10 冷たい校舎村9
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[ ……あ、いや。ヤなわけじゃなく。 ただ少し不思議なだけだった。
だから今も、思い出したように痛がる姿に、 ささやかな日常を感じて笑っていた。>>+78]
……頼んだらバンソーコーとか、 消毒液くらい貸してもらえんじゃね? なんせここ、病院だし。
何があったんだか知らないけど、 男前が台無し……、
[ 保健室じゃないんだからって、 怒られてしまう可能性もあるけれど。]
(+96) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ 当たり前のように始まる、 なんでもないような会話が、 慎一にはいつだって心地よかった。
あのあと、あの場所では何があったの? 何か進展はあった? そう聞くより先に、 冗談交じりの言葉を投げながら、 不本意な疑問には否定の言葉を返す。>>+79]
……自発的にだよ。 パシリじゃねーし。
[ ね。ここだけ切り取れば、 文化祭の会話といってもわかんないね。]
(+97) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ 「ユキも」そう言われて、>>+80 慎一は「そっか」って短く返した。
言われなくても、頭の中で数えてる。 誰が残っているのか。あと何人なのか。 チャイムが何かの合図だとすれば、 あとどれだけの時間が残されているのか。
ようやく非日常に、 言い換えればこの非情な現実に、 慎一の思考も戻ってきたところだった。]
ン、まだ戻んなくていいかな。 なんか、女子で話してたっぽいし。
[ ちらりと病院のほうを見て、ふいと歩き出す。]
(+98) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ カイロ代わりにもなるふたつと、 ちっとも恩恵のない冷たいひとつ。 どちらを渡すのが正解なんだろう。
「別にいいよ」って言いかけたけど、 やっぱり両手が塞がってちゃ不便だった。
どっちもどっちな選択肢に一瞬迷って、 慎一はあったか〜いを差し出した。>>+83]
ン、サンキュー。 ポケットにでも入れといて。 そっちは振っても問題ナシ。
[ 自販機前、占領してちゃ悪いからさ。 少しだけ離れながら、慎一は笑った。]
(+99) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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……なンなんだよ、その二択。
[ 差し向けられた、ふつーorまじめ。 握りしめるには冷たいコーラを、 両手で交互に弄びながらその顔を見た。
いつもどおりみたいでそうじゃない、 ほんの少し弱々しい笑顔。>>+84 きっとこれも正面から見なきゃわからなかった。]
(+100) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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……どっちがしたいんだよ、おまえはさ。
[ 思わず、少し笑って聞き返してた。 少し性格の悪い答え方になっちゃうけど、 慎一はまだどう踏み込めばいいのかわからない。 今までそんなことしてこなかったからさ。]
(+101) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ でも、そうだなあ。 何も話したいことがないわけじゃないんだ。 だから慎一は一瞬おいて、ゆっくり口を開く。]
……俺はなー、 レンってすごいやつだったんだなーって、 まさに今。そういうこと考えてたとこ。
[ これはふつーの話だと思う? それともまじめな話? どう思う?
行く当てもないから、ゆっくり歩いて、 いつもより少しゆっくりと言葉を吐き出す。]
(+102) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ ふつーでもまじめでも、どっちでもよくて、 ただその顔見てたら、口に出したくなっただけ。
どうだろう。慎一は静かに笑ってる。 「もう少し話す」のに相応しい話題だっただろうか。*]
(+103) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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/* ユーガの説得の切り込み方すごい好き。
番代ちゃんのふとしたときのリアクションが好きすぎて、 今さりげなくどのくらいコーラ振れるかチャレンジしてます
(-46) 2021/06/14(Mon) 22時半頃
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/* 柊くんがめっっっちゃ現実的な方向に動いてくれてるの、 頼もしすぎてすごいな〜〜〜って思ってみてます みんな友達思いでやさしくてかしこくて素敵
(-48) 2021/06/14(Mon) 22時半頃
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[ じっと、その深い色の目を見てた。>>+86]
(+123) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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── 少し前・病院内 ──
[ ……なんか楽しそう。って、 うっかり言ったりはしなかった。
ただ、短く返された言葉を拾って、 「そう見えた」……そっかあ。
「人のことよく見てるんだね」とは、 そのとき、綿見には言わなかった。
同族嫌悪という言葉が浮かぶことは、 慎一の中ではついぞなかったが、 それでも、慎一も考えたわけだ。]
(+124) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[ たとえば。腹の奥底に飼うむなしさの話。 慎一に深く根付いて吐き出せないそれを、 あるいは似たものを内側に抱えてるなら、 やっぱり、慎一は「よかったね」と思う。]
……あはは、 じゃあ、似たようなもんだなあ。 少しだけでも、綿見が、 身軽になれたんならよかった。
[ それともたまには、あのときみたく、 「むなしいね」って言い合ってみる? ……そんな日が来ないのが一番だけどさ。]
(+125) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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破裂する前によろしく。 ……やさしく、な?
