31 私を■したあなたたちへ
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── 現在:天の川ロード前休憩所 ──
[ 海透と別れた後、 テーマパーク内をぶらぶらと歩いていた卯木は、 どこかで誰かと会えば、 話し込むこともあったかもしれないが、
日が暮れた後、卯木は 天の川ロード前の休憩所で一休みしていた。 ]
(218) 2023/11/22(Wed) 12時頃
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おや、始まりましたかね。
[ 賑やか音楽が耳に入り、 卯木はそちらへと目線を送る。 どうやらエレクトリカルパレードが始まったようだ。
トランペットや手巻きオルガン、大太鼓、 モナリザ自身から発せられる楽器の音、 他にも様々な楽器を奏でているかもしれないが、 たくさんの音が混ざりあい、 とても楽し気な音楽を奏でている。 ]
(219) 2023/11/22(Wed) 12時頃
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[ 視界に飛び込むのは、 ライトアップされたモナリザと移動式装置の発する なんともカラフルな光。 露草色に勿忘草、唐紅に薔薇色、蒲公英色に 藤黄、浅緑に若草色、 その他にもたくさんの色が辺りを照らしながら、
その光源の中で、たくさんのモナリザが こちらに向かって手を振ったり、 実に楽し気に踊ったりしている。 モナリザの踊りは、 どうやったらこんな動きができるのだろうと 疑問に思うくらい複雑で激しい。 ]
(220) 2023/11/22(Wed) 12時頃
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[ その動きがなんとも面白くて、 閑散とした日暮れ後のテーマパーク内という なんとも寂しいシチュエーションの中で、卯木は笑う。 そこがどんな場所であっても、 諦めずに必死に藻掻いていたら、 いつかは幸せになれるような、そんな気がして。 ]
(221) 2023/11/22(Wed) 12時頃
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[ それから、賑やかな音楽が一変して、 ハンドベルの厳かな音が、静寂な夜を支配した。
移動式装置の上では、 たくさんのモナリザが静かに立っていて、 輪になった8人のモナリザの中心に ぽつんと座り込むモナリザが1人。
それから8人のモナリザは各々、 中心のモナリザに手を差し伸べたり くっつこうとしたり、 あるいは遠くから手を振ったり ファイティングポーズのように腕を曲げていたり、 ただ、静かに見守っていたり。 ]
(222) 2023/11/22(Wed) 12時頃
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[ 中心のモナリザは近づいてきたモナリザに 一度は手を伸ばそうとするけれど、 躊躇うように引っ込めて、 遠くにいるモナリザには手を伸ばしてみたが、 そちらは手が届かないようだ。
それからまた、8体のモナリザは 俯いて座る中心のモナリザを囲んで、手をつなぐと 今度はかごめかごめのようにぐるぐると回り出す。 そして、いつの間にか中心のモナリザは、 誰かの手を取ったようで、 モナリザは9人揃って手をつなぎ、 2、3周くるりと回った後、1列に並ぶ。
そのタイミングで、周囲の空気が 賑やかさを取り戻したように、 先ほどと同様の楽し気な音楽が辺りを灯し、 9人のモナリザがペコリと頭を下げた。 ]
(223) 2023/11/22(Wed) 12時頃
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[ ──ああ、この子は幸せになれたんだな。
去っていく移動式装置を眺めながら、 卯木は嬉しくなって、また笑う。
今はただの仮初の夢の時間。 現実はどう転ぶか分からないけれど、 せめて夢の中では ハッピーエンドに浸れそうで良かった、と。 ]**
(224) 2023/11/22(Wed) 12時頃
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──夜・観覧車──
[ずっと黙って聴いていた雛子が、話し始めた。 今度はキラが黙って耳を傾ける。 四肢が正常に機能していれば、などという言い回しは、普通の?年頃の女の子っぽくないな、と考えつつ。いつ死ぬか殺されるか分からない毎日だった、という過去にも疑問はあるけど、特に問う事はしなかった。 ひとつ間違えてた、という項目には最初きょとんとしたけど。腑に落ちた。]
