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[求めに応じて、ジャーディンは自らの下衣を
滑り落とし、未だ貞操帯で拘束されたままの
下半身を晒す。
燭台の鈍い光の下、浮かび上がるのは、
白い膚を男根まで、交差する革ベルトで
戒められた彼の姿。
それは、カコの美意識に照らしても、
扇情的といっていい光景だった。
カコは椅子に腰掛けたまま、彼の方へと、
僅か身を屈めた。]
[ジャーディンの局部へと躊躇も見せず顔を寄せ、
淫靡な拘束具を、間近でしげしげと検分する。]
お客様から要望があったから、性具の類も
多少仕入れたことがあるけれど…
[囁く度、戒められた彼自身を、カコの吐息が擽る。]
……ふぅん、こうなっているのね?
初めて見るわ。
[実際なかなかに興味深かった。
ジャーディンがパルテールから持ってきた服を
この邸宅で使うことはないと言ったけれど。
“例外”があってもいいかも知れないと、内心で思う。]
[そうしてふと、視線だけをジャーディンの顔へと上げて]
……ああ、そういえば。
さっき言い忘れたのだけど。
貴方の部屋、私の部屋の隣よ。
呼んだらすぐに、来てもらえるように。
人の気配がした方が、よく眠れることもあると
言ったでしょう?
[思い出したかのように、配置の理由を付け足した。]
この家の使用人は皆、家の資産だけれど。
───貴方は、私個人のものだから。
[縦に這わされた革ベルトをつっと撫で上げ、
カコは囁く。
彼自身には触れることのない、淡い接触。]
……否があるなら、今のうちにどうぞ?
[薄く笑んで、ジャーディンに言い渡す。
形としては意思確認だが、聞き入れるかは別問題だ。
細い指先で辿った先、南京錠を外すと、
彼を解き放った]**
[余計だと言うのに笑って見せた。
可愛い子に可愛いって言って何が悪いの?と
開き直りながら。]
なぁに?
[私の背中に目を向けたのに、怪訝げな疑問を投げかけた。
もし私の男らしい部分を見て
綺麗だと思っているのだと知ったら
暫く、頬を膨らまして不機嫌を振りまくから。
だから、そこは心の中でだけ思っていると宜しい。
思うだけなら自由だし、口に出さなければ
私が眉をしかめることもないのだろうから。]
私"が"、気にするの。
それに、パンツスタイルは苦手……
[体の線が出て男らしくなっちゃうから、
と拗ねるのも程々にして。
私の"秘密"については
貴方が思っている通りになると約束してあげる。
屋敷の中でも、そうでなくても。
貴方とのデートの時も、私はずっと女装で居るだろうから
貴方以外に男とばらす気は毛頭無いの。]
うん、見に行く。素敵なのを買って?
というか坊ちゃん……、くすぐったい。
[抱きしめられた時に、頬やなにやに髪の毛のふわふわが
当たったのに、こそばい気持ちになって
そんなことを呟いた。]
[常に、誰に見られても男と分からないように。
精一杯おめかしをして。
指の先まであなたの妻に相応しい振る舞いをしましょう
並の女より綺麗なわたくしを、皆様に見せてやって
坊ちゃんに羨望の目を向けさせることが
責務であり、私のやりたいことでもあり……
私を見初めて、金を出して買って
地位も愛も物も与えてくださった坊ちゃんに
奴隷出の私が出来る、最後の恩返しだと思っている。]**
そうなんですか、一緒に外出を……。
……僕に、会う機会が?
