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「作業?作業って、……あ。」
僕はベッドから立ち上がった。yogiboを離して、康生の方すら見ない。
だって、僕の脳裏にはハッキリ見えたんだ。
象さんの絵が描かれた手作りの滑り台と兄の姿が。
「にい、さ……」
僕は突然はらはらと涙を流す。 その姿は周囲にはきっと、意味がわからないだろう。
敵ロボットは微動だにしていない。*
(63) 2023/11/18(Sat) 11時頃
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――数年後(墓下軸の続き)――
僕と康生は恋人同士だ。
康生家族が僕の家に一時的に避難している際、僕らは初めて身体を重ね、身も心も1つとなった。
同居が終わってからも交際を続き、指輪を買いに行ったりとラブラブな関係を続けている。
高校卒業後僕は大学に進学する。康生ほど成績は良くないから同じ大学には行けなかったけれど。
大和と珊瑚は同棲を開始したが、僕は実家に住み続けていたから生活は別だ。 兄が帰国し実家にいたのも理由の1つ。
それでも週末のデートはかかさなかったし、その度に激しく康生の身体を求め貪り、僕らはゲイカップルokのラブホテルの常連と化してはいた。
将来一緒に住むかとかは、康生がどんな仕事に就くかによるかもしれない。
(67) 2023/11/18(Sat) 15時半頃
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どんぐり亭に関しては意外にも兄が継ぐと言い出したので、僕は普通に就職活動をしようと考えていたが……
大和と珊瑚が学生の内に結婚式を挙げるという話を聞いた時、自分の事のように僕は喜び、おめでとうを連呼して何度も祝福をした。
しかしW結婚式をやらないか、という提案には驚いた。
僕と康生は海辺のリゾートホテル内の教会でこっそり愛の誓いを立てた事がある。
その後、ウェディングプロデュース事務所にて指輪を購入する時に康生に花嫁衣裳の試着をして貰ったりはしたが、正式な式を挙げた訳ではない。
将来の夢が一気に現実味を帯びドキドキする。
康生も乗り気になってくれるなら、大和と珊瑚に一緒に式をやりたいと告げただろう。
(68) 2023/11/18(Sat) 15時半頃
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さて……もしちゃんと式を挙げるとするなら、両親の了承が必要になる。
僕の両親は割りとそういう部分おおらかだからいい。 だが、康生の両親はどうだろうか……。
「コウ。僕、君のお父さんにきちんとご挨拶に行きたい。
君と僕が挙式を挙げるとしたら、それは戸籍上などの関係でなくとも必要なことだと思うんだ……」
“お父さん、息子さんをお嫁さんに下さい。必ず幸せにします。”僕は彼の父親にそう告げたが、反応はどうだったのだろう。
彼のウェディングドレスを選ぶなどのお楽しみはそれからだから……。
ちなみに僕は康生の女装が好きで好きでたまらないので、ラブホテルに行く度にメイド服やら魔法少女の衣裳やらを持参し、彼に着て貰っては濃厚プレイを楽しんでいる。
だから康生もウェディングドレスにもう抵抗はないと思われるが。
(69) 2023/11/18(Sat) 15時半頃
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僕は式を楽しみとし、大和や珊瑚とは四人のグループLINEで話題を弾ませた。
『珊瑚はどんなウェディングドレスにするの?』
『大和はさ、珊瑚をお姫様だっこして登場とかはどう?』
そこには幸せが溢れていた。 僕と康生にも、珊瑚と大和にも。*
(70) 2023/11/18(Sat) 15時半頃
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──コックピット/僕の闘い──
康生が僕に嫉妬? ーーマ?
僕は一瞬耳を疑う。
えッ僕が女の子(※ロボットです)に興味を持つ(※武器や性能には興味がある)のが嫌?
焦った僕は慌てて言っただろう。
「そんな事あり得ないよ!! あのカーテン下の身体がどんなにナイスバディだろうと、コウに敵うはずがないじゃん!
考えてくれコウ、君の花嫁姿は三国一だった。あんなに可愛らしいウェディングドレスで僕を魅了しまくった癖に、あれ以上があると思う?
あり得ないな!!」
(79) 2023/11/19(Sun) 00時頃
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そもそも相手はロボットだ。 女型でもせいぜい土偶だ。 そして痴話喧嘩をしている場合ではない。
だいたい、嫉妬という感情を彼に対して先に抱いたのは僕だ!
