人狼議事


14 冷たい校舎村10

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視点:


【人】 季節巡回 こころ


[ 冬だった。
 吹きすさぶ風の厳しさも、
 頬や瞼を濡らす雪の冷たさも。

 けれど知っている。
 体温を分かち合えるのであれば、
 凍てつく冬もなんてことはない。

 そう遠くない未来に、
 君のこころにやわらかな風が吹きますように。]
 

(7) nabe 2021/11/15(Mon) 19時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ さよなら≠ナはなくまたね≠告げて。
 季節の巡り廻る世界へとわたしはかえってきた。]
 

(8) nabe 2021/11/15(Mon) 19時半頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 現在 ──


  …………。


[ 雪は降っていなくとも、
 真冬の夜は寒いこと。知っている。

 クローゼットを開けたところだった。
 淡いベージュと白と薄いピンク。
 それらが織りなすチェック模様。
 相変わらず、丁寧に畳まれてそこにある。]
 

(9) nabe 2021/11/15(Mon) 20時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ こちらの世界で目が覚めて、それから。

 スマホに届いていた数々のメッセージ。
 この世界への帰還を知らせるそれらを見た。
 君との駆け込みセーフは二度目……でいいのかな。

 つまり、君が帰ってくることを確信しながら、
 わたしはすぐさま出かける準備をはじめた。

 部屋着のスウェットをベッドに放り投げ、
 当たり前のように制服を着込んだ。
 コートを着ても尚、外は寒そうで、
 わたしはクローゼットを開いた。数秒。
 ぱたんとその扉を閉じて階下に声を投げる。]
 

(10) nabe 2021/11/15(Mon) 20時頃

【人】 季節巡回 こころ



  ──お姉ちゃあん、
  マフラー貸して、今すぐー


[ なにが起きたか説明するでもなく、
 わたしの声に驚いた家族たちとて、
 どこに行くのかと尋ねるわけでもなく、

 姉が投げて寄越したマフラーを巻いて、
 わたしはいたって堂々と、玄関を出た。

 ……雪が降っていなくてよかった。
 自転車に跨り、いざ行かんとそのときに、
 思い出したようにグループチャットを開く。]
 

(11) nabe 2021/11/15(Mon) 20時頃

【人】 季節巡回 こころ



 『 おかえり。今から行くねー 』


[ ごく短い文章を打ち込めば、
 雪のない、けれど人気も少ない道の暗闇を、
 自転車のライトの光で切り裂き、走り出す。
 無彩色が、今もわたしの首を守ってくれる。*]
 

(12) nabe 2021/11/15(Mon) 20時頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 校舎にて ──


  ……まなちの頑固者。
  ゴーイングマイウェイ。
  そのうち二つ名がつくよー
  まなち・ザ・マイペース


[ いつかと同じ場所に彼女はいた。
 真っ先に口にしたのは謝罪だったくせ、>>18
 そこから頑として動く気のなさそうな姿に、
 わたしはすらすらと言葉を並べ立てたかった。

 いくらここが優しい世界だとしても、
 壊れゆく場所に置いていくのが嫌で。
 わたしは、わたしのわがままとして、
 冗談めかした言葉で少しだけ抵抗する。]
 

(29) nabe 2021/11/16(Tue) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ この世界は壊れかけている。
 和歌奈ちゃんはそう言った。けれど、]


  ……ここで星を眺めていても、
  ちゃーんと帰れる……のかなあ?


[ やはりわたしに断言できることではなく、
 この世界の創造主に視線を向けながら、
 わたしは腰に手を当てて立っていた。]
 

(30) nabe 2021/11/16(Tue) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ ……けれど、彼女にその気がないなら。
 本当は担いでだって連れていきたいけれど、]


  ……呼べなかった≠じゃなくて、
  呼ばなかった≠だって。
  わたし、そう捉えるよー、まなち。

  本当に必要なときには、
  ちゃんと声を上げてくれる?