[外に出してもらえるということだろうか。
とはいえ、自由な外出を許されても、
ジャーディンが独りで外に出ることはないだろう。
外は恐ろしいところだ。
奴隷であると見抜かれれば、
犯されても殺されても文句が言えない。
もっとも、主人と共に、という話であれば
気後れしながらも同行はするだろう]
[ジャーディンは人をなかなか信用しない部分があるが
だからといって常々嘘を疑っているわけではない。
彼女が食事に関して告げた言葉に
今後どうするつもりかの含みがあるかどうかまで
考えてはいなかった。
下半身の貞操帯を露にしてみると
彼女はしげしげと視線を送る。
初めて見るという言葉で、彼女が
こういった遊びをしないのは改めて実感した]
[部屋の配置を主人の隣と聞くと、
ジャーディンは目を丸くする。
もっともな理由のようには思われたし
奴隷の部屋を隣室にするのにも
彼女は抵抗感がないのだろう。
・・・
だが、寝室に呼んだらすぐに来てもらえるように、
ということは――]
[ジャーディンが想像しかけた内容を
裏付けるような言葉が告げられたが、
今更何が否でもない。
一人の主人に買われるとは
その人に何をされても許さねばならないということ。
ただ、彼女にはそのつもりが無さそうに思えたから
それが意外に思ったのだ。
彼女は、彼女がいいと思ってくれる相手が
いいのだろうと思っていたから
……いえ、僕はカコ様のものです。
如何様にでも、カコ様のお好きに扱ってください。
[性器を包む革ベルトを撫で上げられると、
ジャーディンは僅かに身体を震わせた。
錠を外され、貞操帯も外される。
その解放感よりも、
今ここで何かをさせられるのか、
その不安のほうが先立った。
それでもジャーディンはそのままの姿で待った。
衣服を着ていいとも、
性器を隠していいとも許可は出ていないから]**
[自身で性的な意味で触れたこともない場所。
それを暴く男の象徴は、熱く激しいものなのだと
教え込まれるのは体にか、心にか。
無垢を馴らし淫らにさせる男が腰を打ち付けながら
嬉しそうに笑んでいるのが見える。
ああ、可愛い。
お互い、同じこと思っているのね。]
[初めての絶頂は、頭の中が空白になるよう。
脱力の前、再びスキンに遮られ芽吹かぬ飛沫が
奥にたたきつけられるのを感じた。
次いで私の意識を攫おうとする微睡みに
弛緩した肢体のまま抗っていれば。
貴方の本音がぽつりと、聞こえた。
――そういうの、意識がしっかりしている時に
渡しに向かい合って言えばいいのに。
貴方は本当に、本音を隠しがちね。
撫でる手にもたらされた再度の睡魔に抗うすべは持てず。
諸々の後の世話をしてくれたと知ったのは
再び微睡から意識が引き上げられてから。]
[そこで見たものは。
・・・・・・・・・・・・・。
[私は無言で彼を見る。
甘い言葉でもなく、熱に浮かされた瞳でもなく。
触れる手でもなく。彼が最初にしたのは土下座だ。
甘かった余韻も吹っ飛んでいる。
事後って土下座から始まるものだっけ?
私は脳内で友人に問いかけた。
当然、答えは返ってこない。]
煙さん。
[私はじっと彼を見る。]
後悔してますか?
私は、していません。
後悔していないのなら、顔をあげてください。
[命令です。と、言った方が
貴方も本心を吐露しやすいでしょうから。
土下座はまずは、やめましょう。ね?*]
…………やっちゃったあ…………
[リッキィが目覚めるより少し前。先に覚醒した己は、隣で恋人のように眠る彼女の寝顔を「可愛いなあ」と眺めていたのだが。
俺なにやってるんだ。
我に帰る。向こうから好意を持たれていて、かつ合意の上で及んだ行為である。そこには何の問題もない。
……自分と彼女の関係が、「主人と従者」以上のものではないという事を除けば。
まず元々は犯罪者で奴隷の身である、というのは置いておくべきではないとしても置いておくとして。勢いで先走りすぎた。普通こういう事ってちゃんとした関係作ってきちんとした相手とするものじゃないの、いやリッキィちゃんが俺以外の男に靡くの嫌だが。下手したらクビになるどころか養父に殺されかねないんじゃないか……などなど、自責の念に襲われる。]
……ほんっっとうにゴメン……調子に乗りすぎました……
[そんな訳で真っ先に移した行動が土下座である。
恋も性愛もあまり詳しくない主人相手に一足飛んで性行為って。身分的に許されるのかどうかは知らないが、できたら、正式な仲になってから行うべきであった。自制の効かなかった己を、今全力で恥じている。]
……………はい。
