されたのかーー。

一度、康生に焦点をあてよう。

もし彼が正気であったなら。
聡明な彼は気付いたに違いない。僕の異変と敵ロボットの行動の関連性に。

敵ロボットの発する音色は精神を操る波動であった。
行動を直接的に指示するとか、そこまで絶対的な力はない。しかし、心弱い人間の精神の隙間を突く作用があるのだーー

康生が冷静さを欠いた可能性は二つ、またはその複合が考えられる。

(98) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

1つは、彼もまた敵の精神攻撃に巻き込まれた場合。
音楽は全員に聴こえているからだ。ただし影響はその人間の精神の強さによって変わるだろうし、パイロット以外にはただの音色であり作用はない可能性も考えられる。

もう1つは、彼が僕以外に気を払う余裕を失っているから。
今や僕に対する彼の愛情が限界まで膨れ上がっているのは明白。何度も指輪を嵌めて欲しいと願うところから不安定さ、目に見える確かなものへの依存傾向も窺われる。

彼は僕に愛されたくて。
その愛がまやかしだったり、失われるのを酷く恐れている。

子供のように。

(99) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

僕しか見えない。僕の状態、彼が僕を見ているか以外に興味がなければ敵など気にする余裕はないだろうから。

更に言うなれば体調の影響もある。熱に浮かされながら冷静なら彼はスーパーマン過ぎるとも。

どういう理由にせよ、彼はただ僕だけを見つめていた。
そして絶望に至る。

狂気という沼がすっぽりと僕ら二人を飲み込んで、絡み付く泥が身体を離さない。

蛆虫にはふさわしい最期なのか。僕らはこのまま、敗けてしまうのかーー。

(100) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

ふら、と前に僕の脚が出た。同時にアストロも一歩前に動いた。それが止まったのは、床を這いながら僕に近づき、康生が足首を掴んでくれたから。

僕は一瞬ポカンとして、視線を落として彼の事を漸く眺める。

コックピットの床を腹で拭くように、身体を引き摺り近づいた彼はまるでぼろ雑巾みたいだ。

何故彼はこんなに必死なんだ?
僕は蛆虫で、みんなから嫌われている。必要となんかされないし、価値もないのに。
止めて何をしようと?

まともな判断力を欠いた僕は混乱する。

(101) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「違うよコウ……最低最悪なのは僕だけだ。意気地無しで中途半端で、君を殺すと約束したのにそれすら出来ない役立たず。

君は違うだろ。だって人を殺せるなら……みんなをパイロット席に送り込んで殺せるなら、地球を護れるじゃないか。

死にたくないと喚き、逃げようとし、他人が死ぬことも許容出来ず、ただ我が儘を叫んでだだを捏ねた僕とは雲泥の差がある。

君は立派で勇猛果敢な人間だよ、コウ。
蛆虫なんかじゃない。

……だから。」

僕はふ、と寂しそうな表情を浮かべる。諦めきったような、それでいて唇にだけは弧を描く。

「君に相応しくないんだ、僕なんか。」

(102) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

幾ら僕が彼を愛しても、僕には愛される資格はない。
そしてこんな僕を彼が愛するなんてやっぱりないんだ……

すると不思議な事に、彼も僕の気持ちを疑う言葉を口にするのだ。

「……僕の気持ちは、ずっと変わってないよ。
ただ自分がどんな人間かを思い出したに過ぎない。

赦されない罪を抱えた人間であるのを……

行かなくちゃ。彼女が待ってる。抱いて欲しいって言ってる……。」

彼の手が僕から離れた。嗚咽も聴こえたが、それは更にボリュームを増した音楽が消してしまう。

脚が動かないまま床に蹲る彼は蛆虫というよりは芋虫みたいだ。

(103) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

僕は彼を置いてきぼりにして前に進んだ。スクリーンの方へ。
アストロも同じように歩き、敵ロボットとの距離をどんどん縮めていく。

   ーー恵一くん、早く。
   セックスしましょう?
   抱いて……。

「うん、今行く……僕のおちんちんが欲しいんだね?」

うっとりした表情を僕は浮かべる。

そしてーーアストロの身体に変化が起きた。いや正確にはロボットなんだから変形と呼ぶべきか?

アストロの下半身、股間の部分が両引戸のように開き、四角い窓が出来る。そこから現れたのは細長い形状のーー黒光りするもの。

形は男性の性器にそっくりだ。金属のような材質感からそのものよりは大人の玩具に近い。

(104) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

アストロの変形は始めてではない。大和戦の時も起こった事だから、元々そういう決まった機能や武器が内臓されているというより、パイロットの思念に応じて変わるというのが正しいか。

瞬間に行われる分子的な構造変化はこの地球の化学レベルでは不可能だが、アストロが瞬間的に現れたり消えたりするのを考えたら、アストロの存在する次元では可能なのだろう。

僕が抱きたいと望んだからそれに必要なものが現れたのだ。

   ーー逞しくて素敵よ、恵一くん。

敵ロボットは股を開くようなポーズはしていない。
ただ両手を広げ立っているだけだ。アストロを串刺しにする武器を胸に露出させながら。

それでも僕は恍惚の表情で両手を広げる。

(105) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

アストロも両手を上げ敵ロボットと熱い抱擁を交わそうとーー

「あッ!」

ガタッとまた大きな揺れがコックピットを襲う。

スクリーン内のアストロはまた、右側に傾いて倒れる。膝をつく。

「?!……な、……」

びっくりした僕は一瞬正気に返った。

なんだ、何が起きている?
敵はーーもう目の前にいるじゃないか!

