28 僕等(ぼくら)の
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─自宅・大和くん─
『うんわかった。お昼ごはん準備しとく』
>>208そう返事をしたのが昨日のこと。 お店が開く頃から出かけて準備して、せっかくだから豚の角煮を作ってる。 半熟卵も漬け汁に漬けて。 お野菜は何が良いかな…、一応ネギとかは入ってるけど。 丼にして良いし、軽くサラダでも作って良いかも。 足りなかったら常備菜を出して。 そんなことに集中しようとするけど。 >>209>>210>>211昨日の失態を思い出してちょっと赤面してしまう。
「ううう…、まさかあんな事になるなんて…。」
ニュースをつけると、まだあのロボットについて色んな見解を言い合っている。でもきっと答えはないんだろうなあ。 そんなことを考えながら、そわそわ、大和くんを待っている。*
(219) 2023/08/15(Tue) 19時半頃
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─自宅・大和くん─
>>227ピンポン、と程よいタイミングで聞こえてくる。 ちょっとぎくりとしたのは緊張から。 でも、我ながら良い出来栄えの角煮に自信を持ちながら玄関に向かう。 すると、玄関が少し開いて大和くんが顔を覗かせていた。
「大和くん、どうぞあがって! 色々大変だったね…でもまずは 冷めないうちにご飯食べてくれる?」
そんな風に誘いながらリビングを目指す。 今日は冷たい麦茶をお供に、椅子をすすめてからキッチンで大きめのお茶碗に豚の角煮をたっぷり乗せた。 半熟の煮卵も一つ。 お野菜はお漬物と、結局きんぴらを作ってそれを並べておいた。 私の方はお茶碗普通でお肉も少しだけど。 食べてもらいたくて作ったからね!
(230) 2023/08/15(Tue) 20時頃
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「ふふふ。角煮、自信作なんだよ!」
向かいの椅子に座りながら、私はちょっと誇らしげに笑っていた。*
(231) 2023/08/15(Tue) 20時頃
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─ミーティングの裏側で─
『なんで今日部室入れないんだろうね?』
そんなことを言っていたのは、合宿に参加しなかった先輩だ。 今日は私のおやつを目当てに来てくれていたらしい。 私は、その時部室に入らない一人だった。 彼らの情報を知っていたとしても、知らなかったとしても。 締め出された事にブーブー言う先輩を、家政科室でもてなす役目を請け負った。
「ほら、あんな事ありましたから…。 みんな、思うところあるんですよ。」
そんなことを言いながら、先輩とそのお友達と、ついでに家庭科クラブの面々も混じってお茶をする。
私がその時どんな思いを抱えていたのかは。 その時までにどれだけ、その事に関することを知っていたかによって変わってくる。*
(241) 2023/08/15(Tue) 20時半頃
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─自宅・大和くん─
「うんうん、お腹が空く時間だよね!」
そして腹ペコは一番の調味料でもある! これはまた美味しいと笑顔がもらえそう、なんて私は期待しながら用意していた。 嬉しそうに受け取ってくれるのも、美味しそうに食べてくれるのも嬉しいんだ。 それが私の居場所って思えてくるの。 でもただの居場所じゃないって思い始めたのは…あんなに嬉しい思いが初めてだったから。 それまでも、ウキウキするような気持ちはあった。 作って良いよね。渡して良いよね。迷惑じゃないよね。受け取ってくれた! その繰り返しで、今度は何作ろう、どんなのが好きかな?って、たくさんたくさん考えてたんだ。 その反応が目の前で見られるものだから今日は本当に期待大!
