28 僕等(ぼくら)の
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[康生にも、その学友達にも、申し訳無い事をしてしまった。謝れない事が、心残りだ。]
[意識が遠退いていく。今度こそ、私は本当に死ぬのだろう。心臓が止まってから、脳が死ぬまではどのくらい掛かるのだったか。康生は、その間ひとりで……、………*]
(287) 2023/08/20(Sun) 19時頃
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─戦闘終了直前 コックピットにて─
[コックピットに戻って来たハロの報告>>292に、私は心底ほっとした。康生もまたそうだっただろう。]
サンキュ、ハロ。ほんと助かる。 ……後で、俺も母さんのとこ送ってくれ。 胸ポケットに手紙入れてる。 それ読んでもらえば、わかるようにしてるから。
[私達が敵を倒したのは、それから間もなくの事だ。*]
(293) 2023/08/20(Sun) 20時頃
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─戦闘終了後 本郷へ─ ・・・・ ・ [父さんの椅子に座ったまま、俺はみんなの顔を見回した。縁士に本郷、ケイ。カガセンも居る。みんなして何とも言えない顔してるし、本郷が謝って来た>>289もんだから、苦笑するしかなかった。]
何言ってんだよ。本郷がちゃんと指示してくんなかったら、俺きっと撃てなかった。 本郷が謝ることなんもねーし、ほんと助かった。サンキュ。
……悪いな、重いもん引き継がせちまって。 俺の方こそ、…………ありがとな。
[ほんとは、俺の役目は終わってなんかない。俺はまだパイロットに選ばれてなくて、本来ならもう一回戦わなくちゃいけなかった。だから、やっぱりどうしたって世界のことは考えちまうけど、本郷の言いたいことはわかったから、礼を言って甘えることにした。*]
(294) 2023/08/20(Sun) 20時頃
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─戦闘終了後 カガセンへ─
[カガセンがこっちに来た>>@24>>@25。すごい真面目ってか、切実な顔で。今まで聞いた中で一番優しいしてた。]
そ、っか。俺、生きてたもんな。 ……俺が消えても、大丈夫で居てほしかったんだけどな。 無理かぁ。関わっちまったもんな。
でも、うん。俺、関われてよかったと思ってる。 そのまんま返すみたいで、芸がないけどさ。 カガセンも、俺の大事な先生だよ。
……ん、そうだな。そろそろ休むことになりそう。 いろいろありがとな、カガセン。
────後は、頼みます。
[少しだけ真面目に頼んだその後で、俺は、段々ゆっくりになって動きの止まった父さんから手を離した。それでもう、何が起きたかカガセンにはわかったんじゃないかと思う。*]
(301) 2023/08/20(Sun) 20時頃
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─戦闘終了後 縁士へ─
[縁士が手を取って言葉を掛けてくれた時>>295>>296、父さんは随分ゆっくりになっていたけど、まだ辛うじて動いてた。だからきっと、声も聞こえてたんじゃないかなって思う。右手は父さんに当ててたから、左手で縁士の手を握り返した。よく考えたらこっち、指輪付いてる手じゃん。ちょい恥ずいな。]
病院の指定、サンキュ。助かった。 ……ん、悪いけど全部任せるよ。
[“ふたり”ってガッツリ言っちまってるし。縁士って、しっかりしてそうでちょい抜けてんのな。みんな、他のことだと思ってくんねーかな。……無理か。ま、大丈夫って言ってるから大丈夫か。どっちにしろ、任せるしかねーし。]
……今、止まった。安心したんだと思う。 俺の方こそ、ありがとな。
[俺は、縁士にだけ伝わるように、ちょっと言葉を選んでそう言った。*]
(304) 2023/08/20(Sun) 20時半頃
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─心臓が止まった後 ケイへ─
[父さんの心臓が止まったから、俺に残された時間はあと数分だ。ケイもきっと気付いてるんだろう。もう死ぬなら、俺は今まで躊躇ってたこと、できなかったこと、全部できるんだって。]
…………ケイ。 ケイはさ、俺のことすげー褒めてくれるし、すげーやつみたいに言うけどさ。 俺、ほんとは全然ダメなんだ。
だって、あんなに死ぬの当たり前だって思ってたのに。 俺の心臓なんて、とっくの昔に止まってるのに。 今になって、怖いんだ。 身体の中から、何の音もしないのが。
死ぬのが、独りになるのが、怖いんだよ……。
[俺がいろいろ平気だったのは、ずっと父さんが居たからだ。いつだって、死ぬ時だって独りじゃないって思ってた。だから今、独りになって────初めて、すげー怖いってことに気付いたんだ。*]
(305) 2023/08/20(Sun) 20時半頃