合宿にて彼が倒れた時、担架の上に寝そべる彼から僕は珊瑚へのお土産を預かった。
康生の性格を落ち着いて考えたら、友達から頼まれたら好意の深さに関係なくお土産を買うのは僕ですらわかることなのに。
あの事件がなければ僕は康生への恋心をしっかり自覚することはなかった。
嫉妬は度が過ぎれば困るものだ。だけど僕は、こんな僕に嫉妬してくれる彼が凄く可愛かったしーー嬉しかった。
(80) 2023/11/19(Sun) 00時頃
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僕らはもう憚る事なく愛を語りあう。 場の空気を読んでいない自覚はあったが、もうすぐ死ぬのであれば、遠慮なんかしてる場合はない。
そういう意味では”行け、コウ大好きラブラブ号!”と高らかに叫びながら闘っても誰も気にしないのかもだが、照れる彼が可哀想だからやめておこう。
彼が指摘するように、僕は自身への好意に鈍感というか懐疑的だ。 それが彼を拗ねさせていたなんて思いもよらなかったから、 微笑んで彼の頭を撫でただろう。
正直もしこのアツアツぶりを敵パイロットが見ていたらドン引きして白旗を上げてもおかしくはない。 そんな勝ち方もありだったろうか。いや、ない。
(81) 2023/11/19(Sun) 00時頃
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アストロが揺れた時、僕は彼が転ばぬよう支えるのには成功した。しかしこの時点滴が抜け落ちてしまう。 僕はそれに気を取られ、彼を心配する。戦闘より彼の方が大事だから。
彼の注意喚起がなければ音楽にすら気付かなかったかもしれない。
康生は曲を知っているようだ。
「レヴァ?ああ、アニメか。その劇中曲なの?」
僕はアニメにはさほど詳しくない。特にレヴァは話題になっているのは知っていたが見ていなかった。
僕が知っている範疇の知識は、少年がロボットに乗り闘う事。
そうだ、今僕らはロボットに乗っている。 アニメと同じーー?
しかし僕は脳内に聴こえた声に気を取られてしまった。
(82) 2023/11/19(Sun) 00時頃
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聴こえる、見える。 僕は耳を澄まして目を閉じた。
嗚呼。あそこは僕の家だ、庭だ。どんぐり亭は今より真新しい。庭にはーー滑り台がある。
……声の主は母さんだ。 作業というのは、兄さんが滑り台を作ってくれた時の事。
あの時僕は滑り台の完成が待ちきれなくて兄にじゃれついた。
『痛いッ』
金槌を使っていた兄が悲鳴を上げる。指を怪我したのだ。
美しいピアノの旋律は、僕にじわじわ浸透していく。 隣で誰かが叫んでいても聴こえない。
忘れていた。そして僕は思い出した。小さな時は家にあったのに、今はないもの。
(83) 2023/11/19(Sun) 00時頃
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「……ピアノ、だ。うちには大きなピアノがあったんだ。
小さな頃に兄さんが弾いていた。ピアニストになりたいって、言ってて……
いつか、そのピアノはなくなった。僕は忘れていたけどあれは、兄が指を怪我してピアノを辞めたから。
……僕のせいで怪我をしたから。」
ーーやっと思い出した? そう、貴方は匡の夢を奪ったのよ。 そしてそれを忘れ、のうのう生きてきた。
「兄さんは僕を責めなかったし、指を使わなくていい新しい趣味を始めた。それが天体観測だったんだ……。」
兄の指は動かなくなった訳ではない。ただピアノのように繊細な動きが必要とされるものは難しくなっただけ。
(84) 2023/11/19(Sun) 00時頃
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「兄さんは優しかった。自分の夢を奪った僕にずっと。
僕を護り愛してくれた。 それなのに、僕はーー兄さんの恋人、を……」
自分のしでかした大きな罪。 それが消える事はない。
「あ、あ、ーーあああッ」
僕は叫んだ。肩を震わせ、頭を抱える。
「兄さん、ごめんなさい。 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ
僕はやっぱり最低だ、最低の蛆虫だッ
他人を傷つけたり迷惑をかけることしか出来ないクズだッ」
音楽はどんどん大きくなる。
(85) 2023/11/19(Sun) 00時頃
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頭が割れそうだ!
僕は見る余裕がないが、敵ロボットのカーテンがゆっくりと開いた。
確かにロボットは人型であった。しかも僕らの予想通り女性の身体をしている。胸に二つの膨らみ、腰は細くしまり、お尻が大きい。
ーーそうよ、貴方は最低なの。 だから私とお似合いなのよ、恵一くん。
また声だ、今度はさっきより若い。
「……せん、ぱい?」
ーー貴方みたいな無価値な人間が 誰かに愛されるわけないでしょ?
私も匡から愛されなかった。 貴方も同じ。 貴方が恋人だと思ってる人は、本当に貴方を好きなの?
