18 星間回遊オテル・デカダン
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[《銀光教団》は、十年ほど前に設立された宗教団体である。
――祈りましょう。掲げましょう。 ――果てはまだ遠くとも、道はまだ永くとも。 ――救いの光が遍く宇宙を照らすまで。 ――小さな光が泡となり、我らの銀河を包むまで。 ――巨きな泡が時空を超えて、我らを救いの地へ運ぶまで。
これが、"銀河救済"を掲げる彼らの祈りの言葉。 信者の中にこの聖句をすべて真に受けているものがどれだけいるのかは、定かではないが。]
(68) 2022/05/03(Tue) 23時半頃
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[実のところ、《銀光教団》が信者を増やしている理由は、教義そのものではない。
教祖が"目をつけた"信者>>0:80の富が、貧しい信者達に衣食住の提供という形で還元されているためだ。 アルクビエレがこうして『オテル・デカダン』に乗り、いくらか買い物をした分だって、前回のように乗客を連れ返ることができればお釣りが来る。 そうやってこの組織は回っている。
《銀光教団》はいくつかの星――勿論、PJの出身星のような出入国の厳しい場所にはないが――に支部を置いているが、それらはほぼ全て、家を持たぬ信者の住居である。
どんな者でも、救いを求めるならば受け入れる。 そう広まっているからこそ、門戸を叩く者は後を絶たない。]
(69) 2022/05/03(Tue) 23時半頃
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[――現在、《銀光教団》の信者として活動している者達。
その半数以上は、教祖アルクビエレから分かれた子株に喰われ、乗っ取られた者の成れの果て。
"星喰いアメーバ"と呼ばれる捕食者達である。]
[悲しみや絶望の淵にある者が、
例えば突然人が変わったようになったとして。
不自然だと思う者が、どれだけいるだろう。
長く塞ぎ込んでいた者が、
信仰を得て前向きになったとして。
中身が入れ替わっているなどと思うものが、どれだけいるだろう。
そうして、その家族や友人までもが、
やがて信者になったとしても。
親しい者の間で思想が広がることは、
そう不自然なことではない。
《銀光教団》というアメーバのコロニーは、
そうやってじわじわと同胞を殖やしてきた。]
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― 廊下 ―
――さて、少し歩きましょうか。
[特に目的地を定めぬまま、アルクビエレは廊下に出た。 エフからデータが届けば、彼の手掛けた内装を見に行ったりもするだろうけれど。
時折手すりの彫刻や天井に描かれた絵――フレスコ画というものの再現だと、通りすがった案内ロボットが教えてくれた――などに足を止めながら、うろうろ。]
(70) 2022/05/03(Tue) 23時半頃
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[突然の騒々しい放送に、緩慢な動作で天井にあるスピーカーを見上げた]
おいおいおい、依頼人のクソジジィじゃねぇか。
クソだと思ったらやっぱりクソだったな。
[無理やりの仕様変更を根に持っているのだ]
はー……余計なことしかしやがらねぇな、あのジジィ。
[ぼんやりと薄暗い目で呟く]
邪魔だなぁ、あのクソジジィ。
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― 廊下 ―
[船内放送>>#6>>#7に、ゆったりとした足取りが止まる。]
薬剤の散布……
[こてり、と首を傾げる。]
急なお話ですが、 ひとまず、一安心……ということでよろしいのでしょうか。
[乗船登録済の宇宙人種には無害、ということならば、乗客にもスタッフにも影響はないのだろう。 ついでにノミとかシラミも駆除できるのだろうか、などと考えながら、再び歩き出した。*]
(87) 2022/05/04(Wed) 12時頃
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おや、お知り合いですか?
『PaLooook』……
いずれは手を伸ばさねばと思っていたのですが、
なかなかガードの固いところで。
[教祖という立場でいくつかの駆虫業者に接触したことはあったが、流石に天敵のひとつとあっては慎重にならざるを得ず、内部へ信者を送り込むには至っていない。]
ここで葬れるならば、一石二鳥かもしれませんね。
ほう、2人ともあの駆除業者とは縁があるのか。これは面白い。
[からからと笑い声を上げた後、急に声のトーンを落とす。]
いや、面白がってばかりもいられぬか。薬剤の散布とやらは止めねばならぬ。
早速、今夜にでも殺りに行くか?
