─少し先の未来 ×日後 校舎跡─
[偶々空いた時間。崩れた校舎の一角────大和命が生活していたと思しき空間>>342に、康生は足を踏み入れていた。其処には、大和命の足跡がそのまま残っていた。二人の誕生日を知れば、何故獅子座と蟹座だったかの答えには充分だった。これだけ熱心に大量の書籍を読んだなら、彼が積尸気を最期の場所に選んだのも納得が行った。]
────なあ、命。
瑠璃川には、ちゃんと会えたか……?
[死した人々の魂が天に行く際に通過する場所。それなら、彼女は彼を待っていたのではないかと。彼も、それを信じたからこそ会いに行ったのだろうと。康生はそう考えた様だった。]
……俺、命や瑠璃川、七尾以外に誰かを亡くしたことってないからさ。
それで、ちょっとわかってないとこあったんだけど。
──……いのちって、重いんだな。
[胸元に手が当てられる。手の平から、鼓動が伝わる。この身体に入っている命は、二人分だ。二つ在りはするが、不可分の命。]
[何か形見に貰って行こうにも、身体的事情がそれを許さない。だから、場をそのままにして康生は立ち去った。*]
(350) 2023/08/18(Fri) 23時頃