[ 少し不安なのだ。
 この世界の終わりも、君のことも。
 ただの一人の友だちとして。]
 

(31) nabe 2021/11/16(Tue) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 心配。というより、心細いが表立って、
 わたしの眉尻は少しだけ下を向いた。
 あの世界の終わる間際のことだった。*]
 

(32) nabe 2021/11/16(Tue) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 現在・病院 ──


  虎ちゃーん……
  ピンピンしてるねえ。


[ 夜の病院の自販機コーナー。
 とんと縁のなかった場所に、
 見慣れた姿をひとつ見つけ。

 わしゃっと撫でまわそうとした手を、
 けんもほろろに振り払われたわたしだった。

 それも含めてコジローだなあと、
 しみじみしているわたしに彼は告げる。
 手術室ならあっち。指をさされた方を見て、
 わたしはお礼を言ってそちらに足を向ける。]
 

(33) nabe 2021/11/16(Tue) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 二度目だったから彼の対処は素早かった。>>4:+70
 ……のかはわたしには知りようがないが。

 教えられた方向へと向かえば、
 何人かの友だちがそこにいるのが見える。

 目立つのは床にへたり込むなっちんだ。>>16
 お行儀が悪い……というのは冗談で、

 それでもわたしはその肩を叩き、
 なっちんったらーと軽やかに言おうとしたのだ。

 驚いてくれるだろうかという悪戯心。
 小走りで背後へと近寄り、
 その頬を外気に冷えた手で挟もうと──、]
 

(34) nabe 2021/11/16(Tue) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ ストレッチャーが去っていく。>>16]
 

(35) nabe 2021/11/16(Tue) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 顔を上げたら、周囲がよく見えた。

 閑散とした空間。そこに集まる人たち。
 病院の人たちに運ばれる友だちの姿は、
 想像以上に痛々しい。生々しかった。

 君の帰りを待ちわびていたらしい人たちは、
 あの文化祭の日とはまるで違う、
 安堵と、尚も拭いきれない不安を浮かべ、
 きっとこれから君の病室へと向かうのだろう。

 これは何もかも現実だった。
 そのことを今さらながらに痛感する。]
 

(36) nabe 2021/11/16(Tue) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ ね。ちゃんと帰れてたでしょう。
 あの世界でひどい姿だったコジローも。
 わたしの言った通りだったでしょう。

 用意していた軽口が何一つ出てこないまま、
 わたしは泣くとも笑うともつかない表情で、
 和歌奈ちゃんが運ばれていくまでを見ていた。*]
 

(37) nabe 2021/11/16(Tue) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 後日・床に伏せる君と ──

[ それからどれほど経ったころか。

 我らが担任ナオシゲくん。
 生徒のピンチにもニコチンを切らす、
 ストレス過多なみんなのダディを捕まえて、
 面会できるようになったと聞きだせば、

 わたしは学校帰りの制服姿で、
 ふらりとその場所を一人で訪れる。

 片手にはドーナツ屋の袋、
 もう片方の手にも紙袋を下げて。]
 

(44) nabe 2021/11/16(Tue) 22時頃

【人】 季節巡回 こころ



  やほー、わかにゃん。
  みんな大好きドーナツボーイのお届けだよー
  山盛り買ってきちゃったから、
  妹ちゃんとか親御さんとおやつにしてねー


[ 軽い口調で切り出して、
 片方の袋を適当な場所に置いた。

 好き勝手に近くにあった椅子を引き、
 ベッドの近くに腰を下ろせば、
 今度はもうひとつの紙袋の出番。]


  こっちはナオシゲくんからの預かり物。
  ……なんだけどー、
  どう? 受験間に合いそー?
 

(45) nabe 2021/11/16(Tue) 22時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ こんなところでも勉強に追われるなら、
 塾の授業のほうが要点がまとまってたから、
 資料を横流ししてあげようっておどけて、
 ……シリアスなトーンは打ち消せただろうか。

 なんせわたしたちは受験生である。
 心配事も考えるべきことも腐るほどあり、

 けれど、それ以前に君は君で、
 今ここに、きちんと体温を持って存在する。

 君について。まだ知らないことがあるとしても、
 それさえあればどうとでもなる。
 ……とさえ、わたしはこころのどこかで思い、]
 

(46) nabe 2021/11/16(Tue) 22時頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……わかにゃーん、
  ちょっとだけハグしてもいい?


