――病院1F>>@106――
あら、ご親切にどうもありがとう存じます。
[少女は分厚い前髪のカーテンの奥から、蒼いまなこで相手を探りつつ、大仰になり過ぎないようぺこりと腰を折る]
……やっぱり、言わんこっちゃないですわ。
[非難のぼやきは、対面する長身にではなく、無謀な野良猫へ向けて。
夏にしては重装備のくすんだえび色のロングスカートを翻し、少女は玄関の方へ一歩踏み出してから、教えてくれた男を振り仰いだ]
なにか、良いことでもあったのでしょうか?
いえ、その、とても…………
……晴れやかな顔をされているように、
見えたものですから、っ、
[自分でも、何故思考が零れてしまったのか、慌てて包帯だらけの手で口元を塞ぐ。
「忘れてくださいまし」とばつが悪そうに添えて、今度こそ踵を返して立ち去った。珍しくパタパタと、動揺の残る足跡とともに**]
(@133) ras 2024/07/21(Sun) 20時半頃