(266) 2023/08/15(Tue) 21時頃
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「どうぞ、めしあがれ。 私もいただきまーす。」
うん、我ながら角煮は濃厚な味でとろっと舌の上で蕩けて消える、この感覚がたまらない。 ご飯もおつゆを吸い込んで良い感じ。 半熟卵を割るととろりと君が溢れて、それを絡めさせるとまた味わいがまろやかになる。 お漬物やきんぴらで口の中をリセットして、また…と食べてると。
「…大和くん。」
美味しい、美味しい、は嬉しかったけど。 >>256ぽろぽろ涙をこぼす様子に、やっぱりショックだったのかなって…。 一度箸を止めて、テーブルの上のティッシュをすすめる。大丈夫かな? でもご飯を食べると元気になるから、ぜひ残さず食べてほしい。
(267) 2023/08/15(Tue) 21時頃
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「うん、私は平気。 そんなに食べないし、自分一人だと作りたくなくなるから 大和くんが食べてくれるから頑張ったんだよ。 だから大和くん、食べて。」
>>257だから心配しないで、と言いながらお茶を注ぎたそう。 むしろお持ち帰り分もあるくらい気合を入れてしまったもの。 お弁当も美味しい、そう言ってくれたけど。 >>258こう言うご飯を食べたことがない。 そんなことを聞いて、私はちょっと驚いた。 お母さんが料理下手なのかな? それとも、私みたいにお母さんがいない? でも、それなら自分で作れば良いと思うし、何か他に理由があるのかな。 そんなことが気になりもしたけど…。
(268) 2023/08/15(Tue) 21時頃
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「…それじゃ、これから毎日一緒にご飯食べる?」
ぽつり。そんな言葉を呟いてから数秒。 ハッ!と我に返って私は真っ赤になってしまった。
「いやほら!私料理作るの好きだし! 作るの好きだけどそんなに食べないから あんまり作れないし…。 それにね、私、これから一人暮らしするんだ。 もともと父子家庭だったけど、 父さんの彼女さん?が、私と同居拒否してるらしくて、 …これからずっと一人ご飯、寂しいから。」
慌てて言い訳して、墓穴を掘る。 こんな風に自分の事情を明かすつもりはなかったんだけど。 でも、涙を流すくらい喜んでくれるなら。 毎日、好きな人とご飯が食べられるなら。
(269) 2023/08/15(Tue) 21時頃
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「…一緒に食べてくれると、嬉しいな。」
真っ赤になりながら、それでもはっきりとそう呟く。 汗をかいたグラスのせいで指先がしっとりと濡れていた。*
(270) 2023/08/15(Tue) 21時頃
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─メッセージ・恵一くん─
『ばーかばーかもう知らない!』 『(大丈夫じゃない!と叫んでるスタンプ)』 『(現場からは以上です。の現場猫スタンプ)』
勘違いに巻き込まれた乙女の動揺は激しいのだ。 いつの間にか追い出してたし。 >>277このタイミングで寝顔の写真送る!? もう揶揄われてるとしか思わないよ!
だから私はそのまま、恵一くんの電話と打ち明けたいことを受け入れる心境にはならなくて。
だから、ミーティングのその日まで私は恵一くんとは連絡をとってない。少なくとも私からは。
或いは、そうできる心境ではなくなってる可能性も、あった。*
(278) 2023/08/15(Tue) 21時頃
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─自宅・大和くん─
「それは…もちろん。」
気恥ずかしさで頬が熱いけど、それははっきり伝える。 >>299迷惑なんかじゃない、もちろん良い。食費はこの家にいる間は任されてたし、もともとそんなに頓着しない親だ。必要経費として問題ないだろうし、アルバイトだって自分でも探すつもり。 でもさすがに突拍子もないこと言ったかな。言葉を詰まらせちゃってちょっと反省する。 でも。お父さんのこと、ひどく言わないでいてくれてよかった。 ひどく言われたら、多分泣いてしまうから。 泣き顔なんか見せない方が良いよね。
「うん。でも、父さん仕事が忙しすぎて? 私がもう18だって思ってるんだ。 だからだけど、呆れて、もういいやって。 進学できたらその分 養育費の期間は伸びるみたいだけど…。」
(318) 2023/08/15(Tue) 22時半頃
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成績が。お察しで。 ふ…、とそこは思わず遠い目をしてしまったけど。 >>300でもそれより、背筋を正して聞いた大和くんの話の方が驚いた。
「それは…。」
大和くんの責任じゃない。大和くんの背負うべきものじゃない。 そう思ったけど、そう言う人たちには関係ないんだろう。 膝の上でぎゅっと握りしめた拳が怒りで小さく震える。 なにそれ?ひどい。なんで?ああ、だから…。
「うん! もちろん食べに来て? もしかしたらそのうち部屋が変わるかもしれないけど。 毎日、食べに来て。ね? でも、…どこに住むの?」
(319) 2023/08/15(Tue) 22時半頃
