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今日も青い地球のどこかでは 赤い血が流されている
(5) 2023/11/14(Tue) 06時頃
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──if・大和くんと──
毎日食べたい。その言葉に、こんな時なのに、思わず頬が緩んでしまう。
良いな、こう言うの。
こう言う毎日が続けば良いな。
でもそれに終わりが見えてしまっているのなら、やっぱり私は悲しくて。
だから、悲しい言葉を紡いでしまっていた。
宇宙が消滅するまで。
──その言葉に、美琴くんは一度言葉を失ったように思えた。
だって、そりゃそうだよね?
だってとても身勝手だもん。
育ててくれた父さんの幸せを祈ってあげられない。
続く世界を守ろうとしてあげられない。
負けるつもりはない。…そう思う。
でも、それ以上に戦える気がしなかった。
だって、ロボットには私たちが乗っている。
じゃあ敵のロボットには?
理論的に考えた訳じゃ無い。ただ、女の勘と言うべきか、私は当然のように考えてしまっていた。
あの敵のロボットには、私たちと同じパイロットが居る。
人間じゃ無いかも知れなくても、知的生命体が載っているはず。
だって、そうじゃ無いとおかしいじゃない。
相手だって自分たちと同じだけの何かを背負っているんじゃ無い?
そうじゃ無いとおかしいよ!
だって消失の規模が宇宙だよ?
だったら、別の宇宙があって、その別の宇宙を背負ってる…そう考えるのが自然じゃ無い?
だから私は、戦える気がしなかった。
でも赦されるつもりも無かった。
だから言葉を失ったように感じた大和くんに、ぎゅっと拳を握りしめて耐える。
どんな言葉も堪えようと思った。なのに。
「…怒らないの?」
宇宙を消滅させるような事、私は言ってるのに。
「私、戦わないかも知れないって言ってるんだよ?
パイロットになっても、戦える気がしないんだもん。
あんなに怖いの嫌で、
私も大和くんもみんな死んじゃうのに
残された世界の平和を祈れなくて、
ただ、ご飯を作っていつも通りに
生活していきたいとしか思えなくて!
私が、みんなを、…消しちゃうかも知れないんだよ?」
泣くな。泣くな泣くな泣くな!
じわっと滲んできた涙を手首で拭う。
でも声が震えてしまう。いけない。慰めて欲しい訳じゃ無いの。
だから、じっと青の瞳で大和くんを見つめる。
そして、問いかけた。
「…大和くんは、この世界を護りたい?
私は。
──なんで私たちが、の気持ちが強すぎて
死んだ後の世界のことまで考えられないの。」**
──if・大和くんと──
泣いても泣いても順番が変わる訳じゃ無い。
早く死にたい訳じゃない。他の誰かに死んで欲しい訳でも無い!
でも、1番死んでほしく無い人の死が確定して狼狽えないのは私には無理だった。
キスされて。キスされて。肌を重ねて温もりを分かち合っても悲しみは拭いきれはしない。
それでも何とか泣き止んで、布団の海に二人で沈む。
その時に渡された薬は私の心を支えてくれた。
大和くんが自分の希望を考えてもなお渡してくれた優しさだ。
私は後日、大和くんが戦うその横でずっと抱きついていた。邪魔だったかもしれないけど、自分の椅子に座って見守るだけなんてできなかったから。
汗だくになりながらペダルを漕いで──大和くんの戦闘が、終わる。
私は、大和くんを抱きしめてその微笑みを涙ながらに見つめてキスをした。
「私、なるべく頑張って生きるから。
見守っててね、──愛してる。
いつまでも大好きだよ、大和くん…。」
はらはらと涙をこぼしながら、私は初めてハロにお願い事をした。
大和くんにもらった薬を握りしめながら。
「離れるのは辛いけど、
今だけは我慢するから──。
私が死んだら、大和くんと同じ場所に
眠らせてね、お願い。」
こればかりは、ハロを信じて託すしかなかったから。
そして大和くんのことは父さんに相談して、親族が見つからないからと私たちで火葬してもらう事にした。
小さいけれどお葬式を出させてもらったのは私の我儘だ。
好きな人だった。この世で1番大好きな人だった。
だから無縁塚に託すなんてとんでも無い。
泣き続ける私に父さんは途方に暮れた顔をしていたけれど──忙しいからかまた、仕事に戻って。
私は大和くんと二人きり。
ううん、母さんも入れたら三人で暮らし始めた。
「今日は良い天気だね、星がよく見えそう!」
「今日はお肉が特売だったんだ〜!
ふふふ、角煮作るのも良いね?」
「戦いが終わったら遊園地行きたいな。
大和くんはジェットコースターとか平気そう?」
「学校やだな。行きたく無いな。
…加賀先生絶対補習させるもん…。」
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