[ そんなこと言われたって怖いものは怖い。>>+88
いくら似たものを抱えていたって、 きっと慎一と君じゃあ怖いものは違う。
結局のところ互いに何を飼っていたのか、 その形そのものは知らないまんま、 慎一は綿見と番代に手を振って立ち去った。
お礼≠ニついで≠買うために。*]
(+126) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[ それで今、缶飲料を抱えて、 12月の冷えた空気の中にいる。]
(+127) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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── 現在・病院外 ──
……うれしいんだ、へえー。
[ わいわいと騒がしく言うやつがあったから、 慎一はわざとらしくよろめいて笑った。>>+116
いつものおふざけみたいなノリに、 慎一も同じように笑っていたけれど、
半信半疑であったなら仕方がない。 世界と同化する説なんてちっとも知らず、 悪い気分じゃないから慎一は笑ってる。]
(+128) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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……男前だよ、 その傷がなけりゃな。
[ すっかりあいた片手で、 デコピンのひとつでもしてやろうか。 もちろん、傷のとこは避けるからさ。
別にあながち冗談ってわけでもないから、 鳩羽憐に春が訪れない理由を論ずる会なら、 後日別途開催してもいい。喜んで参加する。
返ってきたどっちつかずの返答に、>>+119 慎一はへらりと笑って言っただろう。]
(+129) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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おまえがどうしたいか、 聞いてみたいと思ったのに。
[ やっと思ったんだけどな。 冗談みたいに軽い口調でね。
去ったあとでの校舎の出来事。 当たり前なんだけど、慎一は知らない。 なんかうれしそうだなあって、>>+119 不思議にさえ思いながら、また一歩歩いて。 コーラを右手に左手に持ち替えたりして。
だから、いつものどおりならさ、 適当にじゃれあうような話、 このままずうっとしててもよかった。 それでも慎一はきっと楽しい。]
(+130) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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[ でも、ほら。せっかくの機会だ。 勢いがいいなあって思ったし、>>+120 慎一は一瞬驚いたけど、聞くなら答えるよ。]
いっつも笑ってるとこ。 こっちがつられて笑っちゃうくらいに。
人前で機嫌よく振舞えるとこ。 ヤな顔もせず人に手ぇ貸せるとこ。
相手の「してほしいこと」ばっかり、 うんうん考えて、しまいに叫びだすとこ。 ……そいつの顔もわかんねえのに。
[ 「まだいる?」って慎一は笑った。まだあるよ。 いっこも嘘じゃない。こっちもそんな顔してる。]
(+131) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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……どっちがすごいとか、 どっちのががんばってるとか、 言い合ったって、不毛だって。 素直に褒められとけって。
[ 本心だったのかもしれない。 あるいは励ましだったのかも。>>+121
だけど今だけは、 その屈託のない笑顔が刺さるなあ。
「すごく頑張ってる」って、 何を指して言ってるんだろう。]
(+132) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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……がんばってるよ、俺も。 みんな何かしらがんばってんだろ。
[ ぶりかえしたように、喉元が痛痒くて、 あいているほうの手でセーターの襟元、 なんとなくいじってみたりもするけれど。
「苦しい?」投げかけられた問いに、 慎一は一瞬たじろいで──、人形かな。それとも? なんでそれを聞かれたか、考えたりもする。
おもしろがるんでもない、 ただまっすぐな目が、こっちを見てる。>>+122]
(+133) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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……苦しかったよ。
今は──、少しマシ。 今は夜で、ここは静かで、 目の前におまえしかいないから。
なあ、それ。俺の人形見たから聞いてる?