[ はい! と大きく手を広げて、
 締まりのない笑みを浮かべたわたしだった。*]
 

(47) nabe 2021/11/16(Tue) 22時頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 病院 ──

[ 思ったよりもなっちんは派手に泣いていた。>>51

 わたしはそうすることもできずに、
 なんともいえない顔して周囲を見るばかり。

 どのくらいそうしていたのだろう。
 君は気づけば自力で立ち上がっていて、>>52
 おや。また手を貸す機会を失ってしまった。

 ふいに呼ばれた名前。>>53
 わたしは素直にその声の主に顔を向け、
 その涙でぐちゃぐちゃの顔が、
 へにゃりと笑顔を作るのを見ていた。]
 

(59) nabe 2021/11/16(Tue) 23時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ ──ああ、そうか。
 やっぱり笑っていい場面だよなあ。

 起きた事実は覆らないとして。
 これをきっかけに変わる未来や、
 こころを痛める人がいるのとしても、

 少なくともわたしたちの友だちは帰ってきた。
 
 だから、目の前の顔を手本とするように、
 わたしも目を細め、頬を緩ませる。]
 

(60) nabe 2021/11/16(Tue) 23時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ それから、
 先ほどし損ねたことのリベンジみたいに、
 きっとまだ濡れている頬に手を伸ばし、
 指先で摘まんでやろうとしながら言うのだ。]


  うん。路子だよー
  ただいま、なっちん。
  言ったでしょー、大丈夫って。


[ 天はわたしの味方なんだよ。
 ……とは、今回ばかりは言えない。
 けれど、わたしの友だちが選んだ結末だ。

 ……いくらそうは言ったって、
 わたし、この現実の空気にあてられてるの。]
 

(61) nabe 2021/11/16(Tue) 23時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ ──だから、]


  ご褒美にぎゅーってして。


[ じゃなきゃ君のかわいい頬っぺたを、
 冷えに冷えたこの両手が襲うでしょう。

 甘やかしてくれるんでしょう?
 遠くも思える約束を今こそ持ち出してみようか。*]
 

(62) nabe 2021/11/16(Tue) 23時頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 後日・主じゃなかった君と ──


  今帰りー?
  ご一緒させていただこうかしらー


[ やあやあとわたしは君を引き留める。
 そうそう、そこの君だ。

 わたしより少し背が高く、
 質の良い上着を着ている。
 ……あの日と同じであれば。

 どんなに衝撃的な出来事があれど、
 それが誰かのこころを人知れず抉ろうと、
 日常は続くものであるからして、それらしく。]
 

(63) nabe 2021/11/16(Tue) 23時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 聞くなり、乗ってきた自転車を降り、
 勝手に隣を取るように歩き出しながら。
 わたしはすらすらと言葉を紡ぐ。]


  あの世界を作ったのは
  ヘータローじゃなかったけどー

  あの世界の主かもしれないって理由で、
  心配してたわけじゃないんだよー?


[ つまり、今も君が少し心配です。
 ただ友だちとして。当たり前のことでしょう。
 だから、当然というふうにわたしは言って、
 少し首をかしげて、その顔を覗き込む。]
 

(64) nabe 2021/11/16(Tue) 23時頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……忘れちゃった?


[ 覚えていたら、と言ったのは君だ。
 忘れていなくて、気が向きそうなら、
 宿題は済んだのかと尋ねてみようか。*]
 

(65) nabe 2021/11/16(Tue) 23時頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 病院 ──


  ……でしょー


[ 屈託なくなっちんは笑った。>>67

 委員長らしくだとか、
 ちゃんとしなければだとか、
 意識したことなんてなかったはずだ。

 同様に、人に認められてようやく、
 自分の行いを正当化できるというのも。

 けれど今、わたしは安堵している。
 その笑顔をなにかの証明として、
 今は再会を喜ぼう──なんて気取った言葉。
 口に出すわけではないけれど、ただ、]
 

(69) nabe 2021/11/17(Wed) 00時頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……ふふ、高くつきそうだなあ。
  ほら、もっと強くーぎゅーっとな。


[ 10cmの身長差。
 結局抱き着かれているみたいな格好で、
 わたしは言葉通りぎゅっと腕に力を込めた。

 3人目ともなると親の目もザルなのだ。
 ……あるいは家系的にお気楽であるからして、
 自力でここまでやってきたわたしの体は、
 お察しの通り、きっと冷えに冷えている。>>67
 だから少しばかりその体温を分けてね。

 いつかできなかったぶんのリベンジ?>>68
 それでもいい。今はただ引っ付いてたいの。]
 

