28 僕等(ぼくら)の
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─大和命戦の五日後 日暈学園近郊 柊木家─
[だが、家出先は実に理に適った場所だった。日暈学園に程近い場所に在る、柊木家だ。確かに、仮住まいのある平穏な地域にいきなりロボットが現れれば、避難も何もあったものではない。今や随分と閑散としてしまったこの地域はある意味、最も戦闘に適していた。先の戦いによりライフラインの危うい箇所も多かったが、幸いにして我が家は倒壊しておらず、ガス以外のライフラインは問題も無さそうだった。康生は湯で調理するインスタント食品は食べられるから、電気ポットがあれば取り敢えず食の問題は何とかなりそうだ。]
一日二日は「友達の家に泊まるから」で誤魔化せっけど、問題は長引いた場合だよな〜。 なぁ父さん、なんかいい言い訳考えてくれよー。
[思い付いた所で、伝えられないだろう。返事が無いのを解ってて聞くんじゃない。]
[……とまあこんな調子で。最期の二日間、私達二人は存分に話しながら日々を過ごす事になったのだった。明日香には本当に申し訳ないが…………幸せな時間だった、と思う。]
[だから“その時”が訪れたのは、私達が日暈学園近くの自宅に居るタイミングでだった。*]
(168) 2023/08/19(Sat) 23時半頃
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─>>165の続き ハロ>>164への返答─
あ、いや。謝られることじゃねーって。 希望って、時々逆に残酷になることあるもんな。 俺も、「もうダメかも」と「もう大丈夫」の間めちゃくちゃ行き来したから、大変になるよな〜ってのわかるし。 俺は……まあちょっと悩みはしたけど、酷いことにはなんなかったし。 ハロたちの事情考えたら、仕方ねーよなって。 だから、んな気にすんなって!
[いつもの様に、康生はからからと笑った。]
どういたしまして! ま、どっちかってーと、俺が黙ってたくて秘密にした感じだしさ。
[そうしてハロを見送り、母親をどう巻き込まないかに付いて、また考え込むのだった。*]
(171) 2023/08/20(Sun) 00時頃
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─コックピットへ─
[康生が日暈学園を受験した理由は、「自宅に近かったから」だ。それ以上も以下も無い。身体的問題を抱える康生とその母親にとって、高校生活を送るなら自宅に近い場所という条件は外せなかった。この辺りの話し合いに、当然私が口を挟む事は出来なかった。康生が学校生活を送れる可能性が出て来たのは、私が康生の心臓になったからなのだから。]
[でももし、何かを伝える事が出来ていたのなら。康生は日暈学園に入学せず、私も康生も契約する事無く、今も普通に暮らせていたのだろうか。或いは、私が事故に遭わなければ。それか、康生の心臓が健康と行かないまでも、移植を必要とする程の物でなかったなら……。そんな、益体も無い事をつい考えてしまった。]
[コックピットへ、康生ごと転送された今となっては────全てがもう遅い。]
(172) 2023/08/20(Sun) 00時頃
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よっ、みんな久し振り! 元気してたか〜? いやぁ〜、とうとうって感じだよなぁ。
[からりと笑う康生は、私服姿だ。最初の引継ぎ戦が制服姿、七尾千映の時が入院着、大和命の時が私服。今日は、前回ともまた異なる私服姿だった。理由は明白だ。碌に荷物も持たずに家出して来たものだから、康生は私の遺品である服を身に纏っていたのだ。それは高校生男子が着るにしては……良く言えば大人っぽく落ち着いて見え、悪く言えば地味でおっさん臭い服装だった。康生は、書斎椅子に座る天道縁士へと視線を向ける。]
あ、縁士。良かったら、席代わってくんね? なぁ〜んか、ベッドだと操縦!って感じしなくて。気合いも入んねーし。 ケイのもリラックスって感じだし、女子の椅子取んのもあれだし。大和みたいに漕ぎ続けんのとか、俺できねーし。縁士のが一番いいや。
[そもそも彼からの提案>>139だったのもあり、彼は席を代わる事を快諾してくれた。康生は、書斎椅子へと身を沈める。高校生になり身長も伸びた康生は、生前の私とさして変わらない体格をしている。まだ幼さを残す面差しを除けば、成人男性が座っている様な雰囲気を醸し出していた事だろう。*]
(173) 2023/08/20(Sun) 00時半頃
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─戦闘開始前 コックピットにて─
ケイ! ……ちょい痩せたんじゃね? それに、顔色悪いぜ? さては、ちゃんと寝てないだろー?
