お喋りな墓守曰く、
「道端に倒れておったんじゃ、身元も分からずじまいでな。医者のもとに運ばれたんじゃが、叶わず息を引き取ってしもうた。ん? ああ、名知らずの墓に丁重に寝かせて、そうそこ、そちらに眠っているよ。綺麗な女の子じゃったなあ。傷ひとつ無くてのう。死因も結局分からなんだ。…………本? ああ、唯一の所持品がそれじゃったな。本というより、大きさが違う紙がたくさん雑に束ねられて、糊で固めてあった。恐らく複数の書き手がなにかをひとつにまとめたのか、まぁワシにはわからんよ! ハハハ! それでな、皆不気味がって、それを開こうともせんかった。そしたら、葬儀のあと、盗まれたんじゃ。…………犯人? 知る由もない。ただ、その時期になぜか同年代の娘達が失踪したんじゃ。こわいのう。でもその事件も結局忘れられてしもうてな。……ん? これはもしかして名刺か? 『はのん』? ハハハ! ずいぶんと可愛らしい! ありがとうなお嬢ちゃん! そうだ、帰りにせめて花を飾ってくれぬか。あの子を訪ねてくれてありがとうな。」
(-49) 2021/10/15(Fri) 23時半頃