そっか…… 雛子ちゃんが差し出してくれた手を、あのとき僕は取ろうとしなかった。だから悲しくさせちゃったんだね。ごめん。
(225) 2023/11/22(Wed) 13時頃
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[これから話すことは雛子の手を取る事にならないかもしれないけど……とは心の中だけで。順を追って、口を開き始める。]
僕は歌舞伎役者で。るくあちゃんは、僕が顔と名前を憶えるくらいには熱心なファンでいてくれて……、今年の初めだったかな。行きつけのブックカフェで偶然会ったんだ。
[そのブックカフェで、連絡先を交換したけど、その流れを思い出せないこと。 しばらく一方通行のLINEを貰っていたけど、ある日、”しにたい”という一文を見て思わず返事してしまったこと。
それから………。]
(226) 2023/11/22(Wed) 13時頃
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[話が毒薬を渡したことまで及ぶと、最後に、卯木と話した内容へ。 それから──、知り合いである雛子に話すのは少し躊躇もあったが、必要な情報なので、灰羅とるくあに血の繋がりが無いという話も。]
僕は、自分の意志で彼女に毒を渡したと思っていたけど、卯木さんや灰羅さんの話を聞いていると自信がなくなってきた。 でも、それはむしろ、もうどうでもいいんだ。 るくあちゃんにどんな能力があろうと。僕が彼女を死に至らしめた。そこの事実は揺るがないんだから。
[少し長い話になってしまった。ゴンドラは下降を始めている。 ふぅ……とひとつため息をついて、続けた。]
(227) 2023/11/22(Wed) 13時半頃
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最初は、ここを脱出したら自首するつもりだったよ。そうすることで、ここに取り残されたみんなも解放してもらえるだろうし。 ただ、雛子ちゃんだけは脱出の時に一緒に連れて行きたいなって……。最初はその話をするつもりで、メッセージを送ったんだけど。 今は、気が変わっていて、
灰羅さんに、みんなに、 僕が犯人だと伝えようと思ってる。
そのうえで殺されても、もういいかなって。
[ゴンドラが下降するにつれて、エレクトリカルパレードの音楽が近付いて来た。カラフルな光と楽し気な音楽は、閑散としたこの遊園地ではかえって物悲しい。]
(228) 2023/11/22(Wed) 13時半頃
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僕は両親に自分のことを知って欲しかったんだけど…。でも、それでどうなるわけでもないんだ。僕の気が済むだけ。 もう大人だから。育て直してもらうわけでもないし。 僕はもう、何もやり直せない。
でも、灰羅さんは、今大事なところに居ると思う。 ──今は、彼が招待者なのだろうと確信してるけど。
僕に復讐することで彼が何かをやり直せるのなら、やり直させてあげたい。
[ここまで話して、”……でも僕がこう考えたことは誰にも内緒だよ?”、と人差し指を口に当てた。]
(229) 2023/11/22(Wed) 13時半頃
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(坂理に個別送信)
『 坂理くん、キミに贈り物がある。
モナリザを一台寄越すから、
ソイツから受け取ってくれよ 』
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――夕方:ホテル
[気が付くと日が暮れていた。 ベッドから起き上がり身支度を整えると、 アポロで一通メッセージを送る。
ホテルの廊下にはピンクのリボンピンと>>2:57 胸部にマニキュアで深紅のハートマークが 塗られたモナリザが移動していた。>>2:266 呼び止めて、片手に収まる程度の小包を渡す。]
このゲストに届けて欲しい。 おっと、扱いは丁重にな。
[ホテルのロボットはいつもより少ない。 パレードに駆り出されているためだ。 遠くから鳴り響く音楽。そろそろ開始の時間だ。]
(230) 2023/11/22(Wed) 14時頃
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[青年が受け取ったかどうかは兎も角。 小包には「適当に処分してくれ」と付箋の貼られた 爆発物の起爆装置らしきものと、 赤い×印でマーキングされたマップデータ。 それに、島の権利書が同梱されていた。*]