[康生もまた、左手を軽く挙げて応える。薬指には、シルバーの指輪が光っていた。首を傾げた彼の様子に気付いたのか、「勝負服ってやつ」と軽く笑い掛けた。]
ダメだったら、ダメだった時考えるよ。 ……やっぱ、座り心地いいな。サンキュ、縁士。
[康生は一度、天道縁士へと顔を向けて礼を言った。それ以上の事は言わないし言えないが、感謝は伝わったのではないだろうか。彼は私に礼を言った>>160が、私の方こそ彼に礼を言いたい気持ちだった。身体を喪って尚馴染む、“私”の椅子の感触。最期の舞台を、此処で迎えられるとは思ってもみなかった。康生の内に居る私自身を見てくれる者は、妻と康生自身を除けば他に居なかったのだから。彼の様な子には、出来れば生きて幸せになってもらいたいが……。]
(177) 2023/08/20(Sun) 01時頃
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ははっ、サンキュ。ケイ。
[添えられた手を、康生は受け入れた。彼へと向かって笑い返す。緊張からか、康生の手は少し冷えていた。]
[……無理も無い。動かせるか、動かせないか。それが判る瞬間が、目前に迫っていた。如何に精神が安定しており、平常通り振舞おうとする康生でも、全く緊張しない訳が無かった。“その瞬間”の到着を引き伸ばす様に、眼前の“敵”への所感を述べる。]
なんか……動物とかじゃなくて、オモチャくっ付けたみたいな見た目してんな? それも、かわいいとカッコイイのいいとこ取りして失敗したみたいな。 攻撃手段とかは、現状見当付かねーけど……。 あのキャタピラで動くんなら、前後しか無理だよな。
[今の所、敵にまだ動く様子は無い。*]
(178) 2023/08/20(Sun) 01時頃
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─戦闘開始前 コックピットにて─
食ってて寝てて、んな顔になるかよ。 ……ったく、しょーがねぇな〜。 家帰ったら、ちゃんと食えよー?
[恐らく、彼が握ったのはあの時>>0:93と同じく康生の左手だ。今は其処に、シルバーの指輪が輝いていた。座る高さがかなり異なるので、康生は殆ど腕を下方へと伸ばしきっている形だ。存在を伝えようとしている>>180のを感じ、康生は握り返した。]
…………そういや、命から聞いたんだけどさ。 ケイ、アストロになんか……やたら恥ずかしい名前付けようとしてたって、マジ?