「コイツッ!……アストロ、脚を払えッ!」

立ち上がる暇はない。アストロは片膝をついた姿勢から脚を伸ばして敵ロボットの足首を狙う。それは見事にヒットし、敵ロボットが仰向けに倒れる。

(106) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

    ーー何するの?!恵一くん!

    ーー恵一おいやめろッ!
    お前は大人しく死ね、死ぬんだッ!

雨竜先輩と兄の声が交差する。

「黙れッ!兄さんの声で騙るな、この下衆がッ!」

そうだ、僕は操られたんだ、この敵ロボットに。
僕の大切な兄や、心の負債である雨竜先輩を利用しーー

「ふざけやがって……!
そんなに犯されたいか?ああ?
なら、くれてやるよッ!

アストロ、その薄汚い牝をーー犯せッ!」

カッとなった僕はめちゃくちゃな命令を下した。
アストロはすぐに立ち上がると、倒れている敵ロボットにマウント姿勢を取る。

(107) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

そしてーー貫いた。

正しくは、股間の武器を寝たままの敵ロボットの下腹部辺りを突き刺した。

「あ?上手いかちんぽは、このアバズレがッ!

死ね、死ね死ねッ!

よくも僕を操り、僕とコウを引き裂こうとしたなッ!

赦さない、絶対赦さないッ!」

僕は喚いた。ロボットでロボットを犯す様は滑稽でもあり地獄絵図でもある。

先程出現した黒光りするものは武器であった。よく見ると先端が鋭く尖っている。
アストロが腕立て伏せをするように動けば、自然攻撃となった。

(108) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

カーテンに護られていない敵ロボットの胴体は、ぐさぐさと刺されて地面を鈍く跳ねる。ぴく、ぴくと痙攣する死体みたいに。

装甲が剥げて、コアの一部が露出した。

「はあ、ッ……はあッ」

コアはへその裏辺りに隠れていて、丸み帯びた形をしている。
後一突きしたら、完全に破壊できる。

怒り狂う僕はまだ、床に伏した康生の傍に駆け付ける事は叶わない。真っ赤な瞳でスクリーンを睨み据えているが。

ーーこれで闘いは終わるのか。*

(109) 2023/11/19(Sun) 11時半頃

学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/19(Sun) 11時半頃


私の場所。それは、もし大和くんと結ばれた後だったら変わったに違いない。
自宅のソファ。若しくは、リビングのテーブルと椅子──なら椅子の方になるのかな?
大和くんと結ばれる前に選ばれたその腰掛けは、家でも使っているものだった。

それは、父さんの仕事を見にいった時に座る椅子だった。
それは、母さんの安否を心配しながら座っていた椅子だった。
それは、コトコト鍋を火にかけながら様子を見て、父さんを待つ椅子だった。

母さんが、座ってた椅子だった。
今でもこの椅子は、私の家のキッチンにある。
それを知るのは私の家に来た人だけ。


──if・瑠璃川珊瑚の戦い──

私が指名されたと伝えた時、恵一くんは泣いてくれたね。
でも、私は最後じゃなくてよかったと思ってたんだ。
だって。私は、最後に選ばれたら絶対に楽な道を選ぶから。
たぶん、戦いが始まる前に命を断つだろう。
ハロに手をかけないのは絶対に私と大和くんを同じ場所に眠らせてくれると思っているからで、それ以上でもそれ以下でもなかった。
いつまで経っても、私の中ではハロは私を巻き込んだ側──敵のままだったから。


「泣いてくれてありがとう。
 でもね。
 私、やっと大和くんと一緒にいられると思うと
 ちょっとホッとしてるんだ。

 ──今の私は大和くんが
 1日でも長く生きてほしいと願ってくれたから
 それだけで、生きてるから…。」


そして、次の人にバトンを繋げるためだけに戦うのだ。
私がその選択肢を狭めてはいけないと考えている。
…だって私と違って、生きたいと願う人はいるでしょう?
私たちと同じ状況になってもなお。
だから、私は巻き込まれたみんなのためだけに戦うのだ。
生きて幸せに暮らしましたとさ、となる誰かさんの為には戦えなかった。