(231) 2023/11/22(Wed) 14時頃
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[ゴンドラが地上に近付いて、エレクトリカルパレードがよく見える。 ライトアップされたたくさんのモナリザはとてもカラフルだ。 歌舞伎でいわゆるお練り、と呼ばれるパレードをした事はあるけど、こんな幻想的なパレードを見るのは初めてだった。色とりどりの灯かりに照らされて笑顔が漏れる。]
遊園地は初めて来たけど、僕ここが好きだな…。
[そろそろ降りるタイミングだったので、雛子の手を取ろうと差し出して。]
そうだ。 僕の本名は歌川亜綺羅って言うんだ。 だから綺羅って呼んでもらって問題ないんだけどね。
本当の本名、役者になってからはどこにも出してなくて。初めて教えたよ。 それじゃあ、僕は行くね。
[ゴンドラから降りると、繋いだ手を離した。]**
(232) 2023/11/22(Wed) 14時頃
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[ホテルを出て、 ロボットの楽隊が奏でる賑やかな音楽をBGMに、 ぶらり歩く。 >>186 中村が想像した通り、己を形作る基盤は 心許ないものとなっていた。 今となってはそんなものがあったかさえ、 判らない。
パレードの明かりが作り出す、 色とりどりの華やかな光を通して、 記憶の中のるくあの像が揺れている。]
片を付けないとなァ。
[独り言ちて、幸せそうな音の波に 背を向けた。**]
(233) 2023/11/22(Wed) 14時頃
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灰占道士 煙は、メモを貼った。
2023/11/22(Wed) 14時頃
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[それから、ほどなくして
早い方がいいだろうと、アポロに文字を打ち込み始めた。]
(234) 2023/11/22(Wed) 14時半頃
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(一斉送信)
まず、デバイスでのお知らせになる事をお許しください。
”招待者”に確実に届けるためには、
モナリザに放送してもらうか、
アポロで全体送信するか、二択かなと思って。
(おそらく通信関係は全て覗かれているでしょうから)
どちらでもいいんだけど、
文章で残る方にさせていただきますね。
煙崎るくあさんを死に至らしめたのは僕、中村です。
彼女が死にたいと言ったので、致死量の毒をお渡ししました。
どうしてそんなもの持っていたのかは個人的な話なので
割愛します。
話す気になったのは、気まぐれです。
僕は逃げも隠れもしませんのでお好きにどうぞ。
しばらくメリーゴーランドからパレードを眺めています。
パレードが終わったらホテルで普通に食事をして寝ます。
どのタイミングでも、よしなに。
ひとつだけ…
言い訳とかではなくてですね。
僕しか知らないことなので。
彼女、毒を渡したら、
「 ありがとう。
私、今 とっても しあわせ 」
と言っていました。**
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――夜/ホテル――
園内スピーカーから大音量でパレードの曲が流れてだす(>>219)。アップテンポの明るい曲調、心踊る軽快なメロディとリズムは、単純な繰り返しですぐに観客も巻き込めるように計算されている。合奏に時折ピコピコ電子音が混ざるのが、モナリザたちの動きと絶妙にマッチして、整然と進むパレードを盛り上げていた。 そんな華やかな行列を逆行して、並行二輪車はホテルの方に向かっていた。一瞬目を奪われはするけど、観客も疎らなパレードは、どこか虚ろで寒々しい。闇夜にクッキリ浮かび上がるようにライティングされたギャラクシーランドの、なるべく暗い箇所を偲び行く。
(235) 2023/11/22(Wed) 14時半頃
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部屋に戻ると、軽くシャワーを浴びて服を着替えた。あのウィッグはもう被らずに。中学校の制服は、さすがにサイズが合わなかったから、黒いシャツにデニム、鉛色のパーカーという無彩色の装束(ストーキング時の基本スタイル)で、顔にも余計な色は一切のせない。 街の雑踏なら周囲に溶け込めるのに、賑々しいネオンとレーザーライトの中では、キャンディの姿より浮いてしまいそうだ。