[彼が次々と連想する単語>>181。「心臓」と言われ、康生の右手は自然と胸元へと伸びる。それを誤魔化す様に、以前リークされた>>3:144内容>>2:325へと言及した。真剣に観察しているのの邪魔になるかも知れないが、今を逃せば聞ける機会も無いだろう。]
(182) 2023/08/20(Sun) 02時半頃
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[私はと言えば、タイミングを計っていた。康生は、あくまで自分がパイロットだという振りをするつもりの筈だ。だから、動かそうとするなら周囲への声掛けなり合図なりをする筈だ。例えば今の様な雑談している様なタイミングで仮に動き出してしまえば、あまりに不自然だろう。]
[とは言え、動かないとそれはそれで怖い。私は、極僅かに指と言うか爪の先と言うか、腕の末端を動かしてみようとした。動いた…様な気がする。少し、違和感があるが。ともあれ、全く動かせない訳では無さそうだ…と思った。思い通り、自在に動かせるかまでは判らないが、全くの起動不能ではない気がする。何となく。*]
(183) 2023/08/20(Sun) 02時半頃
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─戦闘開始前 コックピットにて─
約束だからな〜。 ……コーラじゃねーの? ま、いっか。 食べれそうなもんなら何だっていいから、ちゃんと食えよー。
[自分がかつて食べていたから>>3:296という理由だとは、康生は恐らく気付いていない。指輪を辿られる>>185。少し擽ったい。]
も〜、擽ったいっての。 ま、俺も貰ったの嬉しかったしな。外す理由ねーや。
[其処に含まれているのは、恐らく幼児がプレゼントを喜ぶ様な純粋な気持ちが主だったのだろうが。彼にとってはきっと、生涯支えに出来るような言葉だろう。地球を守る為の巨大ロボットに“コウ大好きラブラブ号”なんて名付けるくらいだから相当だ。]
(190) 2023/08/20(Sun) 03時半頃
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やっぱ付けようとしてたのかよ〜。 ったく、もー。恥ずかしいだろー、バカ。 俺に知られて照れるくらいなら、やんなっての。
[そう言う康生の頬も、ほんのり熱を持っていた。]
あはっ、すげー褒め殺してくる>>188じゃん。 でも、ん…………そっか。 サンキュ、ケイ。俺のこと、信じてくれて。 なんか、イケそうな気ぃしてきた。
[左側に居る彼の瞳を見つめて柔らかく微笑んだ後、康生は正面のモニターを真っ直ぐ見据え直した。**]
(191) 2023/08/20(Sun) 03時半頃
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─戦闘開始 コックピット─
[擽ったがった康生に配慮し、彼は慌てて手を離した。互いにもっと話していたかっただろう。だが、“敵”がいつ動くか分からない状況だ。あまり話し込む訳にはいかない。康生もそう考えたのだろう。ただ、彼に一言「謝んなって」と返し、左手は垂らしたままにしていた。]
……んじゃ、みんな。そろそろいいか?
[そう言うと、康生は胸に当てた手の平に少し力を入れた。鼓動がより鮮明に伝わる。それと、胸ポケットに入れてある手紙が微かに音を立てた。これは、康生が母親に宛てたものだ。全てが終わり、私達が彼女の元に帰った後、読んでもらう為の物だった。何もかも終わってから──耐え切ってから明かすのが、康生らしいと言えば康生らしい。]
[そして、いよいよだ。敵とは、少々距離がある。ちょうど我々と敵の間には、前回の戦いで出来た“道”の一つが線を繋いでいた。其処を伝って近付けば、被害も少ない筈だ。私は、まずは敵に近付く為、一歩踏み出そうとした。まずは歩く事だけを考えるのが、セオリーだと思った。]
(201) 2023/08/20(Sun) 11時頃
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アストロを動かせるかどうか。 縁士は「父さんが動かしてくれる」って言ってた>>139し、俺もそうだって信じてる。 もし動かなかったら俺と父さんは死ななきゃいけないけど、そうはならない。なるはずがない。
────行くよ、父さん。
動くはずだ。動け、と念じた。
(202) 2023/08/20(Sun) 11時頃
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[そして、次の瞬間────アストロは転倒した。]
────えっ?
[機体が揺れる。幸い、道の方へと倒れたから周辺家屋への被害は比較的軽微ではあったのだが。機体は俯せになってしまっている。]
えっと……ちょっと待ってな。 と、兎に角起きないとだよな。これ。
[流石に、康生の声にも焦りが見える。動くには動いたが、これはもしや────]
[そして次の瞬間、敵が動いた。 ……後ろ向きに。ひとりでに転倒したアストロと、そんな隙だらけの我々に向かってくるでもなくキュロキュロとキャタピラを回しながら後退を始めた敵。それは、何とも間が抜けていると言うか、酷く奇妙な光景だと言わざるを得なかった。*]
(203) 2023/08/20(Sun) 11時頃
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─戦闘開始前 コックピットにて─
[本郷真弓。私は正直、席の交代を一番訝しがるのは彼女ではないかと予測していた。天道縁士は事情を知っているし、乾恵一は康生が強く希望すれば反対はしないだろう。だから彼女の反応が気掛かりだったが、普通に納得してくれた>>212様だった。]
へへ。そうか? 似合う?