お葬式のことを思い出す。
誰かを呼んだわけではないけど、拒みもしなかったからパイロットメンバーは来ていたかもしれない。
ああ、でも、ハロには出てこないでとお願いしていた。
あくまでハロは私の敵。巻き込んで大和君を死に追いやり私やみんなの命も奪ってしまう側だから。
お葬式の間、私は泣き腫らした目で大和君の1番近くにいた。
数珠を握りしめて、涙はこぼさなかった。もう沢山たくさん涙を溢して、でも大和君は生き返るわけはなかったから。
祭壇に飾られたお花は少なくて──それでも、来てくれたみんなにお花を入れてもらう。
菊よりこっちが好きだと、白い百合を沢山用意してもらっていたから、大和君は白い百合に覆われていった。


白い百合に覆われた大和君の額に手を添える。
冷たくて、命を感じられなくて。その時、私は枯れ果てたと思っていたのにまた涙を流してしまった。
離れたくない。このままでいてほしい。それでも火葬を選んだのは、より長い時間を共にいようとしたなら肉体の保全が難しいと判断したからだった。
腐らせてしまうよりは、きちんとした手続きをして共に在りたい。本来なら親御さんに連絡をするところだろうけれど、さまざまな混乱の中でそれがうまくいかないらしい事は分かったから、父さんに頼んだのは完全な私のわがままだけど。
冷たい唇にキスをする。
そして納棺を見守って──。


「みんな、来てくれてありがとう。
 ──大和君もきっと喜んでる。」


そうみんなに頭を下げて、私は火葬場へと父さんと二人で向かった。
二人でよかったと思う。何なら一人きりがよかった。
棺が運ばれてしまう。あれを何と呼ぶのかわからないままだけど、棺が、大和君が、向こう側に行ってしまって…。


「やだ…。」


いつものお坊様が眉を顰めながらも読経を続けてくれているのに。


「いや、やだ、大和君、大和君…!!!
 燃やしちゃ嫌、ダメ、死んじゃやだ、
 私の隣にいてよ、ずっとずっと──!!!」


私の慟哭は叶うことはない。
泣き崩れる私を横に、死者の弔いが続けられる。
父さんは私の肩を抱きしめようとしてくれたけど振り払ってしまった。
一人になりたくないけれど、誰でも良いわけじゃない。
大和君じゃないと嫌。
大和君じゃないとダメ。

──泣く事で大切な人が生き返るのならば、どれだけの人が生き返れるのだろう。
母さんの時にもそれが叶わない事を知っているのに、私はそれでも涙を止められなかった。


『大丈夫だよ。毎日ちゃんと食べてるもん。
 大和君も美味しいって。』


柊木くんの心配するメッセージに、私はそんなメッセージと共に写真を送る。
大和くんの前にご飯を並べたもので、それが答えだ。
ご飯を一人分しか作らないくらいの理性はあった。あったけど、そうでもしないとご飯を食べられなかった。生きていけなかった。
大和くんの願いを叶えられなかった。
でも、最後の優しさが手元にあるから何とかやっていけたんだ。
誰かに会う気はあまり無かった。
ハロは敵。だから、情報収集するつもりもなかった。

ただ私の望みは。
誰かの選択肢を狭めない。
大和くんの願いをなるべく叶えて、最期は一緒に眠る。それだけだったから。


嗚呼、でも──。
そう、こんな闘いにどうやって勝利する?


生憎、私は頭が悪い。成績が悪い。でも、──何故だか人一倍察しが良い瞬間がある。
だから嘔吐した。
そう、私は瞬間的に察してしまった。
どうせこの世界を終わらせるのなら、この世界の人間全て根絶やしにして仕舞えば良いんだって。
恵一くんが戸惑う気持ちも分かるよ。だって、対人で戦闘で勝利なら、相手が戦わないなら不戦勝にしてくれても良いのにね?
でも、そうはならないらしい。
相手のパイロットを絶命させるまでそれは続く。
差し出されたハンカチに手を伸ばしかけたけど──伸ばした手をグッと握り込んだ。
これは、私が使うべきじゃない。
恵一くんか、恵一くんが大切な人が使うべきだ。
私が汚したらダメになっちゃう…。


「ハロ、吐瀉物を除去だけして。
 それくらいできるでしょ?」


私の中でハロは敵だから冷たく言い放つ。
雑菌だらけだろうそれを、柊木くんもいる空間で放置していたらその方が危ないだろうから。
だって彼らは、まだ生きてる。私よりも長く。


「恵一くん、ありがと…大丈夫。」


ウソ、全然大丈夫じゃない。
だけど私は、そう言って大和くんを抱き直して座り直す。
柊木くんのコメントにも冷静に頷いた。
そう。私はそれに気づいてしまったから。
そんな事、私には耐えられない。怖い。そう思えたけど──。