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>>301宛てはあるのかな。危ない場所じゃないと良い。 ちょっと心配になって眉を寄せながら大和くんの顔をまっすぐ見ていた。 でも…。
「死…、え? なんで? だれが? 大和くんが?」
>>302ギョッと目を開いた。さあっと血の気が引く。 冗談? それなら、悪い冗談にも程がある。 では本気? そう言えば昨日、恵一くんが言っていた。 >>138もし好きな人が死んじゃうとしたら、耐えられる──? 選ばれた、と大和くんは言った。 "ぼくら"と複数形で。
(320) 2023/08/15(Tue) 22時半頃
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私はその話を、少し震えながら聞いた。 両手で口元を押さえながら、それでも全て聞き漏らさないように。 彼はどこまで語ってくれたんだろう。 聞いているうちに涙が溢れてきて、うそ、と何度か小さく呟いていた。
…大和くんが語り終えた後。
「…大和くんに、死んでほしくないな。」
その思いが一番だった。
「どうしてみんなが…、どうして私、そんな時に…。」
大和くんが選ばれて。 私が都合よくその場に居なかったのか。 せめて、その仲間になりたかった。
(321) 2023/08/15(Tue) 22時半頃
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「どうしてそんな事、…。」
しなくちゃいけないんだろう。 どうしてそんな事に選ばれてしまったんだろう。 疑問は尽きない。 でも。 私は椅子から立ち上がって大和くんのところに向かう。 大和くんが座っててもそうでなくても、ぎゅっと抱きついていた。
(323) 2023/08/15(Tue) 22時半頃
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「私、毎日大和くんに美味しいって思ってもらえるように 頑張って色々作るから、食べにきて! お風呂だって使って良いよ、 むしろうちに泊まってもいいよ! お弁当だって持ってって! それで、それで、…どうしよう、わたし、 それしかできない…。」
涙なんか流したくない。 なのに勝手に溢れてくる。涙め! でもぎゅっとしがみつきながら、何にもできないのが嫌だった。
「私が変わったり、参加したり、できないの…?」
死にたいわけじゃない。そうじゃないけど。 みんなだけ。その中でも大和くんが巻き込まれたのが本当に嫌だった。 おいていかれるのが、本当に。*
(324) 2023/08/15(Tue) 22時半頃
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そう言えばその日、家庭科部のみんなともお茶をすることになったのは理由があった。 部室から追い出された先輩を慰めるためでもあるけど、夏のうちに家庭科部の子にお願いをしてたから。 獅子座と蟹座。それぞれのシンボルを模った金色の金具を宙色のレジンの中に閉じ込めた飾り。 それをビーズや他の金具と組み合わせて作ったストラップを、獅子座、蟹座、それぞれ。 栞のお礼として大和くんに渡すつもりだったんだ。 そして、こっそりお揃いをもっちゃったりして。 家庭科部の子に少し揶揄われたりしながらも受け取って、こちらは約束したお菓子を…なんてしてたんだけど。 これ、渡せないなあ。 だから受け取ったそれをそっとカバンの中にしまい込む。 なんとなく手放したくなくて大切な栞も本に挟んでもってきてしまってたけど。
(397) 2023/08/16(Wed) 05時半頃
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だって、大和くんたちは戦うんでしょう?あのロボットで。 じゃあ、尚更なんだか渡せない。
だって、獅子は負けてしまうんだから。 蟹座なんてさ、脇役なのに、脇役だからさ──。
(398) 2023/08/16(Wed) 05時半頃
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─襲来─
それは、私たちがまだ家庭科室に残ってる時にやってきた。 急に空が暗くなったのに気づいて誰かともなく窓を見た。 >>#3私が先に聞いたのは、非難警報よりもみんなのざわめき。そして悲鳴。 私も青ざめていた。戦いが始まるの?ここで? 他の町なら良いとは言わない。 だけどここは、あまりにも危険だ。
それでも、混乱は最小限に抑えられていた。 少なくとも学校内はそうで、ある程度人の帰っている放課後だったからかもしれない。 長年、これ本当に意味あるの?と思いながらも唯々諾々と繰り返し付き合ってきた避難訓練の賜物かもしれない。 学校内にも避難放送がかかって、私たちは青ざめながらも整列しながら外に向かう。 靴を履き替える時間なんてない。 上履きのまま外に出た。クラスに残っていた人や先生たちはきちんとヘルメットをかぶっているけど、家庭科室にいた私を含めたみんなは数が足りずに被りきれてない。 その代わりに大きなボウルやクッションなんかで頭を庇っていた。私はみんなに譲った。それでも数が足りなかったから。
(399) 2023/08/16(Wed) 05時半頃
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学校から外に出ると多くの人が避難を開始し始めていた。 みんな不安そうで、泣いている人もいたし、押し合いへし合いまではいかないけれどこんなにこの街には人が居たのかと思うくらい人だらけだった。