[嬉しかったのだろう。康生は、無邪気に笑ってみせた。]
戦闘が始まる場所、パイロットが居るトコになるんだってハロが言ってた>>163。 俺が家に居たから、ここなんだと思う。 違う場所に居ることも考えたけど……避難とか考えたら、この街に居るのが一番いいよなって。
[学校が見える距離にあるとは言え、完全に学校敷地内からだった前回・前々回とは異なり、今回は敷地外からのスタートだ。その事実が、康生の言葉の裏付けとなるだろう。*]
(216) 2023/08/20(Sun) 12時頃
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─戦闘開始? コックピットにて─
[現在、アストロは完全に俯せになってしまっている。]
[私は、機体に起き上がるよう念じてみた。 ……だが、やはりと言うか何と言うか、アストロは藻掻いている様な動きになった。そも、転倒の原因が『右足と左足を同時に出そうとしたから』だろう。もしやと思い私は一旦思考を止めてみるが、それはそれで起き上がるには力と言うか、出力が足りない様な印象を受けた。つまりは、そういう事だ。]
お、おう。サンキュ、ケイ。 でも、いや、マジで……? このパターンは考えてなかった、って言うか…………ちょっと待ってな。
[乾恵一からの励まし>>205に、康生は軽く言葉を返す。それから胸に手を当て、深呼吸をした。どうすればいいか、考えているのだろう。]
(217) 2023/08/20(Sun) 12時半頃
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父さんがアストロを動かしてる────これは間違いない。 俺が考えたんじゃない動きを、確かにアストロはしたから。 でも、俺が考えたようにも一応動きはする。 俺が考えた動きも一緒にしようとしたから、アストロは転んだ。 コントローラーが二つあるみたいな感じで。
けど多分、片方だけが動かそうとしてもダメなんだ。 今、父さんは動かさないようにしてくれてるみたいだけど、アストロは弱り切った病人みたいに立ち上がれずに居る。
俺と父さんは、二人で別のこと考えてて。 頭も身体も、二人で一つしかなくて。 だから、アストロを思い通り動かすには、二人で同じように念じるしかない……?
俺からは、父さんが何考えてるとか、どうしたいかはわからない。 わかる方法があるなら、とっくにやってる。 だけどもし、ずっと見守ってくれてるのなら──。
(218) 2023/08/20(Sun) 12時半頃
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両手を地面に付いて、上体起こす!
[唐突に、康生は声を上げる。だが、私はそれを待っていた。言葉通りの動きをイメージする。思った通りに、アストロは動いた。康生も、それが分かったのだろう。ほっと息を吐き、それから再度表情を引き締めた。]
右足立てて、力入れて、立ち上がる!
[そうだ。それで良い。 ──私が合わせる。お前がやりたい様に動け、康生。彼の言っていた>>188様に。]
……よし、行けた! 悪い、心配掛けて。でも、何とかなりそう!
[レヴァも、そういう話だった。親子で思考をシンクロさせればさせるほど、自在に動く事が出来る。親と子のどちらがパイロットかの違いはあれど、私達は確かに今、二人で息を合わせて機体を操縦していた。]
そうと決まれば、あれ追わなくちゃな。 右足、前に! 次、左! 右、左、右、左……!
[指示に沿ってイメージし、機体を歩ませる。徐々に加速し、走り出した。敵の後退の動きはキャタピラなのもあり、そこまで早くなかった。これなら、直に追い付けるだろう。*]
(219) 2023/08/20(Sun) 12時半頃
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─戦闘開始 コックピットにて─
……ん、そうだな。 俺の場合は、音声認識みたいなもんだと思っといてくれ。
[乾恵一の言葉>>229に曖昧に返しながら、康生と私は機体を走らせた。やはり、敵の動きの方が遅い。暫く走っていると、徐々に距離が縮まって来た。]
罠の可能性>>230はあるっちゃあるけど……すっ転んでる相手に罠張るかって考えると、微妙だし。 ハロが言う>>231みたいに、向こうが遠距離タイプなのかなって。 それなら離れられたら不利になるし、これ以上逃げ回られてもあれだもんな。 縁士の言う通り>>198、まずは追い付いて履帯を壊そう!