「…あは。そんなの、ダメだよ…。」


私は柊木くんに乾いた笑いを返す。
だって、それは一番の悪手だ。


「そんな事したら、私が1番嫌だった事を
 誰かに押し付けることになるんだよ。
 私が嫌なのは、誰かの選択肢を狭めない事。
 だから、最後のパイロットになるまで
 そのバトンを繋げる為に私は戦うの。
 そこから逃げたら。

 …コイツらと同じになってしまう。
 また別の人を巻き込む可能性がある。」


ジロリとハロを睨みつけてから私は前を見つめた。
目を一度閉じてからスウ、ハア、と深呼吸を幾度か繰り返す。


どうしてこの地球のパイロットは逃げ出したのかな?
たぶん説明はあるはず。このままだと負けてしまう。48時間以内。もしかして、戦う事を放棄して──此方にも勝たせないようにするのは何かの意趣返し?何だろうか。
それとも、もしかして意識不明の重体で戦えない──いや、それならコクピットの中で死んでるはずだよね。たぶんだけど。
考えても考えても仕方がない。
だから私はゆっくりと目を開けた。


「──殲滅戦、始めるよ。
 見たくなければ見なくて良いから。

 こんな事、私一人で…十分だもの。」**


【人】 学園特警 ケイイチ

――数年後(墓下軸の続き)――

僕らの就職は大学に進学したらもう目と鼻の先だ。

康生は教師になる道を選択。
高校時代にいつも彼から勉強を教わっていた僕としては、適任だと一番に感じる立場。

「コウが先生になるのか……教壇に立つ姿、きっとカッコいいだろうな。スーツも似合うと思うし。

でも、君から勉強を教わったという意味では僕が最初の生徒だけどね?」

未来の生徒たちに謎のライバル心を燃やす。

説明下手に関しては、愛情なら身体を重ねるだけであっという間に互いに伝えられるが教師ぬるなら彼に生徒を抱かせる訳にいかないし(いや生徒が彼を抱く……?どちらにしろ駄目だ駄目だ!)、必死に二人でトレーニングに勤しんだ。

(125) 2023/11/19(Sun) 20時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

対して僕の方はといえば、意外な形で就職先の目処がついてしまうのだがーー。

僕と康生は珊瑚たちと一緒に結婚式と披露宴を行うことになった。

結婚式は別々に。披露宴は一緒に。僕は仲良しの四人でそんな嬉しい事を出来るだけで幸せだったし、形に拘りはない。

拘るのは康生のウェディングドレスだけだ……!!

そして僕は、結婚における最重要イベントに挑む。

(126) 2023/11/19(Sun) 20時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

康生の両親と僕は既に知り合いである。僕の家を避難先として提供した事があり、以来は家族ぐるみの付き合いだ。
四人で食事をすることなどもあったり。

僕らは各両親からどう見られていたのだろう?

ただの仲良し?友達?親友?だが、同居中に一緒に風呂まで入るのは友達を越えた関係だ。
キスとかは見られないよう極力気をつけて隙を見ていたが、
僕の両親は薄ら勘づいていた。

それで先駆け、僕はハッキリと事情を説明した。

彼と僕は恋人であり、最愛であり、将来を誓った仲であると。

流石に二人ともびっくりした様子だった。しかし僕の両親は性嗜好や属性に偏見はない。ただ純粋に息子の幸せを祈って祝福してくれた。

「恵一、康生くんとずっと仲良くね。二人で助け合うのよ。

助け合うというのは、どっちが頑張りすぎても駄目なの。
貴方も康生も好きな人のために無理をするタイプだから……気をつけてね。」

(127) 2023/11/19(Sun) 20時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

母の言葉に僕は深く頷くと同時に、僕を責めたり異常扱いしない二人に深く感謝を捧げた。

そしていよいよ、康生の両親への報告である。

僕はその日新調したスーツに身を包み、柊木家を訪れた。
お土産を渡したり丁寧な挨拶の上、ついに。

息子さんをお嫁さんに。
一見おかしな言葉だが僕は真剣だ。康生のお父さんに何を言われても諦めない、食い下がると心に決めていたから、床に頭を擦り付けてお願いを続けた。

僕のお嫁さんは康生しかいないんだ!

そこでお父さんに言われた言葉に僕は驚く。

「息子……?僕が……息子、……それって。

ーーあ。」

(128) 2023/11/19(Sun) 20時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

思わず敬語を忘れた僕は漸く理解する。そして、ポロポロ涙を流した。激しく頷いて。

なんて暖かく、心の広い答えだろうか。

「ありがとう……お父さんッ!!」

立ち上がった僕は感極まり、康生のお父さんに抱き着く!
康生とお母さんの目の前で!

