28 僕等(ぼくら)の
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[それだけ伝えると、僕は彼から手を放して、場所を空けた。 最後の時間は乾が手を握ってやるだろう。
僕は何故か、自分の胸、心臓の辺りに手を当てて見守っていた。 康生がいつもそうしていたように。]*
(302) 2023/08/20(Sun) 20時半頃
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──柊木 康生と、その心臓の──
[初めて夏合宿で出会った時の康生はとても元気で明るくて、過酷な背景を微塵も感じさせない奴だった。 ロケット花火で一緒にふざけていた日がもはや懐かしい。 いや、結果的にはふざけ損なったのだが。
康生のお陰で、すんなり天文部に入部出来たし、LINEグループにも入れてもらえて。思えば随分助けられている。 あの明るさと、分け隔てない優しさは、親に充分愛されて育まれたもの。 そう思っていた。 それは合っていた。……のだが。
まさか、父親の心臓を移植していたなんて。
親子の情は僕には分からないが……自分の大事な人の、心臓が自分の胸の中にあったら……? 想像を絶する世界だ。]
(314) 2023/08/20(Sun) 21時半頃
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[しばらく後に僕等は、加賀先生もしくは三千院部長から、康生の手紙を見せてもらうことになるだろう。
その内容は、───"みんな仲良くしてほしい"。
ふたりで話した時に、アストロの光点が消えた後のことを心配していたけど。僕なら大丈夫だと言ったけれど。本当にずっと心配したんだな。そういうところだぞ。
あの康生を育てて、心臓を提供したお父さん。 会ってみたかった。 ……会っていたのかもしれないが。 しばらく僕が拝借していたあの書斎椅子の、大きくて、包容力のある座り心地。僕にろくな父は居ないが、悠然と座る優しい"父"を連想する………。あの椅子の持ち主、そして康生を文字通り生かし続ける、心臓。 そして、康生と一緒に、戦った人。
誰がなんと言おうと世界一の父親だ。]
(315) 2023/08/20(Sun) 21時半頃
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[康生が居なくなった部室は、文字通り、太陽を失った世界のように静かになるだろう。
でも、運命は待ってくれない。
最後までやり遂げなければならない。
康生とお父さんが、2人で守ったお母さんを。大和と珊瑚さんの星座を。七尾さんの家族を。最後まで守り通すためにも。]*
(316) 2023/08/20(Sun) 21時半頃
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[柊木戦の少し前だったか。直前かもしれない。 僕はハロと2人だけの通信で、話していた。]
……柊木戦の後にアストロの光点が2つ消える筈。 そろそろ全部話さなくちゃいけないね。
[柊木は、彼がもともと僕が未契約だと気付いていたこともあり、とてもスムーズに理解してくれたけど。 乾と本郷さん。何から話すのが良いだろうか………。]*
(342) 2023/08/20(Sun) 23時頃
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──第3戦のあと・自宅で──
[誰も居ない自宅に帰り付き。 銘仙判の座布団に正座して、 仏壇に手を合わせていた。
天道縁里(ゆかり)。 元の世界では僕の母親だった人だが、 この地球では、故人だった。 独身のまま、若い頃に事故で亡くなって。
つまりここは僕も、弟も生まれていない地球。
それでも仮住まいを天道家にしたのは何故だろう、 自分でも分からない。]
(347) 2023/08/21(Mon) 00時頃
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[ハロの能力で祖父母に偽の記憶を植えてもらい。 学校でも。昔から"天道縁士"が居た事にして貰って。
ここは無理やり居場所を作った世界。 僕の椅子は、 無かった。]
(348) 2023/08/21(Mon) 00時頃
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[だけど康生が、大切な筈のお父さんの椅子を 僕に赦してくれて。]
………あと2戦。
[あらためて誓う。 僕はこの地球を勝たせてみせる。
そして、必ず───…。]**
(349) 2023/08/21(Mon) 00時頃
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