(86) 2023/11/19(Sun) 00時頃
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「コウは……コウは、僕を愛してるって、愛してる、って、……ちがう、の?違うの、か?」
言葉が消え入る。彼は僕にまだ語りかけているだろうか。
敵ロボットは両手を広げるようなポーズを取った。 その形状が変化する。 胸の膨らみ二つから無数の鋭いトゲが突き出たのだ。
いらっしゃい、恵一くん。 慰めあいましょ? さあ、私を抱いて……早く。 貴方の太いので貫いて……
(87) 2023/11/19(Sun) 00時頃
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「……雨竜、先輩、……せん、ぱい……」
敵ロボットと雨竜先輩の裸体が重なる。 アストロが一歩踏み出した。 それが僕の意思だからだ。
僕は完全に精神を支配されている。このまま進めば死の抱擁が待っている。
僕を救えるのはたった一人しか、いない。*
(88) 2023/11/19(Sun) 00時頃
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──コックピット/僕の闘い──
僕が正気であったなら。
点滴が外れ床に倒れた康生をそのままになんかしなかったろう。
だが今や僕の精神は完全に蝕まれていた。
清らかな音楽に耳を犯され、思考を奪われて。 懐かしい光景を見せられて。
だが、母の言葉はありもしないものだ。
(96) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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確かに兄は怪我をした。それは事実。そしてピアノを辞めたのも指が理由だ。
だがそれで僕を責めるような母ではない。幼い僕が兄にじゃれついてしまったのは仕方ない事で事故でしかない。
むしろ兄も両親も、僕に自責の念を抱かせぬ為に必死に隠してきたぐらいだ。
つまり僕は脳内に偽りの声を聴いた。ただし、外部からその声が実際に送り込まれた訳ではないだろう。何故なら、母の台詞を捏造するには僕の過去を正確に把握する必要があり、そんなのは外部の人間には不可能だから。
僕は起きた事実は把握していたから、母の声の内容は恐らく、僕の深層心理が産み出したものなのだ。
人は勝手に他人がこう思っているんじゃないか、を産み出し思い込むのが得意であるから。
(97) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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それは僕が知らずに抱えていた重荷であった。
では何故それが唐突に解放されたのかーー。
一度、康生に焦点をあてよう。
もし彼が正気であったなら。 聡明な彼は気付いたに違いない。僕の異変と敵ロボットの行動の関連性に。
敵ロボットの発する音色は精神を操る波動であった。 行動を直接的に指示するとか、そこまで絶対的な力はない。しかし、心弱い人間の精神の隙間を突く作用があるのだーー
康生が冷静さを欠いた可能性は二つ、またはその複合が考えられる。
(98) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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1つは、彼もまた敵の精神攻撃に巻き込まれた場合。 音楽は全員に聴こえているからだ。ただし影響はその人間の精神の強さによって変わるだろうし、パイロット以外にはただの音色であり作用はない可能性も考えられる。
もう1つは、彼が僕以外に気を払う余裕を失っているから。 今や僕に対する彼の愛情が限界まで膨れ上がっているのは明白。何度も指輪を嵌めて欲しいと願うところから不安定さ、目に見える確かなものへの依存傾向も窺われる。
彼は僕に愛されたくて。 その愛がまやかしだったり、失われるのを酷く恐れている。
子供のように。
(99) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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僕しか見えない。僕の状態、彼が僕を見ているか以外に興味がなければ敵など気にする余裕はないだろうから。
更に言うなれば体調の影響もある。熱に浮かされながら冷静なら彼はスーパーマン過ぎるとも。
どういう理由にせよ、彼はただ僕だけを見つめていた。 そして絶望に至る。
狂気という沼がすっぽりと僕ら二人を飲み込んで、絡み付く泥が身体を離さない。
蛆虫にはふさわしい最期なのか。僕らはこのまま、敗けてしまうのかーー。
(100) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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ふら、と前に僕の脚が出た。同時にアストロも一歩前に動いた。それが止まったのは、床を這いながら僕に近づき、康生が足首を掴んでくれたから。
僕は一瞬ポカンとして、視線を落として彼の事を漸く眺める。
コックピットの床を腹で拭くように、身体を引き摺り近づいた彼はまるでぼろ雑巾みたいだ。
何故彼はこんなに必死なんだ? 僕は蛆虫で、みんなから嫌われている。必要となんかされないし、価値もないのに。 止めて何をしようと?