ぎゅーっと抱き締めたお父さんは何処か、康生と似た香りがしたような気がした……

……一悶着あったかないかはともかく、僕は康生の家で夕飯を呼ばれる事に。
僕がお父さんから事業を継ぐ話をされたのはこの時だ。

正直驚いた。僕が自分を糞雑魚ナメクジ呼ばわりするのは康生が傍にいて自信を与えてくれるお陰で随分軽減されている。

(129) 2023/11/19(Sun) 20時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

そんな大きな期待に応えられるか震えたが、康生がこれで心置きなく夢を追いかけられるなら。

しっかり力強く僕は頷いただろう。

それから、僕は急速に康生のお父さんと仲良しになった。
まさかお父さんがゲームが好きだなんて思わず、しかも一緒に遊ぶと中々に上手くて。
新しい友達が一人増えたみたいな喜びがあった。

康生も僕の両親や兄に甘えたり、交流を深めたりしてくれたら嬉しい。

ウェディングドレスについては、僕らのLINEでは一番活発に交わされた話題だったかも。

康生には窘められたけど、思うと僕が言ったような無邪気はむしろ昔の康生がよく言うような口振りだった。

彼は教師という目標を得て着々大人に成長しているのか。
僕もしっかりしないと追い越されてしまうし、かかあ天下が発生し尻に敷かれてしまうかも?なあんて。

(130) 2023/11/19(Sun) 20時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

珊瑚が送ってくれた写真はとても素敵だった。大人びはにかむ彼女の艶姿が素晴らしい。
これがマーメイドラインというのだなと僕は学ぶ。

珊瑚のアドバイスの通り、康生にはお姫様ぽいのが似合うと僕も思った。

前に試着した時もめちゃくちゃ可愛くてその後ホテルに駆け込んで五発ぐらい抜かずにしてしまったし……。

僕には何故かたまに思い出す不思議な記憶があった。

康生と二人で訪れた、想い出の教会。
そこで彼はウェディングドレスを纏い、僕となんちゃってな挙式を挙げるのだ。

参列者は誰もいない、お遊びの。

あの記憶はなんだろう。
僕らはとても悲しい運命を背負っていた気がするんだが……。

(131) 2023/11/19(Sun) 20時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

ーー僕らのウェディングベルーー

愛を誓うだけなら僕らはもう済ませていた。だから、もしかしたらこの挙式は僕らではなく、見守ってくれる両親たちや祝福をくれる友人たちの為なのかもしれない。

勿論僕はセレモニーが大好きだし、康生の可愛らしいウェディングドレスを拝めるだけで嬉しいから、可能なら何回でもやりたい。

ちなみにドレス以上に僕が拘ったのはガーターベルトだ。

「花嫁は白のガーター!!これが正義。」

びしッと指を立てる僕を康生はどんな目で見ていたか。

嗚呼、裸にガーターと白スト、そして頭にヴェールだけをつけた康生とガンガンやりたい!

