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【人】 校庭番長 ヤマト――数年後の僕らは―― (0) 2023/11/17(Fri) 00時半頃 |
──if・瑠璃川珊瑚の戦い──
大和くんの入った壺を抱えながら、私は病院の待合によく置いてある腰掛けに座って戦いに臨んでいた。
大和くんの戦いで、別の世界線?別の地球?が存在してして、そちらで戦うこともあるのだと知っている。
それをアウェイとハロは呼んだ。
七尾ちゃんの時はあちらにとってのアウェイだったから。場所のことなんて気にせずに思い切り勝負を挑んできたんだろう。
大和くんはアウェイでもなるべく被害が出ないようにしてくれたけど──私にあんな戦いかた、出来るだろうか。
でも、早く終わらせられればそれだけ早く大和くんと一緒になれる。
私が死んだら父さんには知らせずに一緒に埋めて欲しいとハロにお願いしていた。
父さんには──遺書を残しておいたから、それで察して欲しい。娘が巻き込まれていると知って、その裏に軍や政府も絡んでいると知って、世界を恨まないで欲しいから。
だからハロにも、私の名前は他で出さないで欲しいとは願ったけど…それは後に残された人々次第かもね。
私は待ち望んだその日を冷静に受け止めた。
一ヶ月近く経ってしまった。でも四十九日には間に合ったから、きっと隣にいけるよね。
私の戦場はアウェイ。
相対したロボットは完全に見た目が遠距離型の、大きな銃が車体に乗っているような見た目をしていたから私は体勢を低くさせながら近づいていく。
早く。早く終わらせたいんだ。
早く終わらせて次に繋いで、私は大和くんと一緒に眠りたいの。
でも、相手は微動だにしなかった。
そろりそろりと肉薄する。
その時──。
「っ!?」
軍のヘリだろうか。それが、私たちに肉薄する。ダダダダダダッ!と射撃音が鳴り響いて、私たちに攻撃されたのは理解できた。
だけど。
「…撃たれてる?」
跳躍して距離を取りよく見れば、相手のロボットも軍に攻撃を受けている。
勿論、これくらいの射撃では双方共にダメージは無いのだけど…。
それでも相手は沈黙している。
相手も敵だと認識されている?
ぐっ、と喉元に迫り上がってくるものがあった。だけど、それはチャンスかもしれない。
私は軍の攻撃網を掻い潜り相手に急接近。
銃と車体を引き剥がし、その合間に隠されていたコアを見つけて──ぐしゃりと踏み潰した。
踏み潰した、けど。
「終わらない…???」
ドッドッドッ、と嫌な心臓の響き方。
死ぬと思ったのに。終わると思ったのに。
ハロ曰く──。
コクピットを壊すだけでは戦闘は終わらない。
パイロットを殺さなければ勝利認定されないんだと伝えられて。
「──パイロット? と言うことは同じ人間?
殺すの? 私の手で?
そもそもどうやって探せば──!?」
ああ、大和くんの元に行くまではまだ遠い。
どうしてパイロットは逃げ出したのか。
軍と敵対していたらしい様子から見るに、世間からもバッシングされていたのかもしれない。
怖い。
ロボットは破壊したのに。
直接手を下さなくちゃいけない?
こわい、こわい。
どれだけの人がいると言うの?
こんなの、砂漠から一粒の砂を探せと言うような──。
怖い、嫌、やだ、助けて──!!!!
