[ただ、以前の康生は擦れ違いを悲しみ、今の康生は擦れ違う事を寧ろ望んでいた。何もかも明け透けにしていたのをやめ、心に秘密を持つと決めたから。皆の不和を避けたいのと、彼に少しでも心穏やかに居てほしい一心で。それを康生は「裏切ってる」と表現した>>46のだった。]
[康生は喉仏を見られているとも思ってなかったし、前髪への指摘も明察通り思い付きだ。]
や、見づらくねぇのかな〜って思ってさ。
短くしても今のままでもどっちも好きだし、いいと思うぜ!
[前髪を引っ張る彼>>243にそう言って、康生は無邪気に笑った。途轍もない計画>>244が進行してるとも知らずに。]
[砂浜を走り回り、棒倒しに熱中する康生は、幼子の様だった。子供の時に出来なかった事だから、ある種自然な反応だろう。]
見ろよこれ、綺麗なの拾った! ケイにやるよ。
[貝殻を手にする様子は、幼児と変わらない。ビニール手袋があるから拾えた様なものだし、自分が持って帰る訳にも行かないと考えたのか、何気無く彼に差し出した。それは、ルリガイという薄紫色の巻貝だ。殻が薄くて割れ易いから、欠けていない物は珍しい。]
(295) 2023/08/18(Fri) 17時半頃