(132) 2023/11/19(Sun) 20時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

僕の妄想は膨らんだ。
どうでもいい僕のタキシードは灰色。大和の白もかっこよく迷ったが……

僕らの式はお父さんと共に歩くバージンロードを康生がおごそかに歩き、それを僕が迎え入れるオーソドックスに始まった。

最前列の僕の母さんは嗚咽し、兄と父が支えている。

神前でみんなに見つめられて、改めて愛を誓い、僕は彼の唇に唇を寄せる。

ピンク色でふっくらして。
微笑むと天使みたい。
そんな彼を花嫁として。
永遠に、僕のものにーー。

珊瑚と大和たちの挙式には、僕らは参列者として席につく。

(133) 2023/11/19(Sun) 20時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

ビシッとタキシードを決めた大和はイケメンだ。キリッとした眉、意思を感じる瞳。
彼なら絶対珊瑚を幸せにするだろう。

珊瑚は本当に綺麗だった。
小さな頃の彼女を知る僕は、人の成長って凄いなとしみじみ思う。

二人の幸せが自分の事のように嬉しくて堪らない。

「おめでとう、珊瑚、大和。末永く幸せに……!」

二人の手を硬く握り僕は告げただろう。*

(134) 2023/11/19(Sun) 20時半頃

学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/19(Sun) 21時頃


──if・大和の葬儀と珊瑚の戦い──

僕はまだ、珊瑚みたいに近しい人を亡くした経験がない。田舎の祖父母も健在だ。

葬儀にはまだーー慣れない。

下級生であり千映が亡くなり、その喪が明ける暇もなく大和の葬儀を迎える。

何度も友を失い続けたら悲しみも苦しみも麻痺するのか?
そんな事はない。

僕にだって価値があると言ってくれた大和。
最期まで珊瑚を愛し抜いた男らしい大和。

白い百合に囲まれた大和の死に顔は穏やかだ。
生きて眠っているみたいにしか見えない。


僕の悲しみ、僕の憤り。

恋人である珊瑚とは比べ物にならなくとも、こんな若く死ぬ理由なんかまるでなかった大和の死に抱えきれない想いで苛まれた。

葬儀の後にパイロットに選ばれた珊瑚。
大和の元に行けると語る彼女は微笑んでいたから、寂しい嫌だなんて僕は叫べなかった。

本当は、珊瑚を失うのが僕は凄く嫌だったし堪えられなかったが。

こんな地獄は何時迄続くのか。


珊瑚は僕のハンカチを受け取らなかった。それは拒絶でないのは、いつも優しい、優しすぎる彼女を知っている僕にはわかる。

吐瀉物を処理して欲しいと言ったのもきっと康生のためだ。

こんなに追い詰められて自分が大変なのに他人を慮る彼女は……本当に素敵な女の子だと思う。

康生のアドバイスは冷静で合理性の高い内容だ。しかし、結果論ではそうでも全滅させたらいいという言葉に僕は戸惑った。
珊瑚はーー自らでなんとかすると、力強く語る。

「……珊瑚、……」


立派過ぎる彼女。女の子なんだからもっと弱音を吐いてもいいのに。大和の死が彼女を強くしたのだろうか……愛の力が。

彼女は僕らに死の理不尽を押し付けた存在に最期まで抗う覚悟だ。

僕は珊瑚に頷く。

「君は出来る。君は独りじゃない。大和がいる……君の中に。」

僕は彼女の舞台を見守る。
どんな凄惨な光景からも目を逸らさないと心に決めた。*


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/19(Sun) 21時半頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/20(Mon) 00時頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/20(Mon) 03時半頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/20(Mon) 08時頃


【人】 学園特警 ケイイチ

ーー僕の闘い/コックピットーー

カッとなった僕は歯止めが効かない。敵ロボットに何度も何度も武器を振り下ろした。

刺しているのはアストロなのだが、僕の手にはその手応えが伝わってくるような不思議な感覚の共有がある。

特に念入りに刺したのは子宮の辺りだ。剥がれたのは装甲だが
肉を裂いて中身をメチャクチャにするように。

最初はそこにコックピットがあると考えたのだ。もしそうなら、闘いはあっという間に決着が着いていただろう。

(137) 2023/11/20(Mon) 09時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

丸くモンスターボールみたいなつるりとした形状のコックピットは腹部に隠れていた為致命傷は逃れる。

とはいえ露出したならそれを一気に突き刺せば終わりだ。

ーー終わり、つまりは勝利。
すなわち僕の死が確定する。

「……アストロ、武器を下ろせ。そのままマウント姿勢で押さえ付けていろ。」

そう、静かな声で指示を出す。
そして僕はスクリーンに背を向けた。
一同を見渡した僕の頬は紅潮し目は輝いている。

(138) 2023/11/20(Mon) 09時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「みんな……僕はやったよ。僕は、みんなみたいに正義感の強い人間じゃない。弱虫で意気地無しの矮小だよ。

兄さんには何をやっても及ばなかった。
頑張っても失敗ばかりでーー活躍できた野球も怪我で止めることになった。

取り柄がない、価値がない、僕だ。

だけどーーだけど僕はもう勝ったも同然だッ
ここまで追い詰めたなら、僕の勝利だッ!

僕はーー僕はやったんだよ。
……ねえ、褒めてよ。
みんな、七尾さんの事も大和の事も、褒め千切って感謝してたじゃないか。

僕にも感謝してよ……僕、死ぬんだよ?」

それは当たり前に得られると思っていたのに、誰も、何も言わない。もしかしたら音楽攻撃の影響で動けないのかもしれないが、僕にはみんなが畏怖の表情を浮かべているような気がした。

みんなは僕を見ている。

(139) 2023/11/20(Mon) 09時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

だが一歩下がり、気持ち悪そうに、道端の吐瀉物や腐った林檎でも見るかのような視線を投げている。

僕の差し出した手を取るものは誰もいない。
舞台の幕はもうすぐ降りようとしているのに、拍手喝采は起きない。

ただ独り僕は、ポツリと。

「……コ、ウ。コウ……コウッ!何処、何処にいるんだ?」

みるみる青ざめ狼狽した僕は彼を探した。しかし立っているメンバーにはいないし、彼の椅子である病院ベッドは空っぽだ。

点滴が倒れている。
その先の床にも”何か”が転がっているが……なんだ?

僕は近付き、足先で”それ”を転がして仰向けにする。

(140) 2023/11/20(Mon) 09時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

乱れた髪はぼさぼさで艶がない。顔は赤黒い腫れがあり形が崩れて醜いし、巻かれた包帯もゾッとする感じだ。
もっと酷いのは脚で、ギプスが重たそうに纏わりついていて人間っぽくない。

「誰だ、お前。」

髪の色は何処か康生に似ているがーー違う、彼ではない。

何故なら?簡単だ。
だって康生の髪はサラサラで。
頬は桜色でもちもちしていて。
脚はスラッとしてもっと格好いい。
そして何より康生でない証拠は、彼は僕を深く愛しているから名を呼んだらすぐ応えてくれるはずだ。

あの澄んだ声で、ケイ、どうした?とか言って笑い掛けてくれるはずなんだ。

(141) 2023/11/20(Mon) 09時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

ーーケイ凄いな!ちゃんと戦えたじゃん、格好良かった。
惚れ直した。

このぐらいは褒めてくれるんじゃなかろうか。

しかしこの芋虫と来たら、無様に転がるだけで息も絶え絶えの様子だ。

何か話すなら聴いてやるが、言葉を発するだろうか?