[ 「俺、そんなにひどかった?」って、 慎一は苦笑してもうひとつ質問を挟んだ。
嫌とか怒ってるとか、そうじゃなくて、 ただ、これでも慎一は隠してたつもりだったから。 ことごとくバレてるなあって自分に呆れただけ。]
(+134) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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[ だからちょっと諦めたみたいに、 慎一は笑いながらその話をしている。 自分の話。うまく説明もできないから、 他人にする気のなかった話の断片。]
……心配してくれてんなら、 マジで、あんまり気にしないで。 なんていうか──、そういうもんだから。 たぶん、ちょっと脆いんだよね。俺って。 別に、悪者がいるような話でもないし。
どっちかっていうと、そんな傷作ってくる、 おまえがどうしたんだって聞きたいくらい。
[ 後半部分は大まじめにね。前半もまじめだけど。 笑みを引っ込めて心配そうな目を向けていた。**]
(+135) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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── 現在・病院外 ── ダメとは言ってねーだろ。 俺もうれしかったよ。……うん。 ただ、ちょっと驚いた。うん。 [ 自分で言いながら納得するように、 慎一はうんうんうなずいていた。>>+136 たぶん、慎一もわかりやすい方だろうけど、 鳩羽の背後にはたまにしっぽが見える。 びゅんびゅん振れてるそれを見て、 驚いたとしても、ヤなはずがなかった。]
(+144) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ だから本当に、女子ってわからない。 本当にみんな残らず帰ってきて、 気兼ねなくうれしがれる時がきたら、 男子みんなで顔を寄せ合って話し合おうか。 女の子は秘密のお菓子パーティーをしたという。 男の子にもなにかがあってもいいだろう。 ……それで対抗できるのか? わからないけど。 しかし困った。 あいにく当方、春は在庫切れだなあ……。]
(+145) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ こんな話はまた今度でもいいね。
「知らなかった」と鳩羽は言う。>>+139 知らせようとしなかったのは慎一だ。] ……知ってもらう気なかったからね。 だってさ、変に気遣われると、 俺、変な奴みたいじゃん……そうなんだけど。 [ ちょっと言いづらそうな何かとか、 間のあいた相槌とか、そういうの全部、 なんだか少しもどかしかった。 モヤモヤさせたいんじゃないんだけど。 人との向き合い方がへたくそでごめんね。]
(+146) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ 教室に辿り着けなかった慎一は、 そのことを指摘されて笑う。>>+139] ああ、遠かったなあ……、 集まろうって言うくせにさ、 時間の決め方、すんげー雑で、 なんなんだよって思ってたの。 うれしいって、おまえ、 マジで人がいいというか……、 [ おかしなことを言うなあって思ってた。 なんていうか、再会の「うれしい」も、 今の「うれしい」もピンとこなくて、 慎一はただ、いいやつだなあって思って。]
(+147) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ ……思ってた。 「心配したい」と言われて、>>+141 人が良すぎるって思い始めるくらいには。] そーいうとこだよ。 すごいなっつってんの。 あれもこれも人のこと心配して、 全部知っても、疲れるじゃんか。 [ 少なくとも慎一にはできないソレ。 確かに、そういうことかもしれない。 みんなに優しい男はモテないって聞いた。]
(+148) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ そう。そういうふうに考えてて。 やたらと「うれしい」とか、 妙なやつだなあって思ったりもしたけど。 なんだか話の雲行きが妙だった。 というか、慎一からすると不思議だった。 「自分でやったの?」と眉をひそめて、 まじまじとその傷を見つめたりしながら、 鳩羽が息苦しさを語るのを聞いていた。>>+142 慎一の周りの人たちは思い切りがよくて困る。 黒沢も、炭蔵も、鳩羽もみんなそう。]
(+149) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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[ 礼を言われて、慎一は不思議だった。>>+143 「息が吸えた」と言われて、 「シンといたときは」と言われて。 慎一は一瞬、意味がわからなくて──、 それで、ぽかんとしていたんだけど、 だんだんと込み上げてくるのはなんだろう。 「うれしい」で合ってるかな。 たぶん、そのときやっと気づいたのだ。 友だち甲斐のないやつでごめんね。]
(+150) 2021/06/15(Tue) 11時半頃
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