[敵は真っ直ぐ下がっているだけだが、大きさ相当のキャタピラが両側に付いている。当然だが、それらは周囲の建物を轢き潰し、破壊していた。それに、48時間とは言え時間制限もある>>2:328と私達は聞いている。戦闘の意思が見受けられないのには些か疑問を感じたが、放って置く訳にはいかなかった。]
よし、あとちょっと! 右腕、思いっきり振り被ってキャタピラに──ちょい待ち!!
(232) 2023/08/20(Sun) 14時頃
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[康生から制止が掛かる。敵が急に後退を止めたからだ。このままの勢いで突っ込めば、ぶつかってしまう。向こうの装甲は硬い可能性があるので、衝突は避けたかった。何とか、機体を止めるのに成功する。至近距離で正対した私達の目の前で、ハート部分に真っ直ぐ縦の亀裂が走った。そのまま、三面鏡の様にバタンと開いた。]
うっそだろ!?
(233) 2023/08/20(Sun) 14時頃
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ッ、右に飛んで! 回避!!
[驚くのも無理は無い。開いたハートの内側には無数の砲門があり、それら全ての中に弾頭らしき物が見えた。戦車に近い>>198という見立ては正しかったのだ。康生は大急ぎで回避を指示したが、私もその頃には避けなければと考えていた。砲門から大量のミサイルらしき物が放たれ、アストラが先程まで居た辺りを爆撃する。何とか避け切る事に成功するが、閃光と爆風、衝撃が辺りに走った。]
セ、セーフ……だけど。 …………ヤバいだろ、これ。
[閃光と土煙が収まると、爆撃された箇所が完全に焦土と化しているのが判った。当たれば無事では済まない。避けても大惨事は免れない。康生の背筋に冷たい物が走った所で────ハート部分がコマの様に横回転し、此方を向いた。]
もっかい右ッ!!
[先程同様、右に跳躍して避ける。再度大量のミサイルが放たれ、閃光と爆風と衝撃が走った。幸い、発射までにタイムラグがあるので、回避は可能ではあるが……。360度砲撃が可能であるなら、かなり厄介だ。*]
(234) 2023/08/20(Sun) 14時頃
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─戦闘中 コックピットにて─
そうか、迎撃……! 数で言えば、こっちのレーザーのが出せそうだもんな! 問題は、迎撃でどんくらい威力が抑えられるかだな……。
コアが見える所に? …………あっ、もしかしてあれか!?
[ハロの言葉>>238に、康生は視線を走らせた。(ちなみに私達は視界を共有しているが、それは全て康生の意思によって動く。)そして指差したのは、三面鏡の中心。無数の砲台に紛れる様にして、コアが見えた。だがそれは、ハートがぱたんと閉じてしまった事により隠れてしまう。開かせて撃たせるか、閉じさせたまま行動不能にして後で抉じ開けるか。恐らくは、いずれかを選ぶ事になるだろう。]
(248) 2023/08/20(Sun) 15時頃
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弾切れ>>243>>246はある…と思うけど。 あの威力の攻撃の弾切れ狙ったら、この辺一帯何も無くなっちまうよ。 確かに、先に撃ち尽くさせたら楽に勝てそうではあるけど……。
[康生も私も、まさかあの攻撃にとんでもない名前>>242が付けられているとは思っていない。敵が初手で後退を選んでくれたので、学園は今回被害を受けていないし、うちも(転んだ時に潰していなければ)恐らくは無事だろう。ただ、周辺が住宅地であることに変わりはない。日暈学園に通う生徒の家も、恐らくは含まれているだろう。康生は、それを良しと出来るタイプではない。]
サンキュー、本郷。後ろを取る>>246ってのは、かなりアリだと思う。 ああやって開くってことは、前と後ろがあるってことだもんな。 なんでハート型かは、正直わかんねーけど……。 うーん…………敵の形の基準とかって、なんかあんのか?
