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![]() | 【人】 啓明結社 カコ[予約を承ったものとは別に、フェルゼが選んだのは、 (24) eyes 2024/03/03(Sun) 13時半頃 |
[仕切りを隔てた先にいたのは、
純白のウェディングドレスに身を包んだ、式の主役の姿。]
········綺麗だ。
[ふんわりとした広がるドレスは、君が好きな百合の花弁のようで滑らかで。
一緒に選んだものだからか、より煌めいて見えました。
時間をたっぷりとかけて悩んだかいがあったな、などと考えていたら。
意地悪な言葉が物と共に飛んできたでしょう。]
下心はないですからね!?······わっ!
[目くらしが顔に掛かり、情けない声をあげました。
いそいそと布と共に仕切りの向こうに引っ込む花婿。]
·······単純に心配しただけなのですが。
[せっかく褒めて貰えた髪型もくしゃくしゃになってしまっ。て
それを鏡の前で整えながら、不満そうな独り言を呟いていました。
···まぁ、本音を言えば。
最愛の人の晴れ姿を早く見たかった気持ちも強かった、····です。
本音を見透かされたような気分になり、頬にほんのり赤らめていたでしょう。]
[今度こそ、大人しく君を待っている間に、ふと自室に視線を向けました。
つい最近、買い換えたベットは
二人で寝ても、充分に余裕があるもの。
『一日の始まりを告げる、おはよう。
一日の終わりを告げる、おやすみ。』
それを君の口から聞けるのが嬉しくて、
熱い夜だけでなく、温かな夜を過ごすことも増えました。
ほんの少しだけ狭くなった部屋には
置き忘れたり、飾ってくれたりした、君のものが段々と増えてゆき、
それらを見る度に、幸せを感じる日々を過ごしています。]
[準備が整い、
雪のよりも真っ白な花嫁の衣装に身を包んだ君を見て
私は、また君に惚れ、恋におちる。
上質な白のシルクで作られた、丈の長いドレスは
すらりとした手足を持つ君によく似合っていて
露出の少なさと清楚な雰囲気の黒髪が、君の上品さを引き立てていました。]
今日は、一段と綺麗ですよ。
[ベールの下から覗き込むように、身体を傾け、
柔和な笑みを浮かべました。
左手の親指を中に入れて握り
それを体の正面に置いてエスコートポーズをとります。
どうぞ、ここに右腕をお掛けください。]
[最初の一歩を同時に踏み出して、控え室を後にしました。
歩幅を合わせ、廊下を歩き、階段を降りてゆくと見えてくるのは
私たちを祝福する、家従たちの姿。]
···知っていますか?
会場を埋め尽くす百を越えそうな花たちは、
庭師だけでなく、
ここにいる皆が協力して植えてくださったんですよ。
[そっと、隣を歩く君に耳打ちをします。]
[それはきっと
君が私の婚約者だからではなく、君自身が好かれている証拠。
······ですので、今日も、これからも胸を張って歩いてください。]
[祝福の表情を向ける皆に礼をしてから
屋敷正面の玄関が開き、外へと足を踏み出す。
勿論、君と一緒に。
そこには各地からお呼びした、招待客の姿がありました。
豪華な食事に、その席ごとに違う花が生けられたテーブル。
その中央に位置されたバージンロードを、私たちは進んでゆく。
途中にすれ違う人、1人1人に視線を向け、
静かに目を閉じ、軽く頭を傾け、感謝を伝えたでしょう。]