「おい、なんとか言えよお前。僕が話しかけてんのに……話せよ、ほらッ!」

足先で、僕はその頭をぐりぐり踏みつけ最後に蹴った。

みんなは凍り付いている。
誰も、動かない。

(142) 2023/11/20(Mon) 09時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

コウは何処にいるんだ?どうして姿がないんだろうか。
頭の片隅がチリチリして、鍋が焦げるみたいな臭いがする。

とても不快で、胸がムカムカして吐きそうだ。
このままコイツの顔の上にゲロってしまおうかーー。

(143) 2023/11/20(Mon) 09時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

スクリーンを見る者はいるだろうか。

敵ロボットがゆっくりとーー身を持ち上げようとしていた。*

(144) 2023/11/20(Mon) 09時頃

学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/20(Mon) 09時半頃


【人】 学園特警 ケイイチ

ーー四人の披露宴ーー

珊瑚が纏った長いヴェールは神秘的であった。天の川という喩えはまさに。
隣に並ぶ白いタキシードの大和は学生の頃より背が伸びより男らしい。

2人の結婚式は最高だった。
互いに挙式に参列出来るなんて、僕らは本当に幸せだ。

披露宴は高砂席が用意されて、珊瑚と大和は和装に。
僕らも同じように合わせることにした。

結婚式の和装と言えば白無垢か色打掛である。簡単に違いを言うなら、白一色なのが前者、色が混じれば後者だ。

珊瑚は豪華絢爛な色打掛を着ている。ドレスとは一変してまた素晴らしい。

僕は康生に白無垢をお願いした。
康生の肌は白粉を塗らなくとも綺麗なぐらい白いから、きっと似合うだろうと。

(145) 2023/11/20(Mon) 21時頃

【人】 学園特警 ケイイチ

大和と珊瑚はお茶漬けのサービスを花婿花嫁自ら参列者たちに行う。

ほっこりする素晴らしい行事だ。味付けは勿論珊瑚がしたんだよね?

僕と康生は升タワーをすることにした。シャンパンタワーの和風バージョンだ。

といっても注ぐのはお酒ではない。
升にはドライアイスが入れてあり、僕と康生が二人で大きな手尺にて水を差し入れるともくもく白い煙が立つ演出だ。

中々に派手で盛り上がっただろう。

僕の両親も兄も、康生の両親も。みんなが喜びに溢れていた。*

(146) 2023/11/20(Mon) 21時頃

学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/20(Mon) 21時頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/20(Mon) 21時半頃


【人】 学園特警 ケイイチ

ーー僕の闘い/終章ーー

記憶ーー人間の記憶は分類するなら新しい記憶と古い記憶に分けられる。

まず、日常的な出来事や勉強して覚えた情報などが海馬という脳の部位に一度ファイルされ整理整頓される。これが新しい記憶だ。

その後、記憶が蓄積して古くなると大脳皮質という部位に貯められていくと解明されている。

実はこの海馬は非常に壊れやすくデリケートな性質を持っている。

恐怖やプレッシャーといった強い精神的ストレスを受けたり、酸素が不足すると働かなくなるのだ。
つまり、古い記憶は消えなくとも海馬にある新しい記憶は消えてしまう。

(152) 2023/11/20(Mon) 22時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

僕は弱虫だ。康生に対して「死ぬ覚悟が、闘う覚悟が出来た」と言ったが、心の底では本当は怖かったのだ。

ロボットなんて動かせない。
絶対ちゃんと出来ない。
敵ロボットも恐ろしい。

怖い、嫌だ、怖い怖い怖い!

ーー僕は強い強いストレスを受けて海馬を破壊され、記憶の混濁を起こした。

康生に傷を負わせた事をすっかり忘れてしまった。
それは僕にとって忘れたい重荷だったから。

僕に残ったのは、僕をひたすら愛する都合のいい彼だけ。

康生にどうしても愛されたくて、愛して欲しくて僕は虚勢を張った。
精一杯強い自分を演じた。

(153) 2023/11/20(Mon) 22時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

彼を愛していたのは嘘じゃない。本当に僕は彼を、心の底から。

ただ僕はーー弱かった。
弱い精神を揺さぶられたら、どう足掻いても棄てきれない自虐と自責の念や、隠していた暴力まがいの性欲が表面化するのは当たり前だった。

弱く、醜く。
誰にも好かれず振り向いて貰えない自分。

たった独り、彼だけは。
自分を偽っても手に入れたかった。

助けて欲しかったすがりたかった、愛して欲しかったーー。

僕らは二人で力を合わせても独りにすら満たなかった。
弱くて小さな子供がただ、身を寄せ合い泣きじゃくっただけ。

だからーーもう。
互いを支えることも救うことも叶わない。

(154) 2023/11/20(Mon) 22時半頃

─IF 瑠璃川珊瑚戦─

[想像していたよりも、瑠璃川珊瑚はずっと冷静だった。康生の言葉にも、取り乱す事無く頷く。もしかせずとも、彼女も気付いていたのだろう。心が弱いから吐いたのではない。強く、受け止める事が出来てしまったからこそ、嘔吐に至ったのだ。]