[一応最後の問い掛けはハロに向いているが、特に返答が必要な部分では無い。知っていれば、先に共有してくれそうなものではある。*]
(249) 2023/08/20(Sun) 15時頃
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─戦闘中 コックピットにて─
や、俺も心臓かなって思ってたけど。やっぱ基準はないかぁ。 ……あの形に、みんないろいろ意味を見出しがちってだけなのかもな。
[ハロの回答>>252>>253を聞いて、康生はそう漏らした。右手を胸に置く康生にとってあれは、間違いなく心臓だ。私か、或いはとうに喪っている自分の物か。生い立ちが故に、意識せずにはいられないのだろう。人の心の形を模した記号。続いて、乾恵一もまた、康生に助言>>251をくれた。]
確かに、外側結構堅そうだよな。 じゃあ、あと一回は最低でも撃たせねぇとか……。
[話していると、閉じる事でハート型に戻った敵は、そのまま再度後退を始めた。初動は遅いが、このままだとまた逃げられかねない。]
そうはさせるか! 右足から出して接近! 四歩目と同時に、右腕振り被って履帯の継ぎ目を狙って壊す! 壊したら、すぐに左手で逆側も!
[分かった、行くぞ。一、二、三……四! そして、左だな!]
よし、壊せた! これでとりあえず、他所へは行けないだろ!
(258) 2023/08/20(Sun) 16時半頃
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[破断した履帯が、解ける様に地面へと落ちる。元々速くはない敵の機動力が、がくんと落ちた。後は、何とか開かせて撃たせて────そう考えていると、有り得ない姿が見えた。]
な、母さん……!?
[アストロを挟んで、敵の反対側。康生にとっての母親──私にとっての妻が、其処に居た。思えば、必然だったのかも知れない。康生が姿を消して、既に二日。家のすぐ近くで始まった戦闘。我が家の状態を確かめに帰って来た妻が、息子の生活の痕跡を見つけ、安否を気にして戦闘区域に足を踏み入れてしまうのは。]
[私達二人は、同時に気を取られた。敵が再び開く。避ける訳にはいかない。避けられない。盾にならなければ。残された選択肢は一つ。]
ッ、迎撃──!
[向こうのコアを狙う余裕は無かった。我武者羅にレーザーを放つ。兎に角全て撃ち落とし、後方に被害が出ない様に。落とせない物は、それこそ身体で受け止めるつもりで。大量の兵器の撃ち合いに、辺りが真っ白に染まる。]
[爆風と光が収まった時。其処に居たのは──気を失い倒れている妻。三面鏡の扉部分が脱落し、閉じる事が出来なくなり、コアを露出させたままの敵。]
(259) 2023/08/20(Sun) 16時半頃
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[────破壊された箇所から、敵のコアにそっくりな物を覗かせているアストロの姿だった。*]
(260) 2023/08/20(Sun) 16時半頃
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─戦闘中 コックピットにて─
母さん……。 …………、……よかった、生きてる。 ……ハロ。母さんを、病院か……どっか安全なとこ、転送してもらっていいか?
[康生が学校に行く為に、幾度か仮住まいに呼び出していたから、そちらの住所はハロもわかるだろう。こんな形で、今生の別れを済ます気は無かった。 ……いや。もう済ませた気で居た、と言う方が正しいか。康生にしたってそうだろう。]
[妻の事や、この事に対する康生の心境も心配だったが。それよりも、目下の問題は。アストロが重要と思われる器官を露出してしまっており、その形状が敵のコアに類似しているという事だった。]
…………、……。
[今までの戦いを思い返す。私は、敵のコアが潰される瞬間を一度も見た事が無い。何故か。毎回、康生が目を閉じていた>>1:445>>2:616>>3:339からだ。コアが何であるか判る前でさえ、康生にとって“何かの心臓部”を潰すというのは直視し難い光景だったのだろう。それが今や、私達と同じ様なパイロットが乗っているのだとほぼ確定してしまった。 ────出来るのか、この子に。誰もを愛し、命を尊ぶこの子に。自分達と同じ境遇であろう相手を殺す事が。*]
(261) 2023/08/20(Sun) 17時半頃
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─戦闘終了 コックピットにて─
[敵も、此方も。互いに、コアという急所を晒したままの状態だ。それでも、アストロは稼働自体には問題が無い。向こうはもう移動も出来なければ、ミサイルも今の所撃ってくる気配が無かった。ドア部分が脱落している程なので、発射機構が破損したか──向こうは先にコアを露出していた状態で撃ち合った為、パイロットに何事か起きている可能性すらあった。死んでいれば決着が付くのだろうから、まだ生きているとは思うのだが。もしかしたら、“交代”の最中なのかも知れない。いずれにせよ、決着を早く着ける必要がある事に変わりは無い。]
[そのパイロットが死んでいいとは、私も考えていない。だが、今動かなければ全てが終わってしまう。私一人では、この機体はまともに動かせない。動いてくれない。頭は康生の物なのだ。]
[天道縁士の声>>264がした。康生は俯く。震える声が、喉から出た。]
…………ああ、わかってる。 わかって……!?