避難でどこに向かっているのかもわからない。 でも私は、あることに気づいて一度その流れから逃れて裏道へと抜け出す。 そして彼らのロボットの方に顔を向けた。**
(400) 2023/08/16(Wed) 05時半頃
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─自宅・大和くん─
「専門学校…興味、あるけど。 ダメ元でチャレンジしてみようかなあ。」
>>383思えばこの時点ではまだ平和な話だった。 日常的な話で、これからの未来を考えてる話。 そんな青春の一ページにあるみたいななんでもない話。 行くならやっぱり調理師養成みたいなところかなあ。 でも全然知らない分野も興味ある。 マッサージとかネイルとか、そんな方のも良いかもしれない。 なんて、少しだけ将来の希望を思い描いたりもしたけれど。 でも今は、目の前の大和くんとしっかり話すべき時間になったから。
(411) 2023/08/16(Wed) 06時半頃
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「ご飯作るのは大変じゃないよ? むしろ、一人だと作る気なくなっちゃうから 私のためにも食べにきて?」
そうじゃ無いと、残り物ならまだしもお米を炊く気すら失せてしまうもの。 冷凍ご飯チンしてごま塩で食べたり。納豆パックに卵を入れてそのまま食べたり、ズボラ一直線になってしまうのは秘密だけど。 でも、誰も住んで無い家にこっそり住むのは危なく無い? 持ち主が帰ってきたりするかもしれないし、余計な犯罪に巻き込まれるかも。 思わず口がへの字になりそうになる。 でも、それよりも何よりも苦しい事実が打ち明けられていって。
(412) 2023/08/16(Wed) 06時半頃
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「だからって…、なんで、大和くんたちが…。」
>>385大和くんがまた涙を流すから、ティッシュを勧めながら私はハンカチで涙を拭った。 きっと、その世界のどこでも同じ問は繰り返されてるんだろう。それでもなんで、と思わざるを得ない。 なんでみんなが。大和くんが。 なんとか気持ちを落ち着けたくても落ち着かなくて、大和くんに近づいて抱きしめた。 この温もりがもう直ぐ消えてしまう? そんなのやだ。 >>386守りたいものも人もいないなんて言葉にズキッと胸が痛んで、そのせいでまた新しい涙が溢れてきてしまう。
「臭くなんか無いし! ギュってして良いよ、むしろして!」
我ながらなんて子供っぽい反応と思わなくはなかったけど、大和くんの胸元に顔を埋めながらそうねだった。 別に力いっぱいじゃなくて良い。抱きしめてほしくて抱きしめたんじゃ無いけど、手が浮いてるより触れていた方がより大和くんに温もりを伝えられる。 大和くんの温もりを感じることができるはずだから。
(413) 2023/08/16(Wed) 06時半頃
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「一人で無人の家屋に寝泊まりする方が問題だよ! そこは百歩譲ったとしても お風呂やご飯は似たようなものだよ? それに男子だって無人のところは危ないよ! もちろん部屋は分けるからさ、 一緒に…いて欲しい…。」
最後の方は、懇願みたいな声になった。 事実懇願だったし、言葉にできない部分があった。 せめて、死んでしまうその日まで。 そんなこと口にしたくなくて、キュッと唇を引き結ぶ。 でも。 >>388死んでほしく無いと言われてびっくりした。 死んで欲しいと思われてるなんて思ってなかったけど、あえてそんな事を言うなんて。 さっき、何も守りたいものがないって言ってたのに。 でも、それはね。
(414) 2023/08/16(Wed) 06時半頃
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「だって、大和くんがなんでも美味しいって…。 嬉しそうに食べてくれるんだもん。」
だからだよって、震える声で。 少し照れ臭くて頬が熱くなったけど。
>>389ハロ、と呼びかける声に顔をあげる。 そこにそれはやって来ていたのかな?**
(415) 2023/08/16(Wed) 06時半頃
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─現在、コックピットへ─
>>425私には視線の向きはわからない。 でも、あれに大和くんたちが乗ってるんだと思うとキュッと唇を引き締めた。 あれは味方だ。 地球を守るためにやってるのに、軍が攻撃している様子が視界の端に映る。
「やめて…っ!!!」
あれは味方だと、みんなに知らせたい。 みんなが命をかけて戦ってくれてるんだと。 だけど私の声はか細くて、大通りの雑踏に消えてしまっただろう。 >>451グッと硬く拳を握っているところに突然視界を遮るものが現れて目を見開いた。 >>438あの日転送してくれると言っていた、確か"ハロ"と呼ばれていたゆるキャラ…ゆる生物? その子が呼びかけてくれる。
(491) 2023/08/16(Wed) 14時半頃
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「あ…!?」
有難うとか、ちょっと待ってとか。 何かを言いかけたけど言い切ることができないまま、私の視界が切り替わる。 固まって棒立ちになってしまったけれど、周囲に交わされる声は…!