[健やかなる時 悩める時も
君の傍にいると 生涯の伴侶となることを]
誓います。
[二人で愛を誓いあい、そうして手に取ったのは
生命力の溢れる蒼色のガーネットたちが花を象る指輪。
それを君の左手の薬指へと嵌めました。]
[指輪の交換が終われば
花嫁のベールを持ち上げ、君の晴れ姿を目に焼き付けます。]
·······愛しています、ロイエ。
[皆の前で、誓いの口付けを重ねました。]**
[どこか不思議そうにジャーディンは、眠れない時に
傍にいるのが自分でいいのかと尋ねる。
そうね。
貴方は私といると落ち着かないように見えるし、
私もそんな貴方を見ると、
どうしていいか分からなくなったりもするけど……
それはそのうち、お互い慣れるでしょう。
少なくとも私は。
貴方大分、思ってることが態度に出やすいし。
[そもそも娼妓一人にどう思われようと、
カコの日常生活に差し支えはないはずで。
それを気にするということは、気に懸けているのだと
理解も自覚もある。]
貴方の生い立ちで、その素直さや純粋さを
保っていられるのは、貴方の資質なのでしょうね。
よくはっとさせられるし、何ていうか……、
どうにも放っておけない気に、させられる。
[ジャーディンを見習って、カコはできるだけ率直で、
嘘のない言葉を探す。]
……上手くいえないけど。
なかなか、見ていて飽きないのが良い。
[彼を部屋へと案内する道すがら、背後で物珍しげに
屋敷の中を見回しているのにも気づけば、
その時も同じことを思って。
カコはひっそりと微笑んだ。
[カコがジャーディンを案内したのは、予告通り自室の隣。
かつては子供部屋だった場所で、壁紙は柔らかい
クリーム色をしている。
広すぎない部屋の中に、今はおもちゃやベビーベッドの
代わりに、大きすぎないベッド。
客用寝室などでは安眠できないだろうという判断が働いた
配置でもある。
ここが、貴方の部屋。
初めての場所で眠るのは、
落ち着かないでしょうけど……
テーブルの上にホットミルクが置いてあるから。
それでも飲んで。
[身の回りのもの、生活に必要なものは過不足なく
用意されているはずだ。
ジャーディンが部屋に入れば、戸口で挨拶を交わす。]
おやすみなさい、ジャーディン。
どうか、“ぐっすり”眠れますように。
良い夢を。
[窓辺には、水を満たした花瓶が置かれている。
この部屋は当然、屋根裏や地下室ではない。
新しい朝が来れば、カーテン越しに陽光が降り注ぎ、
マーガレットの花弁は、清楚な白に輝くことだろう。]*
ふふ!嘘つき。
[下心は無いと言う貴方に向かって、
投げた言葉は冗談だったのだけれど。
実は、少しだけ的を得ていた発言だったらしいというのは
……知る余裕はなかったわね。
より女性らしくより美しくと着付けと化粧に、
ぎりぎりまで粘って時間を使っていたから。]
[それだけ気合いを入れたおかげか、
ちゃんと時間もオーバーせず。満足の行く出来で
貴方の前に現れることが出来た。]
綺麗になるために、着たの。
[笑みに笑みを返してから、堂々と。
貴方が最初に見初めてくれたのは、私の美だったから
今日はそれを、お見せできるだけお見せしようと
そんな気持ちで、着飾ったのよ。]
[腕を組んだのに、手を添え預けて。
貴方と歩を合わせながら、半歩後ろにひかえしずしずと。
どう?今日彼の伴侶と相成る人は、
外見、所作に非の付け所無く。
並の女を捨て置くほど、美しいでしょう?
