― 医務室 ―
[念の為にと検査を受けるが、特に重篤な疾患等は見受けられないとの診断が下された。
但し、検査機械が吐き出した診断書の備考欄には、此う書き添えられている――『頭部に、幼少期の物と思われる、何らかの医術的措置を受けた形跡有り』と。
其の仔細は、最新鋭で在ろう此の船の設備にも詳らかには出来ない様だったが。
同行し、結果を待って呉れた者達へ、せめて、と。少女は、己の事を話し始める。]
逃げたい、と。思う位なら、良いのよ。でも、本気になっては駄目。逃げよう、と思っては駄目。
本気で其れを、考えるとね。頭が、痛むの。
割れる様に――其れ以上、何も考えられない位に。
[其れは、決して『妻』に施されるべき措置では無い。
其れを施される立場に相応しい呼び名は――『奴隷』、だろうか。]
良く出来た仕掛けだと思わない?
従順に生かす為に、屹度、苦心したのでしょうね。
[此うして検査しても、はっきり明らかにはならないのだから。
其うした側が刑に問われぬ様、用心も万全と云う訳だ。]
(181) 2022/05/05(Thu) 19時半頃