(70) nabe 2021/11/17(Wed) 00時頃

【人】 季節巡回 こころ



  なっちん、あったかーい。
  ……生きててよかったあ。


[ 君もわたしもみんなまとめて。

 鼻先をうずめた髪に、肌に、
 冬の匂いはもう感じられなくて、
 わたしは少しの間、そうして目を閉じていた。**]
 

(71) nabe 2021/11/17(Wed) 00時頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 後日・主じゃなかった君と ──


  なんだとはご挨拶だなー
  わたしじゃ期待外れですか。


[ 文句を言いつつも隣に並び、
 冷たい風の吹く通学路を共に歩く。>>94

 人通りが特別少ないわけでもない、
 雪が降り積もるわけでもない通学路。
 彼の代わり映えのない日常の一片として、
 わたしが存在するというなら光栄である。

 何の話だとでも言いたげな顔で疑問符を飛ばす、
 君のために親切に補足しておいてあげようか。>>95]
 

(108) nabe 2021/11/17(Wed) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  友だちが落ち込んでたら、
  そりゃー気になるでしょー

  死にかけたわけじゃなくても、
  一晩で校舎を建てたわけじゃなくても。


[ 軽い口ぶりで添えてやるころには、
 君もどうやら話の流れを汲んだらしい。

 思い出してくれたならこれ幸い。>>96
 泣く奴などいないと言ったときの君が、>>3:91
 こちとら忘れられずに困っていたのだ。]
 

(109) nabe 2021/11/17(Wed) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 例の彼女と何かあったのか。
 ──とは、あのとき確かに思ったはずで、
 それについて今聞き出そうとしたのはわたし。

 つまり、動揺する余地などないはずで、
 気の利いた言葉のひとつでも吐ければよかった。

 要は、そうはできなかったのだ。
 あまりにあっさりとこぼされた言葉。>>96
 身構えていなかったわたしは、
 面食らってまじまじとその顔を見つめたあと、
 ため込んだ空気を吐き出すように言う。]
 

(110) nabe 2021/11/17(Wed) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……そっかー
  なにかあったのかなーとは、
  あのとき、薄々思ってたんだけどー


[ ずんとこころが重くなるようだった。
 どうやらわたし、勝手ながら、
 多少なりとも共感というのをしてるらしい。

 冗談ぽく笑った本人とは裏腹に、
 わたしはうまく表情を作り損ない、
 自分の足元に一瞬視線を落とした。

 歩く速度に合わせて回る車輪。
 それが何周かするのを見届けて、
 大きく息を吐いたわたしは顔を上げる。]
 

(111) nabe 2021/11/17(Wed) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  なんだろうな。
  悲しいねっていうのも変だし。
  残念っていうのも、妙な感じ。

  生まれてから死ぬまで、
  何百人と出会うはずなのに、
  なんでそのうちのたった一人に、
  こんなに揺さぶられちゃうんだろう。

  そういうこと考えたの思い出して、
  ちーっとも笑えないんですがー


[ そのへらっとした笑み、続けますか?
 歓迎できないなあと口をとがらせて、
 恐らく君が期待したのとは違う反応を、
 わたしは自分の中で模索していた。]
 

(112) nabe 2021/11/17(Wed) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……でも、やっぱり、
  残念だったねえ、かなあ。

  婚約者っていわれてもピンとこないけど、
  好きなんだなーとは思ってたよ。だから。


[ 過剰な感情も好奇心も覗かせないよう、
 わたし、努めて口調を変えないように言う。

 あくまでそれを失恋と捉えながら、
 かといって、具体的な慰めとか、
 アドバイスの類はどうにも出てこないのだ。

 受け売りでよければお伝えするけど、
 あまりアテになりそうにないの。
 わたしの実体験に基づけば。だから、]
 

(113) nabe 2021/11/17(Wed) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  ねー、
  どうやってやり過ごせばいいのかな。
  わたし、考えてもわからないの。
  ヘータロー、あんまりうまく笑えてないよ。


[ 具体案を何も伴わないまま、
 困っちゃうなあとわたしは眉を下げて笑う。*]
 

(114) nabe 2021/11/17(Wed) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 帰還前 ──


  そう言ったからにはー
  ちっとも呼んでくれないと、
  頼りにされてないのかなー? って、
  わたしがへこんじゃうからねー


[ 約束。その言葉に頷きながら。>>57
 なにも君のピンチを願っているわけじゃない。
 ただ、頼り頼られでやっていこうよって話。

 それで解決──でいいかとも思ったが、
 どうにも話はすんなりまとまらない。

 好き。を言うのに照れちゃうわかにゃんは、
 なんだかうぶでかわいいなあ、なんて、
 静観を決め込んでいたんだけれど、]
 