それがよいでしょうね。
他の乗客と手を組まれても面倒です。
……ああ、夜にならねば動けないのがもどかしい。
[人気のない廊下で天井を見上げる、青い目が一瞬肉色の膜で覆われて、戻る。待ち切れぬというように。]
エフならば、彼の客室もご存知でしょう。
道案内はお願いしますね。
[依頼人ということなら、と決めつけた。]
[道案内と言われ(*21)はっと息を吐く]
送る地図のデータにマーカー機能、一応つけときますよ。この船の客室数、かなり多いんでね。
今後、役に立つでしょ。
[エフは 今後 を強調した]
ジジィの部屋はわかりやすいんで案内の必要はねぇと思うが……。
私怨もあるんで喜んでさせてもらいますよ。
何から何まですまぬのう。人を襲うのに迷っていてはどうにもならんからの。
これで速やかに行き来できるというものじゃ。
では、面倒な爺の案内はおぬしに任せるぞ。いやはや、危険因子が早々に消せそうで何よりじゃ。
ありがとうございます。
ふふふ、やはり勝手を知っている者がいるとやりやすい。
[我々の庭も同然、と喉の奥で笑う。]
危険因子を消した後は……
邪魔になりそうな乗客から片付けてしまいましょう。
ロバートとかいう、あの獣も噛みつかれそうで嫌なのですよね。
まあ、それはまたいずれ……
──自室──
[風呂から上がり、手持ちの端末に送ったデータを確認する。
何も問題ない、何の変哲もない案内板とさして変わらぬデータだ]
こっち見られたら一貫の終わりだ。
[そう言って二人に送りつけたデータを再び見る。
端末に送りつけたデータとさほど変わらぬそれに、指を這わせロックを解除する]
解除方法も送ったしな、問題は何もねぇ。
[手持ちのものより一回り大きい端末に映っているのは、定型の宇宙人なら通れぬ通風孔やわずかな空間の隙間が記されたマップだ]
[アルクビエレの 我々の庭 という言葉(*24)に、内心二マリと笑った]
正面切って行ったらまぁまず警備がヤベェ。
ってことで、こっちはこっちのやり方でやらせてもらうとしますか。
ジジィの客室、空調設備が他の部屋とは段違いの充実ぷりでね。
[それ以上は言わない。こうやって話せる相手であれば理解できるからだ]
[指示通りにデータのロックを解除し、貰った地図を確認する。()
続く船員の言葉にもにやりと笑って()]
……なるほど、これは実に有用じゃな。改めて、おぬしが仲間で良かったよ。
爺の部屋が特別仕様であることも、感謝せねばなるまいて。まるで入ってくださいと言わんばかりではないか。
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― 廊下 ―
[巨大な横顔……のように見える大きな石像が立ち並ぶ通路に差し掛かり、像のひとつを見物していたところに、端末に通知が届く。先程大食堂で会ったデザイナーからのもの>>96だ。]
ほう、あのカジノも彼の仕事なのですね。 後でまた見に行ってみましょう。 それから……おや。
[マップに印のある、エフが内装を手掛けた箇所を確認して。通路の先にある大きな扉に目を向ける。]
こちらの劇場もですか。 何か催し物は……この時間はないようですね。
[内装を見るなら寧ろちょうどいいかもしれない。 アルクビエレはそのまま、横顔像達の間を抜けて劇場の中に入っていった。]
(101) 2022/05/04(Wed) 21時頃
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― 劇場 ―
[劇場に入ってまず目に入るのは、最奥の円形の舞台。 それを囲むように天鵞絨張りの客席が扇状に広がっている。 高い天井は3フロアがぶち抜きになっており、各階にも客席と入り口があるようだった。勿論と言うべきか、柱にも手すりにも精緻な装飾がこれでもかと彫り込まれ、ある種の執念すら感じさせた。 勿論、地下軌道>>0:3と称されるデザイナーの手腕とこだわりによる傑作である。]
これだけ天井が高ければ、 あのカードが使えるかもしれませんね。
[ドーム状の天井を見上げて呟く。 懐に入れたままの、銀のケースに入った美しいカード>>0:67。 今は特に、星を流して祝うようなこともないのだが。 寧ろ船内は妙な放送でざわついていたし、その後の薬剤散布の放送で落ち着いてきたとはいえ、逆に言えばそれまでは、危険生物が侵入していないことを祈るしかないということでもある。