後悔なんて、してる訳ないじゃん……俺ずっとリッキィちゃんと「こういう事する仲」になりたかったし……
ただちょっと、段階踏むべきだったなって……
[珍しく咎めるような声色、だけど。怒っているのは多分今、こうなってる事に対してであって。先程まで睦み合っていた事ではないのだろう。
彼女から命じられたので、顔をあげて応える。]
そういうお店で働いてた俺が言うのもアレだけど。こう……普通は恋人同士になってからする事じゃない。
……お義父さんに知られたら俺クビになるか殺されるかしちゃわない……?大事な義娘さんに手ェ出しちゃったし……
嫌だよ俺、リッキィちゃんと離れるの。
[情けない姿晒してるなあ、今更か。
本能のまま、欲望を隠さずに触れ合った後なのだし。
事後にこんな弱音を吐くだなんて、呆れられてしまっただろうか。]*
わかりました。
あなたがそうしたいとならば、その通りに。
[妻のことを支えるのが、夫の役目。
君の秘密は最期まで持っていく。
誰に問われても、真実を口にしないと誓いましょう。]
せっかくなら、遠方のお店に足を運びましょうか。
そうすれば、たくさんのドレスを見比べられますし、
·········ロイエさんと一緒にいる時間も、増えますから。
[ぎゅっと抱きしめ、さらさらとした黒髪に顔を埋めたら、
私と同じシャンプーの香りがしました。]
[明日から君が学ぶのは。
掃除や洗濯の仕方ではなく、マナーや基礎的な勉学。
リュミエル家の人間になるのですから。
その立場に相応しい振る舞いができるよう、
しっかりとサポートさせて頂きます。
先生は厳しい方なんですよ。
後悔しても、取り消しは効きませんからね。
なんて、先ほどの言葉を返しました。]
···疲れたり、苦しくなったら。
いつでも私の傍に戻ってきてください。
私自身が、
ロイエさんにとって一番安らげる場所になれるよう、精一杯努力いたします。**
[なるほどなるほど。
私は彼の様子を見ていた。
勿論全裸、というかシーツを巻いてではあるが。
私は彼の言い分を聞いていた。
調子に乗ったの意味が分からなかったが、
話を聞いて理解した。
つまりは段階すっ飛ばして懇ろになったことを
後悔しているわけだ。
後悔の理由は本能に流されて
そこに情がなかったわけではないのはひとまず安心した。
想定外のことが起こると、男は混乱し
女は冷静になると教授が言っていたけれど
大体あっている気がする。今この時とか。]
言い分はわかりました。
……こういう関係性を建築する前に
諸々過程を踏んで周囲から排斥されないための
布石を打って、自身がこういう関係になっても
私と離別しないよう関係を整えてから
事に及びたかったけれどついやっちゃった。
本能に負けた。というやつですね。
私にそこまで魅力があったとはというのには驚きましたが。
そうですねぇ。
[ふむふむと言葉に出しながら要点を整理すれば。
まあ、なんと。
私はとりあえず。顔を上げた彼と同じ目線になるよう
軋む体を動かした。
そのままよしよしと頭を撫でれば、巻いたシーツがずれて
少し際どい格好になったが、そこは気にしないでほしい。
煙さんは、余裕がなくなると
とても可愛くなるのはわかりました。
ま、過程をすっ飛ばしたのは互いの需要と供給の結果なので
この関係性をこれからどうするか。という方に
考えを進めましょうか。
このまま私が婿をとらずに独身でも
養父はさほど気にしないと思うんですよね。
私自身も養女ですから。
離れたくない、を第一にするなら
このまま主人と従者の関係性で継続で事足ります。
従者と肉体関係を結ぶ主人は、私の友人にもいますしね。
こちらは同性同士ですけど。
――……。
[私は彼を見る。
じっと、みている。]
で。煙さんはどうしたいですか?
このままの愛人のような関係性の継続でいいのでしょうか。
私の意見を聞きたいのでしたら
先に煙さんが今後どうしたいのか
教えていただきたいと思いますが。いかがでしょう。
[とても冷静に話している。
頭をよしよしと撫でながらである。
――まぁ、言ってしまえば私はこう思っていたのである。]
[攫って逃げる、或いは順番逆でも
認められるように頑張るから一緒にいてくれ。
……というには、まだいっぱいいっぱいなんでしょうねぇ。
なら、現実的な選択肢を見せつつ
貴方に落ち着いてもらって今後を考えましょう。
なお、乙女部分としては甘い空気を楽しみたかったのは事実だが。
こうして慌てるくらい自分は愛されているのかと知れたのは。
実は結構、うれしい。*]
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