まともな判断力を欠いた僕は混乱する。
(101) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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「違うよコウ……最低最悪なのは僕だけだ。意気地無しで中途半端で、君を殺すと約束したのにそれすら出来ない役立たず。
君は違うだろ。だって人を殺せるなら……みんなをパイロット席に送り込んで殺せるなら、地球を護れるじゃないか。
死にたくないと喚き、逃げようとし、他人が死ぬことも許容出来ず、ただ我が儘を叫んでだだを捏ねた僕とは雲泥の差がある。
君は立派で勇猛果敢な人間だよ、コウ。 蛆虫なんかじゃない。
……だから。」
僕はふ、と寂しそうな表情を浮かべる。諦めきったような、それでいて唇にだけは弧を描く。
「君に相応しくないんだ、僕なんか。」
(102) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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幾ら僕が彼を愛しても、僕には愛される資格はない。 そしてこんな僕を彼が愛するなんてやっぱりないんだ……
すると不思議な事に、彼も僕の気持ちを疑う言葉を口にするのだ。
「……僕の気持ちは、ずっと変わってないよ。 ただ自分がどんな人間かを思い出したに過ぎない。
赦されない罪を抱えた人間であるのを……
行かなくちゃ。彼女が待ってる。抱いて欲しいって言ってる……。」
彼の手が僕から離れた。嗚咽も聴こえたが、それは更にボリュームを増した音楽が消してしまう。
脚が動かないまま床に蹲る彼は蛆虫というよりは芋虫みたいだ。
(103) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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僕は彼を置いてきぼりにして前に進んだ。スクリーンの方へ。 アストロも同じように歩き、敵ロボットとの距離をどんどん縮めていく。
ーー恵一くん、早く。 セックスしましょう? 抱いて……。
「うん、今行く……僕のおちんちんが欲しいんだね?」
うっとりした表情を僕は浮かべる。
そしてーーアストロの身体に変化が起きた。いや正確にはロボットなんだから変形と呼ぶべきか?
アストロの下半身、股間の部分が両引戸のように開き、四角い窓が出来る。そこから現れたのは細長い形状のーー黒光りするもの。
形は男性の性器にそっくりだ。金属のような材質感からそのものよりは大人の玩具に近い。
(104) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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アストロの変形は始めてではない。大和戦の時も起こった事だから、元々そういう決まった機能や武器が内臓されているというより、パイロットの思念に応じて変わるというのが正しいか。
瞬間に行われる分子的な構造変化はこの地球の化学レベルでは不可能だが、アストロが瞬間的に現れたり消えたりするのを考えたら、アストロの存在する次元では可能なのだろう。
僕が抱きたいと望んだからそれに必要なものが現れたのだ。
ーー逞しくて素敵よ、恵一くん。
敵ロボットは股を開くようなポーズはしていない。 ただ両手を広げ立っているだけだ。アストロを串刺しにする武器を胸に露出させながら。
それでも僕は恍惚の表情で両手を広げる。
(105) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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アストロも両手を上げ敵ロボットと熱い抱擁を交わそうとーー
「あッ!」
ガタッとまた大きな揺れがコックピットを襲う。
スクリーン内のアストロはまた、右側に傾いて倒れる。膝をつく。
「?!……な、……」
びっくりした僕は一瞬正気に返った。
なんだ、何が起きている? 敵はーーもう目の前にいるじゃないか!
「コイツッ!……アストロ、脚を払えッ!」
立ち上がる暇はない。アストロは片膝をついた姿勢から脚を伸ばして敵ロボットの足首を狙う。それは見事にヒットし、敵ロボットが仰向けに倒れる。
(106) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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ーー何するの?!恵一くん!
ーー恵一おいやめろッ! お前は大人しく死ね、死ぬんだッ!
雨竜先輩と兄の声が交差する。
「黙れッ!兄さんの声で騙るな、この下衆がッ!」
そうだ、僕は操られたんだ、この敵ロボットに。 僕の大切な兄や、心の負債である雨竜先輩を利用しーー
「ふざけやがって……! そんなに犯されたいか?ああ? なら、くれてやるよッ!
アストロ、その薄汚い牝をーー犯せッ!」
カッとなった僕はめちゃくちゃな命令を下した。 アストロはすぐに立ち上がると、倒れている敵ロボットにマウント姿勢を取る。
(107) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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そしてーー貫いた。
正しくは、股間の武器を寝たままの敵ロボットの下腹部辺りを突き刺した。
「あ?上手いかちんぽは、このアバズレがッ!
死ね、死ね死ねッ!
よくも僕を操り、僕とコウを引き裂こうとしたなッ!
赦さない、絶対赦さないッ!」
僕は喚いた。ロボットでロボットを犯す様は滑稽でもあり地獄絵図でもある。
先程出現した黒光りするものは武器であった。よく見ると先端が鋭く尖っている。 アストロが腕立て伏せをするように動けば、自然攻撃となった。
(108) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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カーテンに護られていない敵ロボットの胴体は、ぐさぐさと刺されて地面を鈍く跳ねる。ぴく、ぴくと痙攣する死体みたいに。
装甲が剥げて、コアの一部が露出した。
「はあ、ッ……はあッ」
コアはへその裏辺りに隠れていて、丸み帯びた形をしている。 後一突きしたら、完全に破壊できる。
怒り狂う僕はまだ、床に伏した康生の傍に駆け付ける事は叶わない。真っ赤な瞳でスクリーンを睨み据えているが。
ーーこれで闘いは終わるのか。*
(109) 2023/11/19(Sun) 11時半頃
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