「ひぐっ、う、げほ…っ。」
私は椅子から降りて蹲る。
真っ青を通り越して真っ白になりながら、大和くんを抱きしめながらかからないようにだけは注意して、吐いた。
口の中が酸っぱ苦い。私はまだ、生きている。
怖い。いや。たくさんの人の恨みを買うの。
たくさんの命をこの手で摘み取るの。
「…大和くん…。」
めそ、と泣きながら震える手で大和くんを抱きしめる。
ハロは、早くどうにかしないと、とか言ってたかもしれない。けど。
応援の声があったかもしれないけど。
私はしばらく震えて動けないでいた。
コクピットを潰して終わりじゃない。
その戦い方に、畏れを抱いて。**
――IF・死した後に遺せるものはなく――
[大和 命にできたことと言えば薬を渡せるくらいだった。
それでも珊瑚は生き続けてくれて弔ってくれた。
生きて語ることができるならば涙を流しながら感謝を伝えたろうが語る口は既にない。
孤独が心を蝕んでいっても何もしてあげることはできない。
唯一一緒に眠る未来しか希望をあげられないでいる。
それもまた歯がゆく思うこともできない。
助けてという願いも叶えてあげられない。
ただ骨壺が珊瑚の腕の中で冷たく硬い感触を返すばかりだ。
そこに温もりはなく愛の言葉を囁く声もなく。
まるで畏れ慄く心を凍らせてしまうように。
熱くなる思考を、優しい心を今だけは凍てつかせてしまいたいと、生きていればそう願わずには居られなかっただろう。**]
──if・珊瑚の戦い──
千映の次にパイロットに選ばれたのは大和であった。
彼の傍には珊瑚が寄り添っている。二人の仲は明らかだ。
僕と康生と同じように恋人同士なのだ。
僕はただ見守るしかできない。
勇猛果敢に闘う大和の姿は僕の胸を強く打った。
息を引き取る彼を見ながら、僕はSMSで彼が言っていた事を思い出す。
彼は愛する人、つまり珊瑚の為に命を散らしたんだ。
1日でも珊瑚の命を延ばすために。
僕は隣にいる康生の手をギュッと握る。
どうしても闘わねばならない時が来るならば、僕もーー
愛する人の為だけに闘おう。
大和が死んでも闘いはまだ続く。まるでノルマをこなすように次々と、僕らは死出の道を歩く。
ーー敷かれたレールから降りることは出来ない。
珊瑚が指名された時、僕は激しく泣いた。千映、大和を失いもう心が麻痺したかと思ったが、瑠璃川珊瑚という大きな光を失うダメージに堪えられず崩れた。
大和が亡くなった後の珊瑚の落ち込みは酷かったから、彼女が早く彼の元へ逝けるのは良いのかもしれないけど。
でも嫌だ。珊瑚を失いたくない。
僕の数少ない大切な友達を。
千映、大和に続き珊瑚の戦場もアウェイであった。
もう1つの地球の様子、街の光景が僕らの住む地球にそっくりなのに複雑な気持ちになる。
珊瑚は大和の骨壺を手にコックピットに現れる。
その姿に僕はどう声を掛けたらいいかわからない。
康生ならちゃんとアドバイスとか出来るだろうけど僕は……。
戦闘が始まる。珊瑚の椅子は病院でよく見るような腰掛けだ。
千映の時も思ったが、彼女たちは普通の女の子だ。男だってあれだが、女の子がこんな戦場に立たねばならないなんて、残酷過ぎる……
祈るように手を合わせ僕は見守る。応援というものは、僕には出来ない。
彼女は死に向かっているのだから。
しかし、彼女が悲鳴をあげた時は声をあげた。
「珊瑚ッ!」
軍の攻撃に動揺する彼女。
僕は強く唇を噛んで叫ぶ。
「珊瑚の邪魔をするなッ……!」
彼女は奮闘した。敵ロボットのコックピットを破壊したのだ。
こんなにもか細く、華奢な女の子が必死に闘っている。
なのにまだ戦闘が終わらない?!
「そうか、パイロットを……」
殺さなければ勝利にはならない。
コックピットにいないなら、パイロットは何処にいる?
「パイロットがコックピットにいないなら、向こうはロボットを操縦出来ないじゃないか。
こんなの珊瑚が勝ちでいいだろッ!不戦勝にしろ!」
理不尽だ。しかしそんな風に叫んでも事態は何も変わらない。
珊瑚が嘔吐している。
流石にじっとしていられず僕は駆け寄りハンカチを差し出すが、彼女が受け取るかはわからない。
「大丈夫?珊瑚……まだ時間はある。敵は動いてないし、まだーー」
しかしどうやって勝つんだろう、こんな闘いに。
彼女は大和の名を呼んだ。
僕も彼に生き返り助けて欲しいと切に願った。*
【人】 校庭番長 ヤマト――数年後の―― (44) 2023/11/18(Sat) 01時半頃 |
【人】 校庭番長 ヤマト[結婚式に関しては準備といつにするかだけぼんやりと決めていたのだけれど>>29珊瑚のお義父さんから早く結婚しろよと言われれば、それも資金を借りれるならばGOするしかなかった。 (45) 2023/11/18(Sat) 01時半頃 |
【人】 校庭番長 ヤマト それで、珊瑚さん。 (46) 2023/11/18(Sat) 01時半頃 |
【人】 校庭番長 ヤマト[そうして、式の当日までは慌ただしく過ごしていくことになる。 (47) 2023/11/18(Sat) 01時半頃 |
─IF 瑠璃川珊瑚からの連絡─
[康生の頼みを、瑠璃川珊瑚は引き受けてくれた
