―現在・女子トイレ―
[自身を「可愛くない」と言い始めたのはいつだったか。]
「「可愛いは作れる」」ものよ」じゃない」
[ステレオに聞こえた音声に振り返ると、田端先輩がいた。
「可愛らしい」と言われて、言葉通りに認識――しきれずに言葉に詰まる。
く、と髪が引かれる感触に鏡に視線を戻せば姉は結い始めたようだ。]
そう、で しょうか
[鏡の自分のすぐそばに美しい人がいる。
姉の優しい手つきで、髪は編まれていく。
鏡でしか見えないのに、梳かれる感覚とくいくい引っ張られる感覚を感じるから、鏡の中で起こっている通りに見た目に変化が出ていることが感じ取れた。
懐かしい感触だ。
姉は子供の頃からおしゃれというかおませというか、よくわたしの髪を結いたがった。
年子だったから、少しでも構ってお姉さんぶりたいのもあったかもしれない。]
(283) 2023/07/30(Sun) 17時頃