(129) nabe 2021/11/17(Wed) 22時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  まったく君たちはー
  こんなときにも、
  和歌奈お姉ちゃんを困らせてー


[ わかにゃん以外はみんな下の子。
 そんな偶然に驚いたのは少し前のこと。

 口々に倉庫に残ると言い出す二人に、
 わたしはのんきに茶々を入れていた。
 手のかからない下の子代表として。

 さてお姉ちゃん、どうしましょうか。
 ホストたる君に委ねたような気持ちは、
 突然の叫び声で少しばかり切り替わる。>>119]
 

(130) nabe 2021/11/17(Wed) 22時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ そこで折れるのは、まなちの優しさだろうか。
 それとも諦めともいえるものだった?

 ……宣言を覆すや否や、
 猫さんをご指名するまなちに、>>121
 わたしは目を細めつつも歩き出すだろう。]


  ──うん。
  揃って帰れてうれしいよ。

  ありがとうね、まなち。
  がんばってねー、猫さん。
  おかえりー、わかにゃん。


[ 今だけはそうやって、
 前向きな言葉だけを口にしていたいの。*]
 

(131) nabe 2021/11/17(Wed) 22時半頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 後日・主じゃなかった君と ──


  あの世界では、ねー
  ……落ち込んでるって思われたくなかった?


[ 質問に質問で返すのは意地が悪いかな。
 そういうことなのであれば、大丈夫。
 きっと日常の中で違和感を覚えさせるほど、
 君の態度が不自然だったってわけじゃないよ。]
 

(144) nabe 2021/11/18(Thu) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 言葉数少ない帰り道。>>133

 こういうとき、どう反応されるのが好ましいか。
 自分自身に問いかけてみたとて、
 何も言われたくなかった、というのが結論で、
 沈黙を埋めるものはなくなってしまう。

 それでも君が言葉を継いでくれて、>>134
 かろうじて会話の形を保っている今。]


  ……やるせない、かー
  そうかもしれないねえ。


[ 喜怒哀楽、はっきりとした感情に落とし込めない、
 宙ぶらりんのこころにちょうどよく合う気がして、
 わたしはその単語を反芻してうっすら笑った。]
 

(146) nabe 2021/11/18(Thu) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  でも、筋違いかなあ?
  はじめ、勝手に決められたんでも、
  その子を好きになったんじゃない?

  そりゃ、やるせないよ。うん。


[ 慰めのような言葉を掛け合いながら、
 わたし、それがさして響かないのも知ってる。

 慰めてほしいわけじゃなかったのだ。ずっと。
 相手への思いを認めてほしいんでもない。>>135
 過去に戻ってやり直したいわけでもなかった。

 だから、お互いいびつな笑みを向けるとしようか。]
 

(147) nabe 2021/11/18(Thu) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  閣下も時には教えを請いたいのー

  それにね、なにかができるってのは、
  きっとなにかができないことの裏返しだよ。

  でも、うん……そうだなあ。
  和歌奈ちゃんを連れ戻さなきゃって、
  あのときは、忘れてた気がする。

  バカ騒ぎ、とは違うけどさー


[ あの校舎での長いようで短い時間。
 それを瞼の裏に浮かべながら。
 わたしは少し納得したような思いで言う。]
 

(148) nabe 2021/11/18(Thu) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  忘れたかっただけなんだなー
  きっと。死んじゃいたいというより。
  この、どうしようもなくこころが痛いのを。


[ 言語化できたって、
 対処法がわからないのだから困るんだけど。

 けれどまあ、わからないままよりは良い。
 そんな思いからか、とある冗談に対してか、>>136
 わたしはふふふーと目を細めて君を見た。]
 

(150) nabe 2021/11/18(Thu) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……怒らないよ。
  でも、そうだなあ……、
  わたし、恋がしたいわけじゃないし。

  ……ヘータローはしたいの?
  あの子以外の子と手を繋いで、
  キスして──その先のことも?

  それなら、しちゃえばいいじゃん。
  案外さ、先に相手を見つけちゃったり、
  啖呵切っちゃえば許されたりするかもよ。

  だって、跡取り息子の結ばれるお相手が、
  君のおうちの運命のすべてを決めるの?