[康生は、瑠璃川珊瑚と乾恵一が自分を含む恋愛話をしてるだなんて想像もしてないだろう。自分の存在が乾恵一にとって其処まで大きいものだと、この時点では自覚していなかったのだから当然だ。]
『や。縁士だってきっと、内心では悔やんでるよ』
『俺がぶっ倒れちまったりしたから、表に出し損ねちまったとかじゃねーかな?』
『縁士は、元々誘われた側ってのもあるかもだし』
『本郷もだけど、しっかりしてるけど実は……ってパターンもあるかなって、俺は思ってる』
[彼女が疑惑を溢した時点
『怒らねーよ』
『瑠璃川が最後になった時、戦えないかもってんならさ』
『それまでに俺、なんとかならないか試してみる』
[そう返した康生が胸に手を当てていた事を、彼女は知らないだろう。何処かでそうだったのよりも少し早く、康生はこの段階で補充パイロットについて考え始めていたのだ。私達は、自死すれば交代出来るという情報を既に得ていたのだから。]
─IF 大和命戦とその後─
[大和命が瑠璃川珊瑚の為に戦ったのは、明白だった。最期に口付けを交わしていた
[私達のものではない地球の知らない街で、彼は命を落とした。にも拘わらず周囲に被害を出さない様にしていたのだから、立派なものだ。元より人間が余程出来ているのか、或いは瑠璃川珊瑚がそれだけ彼の支えになっていたのだろうか。確かめる術は、もう無い。康生は静かに、乾恵一の手
[それから一ヶ月と少し。初戦以外に校舎へのダメージも無かったから、日暈学園は授業を再開していた。だが、瑠璃川珊瑚は姿を見せなかった。]
『瑠璃川、調子どう?』
[偶に、そんなLINEを瑠璃川珊瑚へ送っていた。「心配ですにゃ……」と書かれた猫のスタンプを添えて。返信が有ろうと無かろうと、どうしているのか気に掛け続けただろう。そういう子だから。]
─IF 瑠璃川珊瑚戦─
[そしてとうとう、瑠璃川珊瑚が戦う日が来た
[康生がずっと入院していたから、手続その他で、似た椅子に腰掛けた時間は相応にあるつもりだ。だが、座り心地も悪く落ち着く訳もない其処は、自分の居場所とは到底思えなかった。瑠璃川海星が医師だとは知っているが、それでも違和感は残った。それ程までに、彼女にとって父親の存在は大きいのだろうか。或いは、別の理由が在るのか?]
[大和命と同じく、彼女はアウェイで戦う事となった。大和命で“アウェイ”を知った康生はハロに追加で幾つか質問を行い、私達が戦う相手が同じ人間だと確信を得るに至った。相変わらずの説明下手気質と、士気を下げるべきではないとの判断から、やはり誰にもそれを伝えなかったが。]
ッ、……!
[判断が裏目に出たのは、言うまでも無い。彼女はこの土壇場で、敵が何なのかを知ってしまった
……焦らなくていい。まだ時間はあるから。
48時間以内に決着が付けばいい。そうだろ?
[機体を動かせなかった場合も、コックピットから逃げた場合も、勝利条件は変わらない筈だ。だが、48時間というのはあまりに短い。彼女を落ち着かせる事は出来たとしても、数十億の中から一人のパイロットを見つけ出して殺すにはあまりにも────]
探す必要なんて、ないしな。
全員……殺せばいい。
俺らが勝てば、どの道死ぬ人達なんだから。
[……康生らしからぬ発言だと、聞いた誰もが思っただろう。だが康生にとって、これは“自分が告げなければならない事”だった。天道縁士が未契約者だと知っているから。瑠璃川珊瑚が、天道縁士に不審を抱いたのを知っていた
……けど、瑠璃川がしなくてもいいんだ。
すげえ酷い話になるけど……。
死んだら、パイロットは交代できる。
[感情を無理矢理押し殺した、静かな声で康生は語る。]
──瑠璃川に限らず、さ。
「んなことするなら死んだ方がマシ」だってんなら
文字通り、そうやって逃げてくれていいんだ。
[逃げたい者が全員死という形で逃げ出せば、いずれは私か康生の番が来る。そうなれば自分がするからと、そう言ったに等しい。二席分を占めているのだから、当たる確率が相応に高いというのも計算の内だろう。]
[柊木康生は大和命ではないから、そんな道しか示せなかった。*]
【人】 校庭番長 ヤマト――数年後の僕らは―― (71) 2023/11/18(Sat) 15時半頃 |
【人】 校庭番長 ヤマト うん、でもほら、礼服持ってるか聞かないとだし。 (72) 2023/11/18(Sat) 15時半頃 |
【人】 校庭番長 ヤマト[そして、当日――。 (73) 2023/11/18(Sat) 15時半頃 |
【人】 校庭番長 ヤマト 珊瑚、とても綺麗だよ。 (74) 2023/11/18(Sat) 15時半頃 |
【人】 校庭番長 ヤマト――数年後の僕ら―― (114) 2023/11/19(Sun) 15時半頃 |
【人】 校庭番長 ヤマト[そんな準備期間の思い出が走馬灯のように過ぎ去っていき、 (115) 2023/11/19(Sun) 15時半頃 |
【人】 校庭番長 ヤマト 珊瑚、とても綺麗だよ。 (116) 2023/11/19(Sun) 15時半頃 |
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