16 魔界のミッドウィンター祭【R18】
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[天使の位置は特に把握していない。 夜になる前には探しに行こうと思う程度だ。
言葉が通じなくても、心が通わなくても、構わない。 少なくとも、植物よりは反応がわかりやすい。
いずれは関係も変わるかもしれないが、今はこれで良かった。 意識の片隅だけで天使を追いながら、大岩の上で目を閉じる。*]
(-61) nekomichi 2021/12/27(Mon) 13時半頃
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[大岩の上で寝そべっていると、天使の気配が近づいてきた。 顔は上げないまま、耳だけをそちらへ向ける。
何をしているのかは分からなかったが、確認はしない。 こちらが動けば、天使はどこかへ去って行くような気がしたからだ。
興味が先走って、尻尾がはたりはたりと揺れた。*]
(-65) nekomichi 2021/12/27(Mon) 17時頃
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[どうやら天使に気付かれたらしい。 頭を上げて、去って行く姿を見る。 手に持っているのは、花を編んだ輪のようだ。
弾むような移動の仕方は一見楽しそうだが、当の天使にとっては不便なのだろう。 はたりはたり。 尻尾を波打つように幾度か動かしてから、立ち上がった。
前脚で伸び、後脚で伸びてから身震いをひとつ。 軽やかに岩山を降りる。]
(-68) nekomichi 2021/12/27(Mon) 18時半頃
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[距離を開けて、天使に付いていく。 あの花で何をするのかが気になった。
方角的に、泉へ向かっているのだろうか。 そういえば、天使の髪が少し湿っているようだ。
天使が止まれば自分も止まり、その場で伏せて眺めていよう。*]
(-69) nekomichi 2021/12/27(Mon) 18時半頃
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[一度威嚇されたが、天使は気にしないことにしたようだ。 こちらを見ずに進んでいくのを、変わらぬ距離で付いていく。
泉の前で止まった天使は、編んだ花を水面に浮かべて膝をつく。 草の上に座り、流れてくる澄んだ声に耳を傾けた。
祈りを終えた天使は、さらに先へ進んでいく。 泉の側に寄って残り香を嗅ぎ、花輪を咥えて首を振り、角に掛けた。]
(-72) nekomichi 2021/12/27(Mon) 20時半頃
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[頭に花を乗せて、さらに天使を追う。 やがて、行く手に灰色の大地が見えてきた。
あれが草原の終わり。領域の端。 瘴気に満ちた、むき出しの魔界が始まる場所。
天使はこの果てを見に来たのだろうか。 背中の光を収めて立ち止まる。 天使が領域を越えようとしているのか、その場に伏せた姿勢で注視していた。*]
(-73) nekomichi 2021/12/27(Mon) 20時半頃
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[天使が振り返る。 こちらを見つめながら、後ろ向きに境界を越えた。
分かっているだろうに。 その先は、光無き世界。 天使が生きていくすべなどないものを。
灰色の世界にぽつりと光る点となって離れていく天使を、首も持ち上げずに見送る。 その目は光そのものではなく、周囲からじわじわ滲み出す影を見ていた。]
(-75) nekomichi 2021/12/27(Mon) 21時半頃
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[胸の内で、ゆっくりと数を数える。 耳と目は、隙無く周囲の気配を探っていた。
領域の周囲には、有象無象の魔が群れている。 他の魔から逃れてきた、弱い魔物たちだ。 陽光の領域に入ることはできずとも、他の魔物もあまり訪れない周辺を隠れ家にしている連中だった。
彼らに、1羽きりの天使は魅力的な獲物に見えているだろう。 天使に刻印があることも、領域の主が見ていることも気付かぬ愚かなものたち。]
(-76) nekomichi 2021/12/27(Mon) 21時半頃
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[十を数える頃には、魔物たちもあからさまに天使を囲み始める。 もう十を数えれば襲いかかっているだろうし、天使も戦おうとするだろうが、それを待つ気はなかった。
立ち上がり、地を蹴り、空間を渡って天使の背後に現れる。]
じき夜が来る。 帰るぞ。
[唐突に現れた領域の主の姿に、有象無象はたちまち散り失せる。*]
(-77) nekomichi 2021/12/27(Mon) 21時半頃
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[天使の指がたてがみを掴む。 その温もりに、小さく唸った。]
掴まっているといい。
[天使の下へ潜り込み、己の背の上へと投げ上げる。 輝く毛束で包み込むように支えながら、疾駆した。
草原を駆け、泉の脇を抜け、大岩を跳び越して、 我が家へ。]
(-81) nekomichi 2021/12/27(Mon) 22時半頃
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[家の前で足を止め、天使を下ろす。 天使の手をぺろりと舐めてから、扉を開けた。 尻尾をゆるく揺らしながら中へ入る。]
おいで、ケラヴノス。 冷えるから、扉は閉めて。
[丸い敷物の上をぐるりと回り、のすりと座ってから天使を呼んだ。*]
(-82) nekomichi 2021/12/27(Mon) 22時半頃
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[扉は閉まったが、天使は入ってこなかった。 もう一度立ち上がり、空間を跳ぶ。 天使の前へしなやかに飛び出して、その体を再び背負った。]
側に来て欲しい、といえば分かるだろうか。 ひとりは、冷えるからね。
[そうして有無を言わさず家の中へ引き込んだ。]
(-85) nekomichi 2021/12/27(Mon) 23時頃
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[いつかわかり合えれば良いけれど、 いまはただ、そのぬくもりが欲しい。*]
(-86) nekomichi 2021/12/27(Mon) 23時頃
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