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─カガセンに託した手紙─
[撫でてくれたカガセンに、俺は笑い返した。時間もなかったし、それ以上何も話せなかったけど。カガセンのクラッチバッグの中身には、こんな手紙が入ってる。]
(306) 2023/08/20(Sun) 20時半頃
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『パイロットのみんなへ』
『みんながこれを読んでる時、俺はもうこの世に居ないと思う。 文面がお約束過ぎるな? でも、ま、そんな感じ。 この手紙は、みんなが混乱してそうだったら読ませてくれって感じで、同じものを加賀先生と三千院部長に預けようと思ってる。 だから、みんなが落ち着いてたら読まずに済むわけで。読まれないことを祈ってる。』
『俺がどういう風に死ぬのか、今の時点ではわからない。 負けてるかもしれないけど、そしたらこの手紙は読まれてないから置いとくとして。 いきなりコックピットで自殺ショー始めたのかもしんないし、ちゃんと戦えてちゃんと死ねてるのかもしれない。 どっちかだとは思うんだけど。どっちでも、俺が二人分契約してたってのはバレてるだろうなって。 それが、この手紙を書いた理由。なんもわかんねーと混乱するよなって。 俺、説明下手だけど、ないよりはマシかなって。』
(307) 2023/08/20(Sun) 20時半頃
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『俺の心臓はとっくに止まってて、今俺の中にあんのは父さんの心臓なんだ。 だから、なんか命が二個あるって扱いになったっぽい。 なんでそうなったのか正確なとこは俺にもわかんねーけど、父さんの心臓は脳の俺と別人って判定で契約されてたってこと。』
『で、今回パイロットになったのは父さんの方。 父さんには頭がないから、頭で考えて動かすアストロを動かせないかもしれない。 その場合はパイロットを交代しないといけなくて、交代するには死ぬしかないから、ダメだったら俺は自殺してます。 自分でちゃんと死ねてたらいいけど、手を汚させることになってたらごめんな。 ちゃんと動かせた場合でも、心臓の父さんが死んだら俺は生きてらんないから、やっぱり死んでると思います。』
『俺が二人分の枠使っちゃったから、今頃みんな混乱してるよな。 数が合わないとか、動かせないかもとか、パイロットが足りなくなるかもとか、問題になること知ってて黙ってた。本当にごめんなさい。』
(308) 2023/08/20(Sun) 21時頃
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『謝るついでに、図々しいけどお願いがあります。 どうか、みんな仲よくしてほしい。悪いのは全部俺だから、俺以外の誰も責めないでほしい。 俺はこの世界が大好きで、出会えたみんなのことも大好きで。一人でも多く幸せになってほしいし、笑ってほしいんだ。 それが俺の、一番の望みです。 みんなのこと巻き込んじまった俺の言うことなんて、叶えたくないって思っちまうかな。 でも、ちゃんと言っとかないとって思いました。』
『もし、こんな俺のこと嫌いにならないって言ってくれるなら、どうか俺のこと覚えててほしい。 そしたら、俺はきっとみんなの中で生き続けるから。父さんが俺の中で生きてるみたいに。 みんな、ほんとサンキュ。またな。』
『P.S.ずっと一緒に戦ってくれてたもう一人の仲間、俺の父さんが居たってことも、覚えててくれると嬉しいな。*』
(309) 2023/08/20(Sun) 21時頃
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─心臓が止まった後 ケイへ─
[ケイが髪を撫でる手>>310に、頭を摺り寄せた。俺の手はもう胸から離れてて、ケイの手が代わりに触れた>>311けど、そこに在るのは父さんの死体だ。俺の中だから、まだ冷たくはなってないけど。俺の血は、全部父さんが動かしてた。血が巡らないから、息してるはずなのに段々頭が巡らなくなって来る。]
ケイも、怖い? ……ごめんな。 来てくれる……? ちゃんと、来る? 独りはやなんだ、俺。
[キスしたいって、ケイは言った。ずっとしたかったんだろうな。俺がこんなだから、できなくて。ずっと我慢させてたんだろうな。]
俺は、ケイにしてやれること……全部、したい。 約、束……誓い、の。できなかった、から。 独りに、しないで……。
[息を吸ってるのに、全然酸素が来ない。苦しくなって、ぼやけてく。貧血みたいに、段々世界が暗くなっていく。ケイの顔、もっと見たいのに。やだな。死にたくないな。って、手を伸ばした。*]
(313) 2023/08/20(Sun) 21時頃
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─心臓が止まった後 ケイへ─
[ほんとはさ、いつもの俺ならさ。「すぐ来るとか言うなよ」って笑ってなきゃいけないんだ。でも、独りになった俺は、「死にたくない」って誰にも言えずに、独りこっそりベッドの中で泣いてたような俺はさ。最期の最期にボロ出して、寂しくて。いい子になんてなれなかったんだ。カッコ悪いよな。]