 

(152) nabe 2021/11/18(Thu) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……怒った?


[ 畳みかけるように言った末に、
 わたしは笑みを浮かべたまま首をかしげる。

 その世界を知らないからこそ言える、
 能天気な戯言でしかないかもしれない言葉。
 別に意地悪な気持ちで言ったわけじゃないの。
 わたしのふつうの感覚には不思議だっただけ。

 ……少し言い返したかった。
 そういう気持ちは否定しないでおこう。]
 

(154) nabe 2021/11/18(Thu) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 道の凹凸を避けるように、
 えいっと踏み出したローファーの先で、
 小石のひとつを遠く蹴飛ばしながら。*]
 

(155) nabe 2021/11/18(Thu) 21時半頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 後日・床に伏す君と ──

[ 自由のきく足で軽やかに病室にたどり着き、
 わたしは君のもとに顔を見せた。
 飯尾先生の近況。そう面白いものでもないと思う。]


  白髪が増えたのは単純に年だねー
  じきにお腹まわりも気にしだすよ。

  ……つまりー、心配ご無用。
  ナオシゲくんはあれでー、
  生徒のフォローがオシゴトですから。


[ モーマンタイ。差し入れを受け取っとくれ。
 塾の資料は今度持ってくるねって笑って、
 わたしは和歌奈ちゃんのそばに腰かける。]
 

(166) nabe 2021/11/18(Thu) 22時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 君の内心の葛藤など知らず、
 熱烈にハグを求めたわたし。

 君の復唱はなんだかぎこちなくて、>>142
 わたしは思わずくすくすと笑ってしまう。]


  うん。はぐ。
  ……そう、妬いちゃったのかもー
  でもー、ちょっとだけ機嫌なおったや。

  ふふ、もちろんだよー
  路子ちゃん。いい響き。


[ ゆるりと広げた手を君に回す。
 すんと鼻をすすってわたしは呟く。]
 

(167) nabe 2021/11/18(Thu) 22時頃

【人】 季節巡回 こころ



  あのねえ、
  顔を見たら泣いちゃうかも。
  ……って思って、ひとりで来たの。
  和歌奈ちゃん、生きててくれてありがとう。


[ ぎゅうっと力を込めて数秒。
 少ししてからその背中を解放し、
 わたしは満足げに笑って、何気なく、
 ……何気なく聞こえるよう、尋ねる。]
 

(168) nabe 2021/11/18(Thu) 22時頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……妹ちゃんとは、
  ドーナツ分けっこできそう?


[ まずはそんな話から少しずつどうだろう。
 今すぐ全部話してなんて言わないからさ。>>141
 準備ができたことから教えてほしい。

 だから、のんびりとした調子で、
 少しくらい近況を聞いて帰れたら。*]
 

(169) nabe 2021/11/18(Thu) 22時頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 後日・主ではなかった君と ──


  ……へへ、
  好き≠チてなんだろうねー
  次があればもう少し見えてくるのかしらー


[ ふんわりとした肯定?>>181
 もごもごと口を動かす君を、
 追求するでもなくわたしは口ずさむ。
 何かの曲の断片みたいに。

 今はまだあるとも思えない次≠フ話。
 時間が癒すだとか、新たな恋を探せだとか、
 先人たちの助言がこころを埋めてくれない理由。
 それを君の言葉に見出してもいいかな。>>182]
 

(195) nabe 2021/11/19(Fri) 00時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ ぱちぱちとわたしは数度瞬きを繰り返す。

 ふつうの、大勢の人に乗り越えられるものが、
 わたしに乗り越えられないはずがないと思っていた。
 こんなに痛みを伴うものかと驚きながら、
 なぜ人々が耐えられるのかが不思議だったのだ。
 ……それを、わたしが痛がりなのだとすれば?]


