10 冷たい校舎村9
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……カチンコチンだ。
[能天気にそう形容し、赤くなった手をぶんぶん振って冷気に当てる。 きっと向井くんも試すものは試したんだろうとは思う。]
鍵がかかってる感触じゃないし、 ドアが凍っちゃったのかなぁ。
[これ以上やるなら、後は男子に暴力的に殴る蹴るをしてもらうしかなさそう。 私には打つ手が無さそうで、それを実感すると眉尻が下がる。]
(185) 2021/06/06(Sun) 17時半頃
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今すぐ帰りたいわけじゃないけど、 電話も繋がらないし、いざと言う時に帰れないと困るかなって。 あと、外の空気をちょっとだけ吸いたいし……。
[ここまでは冷静に言えた。 困惑してはいたけど、まだ、心のどこかでなんとかなると思っていて。 だけど自分の手で扉が開かない事実を確認してしまってから、 外の空気を無意識に求めてしまう自分に気付いて、少しずつ、言葉を失う。]
……あ……。 まさか、ね……閉じ込められたってことは……。
[頬を汗が伝った気がした。寒いのに。 胸の前で握り締めた手の中も、ぐちゅりと不快な感触がする。*]
(186) 2021/06/06(Sun) 17時半頃
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— 回想:夏の日の複雑な事情 —
[>>0:1162事情をカミングアウトしてしまえば、 いろいろ思われるだろうから、居た堪れないわけですよ。 鳩羽くんに打ち明けたのも失敗だったかもしれないってぐるぐるしていて。]
まあ、仕方ないんだよ。
[>>0:1163分かってくれたようなら、一言それだけ返す。 同情とかされようが、それが無責任だろうが、 きっと想像しているものは違うんだろうって決めつけて。]
(197) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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……ううん。 気にしてるっていうか……。
[>>0:1164そこまで言われてしまうと、なんだかなぁ。 ちょっとぐらい責めてくれてもいいのにな。 鳩羽くんがなんでこんなに優しくこっちを理解してくれるのか、 それが分からないから、こちらが勝手に気まずい。]
普通の家庭だったならもっと自由だったのかなって、 思っちゃうけど、そんなこと言ったらダメだよね。
[自分はそういうことがあったけど、家族に愛されているのは本当だ。 それは間違いないから、それだけを漏らす。
例えば私が無断で授業をサボって家出なんかしたら? 考えるだけで、両親の憔悴した顔が想像できてゾッとする。]
(198) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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[>>1165頭にぽんと置かれる手の感触。 鳩羽くんとの身長差もあって、見上げる格好になる。]
ちょっ、
[——その一瞬、知らない男の拳が振り上げられる、 そんな光景がフラッシュバックした気がして、身を引こうとしてしまう。
僅かにだけど後ずさって、でもそのまま撫でてくる手を受け入れた。 別に、平気だ。
だってあの時、殴られたのは、……。]
(199) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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…………。
あの、いきなりそーゆーの良くないと思う! 不意打ち反対!
[ふるふると全身を震わせて顔を赤くした。 人によってはセクハラだからね、と思ったので簡単に気を許したくないけど、 別に悪い気はしなかったので自分でもびっくりした。
さっきの一瞬は気のせい。どう考えても。*]
(200) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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[閉じ込められたという判断をするにはまだ早い。 だって窓は確認してなかったんだもの。
>>194向井くんの行動でそれを思い出したので、 窓が開く様子をそのまま見守っていて、 >>195窓が開く様子を…… 窓が開く…… 開いて……?]
あかない?
[冷や汗がぶわぁっと出る。 向井くんがしばらく格闘していたのをこの目で見たので、 疑うこともできず、現実を鵜呑みにするしかない。]
(224) 2021/06/06(Sun) 19時頃
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[>>196ああ、言っちゃった。 閉じ込められているのかもしれないと、言っちゃった。
途方に暮れた向井くんの指先が、クレセント錠をいじっている。 あっ、それずるい。私も欲しい。 気を紛らわすための何かが欲しい。 近くに何もなかったので、ひたすら胸の前で両手の指を重ねていじいじしている。]
……なんで??