けれど、それも明朝の薬剤散布が済めば、 元の喧騒が戻ることだろう。]
(103) 2022/05/04(Wed) 21時頃
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[劇場の中は、客席で寝こけている客が数人いる程度。 演目のない今は、舞台の上に置かれた楽器――ピアノという古い楽器を苦労して復元したもので、とても値段がつけられないものであるらしい――がポロンポロンと自動演奏で奏でられていた。]
……ここは静かですね。
[目を閉じる。 厚い防音扉は外の喧騒を遠ざけ、劇場という性質上、アナウンスの類も最低限に絞られているようだった。ピアノの音だけが流れている。
閉じた瞼の裏に、たくさんの顔が浮かぶ。 口々に自分を呼ぶ声と、伸ばされる手。 そのひとつひとつに微笑んで、手を振り返す。 日が昇るたび、日が沈むたび。
疲れを自覚することはないが、たまには。 こういった静かな場所に来ることもある。]
(104) 2022/05/04(Wed) 21時頃
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[しばらくそうしてから、するすると劇場を出ていく。 気分転換が済めば、また仕事に戻るのだ。 《銀光教団》教祖としての、 "誰かに手を差し伸べる"仕事に。*]
(105) 2022/05/04(Wed) 21時頃
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― ショッピングモール ―
おや、エフ。
[やはりもう一度見ておこう、とカジノへ向かう道すがら。 噴水広場を通りがかるとデザイナーのエフ(なんだかこざっぱりとしている)が元々よいとは言えない人相を更に悪くして、何やらスタッフに指示を出している。]
……まあ。これはひどい。 こういったものの修理も担当なさっているのですね。
[カモフラージュがかかる前に、折れた女神像を目撃してしまった。お気の毒に、という目をエフに向けて]
あなたのようなスタッフがいるからこそ、 我々はこの船の旅を楽しむことができます。 今日は特にトラブルが多いようで…… エフもご苦労されますね。
[お疲れ様です、と微笑んで、そのままするする去っていく。力仕事とかは向いていないので、救いの手は差し伸べられなかった。]
(116) 2022/05/04(Wed) 23時頃
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― カジノ ―
[古今東西、あらゆる遊戯を集めた『オテル・デカダン』のカジノは広い。 古式ゆかしく切られるカード。 やかましく吐き出される銀玉。 それらの間を長身が横切っていく。 淡く光る髪の軌跡を僅かに残しながら。]
(121) 2022/05/04(Wed) 23時半頃
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[ゆっくりと視線を巡らせる。 先程大食堂で別れたPJとロバートが、黒髪の女性と話している。相手の女性は、乗船した港で見かけたような気もした。]
おや、あれはジェルマンですね。
[バルコニーを見上げると、ジェルマンがかわいらしい乗客達に囲まれている。 少女、と言って差し支えない年齢に見える二人も、やはり港で見たような。しかし、周囲に保護者らしい乗客は見当たらない。 商談の最中なら邪魔をしない方がよいだろうか、とも思ったが。年端も行かぬ子供が保護者も連れずに、というのはやはり気になり、バルコニーへ続く階段へ足をかける。
少女が崩れ落ちた>>120のは、その時だった。]
(123) 2022/05/05(Thu) 00時頃
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!!
[白い顔をさらに白くして、警戒も何もなく階段を上がっていく。駆け上がりたいところだがそんな瞬発力はないため、着いた頃には彼女の症状は落ち着いていたかもしれない。]
大丈夫ですか? ジェルマン、一体彼女に何が……?