……と、心の中で己を誇りながら歩みを進めた。
廊下で拍手なり、おめでとうと祝いの言葉を投げる人々
その中には、あの時反対の声をお上げになった人もいて。
その人も、今は私たちに拍手を送ってくださっていた。
へぇと内心感激する。……会場に着いたら、少し目を
凝らして見ましょうと。]
[特別な日だからと、いつもより贅を尽くした品の数々。
その合間を進んでゆく。背筋を伸ばして凛と、堂々と。
人に見られることには、慣れていたつもりだけど。
歩む度やおら緊張の2文字が頭に浮かんできた私が
来賓やらを見て、何か思えるようになるのは
もう少し後のこと。]
[貴方に続いて誓いの言葉を述べる唇は、
今日はベージュでなくて薄赤いリップで彩られていた。]
[ベールがあげられれば、
薄布の内に篭っていた、少し暖かい空気は清涼なものと
置き換わり、貴方の顔も先よりよく見える。
本当に、きれいで整った、私の愛する人の顔。
それが私の顔に近づいてきて……
あぁ、と心の中で感嘆のため息を吐きながら
目を、閉じた。]
[唇を重ね合う。リップの色を貴方に押し付けるほど
強くはないけれど、すぐ離れる程軽いものでも無いでしょう。
数秒、時が止まったような心地を得て。
甘い気分が、私の胸の中に広がる。]
[あぁ、人の目さえ気にならなければ。
きっと貴方の肩に手を回して、抱きしめていたぐらい
愛おしさも胸に募っていた。]**
[「馬鹿ね」と言われて、
ジャーディンは視線を落とした。
彼女の声音に嘲るような雰囲気は無かったが、
彼女の言葉に込められた意図を探るより前に
彼女にまた叱られた、と感じてしまったのだ。
彼女は己の態度に思っていることが出やすいと言うが
今思っていることも伝わるのだろうか、と
彼女を探るような視線を向ける]
……はい、いずれは慣れていくでしょう。
[ジャーディンとしても慣れてもらわなければ困る。
いちいち気後れしていては疲れてしまう]
……僕に素直さや純粋さがあるのですか……?
[それがどういったものかもピンとこず、
ジャーディンは首を傾げた。
見て飽きないというのは、
つまりは気に入っているのだろう。
それは喜ばしいことだと思え、安堵する]
[部屋に案内してもらうと、予告通りの場所で
部屋の中には当然のようにベッドがあり、その上、
ホットミルクまで用意されているという
そんな、お気遣いいただいて申し訳ございません。
本来なら僕が自分で
用意するものだったでしょうに……
[新しい屋敷のことだから慣れた人に任せたほうが、と
用意してもらうがままにしてしまったが、
本来それが正当ではなかろうか、と
ジャーディンの内には今更ながらに罪悪感が浮かぶ]
[しかし今更その点を騒ぎ立てても仕方ないのは
ジャーディンも理解していることで]
……はい、ありがとうございました。
おやすみなさいませ、カコ様。
カコ様も良い夢を。
[主人の見送りに礼をして、彼女が去っていけば
改めて室内を見渡した。
パルテールでは窓のある部屋に暮らしていたし
ベッドで眠ってもいたが、それはあの店に
勤める間だけの特典だと思っていたのだ。
この先もこういう暮らしが続くのは落ち着かない]
[落ち着かない思いはその後もたびたび感じた。
朝、目が覚めて夢ではなかったと気付いたときにも、
室内に身の回り品が揃えてあると気付いたときにも、
また別の機会に主人と食卓を共にしたときにも、
園丁に庭仕事を学び始めたときにも。
だが庭仕事は思いの外ジャーディンの興味を惹いた。
生き生きとした庭木や花々が、手入れによって
より美しく育っていく。
ほんの少しの手入れで庭全体の景観が
見違えるほど大きく変わっていく。
自分の手で何かを変えられる、と感じるのは
初めのうちは恐れ多いことだったが、
次第にそれを楽しめるようになっていった]
[仕事の荷物持ちとして
彼女の取引先に共に向かう機会も増えていた。
屋敷について早々に品物を届けに向かった先は
パルテールの顧客の家だった。
なんと結婚指輪なのだという。
結婚式への参列は、ジャーディンは固辞したが
カコが命令すれば行かざるをえないだろう。
そこで思わぬ再会を遂げることもあるかもしれない]
[かつて奴隷として虐げられてばかりいた日々と
カコの元で暮らす日々とは
それぞれが異世界の物語のようにかけ離れていた。
だが、次第にジャーディンも実感するに至った。
これからの日々で紡がれていくのは
夢物語ではなく現実なのだと。
現実ゆえに過酷なこともあるかもしれないが
今の自分は孤独ではないと思えた。
カコという主人がいるからだ]**
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