[私にコメントを求められても、それしか言いようがない。 息ができなくなりそう。]
(225) 2021/06/06(Sun) 19時頃
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[とはいえ、なんで?と聞いても仕方がない。 答えが返ってこないものはいくらでもある。
幼い私をさらった男に、なんで?と聞いてたところで、 返ってくるのは苛ついた平手。
理不尽なものというのは、なるようにしかならないので、 明後日友達と遊ぶ予定を立てていても、 明日拐われてしまえば、それは容易く無かったことになる。
今が楽しいならそれで十分、と思いながら生きていた。]
(226) 2021/06/06(Sun) 19時頃
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まだどっか開いてるかもしれないし、 誰か隠れてるかもしれないし……。
[自分の目で確認したものは誤魔化しようがないから、 希望を見出すなら、まだ見ていないものを挙げるしかない。
冷や汗はもう隠し切れないほど滲み出ていて、 手の甲で拭おうとしてぬるりと滑った。
タオル、教室に置いてきちゃったな……。*]
(227) 2021/06/06(Sun) 19時頃
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店番 ソフィアは、メモを貼った。
2021/06/06(Sun) 19時頃
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[割るの? と聞き返す前に、向井くんはモップを手に取っていた。>>234 やはり困った時は暴力が解決してくれるのだろうか。 窓が割れることを心のどこかで期待して、手を握りしめる。]
が、がんばれ男の子!
[少し裏返った応援の声。 >>235そして、モップの先端が窓にぶつかるその瞬間を見た。
軽い音。モップが落ちる。 窓には傷一つ無い。]
(237) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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[少しの間、向井くんと一緒に呆然としていたと思う。 たぶんここにいる2人にこれ以上この場をどうにかする能力は無い。
>>236落とされたままのモップを拾い上げて、 元あった壁に立てかけておいた。]
……えっと、
[励ましとか慰めの言葉とか、何も思い浮かばなかったけど、 もし思い浮かんでいたとして、向井くん、いる?
まごまごしながら汗だくの両手を下ろし、 この不快感をどうにかしたいと思ったので。]
ちょっと顔洗って、出口さがす……。 見つけたら教えるから。
[まず近くの水道へ向かおうとするだろう。*]
(238) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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— 回想:帰宅部の…… —
[心理テストを装うのなら、取り繕うための回答を用意しておくべきなのに。 なんだかやるせなくなって、全て吹っ飛んでしまった。 だから出題者の土台は、とても弱い。>>24
返ってきた答えに、黙ってしまう。 うまく言葉が探せない。
私にしか見えないあの子の話をしたいのに、 突拍子もない話にしかならないと思ったから、できない。 今回に限った話じゃないから、また失敗したなって感じた。]
(240) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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……忘れる側だって、もう疲れたんだよ。 と、思うよ。
[喉の奥からそれだけを絞り出して。]
えっと、ね……。 これ、彼氏の浮気を許せるか、っていう、 そういうのがわかるやつだったんだけど、 ごめん、答え忘れちゃって。
[明らかに様子がおかしいのは誤魔化し切れない。 ただ、もうこれ以上この話を続けられないなって、 願うように次の話題を持ち出す。
芽衣ちゃんとは、普段はスムーズに楽しい会話ができたはずなのに。 なんでだろう。私の親友の話は、どう切り出していいかわからない。]
(241) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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[忘れようとすればするほど忘れられなくなってしまうのは人間の自然な心理。
忘れてはいけないものから順番に、頭の中から零れ落ちていく。*]
(242) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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— 回想:オカルトな時間 —
[話を聞いてくれるだけで助かったので、 利美ちゃんのおふだの効果を軽く論ずるぐらいで切り上げることになったかもしれない、 茉奈ちゃんとのその日の会話。>>217
>>219質問には、少し考える。 一言では言い表せない気がした。]
なんというか……。 気付いたらいるから、当たり前のように。 邪魔とかでも、面倒でもなくて。 普通に話して、普通に一緒で、これってもう友達だよねって。
(243) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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[昔からずっとそういう認識だったし、それは変わらない。 何も変わることが無い。 変わらないのに、……。]
(244) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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もし幽霊とか守護霊とかだったら、 自由にしてあげたほうがいいかもじゃん?