[心配そうに眉を下げて、少女と、その傍に膝をつくジェルマンに声をかけた。]
(124) 2022/05/05(Thu) 00時頃
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― カジノ・バルコニー ―
[ジェルマンと言葉を交わす間に、いくらか少女の様子>>127>>130は落ち着いてきたように見える。安堵の息を吐いて、ジェルマンの後ろから顔を出すようにした。]
わたくしは《銀光教団》の長、アルクビエレと申します。 落ち着かれたようで、ひとまずはよかった。
[少女の閉じた目をじっと見る。 表情から苦痛のほどを読み取ろうとするかのように。]
ジェルマンとは先程知り合ったばかりですが、 わたくしもとてもよくしていただきました。
[よい方だと思いますよ、と。 "お墨付き"になるのかどうか、そんなことを言った。]
(133) 2022/05/05(Thu) 00時半頃
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[棘のある視線も言葉も慣れたもの。不審な集団と扱われることも、場所によってはよくあることだ。 ので、もう一人の、気の強そうな少女>>136にはいつもの穏やかな微笑みを向ける。]
貧しい方々だけ、というわけではありませんが。 救いを求めるならばどなたにでも、 手を差し伸べるのが我々です。
[そうして、まだ立ち上がれない様子の少女――サラ、と呼ばれていたか――に一度視線を置いて、また吊り目の少女に。]
お友達の方……でよろしいようですね。 きっとご不安でしょうから、 そういった方が近くにいてよかった。 あなたはしっかりしたお嬢さんでいらっしゃるようですし。
[医療アンドロイドは、そうですね、飛べる方の方が早く呼べると思います。]
(140) 2022/05/05(Thu) 01時半頃
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[自らの教団がどういうところか>>138、と聞かれて。 少し背筋を伸ばし、胸に手を当てて口を開く。ゆっくりと、噛んで含めるように。]
《銀光教団》はどなたでも受け入れます。 どんな出自であろうとも、過去に何があろうとも。 "救われたい"という願いさえあれば、 誰にでも救われる権利がある。
我々はそう信じ、そのために活動しています。
[そうであるからこそ。 その笑顔に滲む諦念を、見過ごすことができない。]
(141) 2022/05/05(Thu) 01時半頃
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[ジェルマンが二人の護衛につくらしいと聞いて、おや、と彼を見る。]
そうなのですか? それは安心ですね。 ジェルマンは色々と道具をお持ちですし、 きっと頼りになることでしょう。
[そうですよね、とジェルマンに微笑みかけてから、またサラへ顔を向ける。]
……サラ、とお呼びしてよいでしょうか。 もし、ご興味があれば。 体調のよろしい時に、声をかけていただければ。
[医療用アンドロイドが到着したなら、少し後ろに下がる。手が足りないようなら貸すが、ジェルマンがついていれば問題ないと判断している。*]
(142) 2022/05/05(Thu) 02時頃
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― カジノ・バルコニー ―
ええ、誰にでも。
[少女の言葉>>144に重ねるような、囁きがひとつ。]
いつでもお待ちしておりますよ。 けれど今は、よく休まれてくださいね。
[ジェルマンの処置>>150も功を奏したのか、かなり落ち着いてきたようには見えるが、倒れるほどの事態であるならやはり、しばらく安静にしておいた方がよいように思えた。]
(154) 2022/05/05(Thu) 12時半頃
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誰にも救われる権利がある。 そう信じるからこそ、わたくしはこの船に乗ったのです。 経済的に困窮している方に限ったことではありません。
[ふんだんに棘の含まれた言葉>>147を、微笑んで流す。 勿論教団の資金調達という面も大きいのだが、話が面倒になると思ったのかそこについては触れなかった。]
おや、信者達を見たことがおありですか。 ということは……
[改めて少女を見る。髪や肌や目の色といった特徴を、記憶と照らし合わせて。先程サラが呼んでいた名前も思い返す。]
もしや、惑星「ク」のご出身でしょうか? 「ク」からいらっしゃった……ミーム様。 宇宙進出を果たし、文化・技術ともに目覚ましい発展を遂げておられる星ですね。素晴らしいことです。 ……その機運に乗れなかった方々もいるようですが。
[惑星「ク」の支部にいる信者は、貧しい者が多い。あの星の富裕層は、きっとまだ富に飽いてはいないのだ。 そして、この娘は"乗れなかった"方ではないのだろう。]
(155) 2022/05/05(Thu) 12時半頃
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