[乾恵一の叫び>>275が響く。康生は、弾かれた様に其方を見て、顔を歪めた。視界が滲む。康生は、泣くのを堪えていた。本当は殺したくなどないのだと、言葉よりも雄弁に訴えていた。]
(279) 2023/08/20(Sun) 18時半頃
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[康生は迷っていたのだろう。けれど、本郷真弓の叫び>>277>>278は短く、そして的確だった。何をすれば良いのか、はっきりと康生に示してくれた。相手のコアを、撃ち抜く。]
────コアを撃ち抜いて、……破壊。
[震える声で康生は指示し、私は──私達は、レーザーで敵機のコックピットを撃ち抜いた。これが罪だというのなら、共に背負う……いや。パイロットは私なのだから、私が背負えば良い。「お前は何も悪くない」と、そう言ってやりたかった。言える筈も無い。]
ごめん。ありがとう、…………みんな。
[私は、何処までも無力な父親だった。*]
(280) 2023/08/20(Sun) 18時半頃
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─戦闘終了 そして─
[書斎椅子に身を沈めたまま、康生は乾恵一に抱き締められていた。もう、康生にとって彼を拒む理由は何一つ無くなったのだから。]
……だって俺、大事な場面で迷っちまったから。 動かすのだって、最初上手くできなかったし。攻撃だってくらっちまったし。 他にも、他にも…さ。いろいろ、いっぱいあるんだ。謝ること。
…………ケイのお願いだって、聞いてやれない。
[「死なないで」>>282と願われても、康生は死ぬのだ。私が死んでしまうのだから。ただ、今の所まだその気配は無い様に思えるだろう。康生は普通に微笑んでいるし、話している。彼が身を離した>>283後も。]
[ただ、その右手に感じている鼓動は弱まりつつあった。]
(285) 2023/08/20(Sun) 19時頃
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─心臓の止まる時 柊木達見の最期─
[康生の名は、私が付けた。心臓に欠陥を持って生まれた息子に、『健康で生きてさえくれればそれでいい』と願って。それ以上の事は何も望まないと。それが、どれだけこの子の重荷になっていただろうか。私が一度目の死を迎えるまで、康生に“健康”と言える日は一日も無かった。親に唯一つ願われた事を、叶えられない。その時点で捻くれてしまってもおかしくないと言うのに、康生は真っ直ぐに育ってくれた。]
[良き妻と、良き息子と。平凡ではなかったかも知れないが、幸せな家庭を持てた。一度死して尚、夢の続きが見られた。最期は、レヴァの世界の様にロボットに乗り、息子とシンクロし共に戦うという、歪んだ形で叶った夢の様だった。私は、幸福だったのだろうと思う。息子にこんなにも想われ、妻の命を、彼女が生きる世界を守れたのだから。幸せな人生だった。]
[……ああ、でももし、あと一つ叶うのなら。康生には生きていて欲しかった。私の巻き添えで死なせてしまう息子。私を喜ばせようとして、契約してしまった息子>>2>>3。この件にもし戦犯が居るのなら>>1:477>>1:478、それは私だ。]
(286) 2023/08/20(Sun) 19時頃
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