[半笑いでそんなことを言う。 本当にそういう類のものなら、それで良かったのかもしれない。
茉奈ちゃんからの質問は至極当然のものに思えたけど、 どうしてだろう、彼女にも心当たりがあるのかな、とはなんとなく思ってしまった。*]
(245) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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[私から見て邪魔ではないし、私から見て面倒でもない。 「ぼたん」という親友の存在に、すっかり慣れきっていた。
だからこそ。 可愛らしい声が聞こえてくるたびに、 私は、心が張り裂けそうなほど苦しい。**]
(246) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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店番 ソフィアは、メモを貼った。
2021/06/06(Sun) 20時半頃
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/* 芽衣ちゃんとの回想と茉奈ちゃんとの回想を並べると、 距離感ミスってんじゃねーかなというのがわかりやすいアレ。
芽衣ちゃんにも素直に話せばいいじゃんか、ひとみさん……。
(-48) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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/* 芽衣ちゃん→帰宅部仲間。見られたくない場面を見られた。忘れたいことだったので話したくない。でも困ってるので意見は聞きたい。
茉奈ちゃん→オカルト話に理解があるなら大丈夫そう。自分から半分くらい正直に話してる。相談に乗ってもらえるのでありがたい。
なんで芽衣ちゃんに頑なに隠した? ひとみさん?
(-49) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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/* (あたまかかえ)
(-50) 2021/06/06(Sun) 20時半頃
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[>>252頑張った向井くんに、もっとこう、 気の利いた言葉をかけてあげようとするのが普段の私だけど、 たぶん私たちはどちらも心に余裕が無かったので。
これからどうする、とか、もっと建設的な提案ができることもなく。 言葉少ないまま別れて、廊下を歩く。
目線を上げれば文化祭の装飾。 目線を下げればカッターナイフ。
またひとつ蹴飛ばした。]
(335) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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[近場の水道の水を出す。冷たい。 凍えるような低音だけど、ハンカチを浸して、汗まみれの顔を拭いていく。 朝、眠気と戦いながら頑張ったナチュラルメイクが無慈悲に剥がれていた。 後で軽くクリームだけでも塗り直そう……。
少し落ち着いた。 開かない扉と窓のことを思えばぞっとするけど、 まだ閉じ込められたと決まったわけじゃない。
仮に閉じ込められていたとしても、 ……あの時よりはマシじゃないか。大丈夫。]
(336) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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『ひとみ、平気? 安心して。私がいるからね。』
[——閉鎖されたはずの校舎の中でも、当然のようにぼたんの声が聞こえた。]
(337) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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[かつ、かつ、かつ……。 足音を鳴らし、カッターナイフを見かけたら脇に蹴り飛ばして、廊下を歩く。 ぼたんはとても心配そうな声で話しかけながら、追いかけてくる。]
『我慢できない時はいつでも手を握ってあげる。』
うん、ありがと。
『今はクラスのみんなもいるもんね。 甘えさせてもらいなよ。優しい人たちでしょう。』
そうだね……。
『ひとみの両親は心配してるかも。 きっとすぐ気付いて助けを呼んでくれるよ。』
そうだったら、いいね。
(338) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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[背後から無邪気な声がする。 一生懸命、笑わせてくれようとするような、子供の声。
私は返事をするけど、振り返らない。]
(339) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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— 1F:体育館への渡り廊下 —
[通って来た通路にある窓はどこも開かなかった。 途中の教室も入れるだけ入って、人の気配を探した。 やっぱり誰もいなくて、あの時の教室に揃っていた私たち以外にはいないのかもしれない。
かつん。 蹴飛ばしたカッターナイフが回転して、何かに当たる。
そこは体育館前の渡り廊下。]
……これも、あるんだ。
[>>167我がクラスが勝ち取った屋台の出店場所。 人通りが多い絶好の穴場。 そこに、あの日の姿の屋台が残っていた。
少し離れた場所で、足を止めてそれを見ていた。*]
(340) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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店番 ソフィアは、メモを貼った。
2021/06/06(Sun) 23時半頃
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/* 芽衣ちゃんごめんな……。 なぜか隠し通そうとしちゃってごめんな……。
現在軸で会えたら教えるね……。
(-71) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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— 回想:文化祭当日の看板娘 —
3年9組、クレープのお店やってまーす! ぜひ来てくださぁーい!
[プラカードを持って声を張り上げる。 ……否、プラカードを“振り回して”叫び続ける。
茉奈ちゃんも監修してくれた冒涜的なプラカードは、 その後どれだけの修正が入ったかは忘れたけど、 文字を見せるために掲げるというよりは、 目立たせるためのパフォーマンスの道具と化していた。
>>0:711乃絵ちゃんのデザインしてくれたクレープのカチューシャをつけて、 愛嬌たっぷり、可愛く振る舞って見せる。 ここには暗く狭い場所で怯えている小さな女の子はいない。 たった一回の青春の時間を全力で楽しむ女子高生がいる。]
(373) 2021/06/07(Mon) 00時頃
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