  それは──ずいぶん難儀なふつう≠ナ、
  ちょっと衝撃的で、笑えちゃうなあ。


[ どうにも力が抜けてしまって、
 わたしは言葉の通り、思わず笑っていた。]
 

(196) nabe 2021/11/19(Fri) 00時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ なんてふざけたオチだろう。
 ケラケラと笑っていたわたしは、
 唸る君のことを目元を拭いながら見ていた。>>184

 濁された言葉。オブラートに包まれた答え。>>184
 そこを掘り下げるなんて野暮なことはよそう。
 分別のあるふつうの男の子としての回答に、
 わたしはうんと目を細めて言う。]
 

(197) nabe 2021/11/19(Fri) 00時頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……恋はするものじゃなく、
  抗いようもなく落ちるもの。

  ──なーんて聞くし、
  幣太郎がそう望むなら、
  見つかるといいねえ、次の好き≠ェ。


[ 軽い口調でそう言ったけれど、
 繰り返す。わたしは君のノロケ、好きだったよ。

 君自身も次の機会を望むのであれば、
 またああいう顔をするようになってほしいと思う。]
 

(198) nabe 2021/11/19(Fri) 00時半頃

【人】 季節巡回 こころ



  あはー、へータローの心が広くてよかったー

  ……でー? それ、ほめてるつもりー?
  仕方ない──って吹っ切れてないんだから、
  未練をかきたてるようなこと言わないでくださーい。


[ きれいな弧を描いた小石が、
 数歩先の地面に落ちて一度跳ねた。

 君の紡ぐ言葉は答えづらい類のそれで、>>186
 わたしは冗談めかして笑っては、
 ふらふらとふざけた足取りで地面を蹴った。

 君の歩幅も歩くスピードも、
 意識することのない自由な振る舞いで。**]
 

(199) nabe 2021/11/19(Fri) 00時半頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 後日・主ではなかった君と ──


  次が見つかれば──ふふ、
  プレゼントに悩んだときは、
  いつだって招集してくれていいのよー
  臨時委員会で思いがけない意見が出るかも。

  プレゼントに悩んだときだけじゃなく、
  うまくいかなくなりそうかも? って、
  いやーな予感がしはじめたときにも。


[ うまくやるなんて気負いが、>>213
 君の口から発されたものだから、
 わたしはいつかのプレゼント談義を思い出した。]
 

(215) nabe 2021/11/19(Fri) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ


[ うまくやる、というのは難しい。
 なんせわたしたちには、
 人のこころというものが見えない。>>214]


  へータローの鈍感めー
  とっととどこかの女の子にメロメロになって、
  夢中になってのぼせて振り回されちゃえ


[ 次があっても、なくっても、
 わたしたちの前に続く道に、
 優しい追い風が吹いていますように。

 そんな祈りを胸に、
 春の気配もまだ遠い寒い日の放課後、
 友だちたる君の隣で、なにかの縁を噛み締めている。*]
 

(216) nabe 2021/11/19(Fri) 20時半頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── 後日・床に伏す君と ──

[ いろいろな甘さがごちゃ混ぜになった、
 幸せの詰め合わせみたいな紙袋。>>222

 わあわあと会話をしながら、
 それぞれが好きなのを選んで食べること。
 君がそれを家族とすることを想像すると、
 わたしはうれしいなって気持ちになれる。

 わたしが泣いても気にしない君。>>223
 耳のうんと近くでわたしはくすくす笑う。]
 

(241) nabe 2021/11/20(Sat) 00時頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……わたしもー、
  和歌奈ちゃんには見られてもいいよ。
  ほかの人にはちょっと嫌かなー?


[ この件については、まあそんなところ。

 話は移ろい、君とその家族の話。
 わたしは頷く君を目を細めて見つめ、>>224
 よかった、の思いを懸命に視線に込めている。]


  ……うれしかったんだねえ、妹ちゃん。
  お姉ちゃんにお祝いをしてもらったのが。

 

(242) nabe 2021/11/20(Sat) 00時頃

【人】 季節巡回 こころ



  和歌奈ちゃんがかえってこなきゃ、
  その笑顔は存在しなかったわけだ。

  ……かえってきてよかった! ねー


[ しみじみとしたふうに君が言うから、>>226
 わたしは被せるように強く断定する。

 過去は消えない。けれど、
 生きている限りそのうえには、
 様々なものが積み重なっていくから。

 君が振り返って笑えるようになるまで、
 どこまでも新たな今日を重ねていこう。]
 

(244) nabe 2021/11/20(Sat) 00時頃

【人】 季節巡回 こころ



  なんとかできるよ。
  和歌奈ちゃんなら。
  わたしが言うんだもん。
  間違いない……でしょ?


