[ぐるぐるとどこからか響く声に、足が竦むのが分かった。上手く息が出来なくて、はくはくと浅い呼吸を繰り返す。何だろう、これは。何を見ているんだろう、俺は。今すぐ踵を返して逃げ出してしまいそうになるのを必死に堪えて顔を上げた。口を開いた。ちっとも笑ってない顔であやふやな誰かに向けて、震える声を絞り出す。――――嗚呼、そうだったね。これが俺の痛くて苦しい、ままならない『現実』。]
(511) 2021/06/13(Sun) 23時半頃