宛がわれた部屋をざっと片付けて、キャンディの衣装一式は纏めてクローゼットの隅に。カメラとタブレットを取り出すと、遊園地を訪れてからの動画を全て削除した。
「――――ごめんな。」
準備が整うと、黒須ワはひっそりとホテルを*抜け出した。*
(236) 2023/11/22(Wed) 14時半頃
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[文章を打ち終えて一息つく。 雛子はどうしただろうか。 もう、一緒にいるのは危険だから、出来れば離れたところに避難してほしいと願うが、聞き入れてくれるかな。]
招待者が誰なのか分からない方がいいだろうから 一応こういう形式にね。
[そうして、メリーゴーランド『銀河の海賊』へ。 辿り着いたら立体起動装置の白馬にまたがって、 ゆっくりと待ってみようか。]**
(237) 2023/11/22(Wed) 14時半頃
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―― 少し前:メリーゴーランド『銀河の海賊』前 ――
[フェンスに身を乗り出して、ではなく 敷地内で頑張って声を張った程度でも 声は届いてくれたらしい。
アトラクションに近づく度大きくなるメロディーに 何とか掻き消されないくらいの声>>>185と 明瞭に聞き取れる声、ふたつ。>>191]
ふふ。ありがとう……!
[此方も礼を返す。 状況が許さない部分もあるけれども 楽しむことが出来る時はなるべく楽しもう。 そう、思い直して。 永遠に回転する夢の環から、そっと離れた。*]
(238) 2023/11/22(Wed) 15時半頃
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── 銀の館 ──
[アトラクションの一つということだったから 小ぢんまりとしたプラネタリウムかと思えば 近付いて見上げた館は意外と大きい。
薄暗い館は気が滅入るために普段は避けているが 全体がプラネタリウムだという説明書きを見て それなら、という予測で足を踏み入れた。]
…… すごい………
[客人を迎える、満天の星空に思わず息を呑む。]
(239) 2023/11/22(Wed) 15時半頃
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[私は星や天体に造詣が深くない。 どれがなに、と覚えるでもなく ただ星々を見上げているのが好きだった。 浮雲の流れゆく様を見詰める昼、 それが夜に置き換わるだけとも言える。 離島であるこの島でも、もしかしたら 空を覆う星々が見られるのかもしれない。
煌びやかなライトアップが夜を白く染める その真上で。]
(240) 2023/11/22(Wed) 15時半頃
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[奥に向かう通路、それから 脇に中〜小の区画が幾つかあるらしい。
お勧めルートなどがお知らせされて いるかと思ったが順路は特にないようだ。 なので、思うように各部屋を巡りつつ 途中、左脇奥の区画に足を踏み入れた。]
………?
[その部屋は他と少しだけ様子が異なっていた。 天井に満天の星空。それは同じだが 中央に操作盤併設のホログラム投影盤のようなものがあり 青い地球がひとつ浮かんでいた。]
(241) 2023/11/22(Wed) 15時半頃
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[中村のメッセージに気づいたのは、 どこかの通りを歩く途中。
一斉送信での告白に、やはり、と 得心のいく感情が湧く。 己と同じく不明瞭な記憶があったという 中村の話を聞いた後だからか、>>162 当初とは心境が変わっていたためか、 憎悪の念は起きなかった。]
毒。
[るくあを死に至らしめた手段。]
(242) 2023/11/22(Wed) 16時頃
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[毒を渡したとき、中村に伝えたという 「しあわせ」その言葉を信じたいと思う。 最期の瞬間も、 辛く苦しいものでなかったと 願ってもいいだろうか。]
……近くにいたのに、 気づいてやれなくて……ごめんな。
[呟いて、向かう先は銀の館。**]
(243) 2023/11/22(Wed) 16時頃
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