……来て、くれ。待って、るから。
かあ、さん……せか、い……、………ケイ。
[言いたいこと、多分これじゃ伝わんないな。説明下手なんだよ、俺。でも、最期に呼んだのはケイの名前だったし、最期に手を伸ばしたのはケイだったし、最期の一呼吸はケイとキスしながらだったから、少しは伝わったかな。]
[唇があったかくて、血が巡らない俺は寒かったから、なんかすごく安心して。抱き締められてたのもあったかくてさ。ほっとして、ケイの頬に伸ばしてた手が滑り落ちて────俺の人生は、そこで終わった。*]
(322) 2023/08/20(Sun) 22時頃
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─俺と父さんが死んだ後─
[母さんが無事だってハロに伝えてもらった時>>297、俺は「ありがとな」って一言伝えんのがやっとだった。時間も余裕もなかったから。]
[事前に、ハロには「俺が死んだら、死体は母さんの元に送ってほしい」って頼んで>>293あった。ハロは快く引き受けてくれたし、ちゃんと送ってくれた>>332。その時の為にずっと胸ポケットに手紙を入れてた>>201から、母さんならきっとその通りにしてくれるだろうと思ってる。その“母さん元”が日野病院になるとは、思ってなかったけど。却って手続きはしやすかったのかな。]
[その手紙の内容が、これ。]
(333) 2023/08/20(Sun) 22時半頃
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『母さんへ』
『何も言わない方がきっと苦しませずに済むと思うけど、父さんががんばったってこと知ってほしくてこれを書いてます。 俺が通ってた高校の近くに出てた、巨大なロボット。俺らは、「アストロ」って名付けたんだけど。 アストロは地球を守るロボットで、六人のパイロットが契約して、一人一体ずつ敵を倒すことで地球を守ってます。 なんで一人一体ずつかって言うと、アストロを動かすのには、人の命が必要だから。 一回動かすごとに、誰か一人が必ず死ぬ。パイロットは全員、命懸けで戦ってる。もう二人死にました。 俺の後輩の女の子と、同級生の友達。二人とも、この世界を守る為に命を賭けて戦ってました。』
『三人目のパイロットに選ばれたのが、父さんです。 さっき六人のパイロットって言ったけど、そのうちの二人が、俺と父さんだったんだ。 つまり、人智を超えた力で動くアストロが、俺と父さんをどっちも別の命だって判定したってこと。 父さんが俺の中で生きてるってのは、俺と母さんの思い込みとかじゃなくて、本当の話だったんだ。』
(334) 2023/08/20(Sun) 22時半頃
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『この手紙を母さんが読んでるってことは、父さんは戦って勝ってるはずです。 それで死んじゃって、父さんの心臓が止まってるなら、俺も多分一緒に死んでるはず。』
『独りにしちゃってごめんなさい。黙っててごめんなさい。 でも、母さんのことは絶対に巻き込みたくなかった。全部話したら、絶対逃げてくれないと思った。 家出しちゃってごめんなさい。戦闘が起きる場所はパイロットの居るとこになるから、近くに居られなかったんだ。 全然不満なんかなかったし、今も、いつまでもずっと大好きだよ。父さんだってきっと、そう思ってる。 母さんが生きてる世界を守るために、父さんと俺は戦うよ。』
『お願いが二つあります。俺と父さんは、母さんのところへ帰してもらうよう言ってます。 俺だけじゃなくて、父さんの葬式も一緒にあげてください。お骨も、そん時に一緒にお墓に入れて。』
(335) 2023/08/20(Sun) 22時半頃
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『もう一つ。もし、俺がしてるのと同じ指輪をしてるケイ ──乾恵一ってやつが訪ねて来たら、聞ける望みは聞いてやってほしいんだ。 俺、生きてる間、あいつに何もしてやれなかったから。母さんがどうしても嫌だって思うこと以外は聞いてやってくれないかな。 そいつもパイロットで、死ぬことが決まってて、もうあんまり時間が無い。 俺が契約したからって理由で、そいつも契約したんだ。 その上、俺が父さんと死んだことで、そいつの時間もっと短くさせちゃったから。俺だと思ってよくしてやってほしい。』
(336) 2023/08/20(Sun) 22時半頃
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[……ま、後の内容は省略するけど。こんな感じだから、俺の葬式は父さんと合同でになっただろうし、みんなは遺影で父さんの顔を知ることになったんじゃねーかなって、そんな話。*]
(337) 2023/08/20(Sun) 22時半頃
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