「大和くん! みんな! …っ。」
まるで状況がわからない。 でも、半円の卓?みたいな状態にクッションやベッドや自転車が並ぶ中で、その中央部分に座する人物に言葉を失った。 どうして。いや、それは合宿に参加したメンバーがそうなんだろう。 顧問教師や部長がいないのはなんらかの理由で別行動したから? グッと胃液が迫り上がってくる感覚を根性で堪える。 苦しいのは彼らだ。特に、七尾ちゃんだ。 私が泣いたり取り乱したりするのは彼女の士気にも関わる。だから。
(492) 2023/08/16(Wed) 14時半頃
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「七尾ちゃん!」
彼女に呼びかけて駆け寄った。 そして、彼女の背にそっと手のひらを寄せる。 ごめんね。替わってあげられないし、正直私には何もできない。 本当は手を取りたかったけど彼女の手はあの子を抱きしめてたから。
「落ち着いて、大丈夫。きっと、大丈夫…。」
そんな事を囁いた。 勿論、戦いの邪魔になるようならその場を引くけど。 私に出来るのは、この戦いを一緒に感じて目を逸らさない事だと思えたから。**
(493) 2023/08/16(Wed) 14時半頃
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─回想・大和くん─
>>428きっとみんなそう思って来た。 大和くんはそう言った。 まるで、今までそうやって何度も人類が勝利を得て来たみたいに。 でもこんな話聞いたことがない。 一体誰の話をしてるんだろう。 そう思いはしたけど、今の私には瑣末なこと。
だって、主張したのは私だけど。 >>429大和くんが、その手を私の背に下ろしてくれたからだ。 想像よりも大きく感じる掌。 ホッとする。力が少し弱まるけど、それは大和くんが抱きしめてくれた分必死さが弱まったからだ。 それだけ温もりを感じることができたから。 彼の鼓動が聞こえたから。
(494) 2023/08/16(Wed) 15時頃
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「お父さんの部屋しかないんだし 今は無人なんだから値段とかないよ? どうしてもって言うならソファにしよ。 じゃなきゃ、私も一緒に廊下で寝るよ?」
それはそれでキャンプみたいで良いかも。 なんて真面目な顔で言った後、ふふっと笑う。 だって遠慮する大和くんと泊まってもらいたい私。普段なら絶対こんなこと言わないのに面白いな、なんてね。 でも。 ヘラみたいなんて言われて…顔が真っ赤になるのを自覚した。 目元を隠して上を見上げる大和くんを、さらに見上げてる顔は真っ赤だ。 だって、大和くんとした女神ヘラの話を覚えてる。忘れるわけなんてない。 戦いに敗れた獅子と蟹を救い上げて星座に加えてくれたの。 そんな慈悲のある女神様に喩えられるなんて。
…ヘラは嫉妬深いんだよ、とかは言わないでおこう。 大和くんは絶対にゼウスみたいな浮気性な人じゃないもの。なんて。いやいやまだそうじゃないよ、そんな関係じゃないけど。
(495) 2023/08/16(Wed) 15時頃
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