[ 冗談めかした言葉に希望を込めて、
 君の未来への祈りとしてこれを贈ろう。**]
 

(245) nabe 2021/11/20(Sat) 00時頃

【人】 季節巡回 こころ

 ── その後・打ち上げ ──


  おかえり、和歌奈ちゃん。
  それからー……、これからもよろしくね。
  えー、わたしたちみんなの輝かしい未来にー?


[ 乾杯のご発声を──というフリそのものが、
 高校生の打ち上げらしいのかどうか。

 おいしそうなお菓子。
 紙コップではなくグラスに注がれたジュース。

 そういう場の空気にあてられながらも、
 しまらない乾杯の合図とさせていただこうか。]
 

(262) nabe 2021/11/20(Sat) 11時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ グラス片手にあちらこちらと歩き回り、
 わたしは楽し気な話ばかりをした。

 まだ春からの行き先が不透明な人にも、
 わたしたちの抱えるすべての問題が、
 春の気配とともに溶けて消えるんじゃなくても。
 わたしは笑ってグラスを打ち鳴らす。

 否が応でも季節は移ろい、
 長かった冬が終わろうとしていた。*]
 

(263) nabe 2021/11/20(Sat) 11時頃

【人】 季節巡回 こころ

  ── 春 ──


  手はかからないし、
  合格実績には貢献するし、
  いやあ、良い生徒だよねー

  もっと褒めてくれてもいいよー


[ ──春立ちぬ。
 良い知らせを携えて、
 世話になった塾を訪れていた。

 緊張で実力を発揮できないということも、
 その日に限って凡ミスを連発することもなく、
 いたって順調に進学先を決めたわたしだった。]
 

(264) nabe 2021/11/20(Sat) 11時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 尊大な物言いに塾の先生は苦笑いをして、
 面談ブースでいくつかの書類を眺めている。
 わたしはその指先をなんとはなしに見ている。

 そのとき、人影が二つ背後を横切った。
 きみが別のスタッフとともに、
 別のブースへと入っていくところだった。

 表情までは見えなかった。
 顔を上げてそちらを見ていたわたしに、
 どうかしたのかと尋ねる声がある。]
 

(265) nabe 2021/11/20(Sat) 11時頃

【人】 季節巡回 こころ



  ……ううん、なんでもー


[ さらりとわたしは答えて、
 再び視線を机上の書類へと落とした。

 季節は巡る。
 もうじき春がやってきて、
 桜の花が散る頃、わたしは大学生になる。

 きみがどこで春を迎えるかは知らないし、
 暦の上ではもうとっくに春だった。]
 

(266) nabe 2021/11/20(Sat) 11時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ サクラサクって。
 言いたかったなあ、きみに。]
 

(267) nabe 2021/11/20(Sat) 11時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 思ったよりも、あの頃のわたしは幸せで、
 それを失ったことがショックだったんだろう。

 書き出してしまえば、これ以上なく単純なのに、
 いったいわたしは何を読み落としていたんだろう。
 気づくのにずいぶんかかってしまった。

 恋をしたかったわけではなくて、
 ただきみに恋をしていたの。

 この痛みを忘れてしまいたいと願っても、
 きみのことまで忘れたいわけじゃなかった。

 次≠探す理由も今はなく、
 こころに埋められない穴がある代わり、
 君たちとの思い出を積み重ねて今日を生きている。]
 

(268) nabe 2021/11/20(Sat) 11時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ もう、きみの姿は見えなかった。

 ただブースの入口に引っ掛けられた、
 使用中≠フ赤い札がゆらゆら揺れていた。

 おめでとう
 きみに言いたくて言われたかった言葉を、
 きみではない誰かから手向けられながら、

 そこに確かに優しさとあたたかさを感じて、
 わたしはきみではない人に、
 ありがとう≠ニ目を細め、やわらかく微笑む。]
 

(269) nabe 2021/11/20(Sat) 11時頃

【人】 季節巡回 こころ


[ 吹く風の優しさが春だった。
 きみの不在にも季節は巡る。**]
 

(270) nabe 2021/11/20(Sat) 11時頃


[私のうみだした卵の中で。
私を追いかけてきた“きみたち”について考える。

屋上は寒かったよね。
私もそうだった。
私に入った罅を誰とも分かち合えないまま、
消えていくにはもってこいだった。

冬の空はね、星が綺麗に見えるんだ。

だけど私はお星さまにはなれなかった。
それでいいって思ってるよ]
 


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