[乾いたものながらも、気丈に笑って見せた彼女に、康生は奥歯を噛み締めた。]

瑠璃川……、……ごめん。それと、わかった。
もう「逃げていい」なんて言わないし……俺も、逃げない。

[右手を胸に当て、康生はそう言った。強く彼女へと向けていた視線が、モニターへと移る。「逃げない」という言葉には、恐らく二つの意味があった。一つは、“彼女同様戦い抜き世界を守る”というものだ。世界を守る事に躊躇する子ではないから、今更言うまでも無くはあったが。]


【人】 学園特警 ケイイチ

これがパイロットという運命に巻き込まれ、互いに想いを伝えきれずすれ違い、傷つけあい、弱さに飲まれた僕らの結末。

終わりが近付く。

(155) 2023/11/20(Mon) 22時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

床に転がる芋虫まがいは、脚で蹴ると反応した。
生きてはいたか。

“それ”は両腕を伸ばすと何やら譫言みたいに呟いている。
誰かをしきりに呼んでいた。
両親?

「芋虫の親はちょうちょか?
ちょーちょ、ちょーちょ。菜の花にとまれって?ハハッ!」

笑い飛ばしたら、芋虫が顔を上げた。僕の事は見ていない。その視線は虚空を漂う。

「ーーあ?」

“ケイ”

そう僕を呼ぶのはこの世にただ一人。
僕の最愛、僕の恋人、僕のーー

助けて?傍にいて?

(156) 2023/11/20(Mon) 22時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

それはまるで康生が僕に救いを求めるような。よう、な……

「ーー……止めろ。」

肩を震わせ、僕は喉から声を絞り出す。

「その名で僕を呼んでいいのは、コウーーコウだけだッ!」

何かが弾けた。僕の中で。
大切なものが崩れて砂のように。

僕は仰向けで天井に腕を伸ばす”ソイツ”に馬乗りになった。
反射的に頚を鷲掴む。最初は両手で行ったが右肩に痛みが走った。

「ーー、ッ」

中学時代、野球をしていた僕はオーバーワークが理由で肩を壊した。
先程敵ロボットに対する攻撃を失敗したのも、アストロの体勢が崩れたのもすべて右だ。

ーー僕はとっくに壊れていた。

(157) 2023/11/20(Mon) 22時半頃

[それと、もう一つ。これまでずっと、康生はコアが潰される瞬間──命が潰える瞬間から、目を閉じたり逸らしたりして来た。案内人の少年の時も、七尾千映や大和命が戦った時も。大抵は皆モニターを見てるから、康生がそうしているのに気付いていた者は少なかったかも知れない。]

[けれど今度は、逃げずに見つめ続けるだろう。瑠璃川珊瑚が、数多の命を葬るのを。彼女の覚悟と罪を目に焼き付け、少しでも共に背負う為に。]

[そうして、殲滅戦が幕を開けた**]


【人】 学園特警 ケイイチ

無意識に右を使うのを拒む僕は。

しかし、左手だけで十分だ。
こんな細い頚を締め上げるには。

「……コウみたいに僕を呼ぶな、コウのふりをするか、お前なんか知らない、僕は知らない!」

万力を込める。骨を砕く勢いで圧をかける。

(158) 2023/11/20(Mon) 22時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

「目障りなんだよ。

ーー死ね。」

(159) 2023/11/20(Mon) 22時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

何故だろうか。僕は。
“それ”の頚を絞めながら泣いていた。

涙が止まらなかった。
片目からはらはら溢した涙は包帯を濡らす。止めどなくただーー落涙。

誰かが僕を制止しようと駆け寄って来たが、それは間に合わなかった。
僕を止められなかった、という意味ではない。

ーー敵ロボットが動き出し、アストロに攻撃を加えた。
至近距離の一撃は、アストロのコア、つまり僕らがいるコックピットを正確に貫く。

スクリーンいっぱいに目映い光が広がる。一瞬の出来事に誰もーー何も出来ない。

(160) 2023/11/20(Mon) 22時半頃

【人】 学園特警 ケイイチ

始めに神は言った。
『光あれ』と。

僕らは光から産まれて、光に還っていった。

全てがーー消えた。**

(161) 2023/11/20(Mon) 22時半頃

学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/20(Mon) 22時半頃


学園特警 ケイイチは、メモを貼った。

2023/11/20(Mon) 23時頃


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